判決には仮執行宣言というものがついていることがあり,これがついていると,判決の確定を待つことなく強制執行してしまうことができます。



建物の明渡の場合に仮執行宣言が就くかどうかはケースバイケースですが,ついていれば,明渡の強制執行をしてしまうことができます。





ただ,「仮」という名前からもわかるように,あくまでも仮のものであり,確定的な効果を生じるものではなく,後から判決が覆るなどして執行の効果が否定されることもあります。





第一審判決で建物明渡の仮執行宣言がついており,これに基づいて建物明渡の強制執行されているが,控訴されている場合,控訴審は仮執行によって建物が明け渡されているという事実を考慮できるかという問題があります(最高裁平成24年4月6日判例時報2155号)。




具体的には,建物明渡を命じられた賃借人からの控訴があり,賃借人が「建物がすでに明け渡されているので,明渡請求を棄却すべきだ」と主張した場合に,なお明渡を命じる判決を下すことができるとかということが問題になりました。また,既に明け渡しているのにも拘わらず,なお,「明渡済みまで」の遅延損害金の支払いを命じたり,明渡によって発生した敷金の返還請求権との相殺を認めずに遅延損害金をそのまま支払を命じたりすることができるかということも問題になりました。




最高裁は,明渡という本訴請求以外の遅延損害金などの他の請求の当否を判断するにあたっても仮執行宣言による強制執行完了の事実は考慮すべきではないとしています。





そうすると,賃貸人としては既に明渡が完了しているのに明渡の債務名義や明渡以降の遅延損害金の支払いについての債務名義も手に入れることができますが,このことについては(現実的にはあまり考えられませんが)強制執行の手続の中でおかしな執行を排除するというチェックをすべきであるとされました。





私などは,「当然考慮できるのでは」と思ったりもしたのですが,最高裁は控訴審が仮執行による明渡が完了した事実を考慮することを否定しました。どうも,大審院以来からの一貫した考え方のようです。





仮執行宣言による強制執行はあくまでも仮のものであるからというのが理由ですが,実質的には訴訟手続上の問題があると思います。





先ほどの例で,仮執行による明渡の事実を理由として一審判決を取り消して賃借人を勝たせたとすると,仮執行宣言によって強制執行して満足を得た賃貸人の立場と矛盾することになってしまいます(判決主文の書き方によっては矛盾しない書き方も可能なのかもしれませんが,難しいことは私には分りません(・・。)ゞ)。

あくまでも暫定的に勝利した賃貸人によってなされた明渡という事実を考慮して,賃借人を(確定的に)勝たせるという結論を導くのは何かおかしいというところでしょうか。






なお,既に強制執行による取立てが完了してしまっている場合,裁判所のデータベースに「この判決ついては取立て完了しました」みたいな登録がされるわけではありませんが,債務名義(判決書など)に「取り立てた金額」などが記載される奥書が付けられるので,二重に執行されるなどということはある程度防げる仕組みになっています(強制執行の際には債務名義を提出します)。





ただ,裁判所の強制執行ではなく,任意に支払いを受けたりした場合には債務名義には「執行しました」という奥書がついていませんので,強制執行を申し立てられた裁判所はそのまま手続を進めてしまいますから,支払ったのに強制執行してきたという場合には請求異議などの手続で争うということになります。




なんだか話がそれましたが,頭の体操でした。











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