2012年08月27日 テーマ:成年後見

介護老人保健施設での高齢者の転倒について施設に対する損害賠償請求が認められた事例

老人介護施設内での高齢者の転倒事故について,施設側の不注意が認められて,損害賠償請求が認容された事例です(東京地裁平成24年3月28日 判例時報2153号)。



本件の原告(高齢者)は事故当時78歳で,長女が保佐人に選任されていました。




原告は,自宅での介護が困難であったことから,老人介護施設に入所し,入所後約1年3か月後に転倒事故がおきました。




介護施設の医師診療記録には,原告が夜中に転倒したとかベッド脇に倒れていた,ベッドに腰掛けて「そこで転んじゃったの」と言いながらおでこをさすっていたことなど,原告が転倒を繰り返していたことが数多く記録されていました。




施設としては,家族に原告の転倒の旨を連絡し,コールマットを敷く,原告の居室を職員の目の届きやすいサービスステーションの近くにするなどの対処をしましたが,転倒を防止することはできなかったようです。




そして,転倒事故が起こる約11日前に,施設は,家族の了承も得たうえで,原告を一般棟から認知症専門棟に移動させました。




施設は,原告のベッドをサービスステーションから見通しの良好な場所に設置しました。




本件では,転倒事故そのもを施設職員は目撃しておらず,朝になって施設職員がトイレ介助した際に原告が「わたし,転んじゃったの」と述べ,原告が左足を痛がるなどしたことから,未明に原告が転倒したのではないかということになりました。なお,その夜,午前0時30分に職員の付添により最後のトイレを行い,午前1時,2時,2時30分,3時,4時,5時の職員による見回りの際には原告はベッドで就寝していたということです。5時30分に職員がトイレの付添介助をした際に前記のような原告による「転んじゃったの」という発言があったようです。




結局,原告は左大腿部の骨折と診断されました。





裁判所は,介護施設による見守りの不足(仮に見守りの空白時間に起きたとすれば空白時間帯に対応する措置の不足)について,施設側の注意義務違反を認めて,施設を運営する法人に対し約270万円の損害賠償を命じました。





施設側にとって厳しい判断だとも思うのですが,実際のベッドの配置状況などから,裁判所としては,原告が起き上がったことなどについて施設側としては気が付くべきであったという心証を持ったということなのでしょうか。




なお,本件では,施設側が原告の怪我に気づいた後適切な医療機関に転送すべき義務を怠った,施設側による原告の身体拘束に違法があったという主張もされましたが,これらについては否定されています。




なお,本件は控訴されています。







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