金融・商事判例1396号に紹介された神戸地裁姫路支部平成24年6月29日の判決例です。




事案は単純で,某信用金庫が主債務者に対し金員元金合計550万円を貸し付けるに当たり,県の信用保証協会が信用保証をしました。

その後,支払いが滞り,某信金は信用保証協会に対して保証債務の履行請求をしましたが,当該主債務者が山口組系の暴力団組長であったことが判明したため,信用保証協会は,保証契約の錯誤無効を主張して保証債務の履行を拒んだというものです。




争点は,「主債務者が反社会勢力に属さない」ということは,保証契約を無効ならしめる錯誤(民法95条)になるかということです。なお,某信金と信用保証協会との間の契約自体に,「主債務者が反社会勢力に属さないこと」を契約の条件とするものと明記されていたわけではなく信用保証協会が「主債務者が反社会勢力に属さない」ので保証したのかという動機の錯誤という問題になりました。





動機の錯誤は原則として明示されない限りは契約を無効ならしめる錯誤にはなりませんが,裁判所は,信用保証協会が配布したリーフレットや反社会的勢力排除の取り組みを行っていたという事実なども踏まえて,そのような動機は契約の当然の前提であったか某信金に黙示に表示されていたとして,本件の動機の錯誤が契約を無効ならしめるものであることを認めました。





そして,「主債務者が反社会勢力に属さないこと」は契約を無効とするほどのものであるかどうか(要素の錯誤といえるか)についても,肯定しました。




なお,契約を無効ならしめる要素の錯誤があったとしても,錯誤に陥った側に重過失があると錯誤主張ができませんが(民法95条但し書き),某信金側では,信用保証協会は主債務者が反社会的勢力であると知らなかったことについて重過失があると反論しましたが,某信金側でも審査したうえで主債務者が反社会的勢力であることを見抜けなかったのだから,信用保証協会に重過失はないとしました。





また,この件で,某信金側は,信用保証協会の信義則違反も主張しました。

これは,もともと,主債務者は某信金ではなく,信用保証協会に対して直接信用保証を申し込み,信用保証協会が斡旋保証事案として某信金を紹介したという流れでした。




確かに,某信金側としては,もともと自分の顧客でもなく,信用保証協会が紹介してきた顧客にカネを貸したら取りはぐれたということですから,「それはないよ」というところでしょう。




しかし,裁判所は,最初は紹介であったとしても,その後は某信金も自ら主債務者の属性を調査して融資したのであるから,信義則違反とは言えないと判断しました。




結果として,信用保証協会の主張が認められ,某信金からの信用保証債務の履行請求は棄却されました。




なお,本件は控訴されています。






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