【コラム】 非M的気質
テーマ:SM談義 心理学の実験も、今ほど人権についてうるさくない時代には相当ひどいことが行われていたみたいです。例えば、こんな実験です。
実験①
被験者を椅子に座らせ、手足を縛って動けなくする。体に電極を付ける。
被験者に色々な言葉を聞かせ、それから連想する言葉を答えさせる。ある規則に沿った答をした場合、若い女性の声が「正解です」と答える。間違えると、微少な電流が流れる。
問題の裏に隠れた規則はごく簡単なもので、容易に推測できる。そんな問題を何問が出し続ける。
途中で、規則が混乱し始める。最初の規則に沿って答えても、正解できなくなる。
その頃から、間違えた時の電流の強さがだんだん強くなってくる。
実験②
実験内容をまったく知らされていない被験者が、個室の応接室に通され、飲み物をもらう。実はこの飲み物の中には、強力な利尿剤が仕込まれている。
尿意を催した被験者がトイレに行こうとすると、部屋には外から鍵が掛けられている。大声を出して人を呼んでも、誰も来てくれません。
実はこの部屋の一方の壁は、ガラス張りになっています。被験者の尿意がいよいよせっぱ詰まった状態になった頃にこちらの壁が開かれます。すると、ガラスの壁の向こうにはたくさんの人間が居て、みんなが部屋の中の被験者を観察しているのです。
どちらの実験も、ほとんどSMプレイですよね。電気(パルス)を使った責めは志摩紫光さんがよくなさっていますし、人が見ている前で排泄をさせるのは、羞恥責めの常道みたいなものです。これらの実験はどちらも十九世紀の後半に行われたもので、今、同じ実験をしようとしても許されないでしょう。
さて、この二つの実験の目的は何かというと、極限状況に置かれた人間が、どういう行動を取るのかを調べることです。その結果、極限状況での行動様式によって、人は三通りのタイプに分けられることが分かってきました。正確な名前は覚えていないので私が仮に付けたものですが、以下の三つです。
①攻撃型
周りの人やものに当たる。
②受動型
ひたすら謝り、許してもらおうとする。
③自己放棄型
あきらめてしまって、何もしない。
SMの立場でこの分類を見てみます。②のタイプ、③のタイプは、Mになり得るでしょう。でも、①のタイプは、決してMにはなれません。
三つのタイプの比率までは分からないので、単純に三分の一ずつと考えましょう。世の中の人間の中で、三人に一人の割合で、決してMになれない人間が居るということです。これは、男性でも女性でも同じことです。
最近、立て続けに三人、同じタイプの女王様の話を聞くことができました。
縛りがうまくなるには、自分が縛られる立場になってみるのが一番だなどと言われます。それにしたがって、この三人は試しに誰かに縛られてみたのだそうです。
ところが途中で、だんだんムカムカしてくる。どうにも我慢ができなくて、結局途中で中断してもらったのだそうです。
SMプレイというのは、要するに、サディストがマゾヒストを極限状況まで追い詰めて、その極限状況で訪れる忘我の状態、陶酔状態をマゾヒストに体験させる行為だと言うことができます。
スイッチを入れるなどという表現を使います。マゾヒストは人からスイッチを入れられることによって、あるいは自分でスイッチを入れることによって、SM的な快感を得ることになるのです。
そしてスイッチが入った時の状態が、例えば③のタイプであれば、「もうどうにでもして。あなたの好きなようにして」という精神状態ですし、②のタイプであれば、「ごめんなさい。私が悪うございました」という精神状態なのです。
前に挙げた三人の女王様も、縛られて、身動き取れない状態にされて、きっとスイッチは入っているのだと思います。ただ、そのスイッチの結果が、「てめえ、殺すぞ」という精神状態になってしまっただけなのです。
ならば①のタイプの人に、M的な態度を取らせることは全く不可能かというと、そんなことはないでしょう。身動き取れない状態に縛り上げ、「ごめんなさい」と言うまで許さずにキツい鞭を打ち続ければ、そう言わせることはできると思います。なにしろ、そう言う以外に、現状を打破する道が無いのであれば、そうするしかありません。
問題は、精神状態です。①タイプの人は極限状況の中で、「どうとでもして」という心境にも、「私が悪うございました」という心境にも、なりません。延々と打たれ続けている間中、「てめえ、殺すぞ」と思い続けているのです。そしておそらく、その殺意が、憎悪がピークに達するのは、心ならずも相手の暴力に屈して、「ごめんなさい」という屈辱的な言葉を言わされた瞬間だろうと思います。
いずれにせよ、①タイプの人をマゾヒストに調教するのは不可能だということです。無理に調教しようとすれば、どんな悲惨な結末になるか分かりません。SMプレイは、相手を見てしましょうという話ですね。
Mさんにも、二つのタイプがあるというのも、面白いところですね。今目の前に居るMさんが②タイプなのか、③タイプなのか、観察してみればプレイの方針が立てやすくなるかもしれません。
断っておきますが、①タイプの人がサディストになり、②タイプ、③タイプの人がマゾヒストになるということではありません。ただ、①タイプの人はマゾヒストにならないというだけの話です。②タイプの人、③タイプの人でサディストになる場合もあるでしょう。ただ、その場合、マゾサドかもしれませんけど。
もう一つ、①タイプはマゾになれないけど、①、②、③タイプどの人でもサドになれるというのは、どんな人もサドにはなれるということではありません。きっと、サドにはなれない人も居るはずなのです。
ただ、今回の三分類を基準では、そういう人を特定できなかったというだけの話です。
まあ、どっちでもいいんですけどね。私はサディストですので、マゾヒストのことしか興味がありません。他のサディストがどうであろうと、私には関係の無い話ですから。
コラムの目次
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