判例タイムズ1376号で紹介された最高裁平成24年2月24日の判例です。




労災保険は,労働者が業務上や通勤途中などで負傷等した場合に治療費などを保障する労働者のための保険であって,会社の代表者や一人親方などの「事業者」は原則として労災保険に加入できません(というよりも,労災保険は強制保険なので,加入云々以前に,そもそも保険関係が成立しません)。



しかし,多くの中小企業などでは,その実態は「労働者」とあまり変わらないこともあり,労働者と同様の業務に従事しているのであれば,保険事故発生のリスクも労働者と同程度であろうということから,事業主にも「特別加入」という制度が認められています。




労働者と同様の業務に従事しているということに特別加入の根拠がありますので,事業者が特別加入しようとする場合には,労基署長から労災保険の適用対象となる「業務」の範囲の承認を請けなければならないこととされています。




本件では,建設会社を経営する代表者が,「建築工事施工(8:00~17:00)」として労災保険の特別加入の承認を受けていましたが,営業のために建築見込現場の下見行為に行く途中で自動車ごと池に転落して死亡してしまったため,遺族が,労災保険の給付を求めたところ,労基署長は,営業のための下見行為は証人を受けた業務の範囲外であるとして不支給決定しました。




そこで,遺族は処分の取り消しを求めて出訴し,一審は遺族側の勝訴となりましたが,二審では敗訴し,上告されましたが,最高裁は,二審の判断を維持して,労災保険の給付はされないとして遺族側の敗訴が確定しました。





「建築工事施工(8:00~17:00)」という文言だけでは,営業のための下見行為が含まれるとも考えられると,含まれないとも考える余地もあります。




決め手となったのは,本件建設会社では,従業員には営業のための下見行為はさせていなかったことでした。そもそも,労働者が従事していない業務は労災保険の特別加入の対象外であって,保険関係が成立する余地がないとしました。




中小企業の事業者などが業務上の災害で負傷等した場合,健康保険の特例が使える場合もありますが,民間の保険にも加入する必要がないかなど,リスクの点検が必要になります。







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