薬物(覚せい剤や大麻など)の自己使用や所持という刑事事件は,否認しているとか被疑者(被告人)がどうしようもないヤクザであるとか特異な人格者であるとかの特別の事情のない限り,語弊を恐れず言えば,簡単な部類の事件になります。




被害者がいない事件なので示談交渉で精神的に疲れることもないし,本人の親族や雇用先から情状面で有利な証言などをしてもらって,本人にも反省の弁を述べてもらって・・・という感じで淡々と進みます。既に薬物前科が何件もあって,親族などからも見放されているという場合,被告人本人に対する質問のみで終わってしまうということもままあります。




そういうわけで,国選事件などでは,薬物の自己使用や所持というのは,弁護士にとって人気がある事件の一つです。




昔ですが,薬物の自己使用事件で,被告人と面会した際,「何とか懲役1年4か月くらいにならないか」というリクエストを受けたことがありました。



その被告人は再犯で実刑確実で,本人も刑務所ゆきは覚悟していましたが,

   (・∀・)「心もち,短い刑期がいいナ」

という希望でした。





裁判所まで出てきてくれる身寄りなどもなく,正直困りましたが,一つ試してみようと思って,「薬物は止められる」というワークブックをコピーして差入れてみました。




この本は矯正保護協会という,法務省の外郭団体のようなところが出している出版物で,200頁くらいある大きめの本ですが,表紙から最後の奥書まですべてコピーして差入れました。




この本は,薬物について考えて止められるようにするという目的から作れたもので,途中途中でクイズのような書き込みができる「ワークブック」になっています。




被告人の作業が終わった時点で宅下げしてもらい,書き込みのあるページもないページもすべてコピーし,分厚い200頁くらいのものを証拠提出しました。




検察官が不同意にしてくるかもしれないと思い(検察官が不同意にすると証拠として提出できなくなります),不同意にしてきたら,3時間くらい被告人質問を申請するとか3期日被告人質問期日を求めようかとかいろいろ考えていましたが,幸い,同意してくれました。




このワークブックだけのおかげというわけではありませんでしょうが,判決は見事に懲役1年4か月でした(求刑は懲役2年 もともとの求刑が重かったような気もしますが)。





もともとこの被告人は薬物から抜け出したいという想いを持っていた人でしたが,判決の最後に「あなたの気持ちはこのワークブックに取り組んだことでよく分りました」と裁判長に2回くらい言ってもらえて嬉しかったです。




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