ここ数日晴れ間が見えず、アメリカに来てから初めて雹(ヒョウ)が降るのを見ました。

常夏のLAとは違い、北CALは寒い!日本を思い出します。

そんなこんなで気づいてみれば更新がだいぶ空いてしまいました。

このままじゃ民主党の代表決まっちゃうよ!って喝を入れられたのでがんばって更新します。


それでは本題に移ります。。。


先日の19日、ヒラリー候補はネバダ州の予備選で2勝目を挙げました!これでヒラリー氏は2勝、オバマ氏は1勝です。しかし次は25日に黒人層の有権者の多いサウスカロライナ州における予備選挙を控えてます。世論調査ではオバマ氏がヒラリー氏を10ポイントリードしているようで、これまた接戦になりそうです。



by seiu international and sskennel


各代表の政策の違いを比較すると、次のことがわかりました。

民主党候補者のほぼ全員が、キャップ・アンド・トレード制度(※1)、再生可能なエネルギー、ハイブリッド車、バイオエタノールやクリーン・コール技術(※3)を支援しています。どの候補者もよく練り上げられたプランを発表しているように思いました。環境問題への関心が高い有権者は民主党のどの候補が選ばれても落胆することはないのでは?


その反対に、共和党の候補者の多くは温暖化をはじめとする気候変化の問題についてしぶしぶ認めつつも、その対策には積極的ではありません。具体的な数字を発表していなかったり、そもそも政策の中に盛り込まれていなかったり。しかし、現在進行中の予備選で勝利を収めているマイク・ハッカビー氏、ジョン・マッケーン氏は共和党候補中でも、環境・エネルギー対策を政策に盛り込んでいます。特にマッケーン氏は各候補者の中でも特異的な存在で、温暖化問題を重要課題の一つに掲げており、以前からこの問題に積極的だそうです(※4)。


予備選で勝利を収めている有力候補者の環境・エネルギー対策の比較チャート(下の画像)で、大まかな政策やその違いが見えてくると思います。



有力候補者の環境・エネルギー対策の比較チャート

(画像をクリックすると拡大できます)



勝利している候補者の多くが具体的な気候変動の問題を認識し、対策を立てているというのは、それだけ、アメリカ人の多くがこの問題に関心があることを反映しているのかもしれません。次に大統領になる人はアンテナをはって、国民のそういった声をキャッチした政策を掲げている人なのではないでしょうか?もちろん、選ばれたリーダーが掲げた政策を本当に実行に移せるかどうかが一番大事ですが。


ヒラリー氏は立場の弱い人々のこともしっかり見ていくことを訴えて、多くの貧困層の心をつかんでいます。オバマ氏は今のアメリカを変えることを訴え、「CHANGE(変化)」を掲げて若い有権者層の心をつかんでいます。


by terren in Virginia


今回は大統領の座に一番近い(と私が思っている)この2人の環境・エネルギー政策を比較してみました。比較してみたものの大筋の政策は同じ。ポイントは両候補とも、アメリカが外国から輸入する石油への依存をやめ、エネルギー独立の方向に進めることを望んでいるということ。



以下、ヒラリー氏の対策をヒ、オバマ氏の対策をオと略して表示して比較します。(※)については下で説明しています。



炭素ガス排出量を2050年までに80%削減するために . . .

  

  キャップ・アンド・トレード制度を支援する (※1)

ヒ:排出枠を100%オークションにかけるキャップ・アンド・トレードを支援。アメリカを外国の石油に依存しない、エネルギー独立の方向へ進める。

オ:排出枠をすべてオークションにかける。オークションで得られる収入の一部はクリーン・エネルギーの開発支援、省エネ技術への投資、そしてこの経済的推移に伴い影響を受ける労働者の支援など移行にかかるコストに充てられる。



メモ「2050年までに1990年比で80%炭素ガス排出量を削減する」というのは、科学者たちが必要だと掲げている量である。

メモ排出権を100%オークションにかけることで、石油・石炭会社のみならず、温室効果ガスを排出しているすべての企業に排出権を得るチャンスが与えられる。


 

  自動車


ヒ:自動車の燃料基準を2020年までに40mpg、2030年までに55mpgまで引き上げる。それに加えて、200億ドルの 「緑の自動車連盟(Green Vehicle Bonds)」 を通じて、自動車メーカーの製造工場の設備一新を支援する。プラグインハイブリッドの商用化を促進する。


オ:燃料の燃料基準を18年以内に現在の2倍にする。計画には、税額控除や国内の自動車工場や部品製造のための借入保証(借入助成)を提供することで、彼らが海外企業と比べても新しい燃費の良い車を作ることが含まれる。また、軽量素材や新型エンジンなどの自動車の最新技術にも投資する。プラグインハイブリッドの商用化を促進する。


by Magillicuddy


メモmpg とは1ガロンの燃料での走行マイル。1マイル/ガロン = 0.425キロメートル/リットル
メモ自動車やトラックなどの交通手段に使用される石油消費がアメリカの石油消費全体の70%を占めている。




2025年までに電力の25%を再生可能なエネルギーでまかなう . . .


  再生可能なエネルギー


ヒ:2025年までに電力の25%を再生可能エネルギーから生成する。また、アメリカの石油への依存度を緩和し、温室効果ガスの排出を削減するため、再生可能なエネルギーの研究・開発・使用などに出資する、500億ドル(約5.4兆円)規模の 「Strategic Energy Fund」 (戦略的エネルギーファンド)(※2)を新設する。


オ:25%連邦政府再生可能エネルギー・ポートフォリオ基準(25 percent federal Renewable Portfolio Standard (RPS))を設立することで、アメリカで消費される電力の25%が太陽光、風力や地熱などの再生可能なエネルギーでまかなわれるようにする。また、2020年までに連邦政府の電力の30%を再生可能なエネルギーでまかなう。そして再生可能なエネルギー、バイオ燃料などの次世代クリーン技術の研究開発に対して10年にわたり1500億ドル(約16兆円)を投資する。




  バイオ燃料


ヒ:2030年までに自家栽培(国産、現地の)の600億ガロンのバイオ燃料を車やトラックに使用する。エタノール税控除の期限を2012年まで延長し、セルロース由来エタノールの開発を促進する。市販品の生産(商業生産)の最初の10億ガロンには借入保証(助成)が提供され、研究費用に20億ドル(約2140億円)を割り当てる。


オ:2022年までに360億ガロンの再生可能燃料が燃料供給に含まれることを要求し、これを更に2030年までに最低でも600億ガロンのセルロース由来のエタノールのような先進的なバイオ燃料の量を増大させる。


by mrobenalt



  石炭燃料


ヒ:低炭素精炭(※3 クリーン・コール)技術を実現する。税制上の優遇措置や助成金から35億ドル(約3750億円)を捻出し、CO2を獲得・貯蔵可能な精炭技術を使用したクリーン・コール工場を5つ建設することで温暖化を防ぐ。従来の燃料に比べて炭素ガス排出量が20%少ない場合に限り、CTL(Coal To Liquids;石炭を液体燃料に変換する技術)もサポートする。


オ:低炭素精炭技術をサポートし、商用化を促進する。また、必要とあれば従来型の石炭工場が新しく建設されることを禁止する基準の制定も考慮する。従来の燃料に比べて炭素ガス排出量が20%少ない場合に限り、CTLをサポートする。




  原子力エネルギー


ヒ:廃棄物貯蔵その他の問題が解決しない限り、原子力エネルギーを電力源として重視しない。


オ:原子力エネルギーをサポートし、今後も引き続きアメリカのエネルギー源の一つとして考えられるべきだとしている。




  建物の省エネ化


ヒ:グリーン・カラーの仕事を増やし、2000万人の低所得世帯者が自宅の省エネ化を進められるよう支援する。また、2009年1月20日以降に設計された連邦政府の建物からの炭素ガス排出量をゼロにする。大統領になったらまずはじめに政府の建物をカーボン・ニュートラルする、と宣言している。

オ:新しく建てられる建造物のすべてがカーボン・ニュートラルになるよう法律に定めるか、2030年までに新しい建物からの炭素ガス排出量をゼロにする。また、アメリカに新しく建築される建物のエネルギー効率の目標を50%に定め、既存の建物については今後10年間で25%省エネ化する。




  その他のプラン


ヒ

すべての株式公開会社が気候変動による財政危機について証券取引委員会に報告することを要求する。


オ

温室効果ガス排出のトップ国からなる新しい評議会をつくる
先進8ヶ国(G8:米国・英国・ドイツ・フランス・日本・カナダ・イタリア・ロシア)にブラジル・中国・インド・メキシコ・南アフリカを加えて、先進国・発展途上国に関わらずエネルギー消費量の大きい国々による世界的なエネルギー評議会を作る。評議会では世界の特にエネルギー問題と環境問題に焦点を当てて協議する。


国連気候変動枠組み条約を再び批准する




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1.キャップ・アンド・トレード制度とは?


排出量取引の一種。


キャップ・アンド・トレードとは、温室効果ガスの総排出量をあらかじめ設定したうえで、国や企業に排出枠を配分し、それぞれ割り当てられた排出枠の一部を取引するというもの。


キャップ・アンド・トレードでは、個々の企業や国は、最初に排出枠を割り当てられるが、その排出枠の割り当て方には、(1)過去の排出実績をもとに、排出枠を割り当てる方法(グランドファザリング)と(2)政府がオークションで排出枠を公開入札などして販売する方法とがある。今回の各候補者の政策の場合は、後者に当てはまる。

オークションのメリットは、排出枠を獲得する機会が公平に与えられることと透明性が確保できること。デメリットは、最初の排出枠獲得のためにコストがかかること、どの程度排出枠を確保できるか予想が困難であることなどが挙げられている。


詳しく解説しているページです

温室効果ガス排出量取引/入門編

排出権とは何か?



2.戦略的エネルギーファンド(Strategic Energy Fund)の詳細


同ファンドは、石油会社の超過利潤に課税を行うことで、10年で500億ドルを調達する。石油会社は自ら再生可能なエネルギー源の研究開発を進めるか、同ファンドに直接資金援助を行なうかを選択可能。また、公有地での石油掘削に対する課税も行われる方針。


その上、大手石油会社の収益が2000年から2004年の利益水準を上回った場合、同ファンド立ち上げから2年の間、手数料の支払いが課される。企業はエタノールや風力などの代替エネルギーに投資することで、この手数料をオフセットできる。


同ファンドは次のように使われる . . .


⇒オフィスや住居の省エネ化


⇒ガソリン・スタンドのE85対応工事に対する優遇税制


⇒バイオ燃料の商用化に関する債務保証。エタノール税控除の期限を延長し、エタノールの開発を促進


⇒低炭素クリーン・コール技術の実現。CO2の獲得および貯蔵を可能とする精炭技術を使用してクリーン・コール工場を新しく5つ建設


⇒再生可能なエネルギーへの投資。風力その他の再生可能なエネルギー由来の電力を生成するための連邦政府による優遇税制措置(風力発電電力1kWh 当たり1.9セントを10年間税額控除するという生産税控除制度)の期限を延長し、電力の25%を再生可能なエネルギー源から生産


⇒ハイブリッド車、クリーンディーゼル車、その他の燃費の良い自動車を購入した場合に、購入者は現在の4倍の税控除を受けられる


⇒自動車メーカーの工場設備のアップグレード支援


⇒5億ドル(約535億円)を高性能電池の研究費に割り当て、プラグイン・ハイブリッド車の開発を促進


⇒先端研究プロジェクトエイジェンシー(Advanced Research Projects Agency)に90億ドル(約9600億円)を割り当て、エネルギー研究を促進



3.低炭素クリーン・コール技術とは?


アメリカで消費される電力の半分が石炭工場で作られている。石炭1トンにつき、3トンの CO2 が大気中に排出されるという。天然資源保護協議会(Natural Resources Defense Council)はアメリカでCO2を最も排出しているのは石炭工場だと報告している。CO2の他にも、学習障害や肺病のような病気の原因となる水銀、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NO)も排出される。


それでは今回、炭素ガス排出量削減のために、ヒラリー・クリントンとバラック・オバマが政策に盛り込んだ「クリーン・コール・テクノロジー」とは何か?


低炭素精炭技術(クリーン・コール・テクノロジー)とは、環境に対する負荷を軽減するために石炭を効率的に利用する技術のことである。

前述の水銀、SOx、NO、その他の微粒子を取り除いてはくれるが、CO2排出量を大きく削減するには有効ではないと考えられている。それため、多くの専門家や環境運動家はこの方法は大気中のCO2濃度を下げるには効果的ではないと訴えている。


大気中のCO2濃度を下げるためのCO2固定化・隔離の技術の研究も行われており、将来的には石炭を燃やす際に発生するCO2を捕捉し、ガス化して、地中に隔離する方法を普及しようとしている。この方法によりCO2排出を削減することはできるが、地下に貯蔵したCO2はいずれ大気中に漏れ出る可能性もあり、また、このプロセス全体についてはまだ研究段階であり、実際に普及するまでに少なくとも10年はかかると言われている。


また例えCCSが効果的だとしても、石炭という化石燃料を使い続けるリスクはまだまだある。石炭の採掘や移動には大量のエネルギーが必要であり、採掘には大量の水が使われるため帯水層の減少の問題もある。石炭は「クリーン」エネルギーではないといわれる所以である。


プリンストン大学の研究者やUnion of Concerned Scientists(憂慮する科学者連合)は2054年までに迅速に炭素ガス排出レベルを下げるにはこの方法が必要であると考えている。その上、アメリカ国内で今後新しく130の石炭発電工場が次の数年で建設される計画が現在も進行中である。



4.ジョン・マッケーン氏について


ジョン・マッケーン氏は2000年の共和党大統領予備選で現ブッシュ大統領と指名を争った。温暖化問題は彼が掲げる3つの主要な問題のうちの1つだと述べる。
2003年、温室効果ガス排出量の削減を義務付ける法案の提案者の一人。
これは2012年までに電気・ガスなどのユーティリティや産業、交通からの温室効果ガス排出量の上限を2004年レベルに定め、2050年までに2004年レベルの30%まで徐々に排出量を削減することを求める法案である。


その他

・キャップ・アンド・トレード制度をサポートするが炭素税に反対。


・2007年の気候管理・技術革新法案によりオークションにかけた排出権からの収益の一部を新しい原子力工場の建設やその研究開発のための借入保証に当てられる。


・以前はエタノール由来の燃料に反対していたが、現在は支持している。しかし、これに対し政府が補助金を出すことには反対している。


・北極圏野生生物保護区(Arctic National Wildlife Refuge)における石油掘削に反対。




ヒラリー・クリントン公式HP:http://www.hillaryclinton.com/

バラック・オバマ公式HP:http://www.barackobama.com/index.php

Princeton University's Carbon Mitigation Initiative (CMI)

http://www.princeton.edu/~cmi/


クリーン・ディーゼル車について
http://app2.infoc.nedo.go.jp/kaisetsu/evm/ev02/index.html


プラグイン・ハイブリッド車について
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/WORD/20060705/118889/


テーマ別に候補者の立候補者・問題分けで2008大統領選挙のYoutubeビデオ:
http://www.expertvoter.org/



その他


話題となったビデオ。

ここでは、大統領選挙の立候補者は、雪だるまによって気候変化についての質問をされる。




2006年11月20日 温暖化問題に関する討論会にて



2007年3月1日、国民に向けてエネルギー対策について説明(「Hillcast」)(04:39)



2007年10月8日、ニューハンプシャー州ポーツマスにおけるオバマ氏のエネルギー政策に関するスピーチ(03:37)



2007年5月7日、デトロイト経済クラブ(Detroit Economic Club)の自動車メーカーにもっと燃費の良い車を作ることを呼びかけたスピーチ(12:35)



2007年7月23日、CNN/YouTubeが開催した討論会において、原子力エネルギーの問題についての質問に答えるオバマ氏(03:01)