金融・商事判例1394号で紹介された裁判例です(甲府地裁平成23年11月8日)。



事案の概要は,ある銀行が取引先のA社に対して手形貸付等の方法で融資をしていましたが,A社が融資の返済原資となるべき取引先からの入金を返済に充てずに従業員への給料の支払いなどに回したとして,預金の支払い停止措置(口座凍結)を取ったところ,A社が銀行に対して,口座凍結によって従業員を退職させなければならなくなったために発生した退職金,支払いのために在庫を安価に処分せざるを得くなくなった分の損害金,代表者が資金繰りに追われて通常の営業活動ができなかったことによって生じた損害金など,合計約8億円の支払いを求めたというものです。




手形貸し付けが行われたのは平成20年5月から6月にかけてでしたが,この時期,銀行としてはA社の収益,財務状況について良好なものとして認識していましたが,実態は債務超過であったようであり,7月に入って,実態を示した試算表や再建計画書の提出といった話が持ち上がり,8月には銀行としてA社の債務超過を認識したと認定されています。




銀行とA社との間で折衝が続けられましたが,期限までに再建計画書が提出されなかったことや,追加担保が提供されなかったこと,また,銀行から特定の売掛先からの入金については手形貸付の返済に宛てるように求められたがA社はこれを運転資金として使用したことなどから,9月22日に口座の凍結がされました。




銀行側の口座凍結の根拠としては,銀行取引約定中の「債権保全を必要とする相当の理由が生じたときには,A社は期限の利益を失って一括弁済しなければならない」とする規定などでした。




手形貸し付けなどの融資に際して,特定の取引先からの売掛金などをその融資の返済を充てるという約束のことを「受注見合い」というそうですが,裁判所は,銀行とA社との間に「受注見合い」の約束があったと認定し,さらに,実態は債務超過であったことや再建計画の不提出などの前記の事情も踏まえて,銀行による本件口座凍結には違法性はないと判断しています。




銀行による口座凍結についてはそれなりに争われているようですが,一般論としては銀行による口座凍結にその必要性を認めて,銀行の責任を否定する裁判例の方が多いようです。




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