○○職人とつく職種のうち、これほど魅力的なものは無い、と断言できるのが和菓子職人です。

頭のてっぺんから爪の先まで清らかで、神経の行き届いた美しい手指から生み出される魔法のごとき生菓子は、欧州の洋菓子にも決して劣らぬ美の立体造形。
四季の感性と花鳥風月のビジュアル美を一握りの菓子に閉じ込める技術は、製菓学校で習えるものではなく、師から弟子へと盗まれる度に進化したものと思われます。

しかし世はケーキブーム、チョコブーム。そこそこのideaと、巧い宣伝手法さへあれば巨万の富を稼げる洋菓子界に人材は集まり、客も皆そちらへと流れていきます。
ケーキ屋のお兄さんをパティシエと呼び替え、チョコレート屋のオヤジをショコラティエと崇める昨今の風潮は、服屋の売り子をハウスマヌカンと持ち上げたあの頃を思い出します。
かくして頑固職人が丹精こめた和菓子を食すのは、侘と寂びを知り尽くした茶道に明るい御婦人か、単に華やかなものが嫌いな引きこもりか、洋の東西に拘らず甘味を追い求める糖尿野郎か、に集約されていきました。

中学の修学旅行、四半世紀前の話ではありますが、京都の町で私は、友人たちが西陣織り昇り龍の財布やら木刀などを買い込む中、せっせと軒から軒へと飛び回り、全財産三万円分の和菓子を買い込んだことを思い出します。
そして立派な糖尿予備軍へと成長した今は、デパ地下で大人買いを楽しんでいます。
『ここからあそこまで頂戴』ってやつです。


そんな和菓子大好き小僧だった私、ある時和菓子屋の孫に頼み込み五月四日の夜、一日限りのアルバイトにありつきました。
柏餅製造の徹夜作業です。
友人の祖父は、見透かしたように言いました。「ラインを止めなければ、どんだけ摘み食いしてもいいぞ」と。
嬉しかったですね。
遠慮なく摘ませていただきましたよ。


しかし、15個目あたりから怪しくなり、蒸し上がった餅米の匂いを嗅いだだけでムカムカしてきます。
ついには見るのも苦痛になるのですが、子供の日の朝までに数千個の餅に柏の葉を巻かなければいけない切羽詰まった状況から逃れるすべはありません。
結局、こみあげる吐き気を堪えつつ、全ての業務を終了したのは朝七時でありました。
中学生には破格のバイト料と、2ダースほどの柏餅を頂き帰宅したものの、すでに身体は柏餅を受け付けなくなっておりました。
以来5年間、柏餅を食べることなく過ごしましたが、その時に学んだのです。

好きなものは商売の道具にしてはならない、と。

なので、和菓子好きな私は和菓子職人にはならないのでございます。

たとえ、和菓子職人が流行の職業となり、ワガシエなどと横文字で呼ばれるようになったとしても、
和菓子職人の方々には、今までどおり、淡々と黙々と、そして粛々と職務に励んでいただきたい。

この和菓子職人までの44話には、様々な職種が扱われて参りました。その中にはスポットライトを一瞬だけ浴びたが故に、その後の落差に戸惑っているものもあるかと思います。

この平成お仕事広辞苑では、小娘さんという地上据え置き型定点観測カメラに映ったそれぞれの仕事イメージを軸に、私がトンビ型上空撮影を担当し、あることないことを織り交ぜながら膨らませてきました。
しかし、どの職業においても誇りや自信、不満や不安は付き物で、そこを評価することはナンセンスであると思い至りました。
子供の頃、窓ガラスのお掃除や皿洗いで得た満足感、お母さんに誉められて得た優越感、それがお仕事の原点だと思います。

毎日が愉しく、食って寝て、明日の朝が待ち遠しい。そんなお仕事に、一人でも多くの人が巡り合えればと願っております。


一人にひとつずつ、お仕事のある社会を。

自由民主党さん、政策の柱にいかがですか?

枝豆太郎(元通訳、元雑誌編集者、元代議士秘書、元会社員、現秘密)
AD

同僚の事務員・文庫ちゃんと共に見つけた定食屋が存外にいいお味で、ハイテンションのままポンポコお腹を抱えて店を後にし、ああだこうだと喋りながら階段を上っていたところ、壁から出っ張っていた看板にしたたかに脳天をぶつけてしまいました。

イタイイタイと言いながらも、デザートを欲した抜け目のない腹のためにTURRY’Sのアイスを食し、これまた存外にいいお味で、私も文庫ちゃんもにっこり。


「今日はランチもデザートも当たりだったね」


うん。大当たりだよ。私は帰り道に頭まで当てたしね!


うまいことを言ってしまったわ、的な表情で残りのアイスを食しましたが、実際問題そんなにうまいコメントじゃなかったよね、と只今自己反省中の小娘です。


店の入り口で弁当販売していたおばちゃんに「アラアラあなた大丈夫?」と心配され、それを買いに来ていたじいさんにも「大丈夫なのか」的なお言葉を頂きました。

中途半端な痛みは羞恥心に負けるものですネ。


さて、今回のお題は「わ」です。

『平成お仕事広辞苑』は【和菓子職人】で締め括らせて頂きたいと思います。








見た目も美しく、上品な甘さでお茶請けに丁度良い和菓子。

菊などの花を、はたまた柿などの果物を模したそれは大変美麗だと思う反面、食べ物をベタベタと手で弄っても良しとされるのは和菓子くらいだよねェ、と思ってしまいます。

一方、工場で大量生産されている饅頭などの和菓子は、直接的な接触を避けて商品の完成に至るわけですが、当然ながら要所要所で人の手を介しています。

例えば箱詰めであったり、出来の悪い商品を弾いたり。

某もみじ饅頭店に勤めていた方の話によると、弾かれた商品は工場に勤める労働者たちがおやつとして美味しくいただくそうです。

更につわものは、就業中に包み紙を巧みに外し、出来たての饅頭を食していたのだとか。

皆さんは出来たての饅頭を食べたことはありますか?

表面がカリッとしていて餡子はアツアツで、絶妙なのです。

いつでも出来たてが食べられて羨ましいわと思うものの、毎日毎日、来る日も来る日も、饅頭饅頭では、それこそ食傷状態に陥るというもの。


普通はね。


普通じゃなかったのでしょうねェ、我が家・・・げふんげふん。

・・・・Kさん宅は。

Kさんの母上さまが工場に通っていた頃は、いつも食卓にもみじ饅頭がありました。

抹茶がいい、たまにはチョコを、クリームも食べたい。

オーダーまでしていましたね。(遠い目


アノ頃のKさん宅は饅頭天国でしたよ。




***





【和菓子職人】(わがししょくにん)


和菓子職人は先人が築いてきた伝統を受け継ぐとともに、時代のニーズに合わせた新たな和菓子を創造していかなければなりません。そのためにも高度な技術、優れた美的感覚が求められます。和菓子職人になるためには製菓系の専門学校を卒業し、和菓子製造会社やお店に就職して腕を磨いていく道が一般的なようです。





和菓子職人




『平成お仕事広辞苑』第44回【和菓子職人】



― 終 ―



Writing by 小娘





AD

労働基準なんて言葉は、自分とは無縁。

言ってみれば、蟹工船の世界の人たちのためにあるものだと思っています。


一日17時間労働で360日勤務を5年間もやっていれば

そして残業手当は勿論、有給とか代休とか、そんな観念などない世界にいると

労働基準なんてことば、とても空々しく聞こえてきます。


ましてや今、厚生労働省の方々が「労働基準を守れ!」なんて言おうものなら

「ふざけんな~~~!」と年金受給者が暴動を起こすのは必至です。


プロ野球は時間制限で延長回数に制限があったりします。

芸能人も、15歳未満の未成年は何時までしか出ちゃいけないなので制限があったと思います。

伊藤つかさがベストテンに生で出演できなかったのを覚えています。

テニスなんかはどうなんでしょう?

サドンデスになったときに、労働基準監督員が乗り込んできて

これ以上の労働は法に反します。残業ポイントは、1.5倍でカウントするように!などと言ってきて

断ると、審判が告発されたりするのでしょうか。


共産党の国会議員は深夜に及ぶエンドレス審議は拒否するとかあるんでしょうか?


自分たちの会社が潰れないために、一所懸命労働すると、残業手当やら休出手当てが発生し

人件費が膨張して倒産して失業。


法律が誰のためにあるのか分からなくなる瞬間です。

労働を管理しすぎたあげく、国ごと亡んだ旧共産国家の例を持ち出すまでもなく

あまりその辺を厳しくすると・・つまり、その、アレなわけです。


とは申せ、「いやだ!」と言えない、気の弱い人に無理やり長時間労働を強いるのはいけないことです。

ということはですね、CO2排出権の売り買いみたいにすればいいんです。

週40時間の労働権券を売り買いする市場を造ってですね、1時間単位にバラして取引するのです。


「弁護士(M&A)20000円 2千円高」

「弁護士(国選)4000円 1000円安」

「都市銀 3500円 450円高」 

「メーカー 総務 2700円 50円安」   みたいに。


結構、流行るんじゃないだろうか?





AD

ねェ小娘さん聞いて。

ちょっと恥ずかしい話なんだけどさァ。

炎天下に辟易しながら道を歩いていたら、熱で朦朧としていたのか目の前にあった背丈の低い鉄のポールに気付かずに、したたかに下半身をぶつけたんだよ。

いやァもう、恥骨殴打。恥骨殴打!

即座にうずくまったよ俺は。


支店長からそんな話を何度も何度も、繰り返し繰り返し、延々と聞かされた私は一体何と返答すれば。

その後も彼はイタイイタイとメソメソしていたので、


そんなに痛むのですか?

う~ん・・・・流石に見せてみろ、とは言えないですしね



と告げると「小娘さんの口から下ネタが飛び出してくるとは!」と大いに困惑されました。

何故か不思議と純情カマトトキャラで通っています。

どうもこんばんは、小娘です。


しかしアノ程度の科白で下ネタだのセクハラだの言われていたら、世の中の殆どは卑猥で18禁になっちゃうじゃないですカー、なんて言わない私は常識ある社会人。


どうもウチの会社の男性陣は女性に対して夢見がちです。








そんな夢見がちな男性で構成されている我が社ですが、待遇面では全くもって夢を見させてくれません。




有給休暇?

えッ、それって別名「お盆休み」ですよね?

あッ、違いました? 「年末年始休暇」でしたっけ?


・・・有給休暇なんてそんなもの、気軽に取れるものですか。



風邪で39度あるから休みたい?

えッ、休んじゃっていいのですか?

今月の「皆勤手当」が0円になりますよ?


・・・つまり這ってでも来てタイムカードを押せ、と。



盲腸で入院?

えッ、休まざるを得ない? 

それに「届書出すから大丈夫」って?


・・・うちの会社って届書は「休む前日までに提出しなければならない」ってご存知でした?



そうですよ。物理的に届書なんて出せないですよね。

だって「明日私はインフルエンザにかかる予定ですのでお休みさせてください」なんて書けないじゃないですか。


うちの会社に労働基準監督官のチェックが入れば、きっと上層部は対応に大わらわでしょう。

でもこの程度の仕打ちなら、どこの会社も同じようなものでしょうと高を括っていましたが・・・・


小娘の会社、どうなってるの


と冷ややかな目で見られること数多。


どうなっているかだなんて。


・・・こっちが聞きたいよ。





***



【労働基準監督官】(ろうどうきじゅんかんとくかん)


企業における労働時間、賃金、衛生面、安全面などの労働条件をチェックしたり、不具合や違反があれば改善のための指導を行います。

労働基準監督官になるためには労働基準監督官採用試験に合格しなければなりません。合格率は毎年非常に少ないと言われています。




労働基準監督官



『平成お仕事広辞苑』第43回【労働基準監督官】


― 終 ―


Writing by 小娘


はい、それじゃあこれから造影剤を打って、CT撮りますからね。
看護師に注射を打たれた少年は、やけに短いジンベエの上だけみたいな診察着にスリッパといういでたちで縦割りの竹輪にドーナツがついたような機械に横たえた。

ガラス窓の向こうにはレントゲン技師らしき小父さんが、マイクから話し掛けている。

はい、楽にしてくださいね。気分が悪くなったりしたらすぐにボタンを…

ブー!

はいはい、そんな感じで。
ブー!!

もういいですから、はいそれじゃ…


ブー! ブー!! ブー!!!

だからなんなの?いたずらは止め…

おわぁっ!
ど、どうしたの、その顔?

ドーナツの中で悶え苦しむ少年、それは若き日の枝豆。睾丸の美少年、もとい、紅顔の、みめ麗しい、すらりとした子鹿のような体躯の私は
全身、とりわけ顔が倍近くに膨れ上がり、脈拍は200を超えていた。
目を潤ませ、言葉にならない叫び声をあげる少年を見つめた技師のおっちゃんは、茫然としつつも電話を掴むと医師を呼んだ。
「先生、すぐに来てください。ひどい顔です!」

パニックで真っ白な頭にも(そこ、違うだろ!伝えるべきは)と、突っ込みを入れていた。

なにやら注射を打たれて、膨らんだ顔はスフレのように急速に萎んでいく。


キミ、ヨードアレルギーだから。と、医師は私をなじるように告げた。
こういうこと、かなりヤウ゛ァイから。二度としないでね。と、お叱りまで受けた。

しばらく放置され、回復した段階で肝機能検査するからねと、注射をされた。

ちぅ…

ボン!また、同じ音が頭の中でコダマし、次の瞬間また顔が倍に。

きゃー! 待合に座っていた他の患者が騒ぎだす。枝豆は転がる。
駆け付ける医師と看護師、注射打たれてぷしゅー と萎む。

なんでだ?と、私に尋ねる医師。
知るかよ!とキレる私

薬剤の詳細な資料もってこい!と逆ギレする医師。


あ・・・! 入ってる、ちょびっとだけ。


どうやらヨードが入っていたらしい。


(ここにいたら殺される)と、逃げ出そうとする枝豆。カルテにホッチキスで留めてある祖父の名刺を見て青くなり「今日のことは、家では言わないほうがいいよ。心配するから」と口止めに走る医師。

以来、CTを受けたりすることはない。

診療放射線技師とも、かかわりたくない。