式は私の希望で深い付き合いの友人しか呼ばない、シンプルでこじんまりとしたものにした。

それでも私には盛大だけど。

花嫁登場の曲はForeignerのHot Bloodedにした。場違いだけど、この曲を聞くと悩みが一気に吹き飛んでハイになれる。

中に入ると大好きな友人たちが拍手で迎えてくれた。

相変わらずイケメンの黄瀬に、ミニ扇風機を持参している緑間、多分式後のケーキ目当てにやってきたと思われる紫原。幼馴染の大輝は何故か顔を赤らめている。

赤司が来たのには少しびっくりしたけどやっぱり嬉しい。

私は頬を綻ばせながら皆に手を振った。

壇上をみると未来の旦那様が待っていた。

私の花嫁姿を見て、大輝以上に顔を真っ赤にしている。

思わず噴き出すと花嫁付添人のさつきに小突かれた。

大我の横には花婿付添人の黒子と知らない男の人がいた。

大我の友達の一人かな、なんて思いながら、壇上につく。

「あ、あのさ」

「ん?」

「す、すごく綺麗だ」

しどろもどろに言う大我にこっちも恥ずかしくなってきて「あ、ありがとう」と言葉につまりながらなんとか礼をいう。

「では誓いのキスを」

お決まりの文句をすっ飛ばすように頼んだのは大我だ。なんでもさっさと結婚したいからのこと。

理由を聞いた時は爆笑したけど、今は気持ちがよく分かった。

彼の手が伸びてヴェールが外される。

大我の顔が見えたと同時に花婿付添人の姿がチラリと見えた。

例の男の人と目が合い、その瞬間私は固まる。

「「アメリア!」」

昔の記憶が蘇ってくる。

12年前の、閉じ込めてきた記憶が。

「「絶対戻ってくるから」」

視線をその顔から下に落とすと、二つのリングを通したシルバーのネックレスが見えた。

大我と同じリングと……あの、小さな青い指輪。

「「今度会った時は、結婚しよう」」

そう言って優しい手つきで指に指輪を通してくれた彼。

私は信じられない思いで彼を見つめた。

私は、夢を見てるの?

彼も私から目をそらさない。

じっと私を見ている。でも、私みたいに取り乱した様子はない。

まるで最初から知っていたかのような。

この時を待っていたかのような。

「…アメリ?」

怪訝そうに顔を覗きこむ大我に私ははっと我にかえった。

「…ごめん」

そう言いながら私はまた彼に視線を向ける。

だけど彼はもう私を見てなかった。

「アメリ」


大我に促され、顔を上げると優しくキスされた。

その瞬間拍手喝采が式場に響いたが、今の私にとってそれはノイズのように聞こえた。