商品先物などの複雑な金融商品については,一般の人が誰でも気軽にできる取引というわけではなく,投機に近いものがあります。そこで,顧客が勧誘した仲介会社などを相手取って,そのような商品を勧めて損害を被ったことについて責任を追及し,損害賠償請求するということが多く行われています。




判例時報2154号で紹介された名古屋地裁平成24年4月11日の判決例もそのような事例ですが,比較的特徴的なのは,このような事例は多くの場合高齢者が被害を受けているケース多いのですが,本件の原告は昭和48年生まれで取引当時34歳でした。




判決の認定によると,原告はスーパーの店長をしていて,独身で父親と同居しており,年収約600万円でした。資産としては,預貯金が約150万円あるほかは,本件被告となった仲介会社以外の先物仲介会社から返還を受けられる見込みの証拠金が約200万円あっただけということです(ここからわかるように,原告は,本件の前年頃から,既に別の先物仲介会社による先物取引をしていたという経験がありました。ただ,その取引金額としては少額のものであったようです)。





原告は,被告会社の従業員から勧誘を受けて,平成20年2月5日から2月22日までのわずか20日間ですが,商品先物取引を行い,約1090万円の損失を出してしまいました。





原告は,先物取引の勧誘に当たり被告会社の従業員から「安全な取引です」とか「金と白金は同じような値動きをするので追加の証拠金は発生しない」などの断定的判断の提供があったとか,取引中も無断売買が行われて損失が拡大したなどの主張をしましたが(この種の訴訟では原告側からよくなされる主張です),裁判所は証拠不十分としてこの2点については認めませんでした。

このような認定がされることもよくあることであり,勧誘に当たって,仲介会社もボロが残るようなことはしませんので,勧誘時に不当な言動があったとか主張してもなかなか認められません。



結局,「言った」「言わない」の水掛け論ではなく,客観的に明らかな状況から,被告会社らの不法行為が認められるかどうかにかかっていることになります。

本件で,原告は,口座開設の申込書に「流動資産3000万円」と記載して提出していたのですが,原告の職業や年収からそれだけの流動資産を保有しているということは疑ってしかるべきであること,また,同じく口座開設申込書には,原告の商品先物取引の投資経験として「1年」と記載されていましたが,実際には3か月にも満たないものでしたが,このような記載を原告が積極的にする必要はなく,被告会社従業員に「取引経験が長い方が規模の大きな取引ができる」と説明された可能性があることなど,勧誘時の不適切な状況が認定されています。





さらに,取引開始後,証拠金として201万円を持参した際,原告はすべて1000円札で持参したようなのですが,これについて裁判所は原告がスーパーの店長をしていることからすれば店の売上金や釣り銭等の一時流用も想定できるのであって,被告会社従業員としては原告がまとまった流動資産を保有していないことに気付くべきであったとしています。






また,本件で原告が同一日に「直し」「途転」(ドテン)「日計り」「両建て」といった
経済合理性のない取引を行っていることから,被告会社らによる手数料稼ぎの目的が推認できるとしています。

なお,先物などの損害賠償請求訴訟では,取引履歴からこのような主張をすることはとてもよく行われていて,実際に,取引状況の分析というのが大変重要な作業になっています。





また,被告会社は,日本商品先物取引協会や中部産業局長などから不適切な取引があったということを指摘されていたり,日弁連の白書でも苦情や紛争について指摘されているなどもしていました。




上記のような事情から,裁判所は,被告会社,代表取締役,取締役について,約839万円を連帯して支払うように命じました。なお,原告にも3割の落ち度があったとして過失相殺がされた結果の金額です。





なお,本件では,原告は契約前に「受託業務管理規則の重要なポイント」「商品先物取引の重要のポイント」「相場が逆に動いたとき」等の資料の説明を受けてこれらの署名に署名押印していたり,取引中も,インターネットでのアンケートで「値動きの確認は毎日確認している」と回答したり,「取引の判断が難しいことなど担当者から十分に説明を受けて理解し,今後,私の責任で取引を行うことがあります」という申出書を提出していたりしました。

実際には,どこまで理解していたのかは眉唾物でしょうが,実際に,このような業者による「アリバイ作り」の書面というのはたくさん出てくることがあり,そのような書面が出てきたとしても諦めないことが必要ですね。




本件は控訴されています。





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