東日本大震災により,マンション6階居室の電気温水器の排水管に亀裂が生じ,漏水が階下の居室に及ぶ漏水事故が起きた案件で,階下の居室居住者が,6階の居室の区分所有者に対しては民法717条1項に基づく工作物責任に基づいて,また,6階の居住者が損保会社との間で締結していたしていた個人財産総合保険契約の個人賠償責任特約に基づいて損保会社に対して,それぞれ被った損害の賠償を求めたという事案です(判例時報2147号 東京高裁平成24年3月19日)。




一審の東京地裁は,6階の居住者に対しては民法717条1項に基づいて合計114万円の賠償を命じ,損保会社に対しても6階居住者の支払い義務が確定したときに支払うべきとする判決をしました。




損保会社は,当該契約には「地震」によって生じた損害については保険金を支払わないとする地震免責条項が付いていたとして,免責を主張しましたが,一審判決は,「地震」の意味を「社会一般ないし当該保険契約者において通常の範囲を超えて大規模な損害が一度に発生し,保険契約者の拠出した保険料による危険の分散負担が困難となるような巨大地震」のことを言うとして限定的に解釈しました。




この解釈によっても,あの東日本大震災は「地震」に該当するようにも思われますが,本件マンションと同様のマンションであればこのマンション地域で観測された震度5程度の揺れでは漏水事故は発生しないはずであり,現に漏水事故が生じたのはこの6階居住者の部分のみであって,通常発生する漏水事故と変わらないから,保険金が支払われるべきだと判断して地震免責条項の適用を認めませんでした





しかし,保険会社からの控訴を受けた東京高裁は「地震」にはそのような限定解釈を施すべきではなく,地震の強度や規模は関係なく地震と相当因果関係にある損害についてはすべて地震免責条項によって賠償の対象とならないと判断しました。





論拠としては,条項の文言上単に「地震」とのみ記載されていることや,いちいち地震の強度や震度,建物の耐震性などを考慮して個別的に地震免責条項の適否を判断していたのでは事実認定をめぐる争いが多発して保険実務が混乱するということなどを挙げています。




高裁の判断基準によると,震度1程度の揺れであっても,その地震と相当因果関係のある損害については免責対象になるということになります。

もっと,微弱な地震の場合には,地震との相当因果関係が否定されることも多いと思いますが。でも,そうすると,「因果関係」という事実認定を巡っては争いが多発することになりそうです。




また,本件では,そもそも漏水事故の被害をこうむった居住者は,損保会社に対して直接の保険金請求をすることはできないとしてこの点からも損保会社に対する請求が認められないという判断もしています。




なお,本件は確定しています。









■ランキングに参加中です。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村


■弁護士江木大輔の法務ページに移動します。