判例時報2158号の最高裁刑事破棄判決等の実情(下)で触れられていましたので紹介します。




この件は,行政書士ではないAが,「家系図」を作成するというサービスを行って顧客を募っていたところ,家系図の作成には戸籍謄本等が必要となりますので,行政書士Bの協力を得て,行政書士が使う「戸籍謄本・住民票の写し等職務上請求書」を有償で提供してもらい,Aがこれを利用して不正に入手した戸籍情報により本件各家系図を作成したという事案です。




Aが行政書士で無いのに,行政書士でなければ作成できない「事実証明に関する書類」(行政書士法)を作成し,Bもこれに加担したとして,双方共犯として起訴されました。

起訴事実にかかる家系図作成の分の報酬として約90万円くらいであったということです。






そして,作成された家系図というのは,1枚の和紙に記載し,その表装はプロの表装師が行い,桐の箱に収めるなどと記載し,現に,取り寄せた戸籍謄本等をもとに,パソコンのイラスト作成ソフトを用いて家系図の原案を作成すると,その電子データを印刷業者に送って美濃和紙に毛筆書体で印字させ,こうしてできたものを表装業者に送って掛け軸用の表装具を使って表装させ,さらに,これを保管するための桐箱を木箱製作業者に作成させるなどして作成されていたというものでした。






Aが配布していたパンフレットには,「こんな時にいかがですか?」という見出しのもとに「長寿のお祝い・金婚式・結婚・出産・結納のプレゼントに」,「ご自身の生まれてきた証として」,「いつか起こる相続の対策に」と記載されているものの,本件の各依頼者の家系図作成の目的は,自分の先祖の過去について知りたい,仕事の関係で知り合った被告人からその作成を勧められて作成した,先祖に興味があり和紙で作られた立派な巻物なので家宝になると思った,自分の代で家系図を作っておきたいと考えたなどというものでした。






「家系図」が「事実証明に関する書類」に該当するかが問題となりましたが,一審二審はAを懲役8月,2年間執行猶予とし,行政書士であるBについては略式命令で罰金50万円としました。

Bの略式命令は確定しましたが,Aは最高裁まで争ったところ,最高裁は,本件家系図は,自らの家系図を体裁の良い形式で残しておきたいという依頼者の希望に沿って,個人の観賞ないしは記念のための品として作成されたと認められるものであり,それ以上の対外的な関係で意味のある証明文書として利用されることが予定されていたことをうかがわせる具体的な事情は見当たらない。そうすると,このような事実関係の下では,本件家系図は,依頼者に係る身分関係を表示した書類であることは否定できないとしても,行政書士法1条の2第1項にいう「事実証明に関する書類」に当たるとみることはできないというべきであるとして,Aは逆転無罪となりました。






Aが無罪となったことで,罰金となったBについて,検事総長が非常上告を行いました。

非常上告は,確定した刑事判決に法令の違反があると発見したときに検事総長が行うとされている手続です。




判決は「法令」ではないので,Aが無罪となったからといって,必然的にそれがBに対する「法令」違反というわけではないですが,最高裁は,AとBの事件は事実関係も同じであるという事情から,非常上告を認めてBについても確定した略式命令を破棄して無罪の言い渡しをしました。





なお,本件は,あくまでも「家系図を作成した行為」を罪に問うたため無罪となったということであって,Bが有償で戸籍等の職務上請求書をAに渡して使用させた行為は戸籍法上罰せられる可能性がある行為であることに注意が必要です。





私も,自分の直系の先祖を遡って文政時代までたどり着きましたが,当然ですが,その際も自分が持っている職務上請求書は使用せずに,個人として請求しました。




お金を取って家系図を作成すること自体は自由であるが,その場合,戸籍を取るには,作成を希望する依頼者から直接委任状を貰って取得していかなければなりません。そうすると,家系図については直系のみ辿ることができ,傍系については戸籍等の取得はできないということになります。









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