ネット上に自分のことが書き込みがされたということで,記事の削除を求めたい,名誉棄損の損害賠償請求したいという相談は実によくあります。現実問題として,弁護士費用などのコストをかけてどこまで法的措置を取るかとなると,そこまでの段階に進むというのはそれほど多くはありませんが。




判例時報2147号で紹介された最高裁の判例で,読売新聞(とその法務室や販売局の社員)が,フリーのジャーナリストが自分のサイトに書き込んだ記事について,名誉棄損であるとして訴えたという事例です。




本件のフリージャーナリストは,新聞社の新聞販売店への対応や新聞業界の体質を批判的に報道し,自ら開設したサイトに記事を掲載していました。




その中で,福岡県内の読売新聞の販売店で実際にあったこととして,読売新聞の法務室や販売局の担当社員らが,販売店を訪問し,明日からの取引中止を通告したとし,さらに,次のような記事を掲載しました。



①「そのうえで明日の新聞に入れるための折り込みチラシ類を持ち去った」(第一文)


②「これは窃盗に該当し,刑事告訴の対象になる」(第二文)




福岡高裁は,新聞記事の内容が人の社会的評価を低下させるかどうかは一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきであるとしつつ,上記の第一文のみが名誉棄損が成立するための要件となる「事実の摘示」であって,第二文は単なる法的見解の表明であるとして,読売新聞側の名誉棄損であるという主張を退けました。




いわば,第一文と第二文を厳密に分けたうえで,「窃盗に該当する」という第二文については名誉棄損に該当する要件(事実の摘示)には当たらないということとしたわけです。なお,第一文は事実の摘示ですが,これだけでは,名誉棄損にはならないという判断を含んでいるものと思います。




しかし,最高裁は,第一文と第二文はあいまって,販売店を訪問した読売新聞の社員らが販売店の所長の了解なく折り込みチラシ等を持ち去ったという「事実」を「摘示」しているものと理解すべきであるとし,そのような記事が読売新聞側の社会的評価を低下させるものであるということは明らかであるとしました。




なお,裁判所の認定では,折り込みチラシを持ち帰ったことについては販売所の所長の同意があったものと認定されていて,そもそも了解なく持ち去ったのは真実ではなく,フリージャーナリストが記事を真実であると誤信したことについて相当な理由があったとはいえないとも指摘しています。






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