弁護人からの求刑

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事案に争いのない刑事裁判についてのお話しですが,検察官からの求刑というのはよく聞くと思います。これに対し、死刑事件において検察官からの死刑求刑に対して無期懲役を求めるなど特殊な例を除くと弁護人からの科刑意見というのはあまり聞かないと思います。




一般的な事件(覚せい剤事件とか窃盗事件)では「裁判所においては,出来る限り寛大な処分にして頂くよう望みます」とかせいぜい「執行猶予を付けて頂きたく望みます」という程度でお茶を濁すというのがふつうであったと思います。




ただ,最近では,裁判員裁判においては,裁判員に弁護側の意見も分りやすく提示するという観点から弁護側からも科刑についての具体的な意見を述べるべきだという考え方があり,そのような例も多いと聞きます。




もっとも,裁判員裁判ではない,普通の事件では弁護人の最終弁論での意見については前記したような「寛大な処分・・」系がまだまだ普通ではないかと思います。




なぜかというと,弁護人としては,事件について争いがなくても被告人に対して刑を科すような意見を述べることは立場上,心理的にしにくいということがあるうえ(古い事例で,弁護人から死刑求刑してしまって,懲戒処分や慰謝料請求が認められたということもあります。これはさすがに特殊な事例でしょうが,下手に弁護人が科刑意見を述べて被告人から悶着を付けられたくないという心理があります。),そもそも,求刑について自信を持って弁論できるだけの資料やデータの蓄積がないということもあります。




せいぜい「執行猶予を付けてください」というところですが,たまに,法律上,執行猶予が付けられないのに「執行猶予に付すべきである」という弁論をしてしまい,裁判所からたしなめられることがあるというのは,ウソか本当か知りませんが,弁護士にはよく知られたハナシです。ちなみに,執行猶予がつくかどうかというのは(刑法25条),前科の確定時期や犯罪行為の時期が錯綜していたりすると結構混乱しますので確認が必要です。





ただ,たまに弁護人としてもう少し踏み込んだ科刑についての意見を述べることもあります。





一つは,罰金刑の選択が可能である場合,検察官の体刑(懲役刑・禁錮刑)求刑に対して,罰金を選択すべきであると意見することがあります。ただ,なかなか判決で認められるかというと,正直難しいというのが実感です。




また,以前,検察官の求刑が懲役4年になりそうな事案があった際に,被告人と相談したうえで,「せめて3年間で仮出獄ができるような被告人が施設内で希望をもって更生が図れる刑期にしてほしい」ということを求めたことがあります。




その件では,検察官の求刑は予想通り4年で,当方が3年程度を主張しましたので,刑期についての争点が明確になりました。

判決は3年ズバリではありませんでしたが,仮出獄を考えれば,被告人が希望をもって施設で過ごせる程度の刑期になりました。




ちなみに,前科の積み重ねがある場合には,検察官の求刑はある程度予想することはでき,その件では予想が当たったのですが,検察官の求刑はベテラン弁護士であっても難しく,被告人から予想を聞かれても答えるべきではないというのが一応のセオリーです(余計な期待や絶望を与えないようにするため)。




やり方は様々でどれか正しいということはないと思いますが,臨機応変にということですね。






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