判例時報2156号で紹介された最高裁判決です。




当時高校3年生の少年が家族3名を殺害した事件の少年事件に関し,家庭裁判所から少年の精神鑑定を命じられた精神科の医師がジャーナリストに対して,家裁から提供されていた鑑定資料として貸し出されていた捜査記録を閲覧させるなどしたことから,刑法134条1項の秘密漏示罪に問われたという件です。




一審,二審とも,同罪の成立を認めて被告人を懲役4月,執行猶予3年間としましたが,被告人が上告したのが本件です。





被告人側は,刑法134条1項の秘密漏示罪に問われる主体(身分)は「医師」となっているところ,本件では,医師としてではなく,「鑑定人」としての業務であったから,同罪は成立しないと主張しました。




最高裁は,鑑定の実施は意思がその業務として行うものであるから,本件でも「医師」が業務上取り扱った人の秘密を正当な理由なく漏らしたことになるして上告を棄却しました。




至極当然のことのようですが,千葉勝美裁判官の補足意見がついています。




千葉判事は,秘密漏示罪の趣旨は,医師については,患者の秘密に接し保管するという医師の業務に着目したものであり,患者の秘密を保護し,患者が安心して医師に対して秘密を開示できるようにすることにあり,医師が鑑定人に選任された場合には鑑定資料を見ることで対象者のプライバシーに接することもあることになるが,そうすると,秘密を漏らした鑑定人がたまたま医師であれば秘密漏示罪となるが,医師ではなく行動心理学の専門家であったときは同罪には問えないことになり,この不均衡をどう考えるべきかということが書かれています。





この点については,患者が医師を信頼して進んで秘密を明らかにするという医師の業務に着目し,基本的な医行為とそれ以外の医師の業務が明確に区別できるわけではなく,鑑定の作業は,診療や診察ときわめて類似したものがあると指摘し,医師という身分自体に着目したものであろうと述べています。





意見中には下記の「ヒポクラテスの誓い」まで引用してあります。

「医療行為との関係があるなしに拘わらず,人の生活について見聞したもののうち,外部に言いふらすべきでないものについては,秘密にすべきものと認め,私は沈黙を守る。」





また,千葉判事の意見中には弁護士についての設例も書かれていて,弁護士が本来の弁護活動とは別に弁護士会の会務の中で知り得た秘密を他に漏らした場合には秘密漏示罪には当たらないという解釈もありえるというようなことが書かれています(結論としては否定のようですが)。







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