梅雨寒の夜に立ち寄った場末の駅近くの食堂で、ふと気づくとカウンターの隅に金魚鉢が置いてあった。

 

餃子とチャーハンに瓶ビールを、この組み合わせは大学以来かなと思いつつ注文した。

 

いきなりビールだけが運ばれるのではなく、焼き上がった餃子と一緒に冷やしたグラスを添えて運ばれてきた麒麟のラベルを嬉しく思いながら一杯目を注いだ。

 

テレビのナイター中継を観るともなく観ながら、二本目のビールを始めたところでチャーハンが置かれた。

 

懐かしい味わいが舌で踊り、酔いが心地よくめぐり始めた時、テロップで「大阪府議会で君が代条例成立」と流れたのが目に入った。

 

儀式での国歌斉唱では、心ならずも長く身を置いた公立学校の世界で、私もさんざん反対派と対立したけれど

 

こんな国際常識をわざわざ条例で決めなければならず、初めてのケースだと色めき立ってテロップまで流す日本は相変わらず妙な国だなと思いながら煙草に火を点けた。

 

目を転ずると紫煙の向こうに金魚鉢が浮かび、水面に浮かんでは口をパクパクさせているオレンジ色の金魚が見えた。

 

何かに似ている。

 

そう、選挙期間中に、職員室で共産党候補のビラを配る教員に注意もせずに見て見ぬふりをしていた校長が、卒業式の国歌斉唱ではパクパクと口だけ動かして発声はせずにごまかしていた、情けなくて見苦しいあの姿だ。

 

日教組と対決して毅然とした学校経営を貫いた校長は出世しないし、定年後にも決して大きな市の教育長になれないのは公立学校の世界での「常識」だ。

 

それはとりもなおさず、県教育委員会の保身第一の卑屈で姑息な体質を現している。

 

金魚みたいな校長先生は、日本の国歌を堂々と歌うと日教組に睨まれるのが嫌だったに違いない。学校現場が混乱すると県教委に嫌われて出世と定年後の安楽な暮らしに響く。

 

児童生徒諸君!金魚の学校で騙されると、日本人にも、その先の国際人にもなれないよ。

 

「絆抱くペリリュー・日本を愛する島」