一般民事を取り扱う弁護士であれば騒音をめぐるトラブルの相談というのも何回かは経験しているはずです。




相談の内容というのは,階上の住人の足音がうるさい,隣人の話し声や音楽,テレビの音が気になって眠れないといった個人の住居についてのものから,工場などの施設や工事現場などから出される騒音といったものまで様々です。




ただ,弁護士としては,なかなか法的解決に向けたアドバイスがしにくい分野でもあります。音の問題というのは個人差も大きいうえに,実際にどんな音がするのか録音や録画してもらうなどしてもらったとしても、どうしても証拠化しにくかったり,また,賃貸住居の場合には弁護士費用を支払って依頼するくらいならさっさと引っ越した方が賢明であったりなどするからです。




近隣紛争という面もあるので,お互い様というところもあったりしますので,せいぜい,民事調停(お話合い)を勧めたり,工事現場であれば自治体に間に入ってもらうことを勧めたりするのですが,たいてい,そのような手段はとり終わっていて、どうしたものかということで弁護士のところに相談に来るというケースが多いものです(ちなみに,下記の事例でも民事調停がされていますが不調に終わっています)。





判例時報2153号で紹介されたさいたま地裁熊谷支部平成24年2月20日の判決は,第一種住宅施設に建てられたスポーツセンター(主にフットサルに利用されていたようです)と付近住民6名の紛争で,付近住民が,フットサルに使用される際の掛け声や歓声,拍手,ホイッスルの音,シューズが床に擦れるキュッという音,ボールを蹴る音やボールが壁や柱に当たる音といった騒音で迷惑を被っているということで,施設からの騒音を55デシベルを超えないようにすることやと慰謝料の支払いなどを求めて提訴したものです。




判決によると,騒音に関する法規制としては環境省の環境基準や告示がありそれによると第一種居住地域での昼間(といっても午前6時から午後10時までのことです)の基準としては55デジベル以下とされています。

また,騒音防止法という法律がありますが,これは適用対象が工場などの施設に限定されていて,本施設は規制対象外でした。





そして,本施設からの騒音がどの程度であるか,原告側が専門業者に調べてもらった報告によると(こういった手間や費用が騒音問題についての解決の難問であったりします。本件ではきちんと調査したようです),住民らの自宅敷地での音レベルとしては,58デジベル程度であったということです。




これがどの程度の音かというと,「静かな教室・事務所」の騒音レベルが50デジベル程度,「デパートの中・普通の会話」が60デジベル程度で,60デジベル未満が好ましい音レベルという資料も判決中で引用されています。





スポーツ施設の壁と一番近い住民の自宅の壁の距離は約47.5センチくらいでしたが,判決は,施設から出される音は約30分間で数回程度にとどまり,プレイグループやプレイエリアによって大きさが異なることや,環境基準に照らしてもせいぜい2~3デジベルを上回る程度のものであることから,日常生活に重大な影響を及ぼすものとはいえないと判断しました。

また,本件では付近住民約200名以上の問題解決を求める署名が提出されていましたが,施設から遠く離れた住民の署名がある一方で,施設に近い住民からの署名がなかったり署名を拒否している住民もいるなど,施設からの騒音で日常的に被害を受けていたとは認めがたいとしました。





また,施設側が相応の費用支出をして一定の防音対策をとってきた経緯についても,住民の受忍限度の判断に際しては考慮されるべきだとしています。





なお,スポーツ施設ができる前からそこに居住していた住民がおり先住性が認められるが,本件施設が日系ブラジル人の地位向上などのために役立っていることも踏まえると単なる営利施設とはいえず,先住性があるからといって優越しないとしました。





本件は,住民側の訴えはすべて棄却されて確定しています。






音の問題は難しいですね。

継続していなかったとして、瞬間的に出る音であっても,それがいつ出るかと思うと気になってイライラしてしまうことはありますから,本件の住民を「気にし過ぎだ」と非難することも酷であると思います。

私も昔住んでいたアパートの隣人がうるさくてたまらなかったこともありますが,良い解決手段というものはないのは今も変わっていないというのが現状です。







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