サルバドールに花を
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私は赤が嫌いなのに。

秋晴れの今日だが、私の心はさながら梅雨のようなものだった。


「悪いけど、今は急がしんだよ。わかってもらえるかな?」


忙しいのはわかる。毎日テストだ、実験だ、バイトやって帰りが遅いのも知っている。だからこそ、休みの時だけでも私にかまって欲しいのだ。


「休みは俺だって休みたいんだよ。ユウコだってそうだろう?疲れた休むだろう?」

「そりゃ、私だって休みたいわ。だけど、ユウトと会えないから寂しいし、何よりもう何週間もしてないでしょう?」

「そりゃ、してないけど・・・たまの休みぐらい、ゆっくりしたい。」


我が儘言ってるのはわかってるけど、止まらない私の言葉はいつもの言葉へと急がせる。


「忙しいのはいいけどさ。そんだけ忙しいなら私にかまっている時間ないじゃない?一体何のために付き合ってるわけ?私がどこで何していようがいいわけ?」

「誰もそうとはいってないだろう?ただ、今は忙しいんだよ!」

「わかった。ユウトは自分のことをしっかりやりなさい。もう疲れたわ・・・」と言葉を切って外に出ようと思った瞬間のことだ

「正直、今は自分で精一杯なんだ。あれもこれもうまくやろうと思ったのが間違いなんだ。俺から今日はいうけど、距離をおこう。」


言われた瞬間に血の気がうせて、笑いながら「そうだね。そうしたほうがいいよ」と言ってしまった。じゃあね。ばいばい。


それで、終わらせた恋からまだ2週間しかたってないが、ユウトからは一度も連絡がなかった。



いつもの帰り道、ふと何気なく寄った喫茶店。こんなところにこんなのがあったかな?と思ったその場所はいつも通る道なのだが、路地裏の隅。日が当たらないその場所はいつも目に入ってなかったのかもしれない。そうだよね。いつもこの道はユウトの顔を、見ながら通りすぎていたし、最近では下ばかり向いているから。


ブレンド650円

アメリカン650円


サルバドール あなたの年


一番最後に書いてあるこれはなんだろうと思った。店員さんは若い綺麗な女性だ。私より2つか3つしたかもしれない。高校を出て大学に入ったばかりの顔だ。鼻筋が通っていて、目が大きい。髪の毛は綺麗な栗色でまつげは長い。白いシャツがとてもピンと張っていて、腰には黒いエプロンをつけている。

話しかけようにも彼女はずっと黙って黙々と珈琲の粉を丹精に挽いている。その香りがこちらまで届いてきそうだ。そのコーヒーミルを挽く彼女の手は白い。だが、手のつけ根。少しだけみれる場所にやけどのようあざがある。


私は何も考えず、サルバドールとブレンドと言った。彼女は話したかどうかわからないほどの時間に「サルバドールも珈琲ですよ。」といってとっさに「じゃあブレンドはいいです」といった。そこまでの課程なのだが、私には会話したと言う実感もなかった。そして相変わらず彼女はミルで豆を挽いている。


その店の中は古いわけではないが、カウンターの席が主で窓際に2席だけあり、テーブルの上には一輪のバラが置いてあり、反対側には絵が飾ってある。絵はバラと金魚が主体の構図なのだが縁を取るようにへらで削り取ったような独特の手法で描かれいる。


「お待ちどうさま。」


振り向くと彼女はその顔つきとは似合わない無表情さで私の前に珈琲を置く。


サルバドールはエスプレッソカップに入れた赤茶色の液体だった。私は何も不思議に思わず、その苦い液体を飲んだ。少しだけ男性の精子の味がした。


お代は年の分だけでいいと言われ、私は25円だけ出した。「ありがとうございます」と言った彼女は少しだけ微笑んでいた。



外を出るとたいした時間もいなかったように思われたが外は真っ暗だった。今日も一日が終わる。携帯には彼からのメールもなければ電話も一切なかった。


家に帰宅してみると捨てたはずの家具が家においてあった。それは友達からの、いや元彼氏が私に買ってくれた白い本箱だった。彼が大好きな建築家さんから輸入して取り寄せたものだった。丸くてとても木には見えないのだが、かすかに触るとごつごつとしている。


不思議なことはコレだけではなかった。


会社に出社すると結婚退職したはずの先輩がまだ会社で私の世話係をしており、同僚で彼氏がいないとぼやいていた彼女が結婚していたり。理解不能だった。


携帯には元彼氏から普通に電話がかかってきて、「昨日何してたの?電話してたんだよ。仕事が終わったら部屋にいくから。」と用件だけぽんぽん言われて、私はうなずいていた。


ユウトは?私の中でかすかに彼の存在がまるで幻のように感じられてきた。


携帯のメモリーの中にはしっかりと楠由宇斗とある。ちゃんとあって聞いてみようと思って、電話をかけた。


コールが一回、二回、3回、4回・・・・・・「はい。もしもし」


ユウトの声だった。「あの、私。ユウコだけど・・・」


「え?ユウコ?えっと・・・・間違い電話じゃないですか?」


「え?なにそれ?もう別れてると思うけど・・・あなたの彼女のユウコだよ。」


「え?別れてるけど彼女?よくわからないけど、僕にはもう結婚している女性がいますよ。やっぱり間違い電話じゃないですか?」


なにそれ?


電話をブツンと切って、携帯を見てみた。ユウトからの最終コールが2週間前なのは確かであった。



その後、普通に家に帰り、元彼氏であったはずのソウジが普通に家に来て、話をしたがずっと私と付き合っているように私に接する。彼は私が知っていた頃よりも出世していて、十分私一人ぐらい養っていけるだけの財力を持っていた。付き合った頃はお金がないって騒いでいたのに。

でも、一つだけ彼もおかしいと思ったらしく「携帯変えたの?」って言ってきた。前の私の携帯は赤だったらしい。私は赤が嫌いなのに。


表示画面に「母」と短くあった。

帰り際にちょっとと呼ばれた。


前から少し気になっていたのだが、やはりと感じ、そして思っていた通りの言葉を聞いて、考えていた通りに彼女に伝えた。


彼女は前から僕のことが好きだったのだ。そしてそれも気づいていた。


多分、気づかせて自分の存在を僕にわかってもらいたかったんだろうけど、しょうがない。僕には今のところ彼女というか特別な人はいらない。


「そういうわけだから。」


と短く言ったら彼女は軽く笑顔で「ごめんね。ありがとう」と言った。そうだよね。きちんとすることも優しさだってことを彼女は知っていた顔だった。悪気もせず、馴れ合いもなく、きちんと思いを告げる。それって難しいことだよね?と僕は彼女に言いたかった。いや、わかってもらいたかったのかもしれない。


秋の人事異動で、僕は海亀らしく、海外に行かされた。

同期の連中は「良かったな。栄転じゃん!この御時世によくやるな」とか「どうせ、語学ができるだけでしょう?」とか「ははは・・・まいったなぁー」なんでよくわからないことを言う奴がいた。


そして当然のごとく日本に心残りなんてあるわけもなく、人事部長にきちんと正式に通達して、僕は12月31日からNYに移動がきまった。「快く承諾してくれて助かるよ。とりあえず現地入りまでに事後を部下に通達しておいてくれ」と言われて僕ははいと言った。


つい先日僕がふった彼女からはメールで一言だけメッセージが刻まれていた。

「おめでとう。頑張ってね。関係ないけど、応援してます」と。

苦笑いして、関係ないけど言ってくれるのは嬉しいものだなと思い、胸がちょっとだけ熱くなった。


携帯がブーとバイブを繰り返していて表示画面に「母」と短くあった。


今日の出来事を軽く話すと「そうかー。良かったね。仕事で報われるって嬉しいもんだよね」とまるで恋人のように母は言ってくれた。僕も「うん。日本を離れるのは寂しいけどせっかくだから行ってくるよ。」となんでもないように言ったつもりだった。母はわかってくれているのだろうか?僕の気持ちを。


次の日に会社に出社してみると同期の男が一人死んでいるのが発見されて会社は騒然となっていた。彼は同期の中でも東京大学出と言うわけでエリートに位置づけされていたのだが、僕に先を越されて目の敵にされていたのは知っていた。だが、そんな事実を知っていたのだが、まさか会社で死なれてはこちらも困った。

遺書には僕のこと、そして会社に対する不満。そして僕が先日ふった女性について軽く触れられていた。


死後の彼はこういっていた。女性には冷たく見放され、会社でも評価も著しくない。そして何よりあの男に負けたのが悔しいと。腹いせに会社の裏帳簿がきちんと乗っていたことも彼らしくしっかりしていた。


そしてどういう経緯で知りえたのか不明だが、僕と母。いや、継母と恋仲であることも添えられていた。

Beijing Night Cruising -yi-

4月の中旬である今日このごろだが、北京の天気は妙に春っぽい。春の定番である「綿」が昨日北京の空を舞った。完全なる春の到来をつげるこの「綿」は僕を楽にさせるが、夏の到来は今年も早いだろうと予期して、気分を憂鬱にさせる。

 

北京の夏は地獄である。最高気温40度を記録、夜の平均気温は30度前後とかなり熱くなる。幸いにしてここは砂漠と同じような不毛な土地なので湿気がない。カラっとして天候は肌を焼くというより、焦がす。いうならば七輪の上の秋刀魚というべきか?とりあえず、僕らはよく焦げる。

 

昨日の夜は正直とても辛かった。サラがクラブで見ず知らずの男と酒を飲んでいたのだ。サラはとてもおとなしい女性だったはずだ。はずだというのは僕が知ってるかぎりだからだ。いつも向こうの方をぼーっと眺めているように見え、質問しても短く返ってくる。授業の態度は一貫して真面目。趣味はDVD鑑賞と本を読むこと。最近は友達同士でプールに通ってるみたいだ。彼女に言わせれば中国語で「jienfei(減量)」といわれて、ぷいっと横を向く。それが僕の興味をさらに引き正せる。

 

大学の中にあるこのカフェに僕はよくいる。なんでいるのか?と聞かれれば何故だろう?ここにはなんだか友達もいるし、こういう場所は北京にはないからだ。この特徴というべきか中国人が少ない。西洋人や黒人がコーヒー片手に勉強していたり、タバコを吸って、話に花を咲かせている。いる黄色人種は圧倒的に日本人が多い。韓国人や他のアジア人は見受けられない。なので店の中では中国にいながら英語と日本語の声でいっぱいになる。

 

「ゴンヨウ何やってるの一人で?」店に入ってくるなりにぶっきらぼうに自分の名前を呼ぶ方に目を向ける。騒がしい男で関西出身の藤だ。「また一人でコーヒー飲んでるの?あきへんねぇ~」とよくわからない方言を使う彼は関西人になりきれない微妙な位置なの福島出身であることを最近知った。彼は福島が好きだと言うが、彼の言葉は関西なのか関東なのか見分けつかず、さらに福島の良いところは?と聞くと必ずと言っていいほど「星が綺麗」と答える。

アホだ。そんなの福島だけじゃなくて北海道でも沖縄でも同じだろう?というと「いや違う」と反論する。まぁ根はいい奴。ここでの遊び友達で他の場所ではあまり遊ばない。専ら遊び友達。いい奴だ。

「昨日なサラいるだろう?サラがさ、クラブで男と楽しそうに酒飲んでたのよ。」と僕は昨日の状況をただ、淡々と告げるだけにした。とりあえず、僕がサラに興味を持ってることは知られたくない。ここでのそういう発言は光が地球を一周だけ回るよりも速い。

「あーサラやろう?なんかしらんけど、男できたってクミがいってたぞ。」

「男?彼氏ってことか?」

「彼氏?あの男がサラの彼氏なわけか?」

「みたいやねぇ~俺あんま興味ないけど」と帽子の下から笑顔と歯をむき出しにして笑うこいつは本当にクミ以外の女性に興味がない。俺がこいつのことを知ったときから、こいつにはクミがいて、クミが大好きだった。ただ、俺には本当のことをいえないが、クミが他の男と腕を組んでいたり、噂では浮気してるってことは藤にはいえない。藤はクミのことが大好きなのだ。クミがそんなことをしているとはとてもじゃないけど、いえない。そしてクミはその事実を藤に言わないのか?と問いただすと「だって私の21の身体を一人の男で縛り付けるのは身体に悪いわ。だから一人じゃ無理なの。」と自分の理論を展開。藤のことを悪いと思ってないのだろうか?でも、他人の恋愛だ。あまり深くかかわりたくない。もうあんな思いは嫌だ。智里のことを思い出すのはもうやめたい。隆一はどこで何をしているのだろうか?

 

とりあえず、昨日の男がサラの彼氏ってことはわかったがあのサラがまさかあういう男と付き合うとは思わなかった。いつも冷静で何を考えているのかわからないサラがまさかあんな・・・・

いやでも、そんなのは僕の知っているだけで、彼女の本質はわからない。とりあえず、保留。家に帰ろう。

 

「じゃあ、俺帰るわ~藤!また今度な!」

「うん!今度ね!」

このカフェから家までの距離は遠くない。歩いて15分といったところだろうか?グラウンドでは皆、サッカーやランニングで汗をかいている。バスケットコートでは必死にバスケをしている中国人がいるが、シュートの打ち方は男の女を同じで両手で投げている。いつも思うのだがなぜアレでシュートがきまるのだろか?ある程度のレベルまででは、同じ形を何千何万とこなしていけば成功率が上がり、その形でもいいのだろうか?

「bu han yi su!na gei wo qiu ba!!(すいません!ボール返して!)」と声がする。見てみると韓国人がバスケをしている。格好だけはNBA選手のような格好だが正直やせているか太っているかなのでとてもじゃないけど、バスケット選手のような体型ではない。「xing!deng yi deng!(わかった。ちょっとまって!)」僕はボールを投げて返そうと思ったが一回だけシュートをしてみたくなってコートの方まで歩いていった。

バスケットコートは全部で7~8面ぐらいある。下はすこし柔らかい素材で、できていてボールはよく跳ね返る。「zu you yi cu da han ne?(一回だけシュートしていい?)」と中国語で聞いたが彼らは聞き取れなかったみたいだ。所詮韓国人だ。勉強もしないでバスケしてゲームして酒のみに行って、留年すれば本国に戻る前の決まり文句が「wo ying gai qu dangbing(兵隊になりにいかなくちゃいけない)」だ。韓国人には兵役義務がある。これがある理由については聞いた限りでしか知らないが一つにはやはり「北」の存在があるらしい。北の脅威のためにいつでも何かしらのアクションができるというのが韓国の立場だ。それを馬鹿らしいとは思わないし、お国柄なのだ。台湾にもある。ない日本で僕らはいつかどこかで誰から侵略されるとは思ってはいないのだろうか?

「keyyi(いいよ)」と誰かが言った。「xing!shie!(うん。どうも!)」と短く言い、コートのはじ。スリーポイントを決めれるこの場所が俺の得意のシュートだった。隆一と俺はいつもバスケをしていた。

オー!!と歓声がたつ。俺のスリーポイントは一発で決まり、パシュっと音をさせた。韓国人も笑って口々にすげぇ!すげぇ!といっている。ありがとうともう一回礼を言ってバスケットコートを出た。一発のシュートだけなのに妙に緊張したようだ。背中がちょっとだけ汗ぼったい。

 

「あいかわらずいい腕してんのね!」とKEIKOが声をかけてきた。「KEIKOか。何やってるの?」とKEIKOはジャージ姿で髪の毛を一本に縛って背の高い女だ。「バレーボールだよ。いい加減うちらと一緒にバリボしようよ。」と誘ってくる。KEIKOはバレーボール部のキャプテンを付き合っていたが、ほどなく別れ、今はフリーなのだが、このキャプテンが曲者で女をすぐに作った。KEIKOは別段きにすることもなく「まぁもう別れたし関係なーし!」と強がっているがたまに俺に涙を見せる。多分、俺のことがすきなのだろう。でも、付き合うとかはしない。この関係でいいのだ。「悪いね。今はふらふらしたいのよ。」とおどけていった。「そうか。うん。わかった。」と短く言い「今度また一緒に飲みにいこうね!」と言ってきた。俺は軽く「おう!」と返してKEIKOを見守る。

 

学校を出てからは誰にも会わずに自分の家の前までたどりついた。マンションの中にはいって一階のドアが開いた。一階はアメリカ人のエヴォが住んでいる。あまり仲良くないが悪い奴ではない。いつも部屋の中はマリファナとタバコ臭く。いつも誰かがいる。それでいつも女が代わるがわる出入りする。エヴォは顔もかっこよく背も高く、極め付けに金もある。女がよりつかないわけがない。だが、出てきたのはエヴォではなかった。

帽子を被っていて髪の毛を金髪に近いほど抜いていて、耳には大きめなピアスをつけていて、やぜぼったいこの男はサラと昨日一緒に飲んでいた男だ。

それで、彼の腕にはしっかりとつかまっている女がいた。だがサラではなかった。

Beijing Night Cruising -kaishi-

五道口の駅横にあるビルの中にあるに日本料理屋で時計を最後にみたのが11時だったはずだ。とりわけ楽しいという呑みでもなく、ただ連続的にコップの中にある液体と対峙して自分の頭を不透明にさせて、最後に残ったのは私という存在ではなく、私の中にいる私に会ったという感覚のみだ。

 

かっこよく言えば私の中に私がいて、普段は会えることもなければ話すこともできない私の中の私であるが、酔った時や追い込まれた時などはあっちのほうから話しかけてくれる。

 

声にもならない声なのだがはっきりと私は彼or彼女の存在を掴み取れる。

 

北京の北西部に位置するこの場所は俗に言う韓国人街で多くの韓国人と場所が場所なので大勢の留学生という人種を目にする。ここでは例え違う人種であっても留学生に代わりなく、私たちは北京での留学生で仲間なのだ。

 

「どこにいくの?」とジェフがいう。彼の中国語もはっきりいってヘタクソなのだがそれはお相子である。

「トイレだよ。一緒にいく?」と私はジェフにいう。

ジェフは西のどっかのヨーロッパから来ている男で英語も話せなく、自分の母国語と中国語のみとう極めて特殊な人種だ。愛想はいいが、女好きだ。

「男と女の部屋は違うよ。」と顔を赤らめて真面目にこういうことを話す男には悪い奴はいないと私は思うのだが、それはそれで人種が違う彼には通用しない。彼には彼の策略があるのだ。

その策力の通り、私は彼を真面目な人と勘違いしてしまう。いや、彼は女好きだが、けっして嫌味ではない。ただ、いい人で女が好きなのだ。

 

私の中の私はこうささやいている気がする。「ここまでだよ」って。何がここまでのなのかそれは私にはわからないが、多分もう呑むなといっている。7時から呑み始めてさっきの時計で4時間たっている。いい加減呑むのはやめて部屋に帰って寝ろといっているのだ。

 

「お!久しぶりじゃん?元気?」トイレの横ですれちがった男は私はよく名前を覚えていない。いや、名前なんて聞いたことすらしらない。この小さいな街では一回だけ会った男や女なんて数え切れないぐらいいる。

「うん。元気」短く答える私に彼は短くこう言った。「おトイレは中に入って右だよ。」とそんなことは知っているはずなのにわざわざ言うこの男を私はただうざいと思った。

 

トイレの中はいつも混んでいて、臭い。そしてこの風習でのトイレの使い方にいつも腹ただしく思っている。「なんでこの国は紙を流せないわけ?」と誰もが思っているし、誰もがむかついていることなので、あえていわない。もうそんなことを言う前に嫌なら流せばいい。どうせ、私には関係ないと皆決め込む。

 

トイレを出て、さっきの男がユミとツァイフォンと話している。そうか、彼のことを皆しっているんだ。席に帰ってきたら、ツァイフォンが「さーらーの友達面白い!」と私に言う。私の名前は沙羅なのに、日本人の友達がさら、さらというので皆が私の名前をサラダのサラと勘違いして、私の名前は「サラダ」になってしまったのだ。

 

彼はよく言えばおしゃれで悪くいえば下品の中の下タイプのカバみたいな顔をしているが、かっこいいとおもってるのかどうかしらないが、いつも帽子を斜めに被っていて、首からは長めのネックレスをかけている。中国語もうまいとはいえないし、はっきりいって何を習ってるのかも不明で、なぜここにいるのかも不明。でも、とりあえず、愛想良くしておく。嫌われたらあとでめんどくさい。

「さらさ~、いつもよってるよねぇ~」とカバは言うのだが私は呑んでも頭の中がクリアになるタイプでどちらかと言うよ無口になる。私は酔った時だけ会える彼or彼女の出現が楽しいだけだ。

「そんなことないよ。」と短く答える。私に話しかけないでというオーラを出すわけだが、彼はそれに気づかない。やっぱりカバだ。紅く染めたほほで鼻の下をべろぉ~っと伸ばして、きもちわるい。

 

「じゃあ、みんなでクラブいこっか~!」と威勢良くジェフが言った。別段珍しいことでもないし、近いし、とりあえず飲みだけだ。「ほらサラもいこうよ。」とカバは私の腕を掴む。ジェフがそれを見ていた。

 

クラブの場所はここからそう遠くない。いや近い。歩いて5分の距離だ。男と女7人ぐらいでだらだらとそこに行く。日本人の私はフリーパスがあるので、平気だが他の外国人はエントランスフィーを払っている。なんでみんなこんなところにきたいのだろう?私は彼or彼女が苦しい悲鳴をあげているのがわかっている。

 

中はいつもむせ返るような煙でいっぱいである。ここはどちらかというと中国人が多い。わけのわからない格好をした中国人と女を選んでいる黒人と何しにきたんだかわからない格好の韓国人でいっぱいだ。日本人はいない。皆、飲みでそのあと帰るのだ。私もその一人。部屋に帰ってシャワーを浴びて、ゆっくりしたい。肌も悪くなる。足もむくむ。飲んだあとの顔なんて最低なのに、こりづに飲みに行く。ただ、彼or彼女に会いたいだけだ。

 

カバがカルーアミルクをもってきれくれた。配分が悪くて水っぽい味だがわざわざ買ってきてくれたので「おいしい」とまたもや短く言った。「さらってさ~どういう感じかくの?」と耳元で大きな声で言った。

「え?聞こえない!」ここではHIPHOPが大音量でかかっているのでいつも聞き取れない。さらに大勢が詰め掛けているので密集してしまう。

「だから~サラの漢字!」

「私ね!サラだけどsaluoだよ!」と大きく言った。

「は?いみわかんねぇ!どういう風にかくの?」とバーテンダーから紙とペンをもらってきたみたいで、私にそれを預ける。

「こう!」と書いた私の漢字は「沙羅」と書いた。

「じゃあさ、なんでみんなサラって呼んでるの?日本語名で呼んでるの?」

「ううん。サラダのsalaだよ。」

「あははは!サラダかよ!みんなベジタリアンだな!」

わけわかんない。なんでそれにベジタリアンになるわけ?暗いこの場所で男女が話しこんでいるのは私達だけじゃない。ナンパされた女とする男でいっぱい。でも、みんな酔ってる。結局誰でもいいのかな。やっぱりここでは何もないし、酒と異性しか遊ぶものがないもかもしれない。

 

カバは自分の名前もつげず、また近くにいた友達に声をかけて下のダンスフロアへと消えていった。私はとりあえず、カウンターで一人で配分が間違っていて水っぽいカルーアミルクを飲んでいた。

 

そうだな。今日は何を話そうか?と彼or彼女は言った。何でもいいよ。とりあえず、暇なの。と私は答える。何でもいいって事はないだろう?早く帰れば?だって、みんなまだいるしさ。そんなこといってるからいつも後で後悔するんだよ。わかってるけど、どうしようもないでしょう?じゃあずっといるの?わからないわ。そうやって男まってるんでしょう?なんで?そんなことないわよ。嘘つきな。そうやって待ってるんだよ。誰かを。誰かって誰よ?誰かだよ。

 

私の中の彼or彼女はイジワルに、そして執拗に私に質問を投げかける。私はその質問にあきもせづに必死に答えを探す。一人で飲んでいるのに誰も声をかけてこない。私はずっと彼or彼女と話していられる。

 

「ライター貸してくれる?」と日本人の男の人が声をかけてきた。ちょっとかっこいい。「私タバコすわないから」と短く答える。「お酒は何飲んでるの?」と聞かれる。私はあせって「今はジントニック」と言う。「横すわっていい?」。「うん」と私は答えた後で、ナンパされたんだと気づいた。

 

彼は最初に「大学は?」「何勉強してるの?」「着てどれくらい?」「友達と着てるの?」「家は?」「携帯は何を使ってるの?」とばらばらと質問してきて、それで私は短く答えるだけになってしまった。彼は酔っているらしく。「そうなんだ~」としか言わなかった。私があなたは?って聞いても秘密としか答えないので、私は彼の質問にいろいろ答えて、お酒をおごってくれた。

 

どれくらい時間がたったのだろう?彼は横で私とずっと話していた。いつのまにか前の彼氏の話になり、彼の彼女の話になって、それでなんでここにいるかという話になってきたところで、私は眠たいと思っていることに気づいた。

 

クラブの中にいる客は人がどんどん減っていって、いつの間にか数えるぐらいしかいなかった。ジェフもツァイフォンもカバもみんなどこにいったのだろう?

 

「そろそろ帰る?」と聞かれて、「そうね。そろそろだね」と言った。店を出ると空は気持ち良いぐらい晴れていて、気持ちよかった。眠気なんて一気にさえて、彼をみたら彼も眠たそうな顔していたが「天気いいね」と満面の笑みを浮かべていた。

 

突然彼は「桜を見に行こう!」といった。「え?」という間に彼はタクシーを呼び寄せて早口で場所を告げ、私を乗せて走りだしてしまった。

 

車の中で彼は私に話しかけぞずっと気分よさそうに外を見ていた。私はなんども帰るといいたかったが、外は天気も良くて何より徹夜で遊んだ割には気分もよく、あまり深く考えないようにしようと決めていた。彼or彼女はいつのまにか姿を消していた。

 

「ここだよ!」と言った場所はどっかの大学の中だった。

「ここ?」と聞いたその場所は来たことがない場所で桜なんてなかった。「こっち!こっち!」と手招きで呼ばれてその大学の中にある建物を横に歩いていったところに小さな桜が数十本咲いていた。

「わぁ・・・綺麗。」それは見事に咲いた桜だった。薄いピンク色でまだ自分の背を同じぐらいしかないない桜の木だったが元気に花を咲かせていて、それが一斉に満開になっているその姿は私を一瞬で魅了した。ぼーっと眺めていたところで、急に彼が口を開いた。

「ねぇ、付き合ってよ。」と。私は考えることもなく「うん」といってしまった。

口にガムテープ張って、手足は私がしばってあげるから

正直覚悟はできていた。特別酔っていたわけでもない。その女性が自分のタイプであったわけでもない。それこそ、今の彼女に満足していないわけでもない。ただ、何かが僕の中の歯車を狂わせ彼女という決まった相手を今だけ心と頭の片隅にそっと置き、今。今現在横にいる女性と肩を。そして身体を寄せ合うことに僕は覚悟していたのだ。

彼女は呼び合うなら友達だ。それもごく親しい友人の一人だ。男と女の間に「何故こんなことに」とは通用しない。そこは然るべくして然るべき関係があるのだ。それは個人同士があがなえるものではない。僕は彼女から初めてほほにキスをされたときに理性と呼べるのは吹き飛んでしまった。その時はキスだけですんだ。今日は2回目だった。だから覚悟していたのも理解できる。

だが、覚悟とはなんなんだろう?浮気をする覚悟だったのだろうか?それとも、彼女と関係するという覚悟だったのだろうか?

「後悔してるでしょう?」
「してないよ」
「じゃあこっちむきなよー」と軽い笑い声がする。僕は終わったあとなのか、少し眠気がする。
「はい。」振り向きざまに一回軽くキスされる。彼女からのキスはまだ若い。自分も年を取ってきてわかったことだが、一言にうまい、下手といってもいろいろな種類の技巧がある。彼女はいわゆる遊び人で当然初めてでもない。だが、彼女は若い。オヤジ的にいうならピチピチだ。だけど、何も官能的なものはない。世の中のオジサン達が若い女性にいく理由がわからない。それとも、僕はまだオヤジの部類ではないのだろうか?

「彼女のことは平気なの?やっぱり怒るよねぇー普通」
「うん。多分ね。そっちも彼氏は怒るだろう?」
「ばれなきゃ余裕。ばれたら死刑だけど」とはははと笑っている姿をみると本当に若い。最近の女は見た目はエロイしやるのもエロイけど、話してみるとてんで馬鹿な奴が多い。自分の時はどうだっただろうと振り返ってみてもやっぱりこいつらは馬鹿だ。だけど、メイクを取るとそこには10代のあどけない姿がある。この娘たちはまだ若いのだ。
「じゃあばれないようにちゃんと口になにか入れて置けよ」
「えー私言わないもん。だってもしも彼氏に入ったらマジで別れを宣言されちゃうもん。」
「別にいいじゃん。別れれば?」
「えー私は彼氏一筋だもん」と陽気に言ってるけどなんで一筋の女がここで俺としてるわけ?
「そうかいそうかい。」と俺も別段気にしてる様子もなく言った。
「でも、彼女には言わないほうがいいよ。彼女怖いでしょう?」
「怖い。」そう俺の彼女は怖いのだ。普段は優しいくせに女のことになると五月蝿い。
「だから口にガムテープ張って、手足は私がしばってあげるから」
「なに?おまえそういのが好きなわけ?」
「えー楽しいよ。まじでエキサイティング。」

横で楽しそうに笑っている彼女をみると僕はなにもいえなくなる。彼女がせめて気づかなければいいのだが。「じゃあ、とりあえず決定ね」

よく聴いてなかったけどとりあえずYES。後は彼女に任せれば平気だ。

でも、最近の娘はわからない。あいつ俺の弟ともるし、俺の彼女も知っている。そして親とも仲がよい。防衛本能なのか何なのか。とりあえず、はっきりしていることは最近の娘は世間術が長けている。それも異常なほどだ。

俺は自分の可能性を信じたいのだ。

「よし、これでお終いだな。」

目の前にある空のダンボール箱を目の前ちょっとだけ一人でしゃべってみた。うん。やっぱり一人暮らしというものはそれはそれでいいものだな。

これで希望の大学だったらもっと気分もいいだろうに。

あの掲示板に自分の番号がないときのショックをどのように説明すればいいのだろう?地獄?いや、それよりも自分に対しての腹ただしさだな。

俺は何をやってきたのだろう?受験勉強を始めたのが2年の秋ごろ。その間ずっと勉強してきたのに、俺の勉強の成果は結果でしか表せられないなんてひどすぎる。

仕方ない。そんな人間は俺だけじゃなく日本中にいっぱいいるんだから。浪人にならなかっただけでもいいじゃないか。

とりあえず・・・生活用品とか買わなくちゃな。

ワンルーム。玄関から入って右手にトイレとバスルーム。奥に入れば一部屋だけの部屋とキッチンが一緒のこの部屋。

俺はここで4年間も過すのか。まぁそれもいいだろう。


部屋を出て右手の階段を下りて行き5分ほどの場所にコンビニがある。愛想の無い店員は地元とそっくりだ。置いてある商品も地元とそっくりのこのコンビニに俺はこの4年間の間に何回通うのだろう?

コンビニを出て右に進むと商店街がある。野菜、魚介類、薬局そしてパチンコ屋。

「とりあえず、地元のパチ屋でも見ておくか」

広くはないパチンコ屋だか結構綺麗な店内。右手にスロットコーナーがある。最新機種のラインナップに店内最高枚数。どこも同じ風景のパチ屋だし、店員も同じようなものだ。皆人生これでいいいんだ。コレが俺なんだと言ってるような顔つき。ハハ、俺もこんなもんだ。

希望大学が不合格だったことを親に知らせた時の親の一言を俺はまだ鮮明に覚えている「浪人はできないよ」わかっていたことだけど、それをそのときに聞きたくなかった。

俺の高校3年は受験勉強で終わったというのにである。

パチ屋を出てさらに右手に行くと小さな花屋さんがある。そういえば智絵も花が好きだったな。白いカスミ草が好きな彼女。もう会えないと思うとちょっと悲しい。

店員は少しやせ気味のすらっとした女性。とりわけ美人でもないけど土をいじっているのが好きそうな女性。

まっすぐ行くと公園に出る。ジャングルジム、ブランコそして砂場。どこにでもあるような公園。そしてどこにでもいるような老人と子供たち。俺はさながらどこにでもいるような大学生になり、そして日本中を探しあたら1000人はかぶるであろうどこにでもいるようなサラリーマンになり、どこにでもあるような幸せを必死で探すのだろうか。

公園のベンチ。家に電話して地元の家の近くの公園で一人座っていた。既に日は落ちていて回りには誰も居なかった。泣いてはいない。ただ受験勉強から開放される喜びと大学に落ちたという悲しさで何をしていいのかわからなかった。

公園を出て川沿いに歩いていくと、一人の男の子が一生懸命何かを探している。

「どうしたの?」迷う前に声が先に出ていた。この街に来て初めての話相手がこの小さな男の子だ

「なくしちゃったの。お母さんからもらったお守り」

「お守り?どんなやつ?」

「赤いの。こんぐらい」

と声にだしたのと同時に小さな両手四角い形を作る。

「そうなんだ。俺も一緒に探してあげるよ。」

「うん」

二人で夕暮れの川沿いで中腰になってお守りを探す。そういえば地元の海のそばでよく遊んだな。中学生や高校のころ。自分の未来がこのまま普通に流れていくと信じて疑わなかったときの話だ。

話なんて何をしたのかほとんど覚えていないけど、あの時海の反対側に落ちていく夕日をみながら海の色が黒い色からまどろいのオレンジに変わる瞬間の色は本当に綺麗で男二人だったけど、なんとなくロマンチックだったな。

あれ以来あいつとも遊んでない。ピザ屋の店長になったとは聞いたけど、今はどうしてるんだろう?

「みつからないね。他にどっかで落としたとかない?」

「だってここで遊んでたんだよ。ここにあるよ。」

必死で探している。これじゃ、諦めようはいえないな。自分で言っておいて俺って薄情な奴だな。

友達のお母さんが無くなったときも海にいたな。その日の通夜の日だ。本来なら会場にいなくちゃいけない立場なのにいてもたってもいられないかんじで俺と一緒に海まで歩いたな。月がくっきり見える夜、海に着きの光がにじんで一本の道みたくなってた。「あの道を通って天国までくんだよ」と言って彼女を慰めた。11月の夜に二人でワイシャツの俺らは軽く身体を寄せ合って寒さと寂しさを風と海の中にとけあわさせた。

「おにいちゃん。もういいよ。外も暗くなてっるし。」

「だって、大事なもんなんだろう?」

「いいよ。」

言葉でもそういっても顔は泣いた後の顔になってる。どれだけ大事なものかわからないけど、なんだかこっちまで心苦しい。

「ごめんな。役に立てなくて」

「いいよ。」

「お母さんところで一緒に行ってあげるから。男の子なんだから泣くな。お母さんもわかってくれるよ。」

小さな手をつなぐ。3月の気候でもまだ寒い。その小さな手で一生懸命探したんだ。お母さんもわかってくれるよ。


「ママただいま。」

「おそかったわね?どうしたの?」

「失礼します。あの・・・なんだかお母さんからもらったお守りですか?なくしちゃったみたいで・・・」

「ごめんなさい。」

「あら・・・そうなんですか?とりあえず、あがって頂戴。外はまだ寒いでしょう?」

普通の家の空気だ。お母さんも優しそうだ。

公園から家に帰って母さんに大学が落ちたことをもう一度告げた。料理はいつもよりちょっと豪華だった。「良一の大学受験が終わったからね」嬉しいけど、その一言は悲しかった。俺はまだあの大学にいきたいんだ!その一言をかみ殺して「ありがとう」と言った。あれ以来母さんとはまともに会話できない。

ことの経緯を話し終え、自分の状況を簡単に説明した。話のわかるお母さんでとても助かった。夕飯をおごってもらい、お父さんにお酒まで一緒に飲んだ。良い家庭だ。

「大学生なんだろう?今度一緒に遊びにいこうな!」

なんだが本当につれてかれそうで怖いけど、悪くはない。

「人生いろいろあると思うけど、ここはここで悪くはないぞ。地元は違うのだろう?何があったかしらないけど、そんなぱっとしない顔をするな。何も大学で人生が決まるわけじゃないぞ。」

わかっている。だけれども大学で決まる人生もある。あるとないじゃなくて可能性の問題だ。俺は自分の可能性を信じたいのだ。

「じゃあ、おいともします」

「またきてくれよな。」

「はい。是非」

玄関から入る冷たい空気は家の暖かさを思い出させる。そういえば高校のころ部活が終わって家に帰ると母さんが夕食をすぐに出してくれたな。あのころは家の暖かさなんてまったくわからなかったけど、今こうやって暖かさを知ると家の存在は暖かったのか。

自分の小さなワンルームに帰ると自分の携帯にメールが入ってた。母さんからだった。


引越しの準備は終わりましたか?良一が怒るのもわかります。だけど、それで頑張っていけるような大人になってください。母さんは家で良一が卒業して帰ってくるのを待っています。頑張って。

短いメールだったけど、母さんの気持ちはわかった。

「頑張るか・・・何をだよ・・・」

冷たい部屋の中に暖房はまだない。でも、冷たい部屋を暖かくるために暖房が必要なように、俺の心もまた温かくしなくていけない。ここで頑張るか。頑張って卒業して、母さんを見返してやろう。俺はここで頑張ったと。

もしくは解けない糸

喧嘩をするのはもうなれた。毎回毎回、喧嘩をしてよくあきもしないのだが、なせ喧嘩をしたんだろうと考えると本当に頭が痛い。ようするに本当にくだらない内容だからだ。

例えば、ご飯を食べにいけなかった。相手をしてくれなかった。遊びにいったから。いや、これで本当にに喧嘩がなりたつんだよ。と少々自分がなんでそんなことを言われて腹が立ってしまうのかよくわからないのだが、それでも、毎週のように訪れる喧嘩の嵐の前に僕はなすすべもない。

いつも別れが言葉のはしばしに出る。でも結局別れない。僕らはいったいどこに船のかじを向けているのか一向にわからない。別れるから別れないにいつ方向転換したのか本当に謎で多分相手も僕がいつ方向転換したのかわかっていない。でも、別れることは僕らにはとても重要な問題なので、分かれるくらいならってことでいつも仲直り(かどうかはわからないが)していくのだ。

でも、確実にその本当の別れは近づいてきていて、僕らがそうとは知らず、相手を傷つけて、相手から傷をつけられて。そうやって恋愛は幕を閉じてることをいいかげん知ったほうがいいのだと思う。

ってことを相手にいっても「そうだね」としか帰ってこないのは彼女は何のために僕と付き合っているのかわからなくなる。確かに、人の考えはわからん。だけれども、そこを理解していくのが、これからの二人の付き合いってやつに有効ではないのかな?

話はちがうのだけど、僕は少々、女好きだ。

この前も。

「そうなんだ・・・彼氏とわかれたんだ・・」
「うん。やっぱり遠距離恋愛ってうまくいかないのよね。」
「それは仕方ないよ。遠距離恋愛でなくても人はみんな別れたり、つきあったりするんだから」
ってそれは本当のことだし。これからもそうやって僕も君もしていくんだよ。

ってことを話しながら、僕らはお酒を飲む。別に甘やかすつもりもないし、僕が彼女を慰めるといったうぬぼれも当然のごとくない。

「あーどうしようかな。」

って彼女は僕によりかかる。それで、僕らはキスをする。初めてキスをする女性って少しも面白くない。やっぱり彼女が一番だなって思い知らされる。

それから、行き着くところまでいったことなんてただの一度もない。僕はキスとか胸とか口とかいろいろしたりするのだが、ただの一度もSEXをしたことはない。

そこまでいったりすると何が壊れたりしてしまうことを自分で知っているからである。

彼女の場合。

私はいつでも、彼氏のことを理解してみようと思っている。だから、彼氏が嫌がることはしたくないし、私が彼氏を傷つけていることを知っている。

だけど、彼氏が何で怒るのかちっともわからないし。彼氏が言うことは本当は正しいのだけど、それだけで割り切れない心ってものが私の中でプクーっと膨らんでいく。私はその風船に圧迫されて身動きができないので、彼氏をいつも悩ませる。私はいつも喧嘩をふっかけるけど、いつも彼氏に言い負かされる。だって、彼氏が言うことは彼氏の真実だから。私の心がちゃんと伝わっていないだけ。それに私も悪い。

そう。私が悪いのよ。いつも私が悪かった。前の彼氏と付き合っていたときだって、いつのまにか状況が悪化して分かれた。というよりフラレタ。

何で?って聞かなくなくても、よくわからないけど、彼に何で?ってきいたりしても、もう遅いと思うし、「うん。わかった。」としか言いようがない。だって好きだけど、あっちが嫌いになったんだからもう私にはどうすることもできないじゃない?

だって本当にそれが嘘だったら、わざわざ私にいうことないし。

だからいつも私は喧嘩すると黙る。だって彼氏が言うことが正しいもん。私はいつだって彼氏が嫌がることをしないようにがんばってるけど、それでもやっぱり彼氏は怒る。

前の彼女のことも気になるし、私意外の女の子と一緒にいることさえも腹が立つ。さらに、私のことが一番ではないって聞くだけでも、泣けてくる。

私は泣き虫だ。

彼氏はいつも泣いていたら話も何もできないじゃないかって言う。だけど、泣きたくないのだけど、眼から涙がこぼれてくるのは私とは無関係で私以外のほかの物体が私から涙を出させる。それで、彼氏は話をしたいのに、私が泣いているからいつも話ができないって私に言う。

私に言わないでよ!

私だって好きでないているんじゃないの!

そうやっていつも別れとか好きとか嫌いとかの話になる。私は彼氏のことが好きだ。でも、いつか彼氏が私ではない違う女のことろにいってしまうのが悲しい。そんなことはないって思う気持ちと、やっぱりそういうことはありえるって気持ちはいつも交差している。もしくは解けない糸。私たちは付き合っているのだから、解けない糸を一生懸命本当に解けないようにしているんだ。

簡単に二人の関係が解けないように私たち二人で糸を絡めていく。そこではさみとかでチョキって切て別の糸を絡まないように私はただ、彼氏をみたいたいだけ。

だから、彼氏が遊びにいくことも嫌だし。できれば私と一緒にそばにいてほしい。

でも、彼氏は言う。「俺だってたまには遊びに行きたい。浮気だってしないし!」と言う。それだって信じてる。だけど、わからないじゃない?私はあなたでもないし。本当に浮気をしていなくても私を一人にさせることが、どれだけ私を傷つけてるのかわからないわけ?

そうやっていつも喧嘩になる。喧嘩は本当に悲しい。だけど、二人でいなくなることはもっと悲しい。私がないて、私以外の誰かにバトンタッチしているところをみるだけで腹が立つ。泣く。

泣いていると、何のために泣いているのかわからなくなる。そうすると彼氏が優しくなる。彼氏は優しくしてくれて、私は元気になる。

なんで喧嘩していたんだっけ?いいの。彼氏が今優しいからそれでいいの。

そうやって今週も終わる。

僕は今もここにいる。

ほぼ2年前に友達の誕生日で買ったサボテンがある。

友達がずっとここにいてくれるようにとわざわざ僕は長生きをしそうなサボテンを選んだ。

結果として、友達はこの地を離れた。多くの問題を解消できないのと同時に、彼の幸せがここに留まることではなく、彼自身が選んだ女性と共に歩むことを選んだにすぎない。

そして、僕は。僕はその彼に送ったサボテンと同じサボテンを同時期に買った。僕もせめて彼と一緒にいることができるようにと。そう思って一緒のサボテンを買った。

彼はここを離れて、僕はここにいる。

そのサボテンがひょんなことでぽっきりと折れて、朝見てみたら、ぶにぶにとして水が流れていなく、中で腐敗しているような感触だった。

今は窓の所においてある。

黄色くなったサボテンも、あと数日もすれば枯れだして、汚くなるだろう。

いや、もうかれているのかもしれない。

言葉を持たないサボテンから教えられた気がする。

命あるものはいつか消える。そして命あったものがすべて平等に命なくなるものへと変化する。

僕はこの命ある世界に生まれて命あるものを愛でる。彼はこの地を離れてからただの一度もあっていない。彼は僕を覚えているのだろうか?

僕は今もここにいる。

本当に何も前と変わらないよ

お気に入りのカフェでいつものように一息ついていたら、昔の彼女にあった。

彼女は一目で彼女とわかる顔つきであったし、服装であった。何も前と変わっていなかった。ただ、一緒にいる男が僕ではなくて、違う男だった。彼は僕とは違って背が高く、顔も結構濃い。服装も僕とは違っていた。何もかもが僕とは違う感じに見えたのは気のせいなのだろうか?

僕は背が低い。服装も言っては悪いがそこそこのセンスだ。見た目とか言葉使いとか人あとりとかにいつも気を配っていた。僕自身としてはそれが当然であったが彼女は違ったように思える。確かに彼女も服装やら化粧やらその他もろもろのことに女性として当然の、最低のことはする。だが、少し内向的な面が目立ち、友達ができなかっり、自分の感情を相手にうまく伝えられなかったとした。そんな彼女がいつも僕に向かって女の人と遊びすぎとか、友達ばっかりで相手にしてくれないと文句を言っていた。僕はそれでも彼女のためにがんばったつもりだったが、あっけなく別れた。別れた原因はいまだによくわからない。

遠くの方で彼女たちの方を見ているとまったく別の空間にいるように思えてくる。まるで、取調室か何かで相手の顔が見えてるが見えていない。僕から彼女は見えるが彼女から僕は見えない。逆に彼女から僕は見えるが僕からは見えない。時間が歪みだして空間のひずみに落っこちてパラレルワールド的な世界にいるみたいだ。僕がずっと見ている間はあっちの世界にポチッとボタンを押し、見なくなればこっちの世界にポチッと切り替える。それは彼女も同じで、僕のことを見ているときは僕にリンクさせているが、僕を見ないときは僕にアクセスはしない。いや、多分彼女は僕の顔を見たとしてももう、すでに僕とはわからないかもしれない。

前にこんなことを彼女が言っていた。私は別れたら絶対あなたとは会わないって。僕は笑ってその言葉を聴いていたが別れてからその後今日まで一度もあっていない。最後に別れようって言ってじゃあねって去っていく彼女を僕はボーっと見ていた。彼女は文字通り嵐のように去っていった。彼女は僕にとってのオアシスであったが、嵐が去った後、そこは砂漠となった。

砂漠となった僕が初めにすることは新たなオアシスを作ることではなかった。オアシスは嵐でなくなることがわかったからだ。

僕は自分で会社を興すことに精をだした。20の始めのころからずっと夢見てた自分のオフィスを彼女にフラレタ腹いせでここまでやってきた。自分の夢をひとつひとつずつ具現化させていく過程は僕の土地が砂漠の上に強く、大きく、そして確かなものとしてはっきり見ることができた。この3年はそれだけに費やしてきたようなものだ。

僕にはまだ確かなオアシスがない。

正直な話をすれば僕もこの3年で少し汚れた。前は彼女だけと思っていた行為もそれこそ自分のオフィスが拡大するにつれて僕の心が汚れていくのと同時に派手になっていった。目の前を通り過ぎる蜜蜂たちから蜜を採取して、自分の身体の養分にするのはとても楽しいことであった。関係が深くなるにつれて彼女たちは僕に愛情ではない誠意を持って接してきてくれるし愛をともわない関係は僕たちに安らぎを与えてくれた。それは共に依存しない関係からのみ採取できる喜びだった。


彼女は本当に何も変わっていないのだろうか?

いやそれはないだろうな。僕も変わったと思う。彼女が変わっていないわけはない。

彼女が僕の前に3年前と同じ彼女できているとしても彼女は僕の知っている彼女ではないだろう。それは悲しいのだけれども、少し嬉しい。僕が過してきた時間が彼女の中でどう変化しても、僕の中にいた彼女は少しも色あせることなくそこに存在している。だけれども、過去の内容がすべてそうであるように。都合のいいところしか思い出せない。僕が彼女にした嫌な行為や、僕が彼女からされた数々の悲劇は僕にとっても過去であり、彼女にとっても過去だ。


「あら・・・久しぶりね」

彼女の声がする方に顔を向ける。彼女の顔が見える。変わらない彼女の顔。

「あ・・・そうだね。久しぶりだね。」

「きづかなかったわ。なにしてたの?」

「みての通り、本読んでるよ」

「そうなんだ。本当みたらすぐにわかったわ。それに、本を読んでるし。何も変わってないのね」

「そうかな?君も何も変わってないよ」

僕らは3年の時を経て再開している。

だけど、僕と彼女がこの先を交わることはない。


「本当に何も前と変わらないよ」

そうやって僕は彼女に笑顔を見せる。

結婚なんて恋愛のただの延長線上

試験勉強のためUPできませんでした。本作品も自分にとっては不満足ですが、このままUPしないのは少し気が引けるので、UPします。今の自分のあせりがとても出ています。

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ここのところ休みがない。いやいや、これではまるで会社から鬼のような形相で「仕事しろ!」って怒鳴られているみたいじゃないか。そうじゃないんだ。僕は家を出る理由がほしいだけなんだ。

確かに家を出る理由なんてほかにいくらでも作ればいいと思う。例えば友達と遊びに行くとか、ちょっと飲みにいくとか、買い物にいくとか・・・それこそ無限にあると思うんだな。

だけど想像力の問題か、僕個人の問題なのかとてもじゃないけど『嘘』をつけない。いや、つけれないんじゃない。つける事が全ての始まりでありそれから雪崩が始まるようにゴウゴウと鳴り響いて今まで築いていったすべての物事が壊れるのじゃないかって僕自身が危惧しているんだ。

仕事はいたって単純だ。別に忙しくもないし、暇でもない。適度に僕の権限が認められていて、僕が過し易いような環境に仕上がっている。同僚はちょっとの休みでもあれば、やれハワイだグァムだスペインだ。それこそ愛人連れてヨーロッパとしゃれ込んでいる。いや、僕もそうしたくないわけでもないのだが、いささかそこまで興味がないだけだ。部長もたまには休みを取れと少しだけせかすのだが、僕がいれば急なときはいつでも対処できるから誰も基本的には文句を言わない。そう、僕のお嫁さんだけは。

僕のお嫁さんの千夏ちゃんはこれまた「ちゃん」が似合う年頃の18歳である。いや、別に僕としてはロリコンであるとこれぽっちも思ってないし、写真をみせれば、ハイ誰もが満足する美人です。いや自慢じゃないんだよ。誰だって客観的に見れる要素があるだけで僕はそれをフルに使っているに過ぎないのだけど、自分のいうのもなんだか彼女は美人であり、そして・・・そして若い。

若さゆえに彼女が僕に対する嫉妬の深さは計り知れない。別に僕が誰と浮気したわけでもない。それこそ僕は彼女のことをそれこそ純粋な意味で愛している。愛という単語がどれだけの重みを含んでいるかは自分個人の裁量に任せられるのだろうが、僕自身にいわせれば、僕は彼女を金銭的な面からみて満足させてあげられると思っている。そして彼女はそんな僕を夫として選んでくれた。

そこまではとても良い。パーフェクトだ。

ただ、問題はそこからだ。僕だって彼女のことは今言ったとおり、愛している。愛している。愛している。愛しているってなんだ?愛してるさ。うん。間違いない。これを愛と呼ばすしてなんというのだ?家族愛?いやいや・・・僕は新婚だよ、そこまで家族と呼べる代物があるわけでもない。いや、ないこともないのだけど・・・いや、夫婦だしね。

だけど、だけど、愛してはいるけど、年中一緒にいるのははっきり言って耐えられない。たまには違う新鮮な空気を吸いたいわけだ。

ということで、僕は仕事に毎日顔を出している。出始めて半年になる。結婚したのが8ヶ月前で半年間僕は休みを一度も取っていない。

彼女は愛しているが・・・彼女だけと毎日はなせと言うのは正直つらい。僕にだって彼女と同じぐらい大事な同僚もいれば仲間もいる。そして特別な感情を持ち合わしていないが僕にとってかけがえのない女友達がいる。

彼女はいくら奥さんといっても僕の人生そのものを否定することはできないはずだ。

そう、僕の人生に君というピースが入ったことにより、僕は少しだけいらだっているのだ。

たとえ、僕があなたの旦那であってもあなたは僕ではない。

というようなこと仕事をしながら考えている。

だが、さすがに妻も僕のこの連続勤務をおかしいと思ったみたいで、彼女が部長に直訴したみたいだ。それでもって僕も部長から急に休んでくれといわれてしまった。

困った。

このままだと、僕は家にいなくてはいけなくなる。家から出る理由がなければ、僕は家から出れない。家にいるってことは千夏ちゃんと一緒にいなくてはいけないってことだろう?僕がたとえばちょっと買い物にと言ったとしてもあーわたしも~と猫なで声で言ってくるに決まっている。さらに、もし、そのまま甘い顔していたら、あの千夏ちゃんが僕に・・・あー・・・・

それは困る。非常に困る。なんとかしなくてはならない。

大体なんで結婚とか付き合い始めなんて、女という生き物は一緒にいたいと思うのだろうか?僕としては必要最小限にいてもらえればそれで満足だし、彼女も彼女の楽しみ方を覚えてほしいと思っている。こんなに自由がないもんだとは本気で思わなかった。結婚なんて恋愛のただの延長線上だとばっかり思っていた。女という生き物と男という生き物が交わるとこんなにも生活の中心が僕たちになるものかと・・・

時間がない。このままだと僕は彼女と二人きりになってしまう。もうすでに彼女は僕が明日から部屋にいるとばっかり思っている。それだけは阻止しなくては・・・

そうだ、部長に頼んで仕事を無理やりつくろう。いや、それは無理だ。当然だ。どうすればいいのだ?僕が家から出れるような理由をどうやって作ればいいのだ?女か?仕事か?それとも・・・

いや。


答えは簡単だ。僕が家に帰っても彼女がいなければいいのだ。

そうだ。それは簡単だ。僕にほれてるはずだから・・・いくら分かれようといっても聞かないだろう・・・親御さんも文句をいうだろう・・・

仕方ない。

こういう結果に結びついてしまったことは仕方がない。

後はその方法だ。どうやったら叫ばなくなるか工夫しないといけないな・・・