2008-10-25 07:26:27 echigoya-smwriterの投稿

【コラム】 ダメンズ・ウォーカー①

テーマ:女性の研究

 今回のネタは『女性の「オトコ運」は父親で決まる』(岩月謙司著 新潮文庫刊)です。

 共依存という言葉があります。例えばDV男が居て、その男の暴力を日常的に受けている女性が居る。ところが、その女性は暴力を受けながらも男の元を去ろうとしない。あるいは、せっかく別れられたのにまた男の元に戻っていってしまう。あるいは、せっかく暴力男と別れられても、結局また、別の暴力男と交際を始めてしまう。

 男性の側が女性に対して暴力をふるうことに依存しているのに対し、女性の側は男性に暴力をふるわれることに依存している。こういう関係を共依存と言います。

 ダメンズ・ウォーカーという言葉も流行りましたね。駄目な男たち、つまりダメンズに、どうしても引っかかってしまう女たち。ダメンズからダメンズへと渡り歩いていく女たち。それがダメンズ・ウォーカーです。このダメンズとダメンズ・ウォーカーの関係も、広い意味での共依存関係ですね。

 女性はなぜ、こういう駄目男たちに引っかかってしまうのか? 岩月先生の説によりますと、女性は自分の父親と同じ欠点を持つ男に惹かれる傾向があるらしいのです。

『たとえ外見は嫌いな父親と正反対でも、肝心なところが父親とそっくりな男性に魅力を感じてしまうことになります。「自分を不愉快にさせるところが父親にそっくり」な男性を一生懸命探してしまう結果となることがあるのです。そんな人と恋愛をしていたのではうまくいくはずがありませんね』(4p)

 父親の良いところではなく、悪いところが似ている相手に魅力を感じるというのは悲しい話です。いったい、なぜこんなことが起こるのでしょうか。

 岩月先生は、このことを理解するのに、『ストックホルム・シンドローム』という概念を導入してきます。

 説明を要約しますと、『ストックホルム・シンドローム』とは、1973年にストックホルムで起きた銀行強盗事件に由来しています。

 逃亡に失敗した銀行強盗は、人質を取って六日間、銀行に立て籠もりました。すると、初め犯人を憎んでいた人質たちは、次第に犯人に対して協力的な態度を取り始めます。犯人の代わりに見張りに立ったり、犯人に愛を告白する女性が現れたりしたということなのです。

『こうした人質と犯人の奇妙な連帯感を「ストックホルム・シンドローム」と呼ぶのです。日本ではまだそれほど知られていませんが、世界各国の人質救出マニュアルには、「突入した時、人質が犯人をかばうことがあるので注意せよ」と書かれているほどです。機動隊が犯人を撃とうとすると、人質が犯人の前に出てかばおうとすることがあるのです。被害者であるはずの人質が犯人を銃弾から守ろうとするのです』(74p~75p)

 なぜこんなことが起きるのか。このような極限状態で、犯人に嫌われるよりも好かれる方が生き残る可能性が高いからです。だから犯人に、好かれようとするのです。

 問題はそれが、意識的なご機嫌取りではなく、無意識的な心理作用であるということです。人質たちは本当に犯人に好意を感じ、手助けをしたり愛を感じたりしているのです。だからこそ、自分の命を助けるための自己防衛機能であったにも拘わらず、我が身を挺して犯人を守ろうとしたりするのです。

 父親の愛を十分に受けられない娘に、これと同じ現象が起こると岩月先生は説明します。なぜ父親に限定されるかと言えば、父娘の間には保護者と子どもの関係と同時に、擬似恋愛的な関係が成り立つからです。父娘ほど頻繁ではないでしょうが、母親と息子にも同じことが起こるようです。その場合、息子はマザコンになります。マザコンになる原因は母親が息子を甘やかすからではなく、母親の愛情が足りなかったからなのだそうです。

 親、特に父親に愛してもらえるかどうかは、幼く、無力な娘にとって生死に関わる問題です。だから、なんとか父親に好かれようとします。自分に嘘を吐きながら、時には自分の記憶をねじ曲げながら、自分の父親を愛そうとします。

 やがて娘は、自分の父親が自分を愛さないこと、自分の幸せを願わないこと、自分に怒りをぶつけることに、魅力を感じるようになります。これは、自分に十分な愛情を注いでくれない父親とうまくやっていくための、哀しい処世術なのです。

 数年、あるいは十数年、ストックホルム・シンドローム状態が続くことによって、このような欺瞞は娘の第二の天性となってしまいます。父親の呪縛から逃れた後も、父親と同じ欠点を持つ男性に魅力を感じてしまうようになるのです。

 これは、過去に満たされなかった愛の飢餓感を無意識に埋めようとする行為です。幼い頃に愛情に恵まれなかった娘は、成長した後も、幼い自分の飢餓感を埋めようと藻掻くのです。

 でも、過去に遡って自分を満たしてやることはできません。ですから可哀想な娘は、一生、自分の飢餓感を埋める行為を繰り返し続けることになるのです。

 これがつまり、DVに対する共依存の正体であり、ダメンズから逃れられないダメンズ・ウォーカーの正体なのです。

 でも、彼女たちは、父親とおなじように自分を不愉快にする男たちを本当に愛しているのではありません。心の底で憎んでいるのです。その辺りの心理を、岩月先生はこのような心の動きの中に読みとっています。

① 別れたとたんに、彼に会いたくなる。

 本当に愛情に満たされいれば、別れた後も心の安定が続くはずです。すぐに会いたくなるのは、本当の愛情ではないので、目の前に居なくなったとたんに不安に駆られるからなのだそうです。

② 男とセックスして三日後くらいに、気持ちが鬱になる。

 女性にとってセックスは男性の愛や優しさに自分を同化させていく行為なのだそうです。そうでないセックスをした場合、女性の心の中に男の悪意のようなものが流れ込んできて、三日後くらいに非常に憂鬱な気分になることがあるのだそうです。

 こういう女性の病いは非常に直しにくいものですが、不治の病いではありません。自分は「家庭内ストックホルム・シンドローム」に罹っているのだと意識することで、自分の不幸の輪廻から抜け出す足がかりが見付かるということのようです。

 ここまで書いてきたようなことは、父親から十分の愛情を受けて育った娘には当てはまりません。そういう子どもは、本当に好意を持てる相手を好きになることができます。男の欠点に惹かれたりすることはありません。

 今回は、ひたすら岩月先生の本の内容の紹介に終始してしまいました。細かい部分では納得のいかない見解もあるかもしれませんが、大筋は正しいと、信じます。ぜひ、お読みになることをお薦めします。





コラムの目次

http://echigoya.h.fc2.com/kurumaya/kurumaya.html

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