2008-10-19 03:05:46 echigoya-smwriterの投稿

【コラム】 チューニング①

テーマ:営業トークのテクニック

 最後はチューニング。ラジオの波長を合わせる、あるいは楽器の音を合わせる、あれです。

 ここで合わせるのは、まあ、趣味嗜好ですかね。相手の好きなものを好きになり、嫌いなものを嫌いになり、興味のあるものに興味を持ち、興味の無いものには興味を持たないということです。

 日常生活でも、誰かを好きになったらこれをやりますよね。相手の趣味が分かると、急いでそれを勉強して、話を合わせようとしたりする。あれがチューニングです。

 営業の場合はぶっつけ本番ですから、下準備はできません。ですから、にわか仕込みの知識で知ったかぶりをするのではなく、相手の好きなものに興味を示す、それについて教えてもらおうとする、という形になるかと思います。

 相手が何か意見を言った時に、それに同意する。これもチューニングですね。営業トークでいうイエス・バット話法というのもこれに属します。

 相手に反論する場合に、いきなり反論するのではなく、いったん相手の意見を認めてから反論するのがイエス・バット話法です。

 でも、相手の意見に合わせるのが苦手な営業さんは、すぐにイエスの部分は形だけで、すぐに反論してしまいます。

「毎日、毎日、何本も営業電話が掛かってくるけど、どうなってるんだ?」
「いや、○○さん、今回の電話は違うんです」

 これはイエス・バット話法を使っていない切り返し。

「毎日、毎日、何本も営業電話が掛かってくるけど、どうなってるんだ?」
「毎日、毎日、ご迷惑ですよね。申し訳ありません。でも、○○さん、今回の電話は違うんです」

 これはイエス・バット話法を使った切り返し。一応、相手の怒りにチューニングしています。

 さらに徹底してチューニングすると、例えばこんな感じになります。

「毎日、毎日、何本も営業電話が掛かってくるけど、どうなってるんだ?」
「毎日、毎日、ご迷惑ですよね。申し訳ありません。そんなにたくさん、お電話掛かってくるんですか?」
「もう、嫌になるくらい掛かってくるよ」
「別に、そんな営業電話を受けるために、電話を引いている訳じゃないんですのにねえ」
「まったくだ。少しは遠慮して欲しいよ」
「申し訳ありません。きっと、しつこく勧誘されることもあるんでしょうね」
「ああ、しつこい。しつこい。いくら断っても諦めないんだ。もういやになるよ」
「本当にご迷惑ですよね。私はそんなしつこい勧誘はしませんので、ご安心ください」
「(笑)本当か?」
「ええ、大丈夫です」

 最後のイエス・バット話法は、単に相手の言うことにイエスと言うだけではありません。きっと相手はこう思っているだろうな、こう言いたいのだろうなという話をこちらから振ることで、相手にイエスと言わせていっています。

 ついでに、聞き出しもしてしまっています。「しつこく勧誘されることもあるんでしょうね」という問いは、この人は営業に付け入る隙を与えるガードの甘い人なのかどうか、調べているのです。うまい人は、適当なところで話を切り上げてさっさと切ってしまいます。いつまでも話が続くということは、営業のペースに嵌められてしまっているということです。

 ここまでの会話で、あ、この人は好いお客さんかな、と当たりを付けることができました。

 このように、チューニングは単に相手の話に相槌を打つだけではありません。当然、イエスの返事が返ってくるような話を振っていくことも、また、チューニングになります。

 ですが、いくら相手にイエスを言わせたとしても、やたら理屈っぽい話だったり、難しい話だったりすると、その話を理解しようとする間に頭が活性化されてしまいます。できるだけ相手の頭を働かせないように、イエスを取る話題は単純明快なものが好いです。

「暑いですねえ」
「ああ、暑いねえ」

「遅いですねえ」
「ああ、時間が掛かるなあ」

「あれ? あそこに立っているの、ミッキーじゃないですか?」
「どれどれ? あ、本当だ。ミッキーマウスだ」

 こんな感じで、すぐにイエスの答えが返ってくる言葉をどんどん投げかけていく。そして、相手が何か言った時には全部受け入れる。それを繰り返していくうちに、相手と自分の親和的な関係がどんどん出来上がっていく訳です。




コラムの目次

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