- あまりにも大それた妄想ですが、私は「スパイ」家業にひそかな憧れみたいなものを感じていた頃があります。
- 職業=スパイ
- なんか、カッコイイ! それだけなんですが。
でも、この本を読んで、それがいかに自分にはあり得ない話なのかがわかりました。
映画「ミュンヘン」の中心となるイスラエルの組織「モサド」に関する本として、中東にお住まいのyookoo さんが書かれた 紹介記事 がきっかけで、興味を持った本です。
イスラエルの諜報機関「モサド」で情報員として働いていたビクター・オストロフスキー氏が、実話として書いたこの本。
「モサド」として勧誘され、様々なテストを受けた末に組織に入り、トレーニングを受ける話。
本格的に組織員になったあとの仕事振り。
情報員、非常に神経と頭を使う仕事です。
とにかく、頭の回転が速く機転が利くことが第一。(←私、この時点ですでに素質なし!)
例えば、組織に入れるかどうかのテストとして、
「あそこの3階のバルコニーが見えるか?
ここに3分立って考えるんだ。 それからあのビルに行って、6分以内に、家主なり借家人と一緒にあのバルコニーに立って見せてくれ。
グラスに一杯の水を手に持って。」
なんていきなり言われても!!
一体何を口実にして、不審に思われることなく、言われたとおりの状況を作り出すか??
こういうことが、一瞬の間に考えられなくてはならないわけです。
そして、どんなウソも堂々と顔色を変えることなく、言える素質。
さらに、ウソがばれても、警察に捕まっても、絶対に自分がモサドの人間であることをもらさない口の固さと根性。
いやー、出来ませんって。
適正テストに合格した暁には、こんな無理難題とも思える課題を次々とこなし、ちょっとした間違いも命取りになるという研修期間が待ち受けています。
もう、こんな生活イヤ!
になるどころか、研修生達はどんどんはまって行くんですね。
「他の生き方など、もう考えられないように思えた。
そんなことになったら、どうしよう?
モサドを追放されたりしたら、アドレナリンをかきたててくれるようなものがあるだろうか?」
こういうスリルに満ちたことを日常としていると、アドレナリンが放出する状態が病みつきになるようです。
イスラエルという国は、周辺のイスラム国の間で特異な存在のため、非常に神経を尖らせていて、
いつ、だれに攻撃されてもおかしくない
周りは皆自分に対して敵対心を燃やしている
という意識で、諜報機関の活動にも力を思いっきり入れているのでしょうか。
経済的にも、軍事的にも自国を守るためには何でもためらわずにする、といった感じ。。
しかし、ほかの国も似たり寄ったりのことをやっていることも、仄めかされていて・・・。
後半は、そのあたりの国際的な裏取引のやりとり、駆け引き、騙したり騙されたりの暴露話満載で、唖然とします。
こんなこと、バラシテいいの??
とドキドキしていたら、どうやら、英語版は禁書になってしまっていて、日本語版でなら(しかも中古でのみ)手に入るのだそうです。
国々って、こんな汚いことしてるわけ??
これ、「告白」ということだけれども、実話??
そんな疑問を持ってしまった私が、あまりにも世間知らずなだけで、普通は暗黙の了解なのでしょうか??
非常に驚きに満ちた、興味深い本でしたが、惜しむらくは翻訳のせいか、原文のせいか、ちょっと分かりにくい部分アリ。
ビクター オストロフスキー, クレア ホイ, Victor Ostrovsky, Claire Hoy, 中山 善之