競売で買い受けた不動産に何らかの瑕疵があった場合に,買受人が,支払った代金から配当を受けた債権者に対して不当利得として責任追及するというのは割とよくある類型です。



判例時報2145号で紹介された名古屋高裁平成23年2月17日もそのような事例です。




この事例では競売で買い受けた代金約1670万円の建物付き土地に,愛知県建築基準条例による道路幅の規制があったため,当該土地には新たに建物を建てることができなかったとして,代金から配当を受けた信用保証協会などに対して,代金から規制を前提とした本来の価格を差し引いた分については不当利得であるとして減額分の代金の返還を求めて訴えたというものです。




強制競売で買い受けた物に瑕疵(キズ)があった場合については民法でいくつか規定がありますが,民法570条の瑕疵担保責任は強制競売の場合には適用されないとされています。




ですので,法令上の規制が民法570条の瑕疵であるとすると,強制競売の買受人は保護を受けられなくなってしまいます。




この点について,買受人の保護を図るため,多くの裁判例は法令上の規制は民法570条の「物の瑕疵」(雨漏りなど物そのものにキズがある場合)ではなく,対象物件に利用を制約する権利や担保権など付いている場合について規定した民法566条1項を類推適用するとしています。




法令上の規制の事案ではありませんが,強制競売で買い受けた建物に借地権が付いていると思って買い受けたら実は借地権が存在していなかったという事例で民法566条1項の類推適用を認めた最高裁の判決があります(平成8年1月26日)。




なお,本判決もそのような考え方に立って買受人の訴えを認めて合計約900万円の返還請求を認めています。なお,本判決では,現在の民事執行法が施行された昭和55年10月1日の前後で分けて考えるべきだとしています。現在の民事執行法では,執行官による現況調査制度が導入され,評価書や物件明細書などの情報が公開され買受人はこれらの情報を信頼して買い受けるようになっているが,民事執行法より前の時期においては自己責任であったからという理由です。




なお,強制競売による物件の取得も買受人と債務者との間の売買契約になり,買受人が法令上の規制があるなどの問題を知ってから1年以内に債務者に対して契約解除の意思表示をしなければなりませんので注意が必要です(民法566条3項)。




また,買受人が代金の減額を請求をする場合,第一次的にには売主である債務者に責任がありますが,債務者が無資力である場合に債権者が返還請求を受けるということになっていますが(民法568条2項),債務者にお金がなくて強制競売されているわけですから,ほとんどの場合,債権者相手に代金の減額分の返還を求めてゆくということになります。







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