判例時報2155号で紹介された弁理士に対する債務不履行責任,不法行為責任を追及したが,請求が棄却された事案です。専門家としての責任を問う訴訟ですが,これについても知財高裁が扱うのですね。

一審大阪地裁,控訴審である知識財産高裁ともに,原告の訴えを棄却しました(請求額は逸失利益や慰謝料料等の合計約4988万円の一部である1000万円)。




なお,本件の原告は本人訴訟です。




原告は,いくつかの特許出願手続,実用新案登録出願手続を弁理士に依頼しました。




そのうちの一つである自動車(トラック)が管理された場所等を走行する場合に設置するもので自動車(トラック)の荷積載を検知し車体の長さを測定する,重量オーバーを表示して警告するなどの考案について,原告自ら,実用新案登録の出願手続をしましたが,考案の作用及び効果しか記載されておらず技術的更生が記載されていないなどのことから,拒絶理由通知や拒絶査定を請けました。




そこで,原告は,被告弁理士に対し手続補正を依頼しましたが,原告の主張は,内容に関する補正はする必要がなかったのに弁理士が勝手に技術的構成を記載した全面的な補正を行い,結果として請求不成立審決を受けたと主張しました。

なお,原告が被告弁理士に対し本件の依頼をしたのは平成9年のことであり,本件の提訴は平成23年のことです。




しかし,裁判所は,問題となった考案については技術的構成を記載した内容の補正を行う必要があったものであり,弁理士としては,出願当初の明細書の記載を前提に手続を進行するほかなく,結果として請求不成立審決を受けたとしても専門家としての注意義務に反するとはいえないとしました。




なお,原告側の証拠として,別の弁理士による「被告が行った各手続きについて,弁理士であれば通常そのような手続きを行わない」旨の意見書が提出されていましたが,裁判所は,抽象的,断定的に非難するにとどまるものであるとして証拠価値を認めませんでした。




また,被告弁理士が行った手続について,原告の承諾なく行われたという原告の主張について,この考案に関する手続についてのそのものの連絡文書は既に残っておらず証拠としても提出されていませんでしたが,被告弁理士が原告からの別の依頼に基づく米国特許の手続に当たり,平成11年から平成20年までの間,きちんと原告の承諾を得て進められていたことや,平成9年に登録に至らないことが確定したものについて弁理士事務所が保存しておく必要性は乏しいことなどから,原告の主張を退けました。





なお,平成9年の事件であるにも関わらず提訴が平成23年となったことについて,原告は手続についての報告を受けておらず登録されたものと考えていたと主張しましたが,登録料の支払いもないのに登録されていたと考えていたことなどは到底理解しがたいとして,その主張は排斥されています。





そのほかにもいくつからの特許等の手続について,弁理士としての注意義務に反したという原告の主張はすべて退けられ,本件は確定しています。








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