判例時報2158号で紹介された東京地裁平成24年5月9日の裁判例です。




たまにニュースで,以前の手術の際にお腹の中に器具を忘れたままにしたとかいうことを聞いたりしますが,本件ではタオルの置き忘れでした。




原告が十二指腸潰瘍で被告病院で手術したのが昭和58年で原告が24歳の時でした。




その際,タオルの置き忘れがありましたが,時は流れて,平成20年に原告は血便の症状を訴えて別の病院を受診したところ,脾臓外側に約8センチ大の腫瘤があると診断されました。

原告は手術を受けましたが,その際に,脾臓の背側にタオルがあり,これが脾臓と高度に癒着し,横隔膜や胃とも癒着していることが確認され,脾臓とともにタオルが取り出されました。




タオルを置き忘れたのは昭和58年の時に手術の際しかないということで,当時手術をした病院が訴えられました。




裁判所は,タオルの置き忘れというのは,病院側の過失であることは明らかであるとしました。




原告は,タオルの置き忘れがあった後,平成20年に脾臓の手術を受けるまでの間の約25年間についても,タオルの置き忘れが原因で下痢や腹痛といった症状が現出していたとして,その間も労働能力を喪失しており,得られるべき収入を失ったと主張しましたが,裁判所はこれは認めませんでした。




平成20年の脾臓摘出手術後については,「腹部臓器の機能に障害を残すもの」として労働能力喪失率を9パーセントとして,労働能力喪失期間17年間として逸失利益を認めました(約700万円)。




また,慰謝料としては300万円,弁護士費用として100万円が認められています。




本件で,原告は,不法行為(民法709条)と診療契約の債務不履行(民法415条)の二本立てで請求を立てましたが,裁判所は後者のみ認めました。

どちらの法律構成でも大きくは変わらないのですが,消滅時効などの関係では大きく異なってくることがあり,本件でもそうでした。




不法行為は不法行為時点から20年が経過すると除斥期間といって請求権が消滅することとされていますが(民法724条後段),問題の手術がされてから20年以上経過している本件では同条の適用により,除斥期間経過と判断されました。



債務不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効は権利行使ができる時から10年とされていますが,本件ではタオルの残置を知った時から初めて権利行使が可能になるとされ,消滅時効にはかかっていないと判断されました。




ちなみに,不法行為に基づく請求で構成すると,遅延損害金が不法行為のあった日から計算されるので,本件の場合昭和58年からということになると多額の遅延損害金になります。裁判所としてはその辺りのバランス感覚もあったのかもしれません。




本件は控訴されています。




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