賃貸借契約では,賃料不払いがあった場合に催告なしで解除できるという無催告解除特約が付いていることがあります。

この特約に基づく解除の有効性が争われ,また,同時に,破産や競売があった場合には賃貸借契約を解除できるという特約に基づく解除の有効性についても争われた裁判例です(東京地裁平成24年1月13日 判例時報2146号)。



事実の経過としては,もともと,当該土地を賃借りしていた借地人が破産してしまったのですが,破産管財人はしばらくの間借地料を支払っていましたが,任意売却をあきらめて,地代の支払いをストップすることとしました。




借地権付きの建物を担保に取っていた金融機関(債権回収会社)としては,そのまま地代不払いになると契約が解除されてしまい,借地権が無価値となってしまいますので(判決の認定では本件借地権付き建物の価値として競売評価額で5667万円であったとされています),借地料の代払い許可を得たうえで,借地料の支払いを継続することとしました。




ところが,破産管財人に問い合わせたり,地主に地代の支払いをどうしたらよいかと問い合わせている間に,借地料2か月分が期限経過となってしまったことから,地主側は賃貸借契約の解除通知を出しました。本件の賃貸借契約には,借地料2か月分を滞納した場合には支払いの催告をすることなく契約解除できるという特約が付いており,地主は,建物の新所有者に対し,この特約に基づいて解除したという論理です。




その後,本件建物は競落されて,新所有者が約4533万円で買い受けました。どこまで情報が開示されていたのかよく分りませんが,競売の細かいところはよく分らないのですが,契約解除通知が打たれている係争物件に約4533万円投じるというのは怖いですね。




その後,地主から,建物新所有者に対して,既に賃貸借契約は解除されているから建物を取り壊して土地を明け渡せという訴訟が提起されました。




賃貸借契約に無催告解除特約が付されている場合の特約の有効性については最高裁の判例があり,「催告しなくても不合理であると認められない事情が存する場合初めて催告なしで解除できる」と限定解釈されています。特約自体は有効だが,解除が有効かどうかは個別の事情に応じて判断するということです。




本件では,借地権の価値に比して未払いの借地料が僅少であること(2か月分約27万円),未払いの期間も1か月半から半月程度短いことや,債権回収会社の担当者が借地料の支払い方法について地主側にきちんと問い合わせていたという事情があったことといった事情から,無催告解除は無効であるとしました。




なお,地主側からは,元の借地権者は破産してしまっているので支払いの催告をしても意味がないという反論もされましたが,借地権者は金融機関に対して担保保持義務を負っており支払いの催告がされたことで金融機関が代払いの機会を確保できることもあり得るといったことなどから,支払いの催告をする実益がないとはいえないとしてこの反論を退けています。





また,本件賃貸借契約には,破産競売を理由とする契約解除の特約も付いていましたが,この点についても,「事情の如何を問わずに解除できるという特約は借地法に反し無効」とする最高裁の判例があり,本件ではこの特約に基づく解除についても無効としました。




なお,本件は確定しています。





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