映画* かもめ食堂

2006-10-31 テーマ:映画
映画っていうのは、だけで楽しむものではないんですね~。
画面を見ているだけとは信じられないほど、においや味、その土地の空気までが感じられるような、まさに五感を刺激されまくりの104分です。

フィンランドで和食の食堂をひとり切り盛りするさちえ(小林聡美)。

かもめというよりは、閑古鳥が飛び交うような、だーれもこない食堂だけれども、淡々と毎日店を整え、客を待つ。

日本かぶれの青年が通うようになり、気付くと日本からやってきたミドリ(片桐はいり)やマサコ(もたいまさこ)が、店を手伝うようになる。

いつしか、かもめ食堂は少しずつ客が増え、ついに店内満員の日も迎える・・・。

バップ
かもめ食堂

フィンランドで知り合う日本女性三人は、それぞれに国を出て行くに至る事情や背景があるらしい。

幸福に溢れているわけではないというのも、わかります。

きっとつらいことや悲しいこともたくさん胸のうちにあるに違いない、と。

でも、そのあたりの事情については、ちょっとうかがわせる程度にとどめ、くどくどした説明は一切ないんですね

そのすっきりしたところ!

過去がどうこう・・・ではなく、現在をこの三人がどのように生きようとしているか、更にこれから先どのように生きていくのか、

そちらだけに焦点を絞ってあるところ!

とても潔く感じられました。


主人公のさちえは特に、

自分が一生懸命やっていれば、なんとかなると思う。

それでもどうにもならなかったら、その時はその時!

と、くよくよと思い悩んだり、あれこれ先のことを思案する様子も見せずに、淡々と自分の道を歩いていくように見えます。

内心はどうあれ、見せないところがミソ。

また、人のことを必要以上詮索したりすることもなく、でも必要とされている手は暖かく差し伸べられるような、距離感をうまーく保ってやっていけるところも、とても素敵でした。


わけありな様子で、ナゼかいつも店内のサチエを窓の外から睨み付けているフィンランド人のおばさん。

彼女は過去をふっきれずに悲しみの底にいたのだけれど、かもめ食堂に来るようになり、これらの女性達と関わりあうようになって、過去をふっきり、どんどんキレイになっていくんです。


お店がお休みの日に、このフィンランド人のオバサンを含む女性4人で、限られた季節の太陽の光を眩しく楽しみながら、優雅に昼間のビールを楽しむ場面。

ワイワイガヤガヤ騒ぐわけでも、おしゃべりに夢中になるわけでもなく、4人4様に満足げな表情を浮かべ、を楽しんでいる様子は、本当に皆美しく、見とれてしまいました。


さて、この映画で一番過去にとらわれたままでいる様子なのが、男性であったところも面白いと思いました。


おそらくかもめ食堂に通い始めるお客さんは、それぞれに楽しいこと・愉快なことばかりで人生過ごしているわけはない。

それでも、サチエが丁寧に心を込めて淹れたコーヒーと手作りのシナモンロール焼き魚や鶏のから揚げ、日本人のソウルフードと表現される作りたてのおにぎりを味わうときには、誰もが幸せになれるのでしょうね~。

心のこもった食べ物の力ってすごい。

さちえの生き方、「かもめ食堂」の清潔な様子、フィンランドの短い夏の間の透き通った明るい澄んだ空気、

全てがすっきりしていて気持ちよい!

間で入る音楽がまた、非常に適切な感じ!

ときおり挟み込まれる、暗喩的なちょっと不思議な場面もあざとすぎない程度と感じました。


この映画、災害が起こるわけでもなければ、人っ子ひとり死ぬわけでもない。

そうしたショッキングな事件を含む、起承転結のはっきりした映画を期待して観に行く人にはがっかりされるのかもしれません。

せいぜい、この中で起こる事件といえば、

旅行中、荷物がなくなった・・・とか、

強い酒(あれ、なんというスピリッツなんでしょうか?)をあおって、ぶったおれる・・・とか、

その程度ですから。


でも本来人の生活ってそういうものなんですよね。

誰かが死んだり、大きなサスペンスがあるわけではなくても、その人本人にとっては迷ったり、決断したり、決別があったり、出会いがあったりしながら、少しずつ少しずつ前に進んでいく。

そうした普通の人の普通の生活を、うまーく切り取ったような素敵な映画です。


小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ

三人の女優さんの息のぴったりした演技には、脱帽です。


サチエのきりりとした表情

ミドリのびっくり顔

マサコのにんまり笑い

脳裏にくっきりと残ります。


キャスティングで半分成功が約束された・・・のかもしれない。

ちょっとしたユーモアに溢れていて、終止笑いに溢れた映画館となりました。


(おまけ関連記事に続く)




コメント

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1 ■ご覧になったんですね

映画館で観客とともにこの映画を「味わえた」マダムさんの満足そうなお顔まで浮かんでくるレビューですね!シンガポールでの評判はいかがですか?
関連記事まであるのですね!
とても楽しみにしております

2 ■京都で

上映していたのに見逃したんです。
キャスティングからして、おもしろいに違いない、と思っていたし、評判も良かったのに。
あ~・・見てもいないのに3人の映像が浮かんでくるようです。DVDで絶対見よう。
小林聡美さんは映画によく合う(映画ならではの味が出せる)女優さんだと思っていますが、
あまり出演がないですね。

3 ■しゅぺる&こぼるさん、

ほーんと、満足!でした。
フィルム・フェスティバルの一環だったので、上映が一度しかなかったので、満員御礼の大賑わい。 反応は上々でしたよ。
関連記事、今日書くつもりですので、また両方まとめてドーンとTBしに伺う予定ですよ。

4 ■nowanowa さん、

小林聡美さん、演技の上手な味のある女優さんだと思っていましたが、なかなかお美しくもあるんだなあ~と改めて認識。
ちょっと鈴木京香と似てるような・・・。
この三人の女優さんが出演した「すいか」というドドラマがあると知って、そちらもすごーくみたくなってしまいました。
「かもめ食堂」はDVDが出たら、是非ご覧になってください!!

5 ■いま見てきました!

日本の良さを噛みしめるには、はるかかなた、ヘルシンキまで飛んで行かなくてはならないんですね。北欧が舞台というと、気障な商社員や非現実的なサスペンスぐらいしか思いつきません。小津安二郎の「お茶漬けの味」「秋刀魚の味」の世界を女性だけですっきり見せてくれましたね。食器や家具の美意識が小津的です。日本の昔の家にもきりっとした美しさがありました。障子とかとかふすまとか。ソウル・フードという見立てが素晴らしい。おむすびは日本人なら誰でも何かを思い出すまさにソウル・フードですね。え?ソウル・フードと言えば焼き肉とキムチじゃないかって?ま、そうですけど・・・。

6 ■映画侍さん、

「かもめ食堂」を観ているのは、圧倒的に女性が多いような感じで、
「男の人が観ると、どう感じるのかな~」
と思っていたところです。
小津監督をもってくるところが、さすが侍さんですね! おにぎりや焼き魚といった、日本の普通の食事と、北欧風のインテリアや食器がしっくりと溶け合っていましたね。
北欧風のインテリアって、実は本当に使いこなすのが難しいような気がします。
カラフルで明るくて、形はシンプル。
下手すると、貧乏臭いチャチな雰囲気を醸し出してしまうんですよね~。
その土地に根付いたデザインは、その土地でこそ一番しっくりと輝いて見えるということもあるかもしれませんが・・・。

7 ■こんばんわ^^

とっても素敵な作品でした。
女優お三方ももちろん、出てくる方がみなさん生き生きしていますよね~
今を生きるって、素敵なことで、まさにそれが描かれている作品だと思います。
手元に置きたくなる作品ですね。

8 ■苗坊さん、

今を生きる、今を楽しむって、簡単なようで実は難しいかもしれない。
ついつい、過去にひきずられたり先のことばかり気になったり・・・。
かもめ食堂の女性達を観ていると、ハッとするものがありますよね。 
「手元に置きたくなる」 ほんとそうです!!

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