判例タイムズ1376号で紹介された最高裁平成24年6月28日の決定例です。




刑事事件の弁護人であれば,当然,公判記録の閲覧謄写を申請することができますが,これは進行中の刑事事件の手続上の行為です。




刑事事件が終了し,判決も確定した後は,裁判所で審理された刑事事件の記録は裁判所から検察官に引き継がれ,検察庁で保管されます。




そして,確定した刑事事件の記録を民事事件などの用途で使用したいということが起こることがあります。

交通事故では,ある程度手順等が確立されていて,確定した刑事事件の記録を閲覧謄写するということが頻繁に行われています。




本件最高裁の事例は交通事故ではなく,ある会社の株主が会社に対して株主総会の招集等の通知をしたところ,会社側の代理人弁護士が,その株主が以前に務めていた会社の社長らが組織犯罪処罰法で有罪判決を受けたことなどを明らかにすることによって,株主による総会招集等の請求についての民事訴訟を準備するためという目的で,検察官に対して,一審判決書の閲覧請求を行いました。

なお,閲覧請求に当たっては,「プライバシー部分を除く」と限定がされた上で請求がされていました。



確定した刑事試験の記録については刑訴法53条,刑事確定訴訟記録法で原則公開となっていますが,例外として閲覧不許可事由がいくつか定められており,本件で,請求を受けた検察官は,下記2つの事由に該当するとし閲覧を不許可としました。

 ・保管記録を閲覧させることが犯人の改善及び更正を著しく妨げることとなるおそれがあると認められるとき。


 ・保管記録を閲覧させることが関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害することとなるおそれがあると認められるとき。



そこで,この検察官の処分を不服として,準抗告がされましたが,原審も,「本件判決書の閲覧を許可した場合には,株主らとの間の民事裁判において本件判決書の内容が明らかにされ,被告人両名(株主が前任代表者を務めていた会社の社長らのこと)の前科の存在及びその内容並びに本件会社関係者が犯行に関与した事実が不特定多数の者の知るところとなるおそれがあるとして,法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に該当すると認め,弊害の内容及び程度と比較して,申立人に本件判決書を閲覧させる必要性は低いと言わざるを得ないから,閲覧につき正当な理由があると認めることもできない」として閲覧不許可の判断をしました。





しかし,最高裁は,「刑事確定訴訟記録である第1審判決書は,国家刑罰権の行使に関して裁判所の判断を示した重要な記録として,裁判の公正担保の目的との関係においても一般の閲覧に供する必要性が高いとされている記録である」として,判決書の重要性を指摘し,「本件では,申立人が「プライバシー部分を除く」範囲での本件判決書の閲覧請求をしていたのであるから,保管検察官において,申立人に対して釈明を求めてその限定の趣旨を確認した上,閲覧の範囲を検討していたとすれば,法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由には当たらない方法を講じつつ,閲覧を許可することができたはずであり,保管検察官において,そのような検討をし,できる限り閲覧を許可することが,法の趣旨に適う」としました。





そして,本件判決書の閲覧請求について,「プライバシー部分を除く」として請求がされていたにもかかわらず,その趣旨を申立人に確認することなく,閲覧の範囲を検討しないまま,民事裁判においてその内容が明らかにされるおそれがあるというだけの理由で法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に該当するとして本件判決書全部の閲覧を不許可とした保管検察官の処分には,同条項の解釈適用を誤った違法があるとし,原審の決定を取り消しました。





それにしても,「判決書」といういわば国民の財産ともいえる裁判所の判断の結果を検察官の判断ですべて閲覧不許可とされてしまうというのでは,裁判の公開といっても当事者以外の者からの事後の検証が不可能になる恐れもあり問題だと思いまので(だからこそ法律上も原則公開になっている),最高裁の判断は至極妥当ではないかと思いました。



その後,どうなったのかは分りませんが,「プライバシー」ということで,請求者側が知りたい情報が全部黒塗りとかにされて閲覧許可されたとするとこれまた問題という気がします。








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