家賃滞納は家主にとって悩みの種ですが,きちんとした法的手続をとって明渡を求めずに,実力行使で賃借人を追い出すことは違法な「自力救済」に当たり損害賠償を命じられることがあります。




この点について判断したのが判例時報2145号で紹介された大阪高裁の事例です。



この件では,賃借人は家賃等月額3万5000円の一室を借りていました。




部屋の所有者ははAという個人でしたが,管理をBという会社に委託していました。なお,管理会社といっても,その取締役はAの子です。




賃借人が家賃を3か月分ほど滞納したため,B社は「期限までに支払わないと鍵をロックして解約します」との書面を送りました。賃借人は失業してしまったため家賃をためてしまったのですが,なかなか就職口が見つからず,B社からの書面を受け取っても連絡せず,B社が賃借人に電話をかけても出ないということが続いたようです。




そして,B社が設定した賃料支払期限を過ぎても支払われなかったため,Aの子でありB社の取締役であったCは,業者を連れて,賃借人の部屋を訪ね,合い鍵を使用して部屋の中に入ります。




部屋の中に入ると,賃借人が在室しており,賃借人から賃貸借の継続を頼まれますが,Cはこれに応じず,業者に指示して家財道具を運び出させて,賃借人を部屋から追い出して鍵を交換してしまいます。



運び出された家財道具は,建物1階にある倉庫まで乱暴に運ばれて,劣悪な環境の下で置かれていたと認定されています。




この件で,一審は,B社については不法行為責任を認めましたが,家主であるAについては責任を否定しました。




しかし,高裁は,AについてもB社及びCの行為について包括的に承諾を与えていたとして,A,B社ともに責任を認めました。




高裁で認められた損害賠償の内容は,使用が不可能になったと認定された家財道具70万円分(一審では4万3000円)の損害賠償,法的な手続に則らずに実力行使で賃借りを追い出したことに対する慰謝料として80万円(一審では15万円),弁護士費用15万円(一審では1万9300円)の合計165万円です。




なお,AやB社は,追い出しにあたって,賃借人との間で賃貸借契約の合意解除がせされたと主張しましたが,その晩からの寝泊りするところもないのにそのような合意をするはずがないとして退けられています。




また,Aからは滞納賃料の支払いについて反訴がされていましたが,これについては支払いが認められました。賃借人からは「権利の濫用」という反論がされましたが,Aらの不法行為と滞納賃料の問題は別だということになりました。




家主さんからの相談で,「裁判を起こさずに勝手に荷物を運び出してしまってよいか」というような相談は,実は無いわけではありません。特に,賃借人がいなくなってしまったり,または,放置車両のケースです。




しかし,そのようなケースであっても,後後のことを考えると,きちんと法的手続に沿って明渡,撤去を求めなければならないということになります。




なお,本件は上告,上告受理の申立がされているようです。









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