長野地裁松本支部平成23年3月16日の判決例です(判例時報2155号)。




原告の少年は,平成20年5月の事故当時11歳9か月でした。

被告は,昭和56年ころから柔道を始めて,高校,専門学校在学中も柔道を続け,柔道整復師をしながら,指導者として柔道教室も開いていました。実業団柔道大会二段の部で優勝するほどの経験者でした。




少年は,10歳のときに本件柔道教室に入り,本件当時4級でしたが,運動神経が良いとはいえず,体育が苦手で器用とはいえないものの熱心に練習に取り組んでいたということです。ただ,受け身を取れるようにはなっていたが,本件でかけられた片襟の体落しの練習をしたことはなかったということです。




本件では,当日午後7次30分頃から練習に入り,午後9次10分頃の乱取りの最終稽古の段階で,被告が少年に対して片襟の体落しで投げたところ,目の焦点がおかしくなるなど,少年の調子がおかしくなり,結局,救急車で搬送され,急性硬膜下血腫と診断され,長期にわたってのリハビリが必要となり,日常生活のすべてにわたり介助が必要な状況となってしまいました。




少年と少年の両親は,柔道教室を主宰し少年に技をかけた指導者個人,また,柔道教室が加盟していた地区体育協会,地元自治体を相手取って損害賠償を求めて提訴し,裁判所は指導者個人に対してのみ責任を認めて,少年については約2億3250万円,少年の両親については各550万円の損害賠償,慰謝料の支払いを命じました。





少年の体力や技能を十分に把握して,受け身を取りやすいようにゆっくりと投げるなど配慮すべきであったのに,練習最後の段階で疲労が蓄積しているにもかかわらず,これまで練習をしたこともない片襟の体落しという投げ技を仕掛け,相当な勢いで投げたために本件事故が起こったとしています。





なお,本件で,片襟の体落しで投げられた際,少年は頭部そのものを畳に打ち付けたということはなかったようで,そのため,指導者側は,体落しと急性硬膜下血腫との間に相当因果関係がないという反論をしました。

しかし,裁判所は,急性硬膜下血腫は頭部への直接的な打撃がなくとも回転加速度により脳表と脳実質のずれが生じて脳表につながる架橋静脈が破裂することによっても起こることがあるとし,本件では,片襟落しをかけられる前には少年には変わった様子は見られなかったことなどから,片襟落しをかけられたことによって急性硬膜下血腫が生じたと認定されました。




何とも痛ましい事故で,子どもの健やかな成長を願って通わせた柔道教室でこのような事故が起こってしまったことについて心が痛みます。




なお,本件は控訴後,控訴審で和解が成立しているようです。







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