判例時報2287号で紹介された事例です(岐阜地裁平成27年10月9日決定)。


これは以前報道があった件の続きであり、後見監督を担当していた裁判官が、後見人であった弁護士に対し、後見人として回収しきれていなかった不足分を支払うように求めたことが公務員職権濫用罪に該当するとして、弁護士が裁判官を被疑者として刑事告訴し、不起訴となったことから、強制起訴するように求めた(付審判請求)という事案の決定になります。


(裁判官、弁護士に「払わなければ懲戒申し立て」 )
http://ameblo.jp/egidaisuke/entry-11909833185.html



本件は、もともと、後見人として選任された弁護士が本人から通帳などを預からずにいたところ、本人が知人に対してお金を貸し付けてしまったことから問題となり、その際は、貸し付けた知人から一部を回収したうえで残額は分割で弁済するという念書を取り交わし、弁護士後見人は辞任してNPO法人に交代するということで決着していたところ、本人の長女が、事件記録を閲覧する中でこの処理を問題視し、裁判所で大声を上げるなどして対応を迫るようになりました。


そして、後見監督を担当していた裁判官が、後見人を辞任した弁護士を裁判所に呼び出して、本人の長女も利害関係人して参加させたうえで、回収不足分を弁護士に支払うように求める過程で、「懲戒になる」といった発言をしながら、支払いを迫ったというものです。
経験的にはあまり対対応です。
通常は、裁判所が前面に立って処理をするようなことはなく、新しく選任された後見人に対し指示をしたり、同意したりしながら、新後見人を通じて決着を図っていくというのが普通です。


法律論的には、辞任した元の後見人に対しては裁判所の監督権限はないはずであるので、「職務」に関して「権限」を乱用したと言えるのかということが一つの争点となりますが、本件では、辞任した元の後見人に対してであっても、その責任について和解を調整することは一般的な職務権限に含まれ得るとされています。


そして、本件で、その権限はを濫用したかどうかですが、本件で中立的とは言い難い態様で、過度に本人の長女に肩入れしていたとし、「懲戒」の文言をちらつかせて和解金の支払いを促した行為については、裁量を逸脱した濫用行為になる可能性もあるとまで断じています。


ただ、公務員職権濫用罪が成立するためには「義務のないことを行わせた」という要件が必要ですが(未遂は不処罰)、裁判官からの促しによって弁護士がお金を支払ったことはなかったことから、この要件を欠くとして、公務員職権濫用罪は成立しないとして強制起訴は認めないという結論となっています。




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