NHK記者 過労死報道に思う

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止まらない電車

私は大学時代、NHKの報道局で雑用のアルバイトをしていた。

勤務初日、いきなりカルチャーショックの洗礼を受けた。30代の男性記者が自殺したということで、職場がざわついていたのだ。

もちろん、私は勤務初日なので、その記者と面識はない。自殺の理由も知らない。しかし、若くして死ぬ、しかも自殺・・・・・世間知らずの私は、この出来事に呆然とした。

それから数カ月。アルバイトの仕事にも慣れてきた頃、私は記者という仕事の現実が分かってきた。彼らはボロ雑巾のように心身を酷使し、勤務記録には労基法に触れないようデタラメな記録を打ち込んでいた。「早く体が壊れて欲しい。そうすれば楽になれるから・・・・・」と、ポソッとつぶやく記者もいた。

 

当初、就職活動で記者を目指そうかと考え、職場体験として初めたアルバイトだったが、結論は決まった。私にこの仕事はムリ。精神と肉体、そのどちらも私のキャパシティーを完全に超えていると判断せざるを得なかった。

ジャーナリストとしての意地、脱落者への容赦ない冷たい仕打ち・・・・・猛スピードで走る、止まらない電車に必死でしがみついているようで、傍で見ているこちらまで息苦しくなるようだった。降りるときは、死ぬ時なのだ。

 

その後も、記者の方の自殺・若くしての突然死の報はポツポツと耳に入ってきた。

40代という若さでガン死した方も、複数存じ上げている。この方たちの日頃の食事や睡眠などの環境を考えると、これも労災の一種なのかもしれない。

 

記者職すべてをフリーランスの業務委託に

NHKの女性記者が過労死した背景について、そのご両親がいろいろ思いの丈を訴えておられるとか・・・・・自慢の娘さんを亡くされて、本当にお辛いことと思う。

ただ、むごいことを申し上げるようだが、ご両親は記者(=ジャーナリスト)という仕事をあまり理解されていないのではないだろうか。

この仕事は「月150時間残業させた」とか、「いや200時間いってた」とか、そういう次元で語れるものではない。命を削り、ただその執念によってのみ対象を追いかける仕事だ。それが理解できないのなら、この仕事に就くべきではない。

せめて、この女性の場合は、途中でしんどいと感じたら、正社員という立場を活かして、記者職以外への配置転換を申し出るべきであった。

 

イスラム国に殺害されたジャーナリストの後藤さんを思い出して欲しい。過労死とは違うが、あの死に方を本望として、後悔しないのがジャーナリストの正しい在り方だ。

彼が、もしテレビ局に属する記者だったら?間違いなく「従業員を危険にさらした」と、会社の安全配慮義務が問われる方向へ流れたであろう。なまじ正社員という立場があると、この職の本質が見えなくなるのだ。

 

記者という仕事の厳しい側面ばかり書いたが、そうでもない部分もある。

たとえば、マンガ「美味しんぼ」の主人公・山岡さん。ひどく気ままな彼の勤務態度にびっくりするだろう。あれでは普通の会社は勤まらないでしょう。マンガとしてのデフォルメあるとしても、記者の仕事の自己裁量の大きさがよく表現されている(もっとひどい勤務態度の者も、現実には存在する)。

NHKの記者たちも例外でなく、時間が空くとソファに転がって昼寝をしたり、漫画を読んだりしている。ネイルサロンへ行ったり、買い物をしている女性記者も知っている。時間が許せば、勤務中にまったりできる環境なのだ。

付き合いも多いので、仕事という体裁で飲み会やパーティーに出ることもしょっちゅうだ。事実、この女性記者も、亡くなる何時間か前に職場の送別会に出席していたという。

基本的に勤務時間のすべてをパンパンに詰めて働き通す仕事ではないので、自己管理を徹底しておけば、かなり身を守れるはずだ。

しかも、NHKの場合、給与は他の職種より圧倒的に優遇されているし、昇進のスピードも2割ほど早い。

こういう細かい現実を考えると、ちょっと印象が変わるだろう。この職には正社員という雇用形態はそぐわない気がしてならない。無用な軋轢を生まないためにも、すべての記者をフリーランスの業務委託とすべきだと思う。

 

「受信料で運営されていながら、ブラックなんて許せない」という批判もある。これについてはまた次回・・・・・。私は、NHKは最後の伏魔殿(=税金泥棒)だと思っている。