家事事件の記録

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家庭裁判所に係属する家事事件にも色々と種類はあって,手続で分類すれば,大きく,調停事件とに審判事件に分かれます。調停事件は,当事者双方の自主的な話し合いの場を家裁が提供するというイメージ,審判は裁判官がシロクロを判断する一般的な訴訟手続きに近いイメージでしょうか。




事件の内容で分類した場合には千差万別ですが,離婚などの男女に関する事案と遺産分割などの相続に関する事案,後見の申立や戸籍に関する事案といったものが多くを占めるというところでしょう。




家事事件で裁判所が保管する記録がありますが,記録といっても,当事者が提出するもの(主張を記載した書面や証拠など)と裁判所が独自に収集するもの(鑑定書や調査官の報告書など)とに分かれます。




家事事件の記録の閲覧と謄写については,現行の家事審判法の下では,規則により裁判所が「相当と認めるとき」に閲覧謄写を許可できるとされており,裁判所の裁量がかなり広くなっています。




来年平成25年1月から施行される家事事件手続法では,家事事件の記録の閲覧謄写についての規定が細かく規定されており,大まかにいうと,審判事件は当事者からの請求であれば原則開示となります。つまり,例えば養育費を争っているような件で,相手方が裁判所に出した書類については,当事者であれば,裁判所に開示を求めれば許可されるということになります。




専門的には乙類審判事項というのですが,当事者双方が争う類型の件については,一般的な民事訴訟と同様な対立構造ですので,民事訴訟と同じように,当事者双方が裁判所に提出した書類を開示しあうのが合理的といえます。

相手がどんな書類を出したのかもわからない状態で反論する機会もないまま判断されてしまっては,いわば不意打ちになってしまうという発想です。

これつにいては,当事者同士で書類を送り合うという意味と,裁判所に提出された書類を開示するという二つの意味があります。





このあたりについては,現在は未だ家事事件手続法施行前ですが,既に意識されるようになっていて,裁判所だけではなく相手方にも同じ書類を送るようになってきています。最高裁が,家事事件でも当事者の手続保障を行うべしという趣旨の判決を出したことも大きいと思います。

私が弁護士になった10年くらい前は,この辺りは結構いい加減で(そもそも法的根拠がないので),相手に弁護士が付いていれば書類を送ったりしていましたが,送らないこともあったりで,ルール化されていませんでした。





これに対して,調停事件については,そもそも主張や証拠に基づいて裁判官が判断するという手続ではなく,当事者が自主的に円満に話し合うという調停手続きの特徴から言っても,出された書類を相手方に開示するとかえってまとまるものもまとまらなくなるということで,従来同様,裁判官が相当と認めるときに限って開示されるということになりました。当事者が自主的に相手方に送らない限りは,当事者からの申立があったとしても,裁判所からは開示されないことの方が多いのではないかと思います。




また,家裁の持っている記録について,地裁から送付嘱託という形で提出してほしいという要請がされることもあります。




例えば,後見事件の際に行った鑑定書については家裁が記録として持っているわけですが(鑑定書については後見人であっても記録の謄写はできませんので,家裁しか保管していないことになります),被後見人が亡くなって相続争いが地裁に係属した場合に,地裁から被後見人の判断能力の来歴などを知るために鑑定書を保管している家裁に対して記録の送付嘱託がされることがあります。




裁判所同士なのだから堅いこと言わずに送ったらいいんじゃないかと思ってしまいそうですが,家裁は必ず地裁からの送付嘱託に応じるわけではなく,必要性等を吟味して,断るということもあります。地裁に記録を送ってしまった場合,地裁の民事事件の記録は公開されているので誰でも見ることができることになってしまい,不都合なことも起こり得るからです。





むかし,ある激烈なぶつかり合いのある調停事件で,相手方が出した書面にどのようなことが書いてあるのか教えてほしいと調停官の裁判官に言ったら「教えられない」ということでした。では,「記録を閲覧させてほしい」といったら「許可しない」ということでした。

調停でまとまることは考えられなかったので,「それでは,後に民事訴訟になったら調査嘱託かけます」といったら「嘱託が来ても許可しない」と言われてしまったことがあります。







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