判例時報2145号で紹介された東京地裁平成23年10月31日の判決例です。




原告は,JALの客室乗務員として平成20年5月に1年契約の契約社員としいて雇用されました。



JALでは,契約社員については1年契約として,その後は業務適正や勤務実績,健康状態などにより,契約更新することがあるという定めとなっていました。なお,本件においては就業場所は羽田,賃金は実労働1時間につき1233円,機内サービス手当は国内線乗務1時間につき700円,国際線で900円とされていたということです。




原告は契約を1回更新されましたが,次の更新時に契約更新がされませんでした。




そこで,原告は,JALに対して契約更新しなかったことは違法であるとして雇用契約上の地位の確認と雇止め以降の賃金月額約22万円の支払い(バックペイ)を求めて提訴しました。




期間の定めのない正社員の場合には,解雇にあたって解雇権濫用の法理が適用され,解雇の有効性を厳しく判断されますが,本件では契約期間の定めのある契約社員であって,契約更新するかどうかは原則としてJALの自由のはずです。




ただ,裁判所は,JALの募集要項に「契約社員(1年間の有期雇用。但し,契約の更新は2回を限度とし,3年経過後は,本人の希望・適性・勤務実績を踏まえて,正社員の切り替えを行います)」と記載されていたことや,このような募集要項を前提に入社した契約社員は通常正社員に採用されることを期待するであろうこと,JALも労働組合との団体交渉で「よほどのことがない限り契約更新するのは当然である」と述べていたことなどから,雇用継続に対する期待は法的に保護されるべきであるとし,本件では,解雇権濫用の法理が類推適用されるとしました。





もっとも,あくまでも類推適用であるので,正社員と同一の判断基準ではなく,雇用の性質などを考慮したうえで判断されるべきであるとしています。





そして,結論としては,JALが契約期間中に原告に対し行った育成プログラムにおいて,原告が客室乗務員としての適性を欠くと判断したことについて理由があると認め本件の原告に対する更新拒否は適法であると判断しています。




当事者双方で争いのない事実やJALが裁判所に提出した証拠などによると,JALの原告に対する評価として「集中力が続かない」「表情が維持できない」「新人の中で最も気がかりである」「本人にやる気があるのは分っているが他のクルーに負担がかかっている」などの評価が下されていました。






なお,原告の親しい同期の中には1年目で契約更新がされなかった人もいたということです。





原告は2年目の契約更新はされたものの,契約更改に当たっては総合評価D(標準より劣る)との判断になっていました。





そして,2年目においてもJAL側の原告に対する評価は変わることなく,契約更新拒否となったということであり,裁判所とは,客室乗務員の緊急保安員として乗客の安全に重大な責任を負う立場であることも考慮して,JALのかかる判断は不合理であるとはいえないとしています。





ただ,裁判所は,2年目の途中にJAL側から原告に対し行われた退職勧奨については一部違法なものがあったとして,退職勧奨を行った原告の上司とJALに対し連帯して20万円の支払いをするように命じました。





退職勧奨自体は社会通念上相当と認められる範囲を逸脱しない限り違法であるとはいえないが,本件では,原告が自主退職しないという意思表示をした後に,JAL側から「懲戒免職になった方が良いのか」「いつまでしがみつくつもりなのかなっていうところ」「辞めて頂くのが筋です」といった退職勧奨がされたと認定され,この点が違法と判断されています。




一件華やかなCAの世界も名な大変なようです。




なお,本件は控訴されています。







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