判例時報2153号で紹介された名古屋地裁平成24年4月13日の裁判例です。




本件で宗教団体及びその関係者(院主,僧侶,教師などと呼ばれています)を訴えたのは昭和35年生まれの女性です。女性は,家庭の悩みや健康問題を抱えていましたが,平成14年,たまたまテレビで浄霊の様子を放映していたのを見て,宗教団体R水院という宗教団体に悩み相談の予約を入れます。テレビというのも罪作りですね。



女性は,「様々な不幸は先祖の一人の男性が女性に悪いことをしたから子孫に影響している」「ご先祖の霊が成仏できていない」などと言われ,その後,平成14年8月から平成20年11月までの間,女性自身や家族も含めて,相談料(一人一回3万円くらいみたいです)浄霊(一人1万円から3万円みたいです)だの守護霊パワーアップ(だいたい1万円くらいみたいです)だの多額の料金を支払います。




その期間中,女性が,宗教関係者から言われた言葉としては,概要,次のようなものが認定されています。


・小さな女の子が憑いていました。300年くらい前に亡くなった女の子のようです

・ほとんどの方には守護霊がいません。守護霊を身体に入れると一生災いからあなたを守ってくれます

・男性の未成仏霊が出てきました。子の方は首のない赤ちゃんを抱いていました。200年もの間取りついてさまよっていました

・ひどい汚れだね,そんなに一生懸命手を洗っても取れないんですか

・母方のご先祖の因縁が良くないんです

・子どもの場合地蔵様が護ってくれますが,12歳までです

・(女性の子どもには)子どもができない

・あなたのご先祖様に武士の方がいてたくさんの人を殺していますね

・失礼があったことを神仏に詫びてください。お祓いすれば済む話ではありません

・パワーアップしても守護神様が良くなりません。守護神様ではもう限界です。支配神様を入れてください

・いくら浄霊しても魂が清まらないんです




裁判所は,一般論として,宗教団体が宗教団体の協議の実践として儀式を行うように勧誘したり,献金や寄付を求めることは,信教の自由の一態様として許されるとし,これをことさらに制限したりすることは厳に慎まなければならないと述べます。




また,科学的に証明できないような事象,因果関係等を理由とするような吉凶禍福を説き,儀式等を受けることによってそうした吉凶禍福を一定程度有利に解決できるなどと信者らに説明することも,直ちに虚偽と断じたり違法と評価することもできないとします。

我々がお寺や神社でお布施したり,お守りを買ったりする行為も,科学的に証明できないような事象,因果関係等を理由とするような吉凶禍福に思いをはせているわけです。




結局のところ,近所の神社などでお守りを買ったりする行為と違法と評価される宗教的な勧誘行為をどのように線引きするのかということですが,この点つにいては,信者を徒に不安に陥れたり畏怖させたりしたうえでそのような心理状態に付け込んで行われたり,社会的地位や資産などに照らして不相当な多額の金員を支出させるなど,社会的相当性を逸脱するかどうかという点を判断基準とするべきだとしました。




そして,本件について,女性に対し上記のような言葉をもって儀式を勧め金員を供出させた行為の一部について違法性を認めて,宗教関係者らに対し総額約610万円の損害賠償を命じました。




なお,女性が返還を求めた父親死亡後の供養料,神殿新築の寄付,神棚雪駄費用などについては,一般的な宗教活動の範疇であり,勧誘行為ににも違法性が認められないとして,賠償を認めませんでした。




なお,本件は控訴されています。







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