日清戦争開戦までの話が飽きてきてるので、もう少し別の話を。
今回取り上げるのは1939年(昭和14年)『訓令第七十七号 朝鮮人ノ氏ノ設定ニ伴フ戸籍事務取扱方ニ関スル件』について。
一昨年の9月26日のエントリーで出てきた「宿題」です。(笑)

つうか、2年も経つのか・・・。_| ̄|○
そのうち半分くらいが東学党の乱~日清戦争開戦までで消えてんのかな?
んー・・・。(笑)

で、丁度xiaoke氏が別件で総督府官報の調べ物があったそうなんで、ちょっと乗っかって調べて来てもらいました。

▲獄長いらっしゃいますか?

んでは早速カピペ。(笑)
1939年(昭和14年)12月26日付官報号外より、『朝鮮総督府訓令第77号 朝鮮人の氏の設定に伴ふ戸籍事務取扱方に関する件』について。

朝鮮総督府訓令第七十七号1 (クリックで拡大)

朝鮮総督府訓令第77号

朝鮮人の氏の設定に伴ふ戸籍事務取扱方に関する件左の通定む。

昭和14年12月26日
朝鮮総督 南次郎

第1条
氏の届書に付ては別に1の種類を定むべし。

第2条
氏の届出を受理したるときは、府尹又は邑面長は附録第1号様式に依り戸籍の記載及訂正を為すべし。

第3条
昭和14年朝鮮総督府令第221号第3条の規定に依り氏の記載を更正する場合に於ては、附録第2号様式に依り戸籍の記載及訂正を為すべし。

第4条
府尹又は邑面長が前条の戸籍の記載を為したるときは、遅滞なく附録第3号書式に依り之を監督裁判所に報告すべし。
監督裁判所前項の報告を受けたるときは、届書に準じ之が取扱を為すべし。

第5条
監督裁判所が氏の届書の送付を受けたるときは、附録第4号書式に依り各旬毎に遅滞なく法務局長に報告すべし。

附則
本令は昭和14年制令第19号施行の日より之を施行す。
まずは第1条。
氏の届書については、別途様式を定める、と。
そのまま。

続いて第2条。
一昨年の6月19日のエントリーの朝鮮民事令中改正の附則第2号で、戸主は6ヶ月以内に新たに氏を定めて、府尹又は邑面長に届け出することになってましたが、それを受けた府尹又は邑面長は、付録の第1号様式に依って戸籍の記載・訂正をすること、と。

第1号様式については下のとおり。

朝鮮総督府訓令第七十七号2 (クリックで拡大)

続いて第3条。
昭和14年朝鮮総督府令第221号第3条の規定で氏の記載を更正する場合には、第2号様式によって戸籍の記載・訂正をすること。

まず、第2号様式については下のとおり。

朝鮮総督府訓令第七十七号3 (クリックで拡大)

そういえば、昭和14年朝鮮総督府令第221号についても宿題だった・・・。
つうか、もしかして同じ号外に載ってるんじゃなかろうか・・・。
xiaoke氏に確認頼めば良かった。
_| ̄|○

凹んでいても先に進まないので、取りあえず仮に中野文庫さんのところから、『昭和14年朝鮮総督府令第221号 朝鮮人ノ氏ノ設定ニ伴フ届出及戸籍ノ記載手続ニ関スル件』の第3条から引用。

第3条
昭和14年制令第19号附則第3項の規定に依り、戸主又は前男戸主の姓を以て氏としたるときは、戸籍の記載は訂正せられたるものと看做す。但し、更正することを妨げず。
戸籍の記載事項中、家を異にする者の氏定まりたるとき亦前項に同じ。
で、「昭和14年制令第19号附則第3項の規定」は、3回目の朝鮮民事令中改正の附則第3項で、一昨年の6月19日のエントリーでやりました。

附則第3項
前項の規定に依る届出を為さざるときは、本令施行の際に於ける戸主の姓を以て氏とす。
但し、一家を創立したるに非ざる女戸主なるとき、又は戸主相続人分明ならざるときは、前男戸主の姓を以て氏とす。
ってことで、6ヶ月以内に届け出を出さない場合に戸主の姓を氏にする規定。
所謂設定創氏ですね。

つまり、設定創氏の場合には、戸籍の記載は訂正されたものと見なす。
但し、更正するのは妨げないので、その更正を行う場合には第2号様式で、ってことですかね。

続いての第4条は、府尹又は邑面長が戸籍の更正を行った場合、遅滞なく第3号様式で監督裁判所に報告しろ、と。
んで、監督裁判所がその報告を受けたら、届出書に準じて取り扱え。

第3号様式以下についてはテキストにも起こしておきます。

朝鮮総督府訓令第七十七号4 (クリックで拡大)

氏の戸籍記載更正報告
本籍 何郡何面何里何番地
戸主 何某
前男戸主の姓 何(前男戸主の姓を氏としたる場合に記載す)

右昭和14年朝鮮総督府令第221号第3条の規定に依り、氏の戸籍記載を更正したるに付報告す。

昭和十五年  月  日
何府尹(又は邑面長) 氏  名㊞
何地方法院長(又は何地方法院何支庁判事)殿
戸籍自体は「訂正されたものと見なす」のに、更正する場合ってどういう場合なのかイマイチピンと来てないウリ。(笑)

で、最後の第5条。
監督裁判所が氏の届出書の送付を受けたら、第4号様式で各旬、つまり10日ごとに法務局長に報告すること、と。

続いて第4号様式。

昭和十五年  月  日
何地方法院長(又は支庁判事) 氏  名㊞
法務局長 殿

氏に関する報告の件

昭和15年何月何旬中当管内府邑面に於ける氏の届出受理件数左記の通報告す。

(イ) 氏別件数
一 従前の姓と同一の氏      件
二 内地人式氏と認めらるる氏  件
三 其の他の氏           件
     計               件

(ロ)職業別件数
一 何                 件
二 何                 件
     計               件

注 意
一 (イ)の二及三に付ては何氏何件何氏何件と内訳を記載すべし。
二 (ロ)に付ては昭和6年5月11日本府訓令第20号職業分類中小分類の例に依るべし。
ちなみに、一昨年の6月26日のエントリーでは、これにプラスして所在地別の件数表を付ける事になっていました。

つうか、そのエントリーの【1419】で、「三其の儘の氏」って読んでるけど「三其の他の氏」じゃんよ・・・。
_| ̄|○

さて、まずは第1の疑問。
2月1日のエントリーの実例のように、林、柳、南、桂等の姓の者が強いて同じ氏で届けた場合、「従前の姓と同一の氏」にカウントされるのか、「内地人式氏と認めらるる氏」としてカウントされるのか。

第2の疑問。
統計資料が、この規定に基づく数字であった場合、府邑面から各地方法院等に送られるタイムラグがあるのではないか。

一昨年の6月27日のエントリーの【1422】に見られるように、府邑面での取扱いがかなりいい加減なのを見ると、順調に送られていたとはとても思えず。

つまり、巷間総督府の強制により後半に「幾何級数的」に増加したと言われる、その統計数字について、「全て内地人式の創氏なのか」という点と、「戸主が届け出を行った時点でのカウントでは無いのではないか」という疑問ですね。

まぁ、件の数字の出典が何か分かりませんし、それが何を元にした数字なのかも分かりませんので、疑問を付するだけで終わってしまうんですがね。
数字の出所、誰か教えて欲しいなぁ。
( ´H`)y-~~


ってことで、非常に長くなりましたが、今日はここまで。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(四)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(五)
朝鮮総督府編『朝鮮の姓』より
朝鮮人の氏名に関する件
高元勳
朝鮮戸籍及寄留例規(一)
朝鮮戸籍及寄留例規(二)
朝鮮戸籍及寄留例規(三)
朝鮮戸籍及寄留例規(四)
朝鮮戸籍及寄留例規(五)
朝鮮戸籍及寄留例規(六)
民籍法と民籍法執行心得
林、柳、南、桂等の姓を有する者


AD

今日お届けするのは、史料の紹介とかそういう話ではなく、以前の話の焼き直しというか追補。
以前、『創氏改名(十)』及び『創氏改名(十三)』でやった話になります。

ってことで、分かりやすいようにもう一度。
まずは、金英達著の『創氏改名の研究』から抜粋。

創氏改名の研究 (クリックで拡大)

朝鮮総督府法務局の『氏制度の解説』(1940年2月)には、次のように解説されている。
「<期間内に氏を届出でなかった場合はどうなるか>
昭和15年8月10日迄に氏の届出を為さなかった場合は、2月11日に於ける戸主の姓がそのまま氏となります。従って従来の金や李をそのまま氏としたい者は届出をしないで放って置けば良い訳です。」

実務上では、「林、柳、南、桂等の姓を有する者が、林(ハヤシ)、柳(ヤナギ)、南(ミナミ)、桂(カツラ)等内地式の読み方を以て氏と為さんとする場合其の届出の要なきところ」という1940年4月22日付の法務局通牒(7)でうかがわれるように、戸主の姓をそのまま氏とする創氏届は必要ないとされており、戸籍窓口の実際においては、そうした創氏届は受理しなかったことが推測される。

ということは、事実上、設定創氏は日本風の氏の設定に限定されていたのである。
で、文中の法務局通牒(7)。

注釈(7) (クリックで拡大)

朝鮮総督府法務局編纂『昭和十八年新訂 朝鮮戸籍及寄留例規』(朝鮮戸籍協会、一九四三年一二月)四三七~四三九頁。
で、実際の『朝鮮戸籍及寄留例規』。

朝鮮戸籍及寄留例規 (クリックで拡大)
(抜粋加工済、元画像は【ここをクリック】

六.林、柳、南、桂等の姓を有する者が林(ハヤシ)、柳(ヤナギ)、南(ミナミ)、桂(カツラ)等内地人式の読み方を以て氏と為さんとする場合、其の届出の要なきところ強て届出を為す場合は受理するの外なきや。

六.貴見之通
ということで、金英達の記述からは赤太字部分が抜けており、「戸主の姓をそのまま氏とする創氏届について、強いて届け出られた場合受け付けますが、何か?( ´H`)y-~~」という話になりました。

ここまでが既出の部分。
以下、追補部分。

< 林さんの場合 >

林と創氏しの実例(大)
林と創氏しの実例(小)
(1940年(昭和15年)8月31日朝鮮総督府官報第4085号より)
(各クリックで拡大)

昭和15年6月…(中略)…同月29日…(中略)…朝鮮総督府郡守林龍俊は林、…(中略)…と孰も創氏したり。
ってことで、林さんが林と創氏。

< 柳さんの場合 >

柳と創氏しの実例(大)
柳と創氏しの実例(小)
(1940年(昭和15年)8月3日朝鮮総督府官報第4061号より)
(各クリックで拡大)

…(前略)…7月5日同柳時煥は柳、…(中略)…と孰も創氏したり。
ってことで、柳さんが柳と創氏。
ちなみに、前半部には林鳳爟さんが林と創氏してますね。

< 南さんの場合 >

南と創氏しの実例(大)
南と創氏しの実例(小)
(1940年(昭和15年)6月17日朝鮮総督府官報第4020号より)
(各クリックで拡大)

…(前略)…5月21日同南啓龍は南と創氏し…(後略)…
ってことで、南さんが南と創氏。

< 桂さんの場合 >

桂と創氏しの実例(大)
桂と創氏しの実例(小)
(1940年(昭和15年)6月24日朝鮮総督府官報第4026号より)
(各クリックで拡大)

…(前略)…5月7日朝鮮総督府郡守桂燦謙は桂と創氏し、同1日謙一と改名、…(後略)…
ってことで、桂さんが桂と創氏。

まぁ、官報から拾っていますので、上記いずれの場合も官吏の創氏についてですけどね。
ついでにおまけ。

< 呉さんの場合 >

呉・南と創氏しの実例(大)
呉・南と創氏しの実例(小)
(1940年(昭和15年)9月19日朝鮮総督府官報第4101号より)
(各クリックで拡大)

昭和15年…(中略)…4月12日朝鮮総督府郡守南振祐は南、…(中略)…8月…(中略)…9日…(中略)…朝鮮総督府司税官呉鍾洙は呉、…(中略)…と孰も創氏したり。
呉さんでも呉と設定創氏してるんですねぇ。

ってことで、「林、柳、南、桂、呉」等の姓について、「戸主の姓をそのまま氏とする創氏届は必要ない」けども、強いて届出がされれば受け付けるし、「戸籍窓口の実際においては、そうした創氏届は受理しなかったことが推測される。」についても、戸籍窓口の実際においても受理されてますよ、という話。

勿論、『朝鮮戸籍及寄留例規』の当該記述を根拠とした「ということは、事実上、設定創氏は日本風の氏の設定に限定されていたのである。」は間違いだよね、と。


今日はここまで。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(四)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(五)
朝鮮総督府編『朝鮮の姓』より
朝鮮人の氏名に関する件
高元勳
朝鮮戸籍及寄留例規(一)
朝鮮戸籍及寄留例規(二)
朝鮮戸籍及寄留例規(三)
朝鮮戸籍及寄留例規(四)
朝鮮戸籍及寄留例規(五)
朝鮮戸籍及寄留例規(六)
民籍法と民籍法執行心得


AD

民籍法と民籍法執行心得

テーマ:

前々回前回に民籍法について解説しましたが、創氏改名にも朝鮮戸籍令への繋がりとして関係してくるかもしれませんので、一応創氏改名の方にもエントリーしておきます。

ってことで、アジア歴史資料センターの『韓国警察報告資料巻の2(レファレンスコード:A05020350400)』の146画像目から160画像目までの、『民籍法の説明 附同執行心得』から、1909年(隆煕3年)3月4日『法律第8号 民籍法』。

民籍法(隆煕3年3月4日 法律第8号)

第1条
左記各号の一に該当する場合に於ては、其事実発生の日より10日以内に、本籍地所轄面長に申告すべし。
但し、事実の発生を知ること能はざるときは、事実を知りたる日より起算す。

1 出生
2 死亡
3 戸主変更
4 婚姻
5 離婚
6 養子
7 罷養
8 分家
9 一家創立
10 入家
11 廃家
12 廃絶家再興
13 附籍
14 移居
15 改名
前項の事実にして2面以上の所轄に渉るときは、申告書各通を作り、申告義務者の所在地所轄面長に之を申告すべし。

第2条
第1条の申告義務者は左の如し。

1.出生、戸主変更、分家、一家創立、廃家、改名及移居の場合は当該戸主
2.養子及罷養の場合は養家の戸主
3.婚姻及離婚の場合は婚家の戸主
4.入家の場合は入家せしめたる戸主
5.附籍の場合は附籍せしめたる戸主
前項の場合に於て、戸主が申告を行ふこと能はざるときは、戸主に代はるべき主宰者、主宰者なきときは家族又は親族、家族又は親族なきときは事実発生の場所又は建物等を管理する者、若は隣家より之を為す可し。

第3条
婚姻、離婚、養子及罷養の申告は、実家の戸主の連署を以て之を為すべし。
但し、連署を得ること能はざるときは、申告書に其旨を附記すべし。

第4条
第2条の申告義務者は、本籍地以外に居住する場合に於ては、其居住地所轄面長に申告することを得。

第5条
民籍に関する申告は、書面を以て之を為すべし。
但し、当分の内口頭を以てするを得。

第6条
第1条の申告を怠る者は、50以下の笞刑又は5円以下の罰金に処す。
詐欺の申告を為したる者は、6ヶ月以下の懲役笞刑又は100円以下の罰金に処す。

第7条
本法に依る申告は、面長なき地に於ては面長に準ずべき者に之を為し、漢城府に於ては所轄警察官署に之を為すべし。

第8条
本法施行に要する規程は、内部大臣之を定む。

附則
本法は、隆煕3年4月1日より之を施行す。
建陽元年勅令第61号戸籍調査規則は、本法施行の日より之を廃止す。
まぁ、解説は前々回前回を見て欲しいと思います。
ええ、手抜きです。(笑)

創氏改名に特に関係ありそうな部分としては、第1条の15号、改名の部分の解説の一文ですね。

殊に女子は妻となりたる後、尚人に名を呼ばるを以て無上の恥辱とし、婚姻の時より幼名を廃するの慣習なり。
良く言われる「朝鮮には女性に名が無い」事について、女性がないがしろにされて名前が無かったというわけではなく、元々、妻となった後にも名前を呼ばれる事を、女性自身が「無上の恥辱」と考える習慣があった、と。
で、この生ぬるい対応は、昨年の9月27日のエントリーで取り上げたように、創氏改名の時も「金氏、韓姓女等の称呼を有する女子の属する家に氏設定せられ、姓を朱抹したる場合、右「氏」、「姓女」等の処置如何。」という質疑に対して、「其の儘と為し置くの外なし。」というように継続されてたりします。(笑)

で、これだけだと新しくエントリーたてる意味も薄いので、民籍法の第8条に定められた、内部大臣が定めるとされている規程と思われる、1909年(隆煕3年)3月20日『内部訓令第39号 民籍法執行心得』を。

第1条
民籍に関する事項を記載する為め、警察署、警察分署及巡査駐在所に民籍簿を備ふ。
民籍法第1条各号の事実発生に依り民籍簿より除きたるものは、面別に編綴して除籍簿とす。

第2条
民籍には、地名及戸番号を付すべし。

第3条
民籍記載の順位は左の如し。
1 戸主
2 戸主の直系尊属
3 戸主の配偶者
4 戸主の直系卑属及其配偶者
5 戸主の傍系親及其配偶者
6 戸主の親族にあらざる者
妾は妻に準ず。

第4条
棄兒発見の場合には、一家創立として取扱ふ可し。
但し、養子として収養せんとする者あるときは、一家創立の上養子の取扱を為し、又扶養者あるときは其附籍として取扱ふべし。

第5条
一家絶滅したる場合は、其旨を記載して除籍すべし。

第6条
附籍者の民籍は、一家族毎に別紙を以て編成し、附籍主民籍の末尾に編綴すべし。
附籍者の民籍には、附籍主の姓名及其附籍なる旨を欄外に記載し置くべし。

第7条
面長は常に部内の民籍異動に注意し、申告を怠る者あるときは之が催告を為すべし。
面長は口頭を以て民籍に関する申告を受けたるときは、口頭申告書に記載すべし。

第8条
面長は民籍法第1条の申告書を取纏め、其月分を翌月15日迄に所轄警察官署に送致すべし。

第9条
警察官署に於て受けたる申告書中、他管に係るものは、所轄警察官署に送致すべし。

第10条
民籍簿は甲号様式、口頭申告書は乙号様式に依り調製すべし。
あれ?
書面で届け出るための様式は?(笑)

で、更に民籍法の趣旨について書かれている部分が面白いというか、それまでの戸籍取扱いの経緯が分かりますので、ついでにテキスト化しておきます。

当国の戸籍取扱に付ては、今を去る427年前李朝第9成世宗康靖王の世に於て、式年なる制を定められたるに始まり、毎3年1回調査編籍したるものにして、爾来413年の間其制を遵守せり。
而て、第26世皇帝建陽元年(今を去る14年前)之を戸籍調査規則と改め、毎年1回新に調査編籍することとなり、其事務は府尹、郡守の主管に属せしも、之が実地調査は主として面長(面長なき地は之に準ずべき者)、洞長等の手に由りたるものなり。
其後光武11年(今を去る3年前)、丸山警務顧問の時代に於て臨時戸口調査を行ひしが、調査期日甚だ遷延したるを以て、諸島嶼竝に江原、咸鏡、平安各道に於ける僻陬の地は、遂に実地の調査を経ずして計上したるにも拘らず、其数実に980万人を称へたり。
然るに、当時内部に於ける調査数は580万人に止まり、其差実に400万人の多きを見る。
戸籍取扱の整頓せざる、戸口統計の杜撰なる、以て之を推知するに足る。
隆煕2年1月内部官制制定に際し、当時の実情に鑑み、身分戸口の整理は警察機関に待つの外なく、之を地方局より移して警務局の主管とせられたり。
爾来当局に於て諸種の研究を為し、民籍制定の必要を認め、今回茲に民籍法の発布を見るに至れり。
凡そ身分戸口の異動に関する現象多様なりと雖も、本法に於ては出生乃至改名に至る15の事項を挙げ、不完全ながらも以て民籍上必要なる諸現象を網羅せんことを期したり。
此等各事項の異動に就ては、人民に申告の義務を負はせたりと雖も、素より之のみに依りて其実蹟を挙げんこと予期すべからず。
而して此陥欠を補ふものは、1に警察官の戸口実査に在り。
殊に民籍法に於ては、本籍者のみを支配し、非本籍者即ち寄留者又は一時の滞留者に付ては、之を警察上の戸口実査に委せられたり。
戸口の実査たる警務施行の必要より、人民異動の事実を確かむるに在りと雖も、此に依りて一面民籍簿の整理を為すの制にして、盖し民籍法施行心得並に戸口実査規則に於て此意を酌まれたる所以なり。
以下、民籍法の逐條に付て、単簡なる説明を為し、以て執務者の参考に資せんとす。
敢えて解説はしません。
ただ、冒頭の「第9成世宗康靖王」は、「第9世成宗康靖王」の間違いと思われます。


ってことで、民籍法と民籍法執行心得についてはお終い。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(四)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(五)
朝鮮総督府編『朝鮮の姓』より
朝鮮人の氏名に関する件
高元勳
朝鮮戸籍及寄留例規(一)
朝鮮戸籍及寄留例規(二)
朝鮮戸籍及寄留例規(三)
朝鮮戸籍及寄留例規(四)
朝鮮戸籍及寄留例規(五)
朝鮮戸籍及寄留例規(六)


AD

朝鮮戸籍及寄留例規(六)

テーマ:

さて、面白い話は9月28日のエントリーで終わってしまいましたので、後はサクサク進めて、今日で終わっちゃいたいと思います。
それでは今日も、朝鮮総督府法務局編纂『昭和十八年新訂 朝鮮戸籍及寄留例規(朝鮮戸籍協会 1943年12月)』の中から、「朝鮮民事令中戸籍條規及朝鮮戸籍令 附記 第6節 氏の設定」の続きから。

【画像4】

【1429】
家を異にする者の氏定まりたる場合の、氏の更正方。

(戸2.3.28)(昭和15年9月監督書記事務打合会決議)


五七 昭和14年府令第221号第3條第2項の更正に付、当事者より戸籍謄抄本を添付の上申出(職権発動を促す意味に於て)ありたる場合、更正して差支なきや。

決議
差支なし。
んー、内部の監督書記の打ち合わせの際の決議だけあって、専門的すぎて良く分からん。
昭和14年府令第221号第3條第2項に書いてるとおり「但し更正することを妨げず」ちゃうんかい、と。(笑)

【画像4】

【1430】
戸主相続届出前に為したる氏の届出は有効なり。

(戸2.3.28)(昭和15年9月監督書記事務打合会決議)


五九 新戸主より戸主相続届出前に為したる氏設定届は有効なりや。

決議
有効なり。
んー、これは旧民法というか朝鮮民事令的にどうなんだろう?
戸主権を、戸主相続の届出以前に行使可能かという問題になると思うんだけど、戸主が隠居した場合なんかは当然に届出が必要条件になるんだろうけど、死亡による戸主相続の場合は、届出の有無に係わらず死亡という実態が相続開始要件って事で良いのかな?
調べるの面倒臭いので、余り深く突っ込まずに「フーン」ということにしておきましょう。(笑)

【画像4】

【1431】
錯誤に因り戸主と為りたる戸主の氏設定届の効力、及其の復活戸籍に於ける氏の記載方。

(戸1.2.29)(昭和16年7月30日附京城地方法院開城支庁判事稟伺 同年8月8日附法民乙第458号 法務局長回答)


戸主相続権なき者が戸主となりたる戸籍に於て、当該戸主が昭和14年制令第19号附則第2項の期間内に設定届を為したる氏の効力に関し、左記両説あり。
甲号を相当と思料せらるるも、尚氏に関する戸籍記載例に付ても他に適切なる先例等見当らず、聊か疑義有之たるに付、何分の■御回示相仰度此段稟伺す。

甲説
戸籍上戸主たることの記載が錯誤なること明なる場合に於ても、当該戸主の為したる氏の設定届は之を受理せざるべからず。
而して、一旦之を受理し戸籍記載を為したる上は、其の家を表彰すべき氏は定まり、従って戸籍訂正に依り前戸主の戸籍を復活し、戸主たりし者が其の家を去り又は其の家に止まる場合たるとを問はず、其の家の称呼たる氏に変更を来すものにあらず。
故に之を無効とするは、氏制度の趣旨に反するを以て有効なり。

乙説
錯誤に因り戸主となりたる戸主と雖氏の設定届を為し得べきも、戸主相続権なき者、即ち錯誤に因る戸主相続は無効にして、当然前戸主の戸籍に復活せらるべく、此の場合復活戸籍には、前戸主の旧姓其のものを以て戸籍を編製するの外なきを以て、此の点に於て無効なり。


回答

首題稟伺の趣了承。
僭称戸籍相続人の戸主権の行使として為したる法律行為中、少くとも第3者に対する法律行為を除く以外の法律行為は、戸主相続の回復に依りて当然無効に帰するを以て、前戸主の戸籍を回復する場合に於ては、昭和14年制令第19号附則第3項の規定に依り氏を定め、之が戸籍記載を為すべきものと思考す。
(乙説の通)
戸主権を持たない者が、錯誤等により戸主として氏の設定届をした場合の対応について。

甲説は、戸主の記載が錯誤だと明らかな場合でも、その戸主が出した氏の設定届けは受理しなければならない、と。
まぁ、これまでも錯誤に関して、戸籍記載通りに取り扱う事になってましたからね。
で、その場合にも一旦届けを受理して戸籍記載してしまった以上、その家の呼称が定まったのであって、前戸主の戸籍を復活したからと言って元に戻すのは、氏制度の趣旨に反するから有効だ、と。
こちらを開城支庁の判事は相当だと考えてるんですね。

一方乙説は、同じく錯誤の場合であっても戸籍通り取り扱っても、錯誤による戸籍相続は無効であり、当然に前戸主の戸籍を復活した場合、前戸主の旧姓により復活戸籍を編制するのが当然だ、と。
こちらを法務局長は採るんですね。
さらに届出期間は勿論過ぎてますので、昭和14年制令第19号附則第3項の規定「前項の規定に依る届出を為さざるときは、本令施行の際に於ける戸主の姓を以て氏とす。」によって、姓をそのまま氏として戸籍記載すべきと考える、と。

んー、どの辺が日本式の氏の強要なんですかねぇ・・・。(笑)

【画像4】

【1432】
氏制度施行前絶家と為りたる家族が一家創立したる場合、原戸籍及新戸籍には氏更正の記載を要せず。

(戸2.1.21)(昭和16年10月釜山戸籍事務協議会決議)


氏制度施行前絶家又は家消滅したるも、未だ除籍せられざる家籍に在る者が、届出期限経過後一家創立の届出を為したる場合、絶家又は消滅したる家籍及一家創立に因る新戸籍に、氏更正の記載を要するや。

決議
氏更正の記載を為すことを要せず。
うーん。
戸主相続人が居ない場合に他に戸籍記載者が居る状況って、どんな状況なんだろう?
兎も角、そういう場合であって届出期限を過ぎた後に一家創立の届出をした場合、新しく調製する戸籍には氏更正の記載は不要だよ、と。
ここも、あまり深く突っ込まないで先に進みましょう。(笑)

次で、最後になります。

【画像4】

【1433】
氏の更正を為す場合の戸籍に記載すべき日附。

(戸2.3.27)(昭和16年10月裁判所戸籍主任会議決議)


五〇 氏の更正を為す場合、戸籍に記載する日附は昭和15年8月11日とすべきものなるに不拘、実際に更正を為したる日附を記載したるものあり。
之を其の儘となし置くも差支なきや。

決議
差支なし。
これまでの記述を見るに、氏の設定届けを出した場合は訂正。
姓がそのまま氏になる場合には更正と呼ばれ、厳密に分けられております。
そうであるなら「実際に更正を為したる日附」ってのは実に興味深い記載ですね。

勿論、9月25日のエントリーでの戸籍謄本や戸籍抄本の交付を請求による戸籍記載の更正という可能性はありますし、更に事後に姓を氏にする処理を行うわけですから、その日付である可能性は、当然あります。
また、これが当初からの疑問点である氏の設定率の統計に、どのように絡んでいるのかも不明。

尤も、こういう記載がある以上従来の言説の確認作業というものが必要になると思うんですがねぇ。
逆に、氏の設定率の統計が所謂「設定創氏」が氏の設定のみを指しているとしても、従来の姓を氏とする場合には「更正」になるんだから当然であって、日本風(内地人式)の氏を政策的に強要したという論拠にはならんよ、という反論も可能ですな。

宿題も結構あって、不明点も多かった今回の連載再開でしたが、得た物は多かったようです。


ってことで、今回はここまで。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(四)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(五)
朝鮮総督府編『朝鮮の姓』より
朝鮮人の氏名に関する件
高元勳
朝鮮戸籍及寄留例規(一)
朝鮮戸籍及寄留例規(二)
朝鮮戸籍及寄留例規(三)
朝鮮戸籍及寄留例規(四)
朝鮮戸籍及寄留例規(五)


朝鮮戸籍及寄留例規(五)

テーマ:

前回、金英達氏の論拠は否定しましたが、当然まだどっちなのかは分かりません。
まぁ、放っておけば勝手に姓が氏になったわけで、戸籍謄本や戸籍抄本の交付を請求でも問題にならないということは、好きこのんでわざわざ届け出る人は実態として殆どいないとは思いますがね。

ってことで、今日も朝鮮総督府法務局編纂『昭和十八年新訂 朝鮮戸籍及寄留例規(朝鮮戸籍協会 1943年12月)』の中から、「朝鮮民事令中戸籍條規及朝鮮戸籍令 附記 第6節 氏の設定」の続き。
今回は続けて2つ。

【画像3】

【1424】
未就籍者も、昭和15年8月11日以後は其の姓と同じき氏を有す。

(19.5.47)(昭和15年4月22日各地方法院長、各支庁上席又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


(第1244項掲出)


【1425】
氏設定に伴ひ名を変更する場合、氏届出期間を失する虞あるを以て、先づ氏設定届を先に為さしむるを適当とす。

(19.7.33)(昭和15年6月33日各地方法院長、各支庁上席又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


(第1134掲出)
嗚呼。
第6節しか入手して無かったよ・・・。_| ̄|○

まぁ、最初の【1424】はタイトルどおり、未就籍者も届出期限以降は姓と同じ氏を有するってことなんだろうけど、戸籍に載ってない人に関する規程って、何か意味あるんだろうか・・・?
次の【1425】については、創氏改名強制論者でも名前については強制ではなかったと認めている話。
尤もこれは、差別を残すせいとか阿呆な事言ってる人が居ますが、じゃあ皇民化政策って結局何やねん、と。(笑)
つうか、韓国でも親しい間では名前で呼び合うわけで、それが変わらなかった事に何の問題があるんですか、と。
どうせ話を作るんなら、もっと上手く辻褄合った話を考えて欲しいですな。(笑)

【画像3】

【1426】
無籍者の氏設定届は受理すべからず。

(19.7.33)(昭和15年6月3日各地方法院長、各支庁上席又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


一乃至四(略)

五.無籍者の氏設定届は之を受理せしめざること。
これ、さっきの【1424】と関連しそうに見えますが、多分未就籍者の場合父又は母の戸籍に入る予定がある者を指し、無籍者は本当に戸籍が無い者になるのかな?
日本の戸籍法だと、無籍者については新戸籍を編製する事になってますが、朝鮮戸籍令ではどうだったんでしょうねぇ。
いづれにしても、無籍者の氏設定届は受理しない、と。

【画像3】 【画像4】

【1427】
名の変更許可申請の理由と異る氏の届出あるも受理差支なし。

(19.7.33)(昭和15年6月3日各地方法院長、各支庁上席又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


首題の件に関し、京城地方法院開城支庁判事より、別紙甲号の通照会あり。
同乙号の通回答したるに付、為参考通知す。


(甲号) 氏設定名変更に関する件 (昭和15年5月27日法務局長宛 開城支庁判事照会)

首題の件に関し左記事項疑義有之に付、如何に取扱ひ可然哉、至急何分の御回示相仰度此段稟伺す。

一.氏の設定届出前、「平山」なる内地人式氏と定めたき理由あるを以て名変更許可申請を為し、之が許可ありたる後氏設定届を同時に提出するに■り、名変更許可申請書記載の氏、即ち「平山」なる氏と異なる例えば「松本」なる氏設定届を為す場合、之が氏設定届は受理し差支へなきものと思料せらるるが如何。

二乃至四(略)


(乙号) 氏設定名変更の取扱に関する件 (昭和15年6月3日開城支庁判事宛 法務局長回答)



一.差支なし

二乃至四(略)
氏設定届けを出す前に「平山」っていう氏にしたいからという理由で名の変更許可申請を提出し、その許可後に氏設定届けを理由とは異なる氏で出した場合、その氏設定届けって受け取るしか無いと思うけどどうよ?という疑義に対して、うん、そうだね、と。
まぁ、珍しい事例ではあるんでしょうな。

【画像4】

【1428】
在外帝国公館に於て、法定期間内に受理したる氏設定届の送付を受けたるときは、期限経過後到達するも受理すべし。

(19.11.49)(昭和15年9月18日各地方法院長、各支庁上席又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


在満帝国大使館に於て、法定期間内に受理したる氏設定届を本府外事部長経由の上、本籍地府邑面に送付したる処、期限経過後到達したるの故を以て之を返戻する向少からざるも、右は朝鮮戸籍令第49條に依り適法の届出なること勿論なるを以て、自今斯る不当の措置なき様留意せしめられ度く、尚昭和14年朝鮮総督府第221号第3條第1項但書の規定に依る戸籍記載の更正は、氏設定を為さざりしこと明なる場合に非ざれば之を為し得ざること勿論にして、従ふて本籍地外居住者に付ては当分の間更正を為すべきものに非ざるも、若し既に斯る更正を為したる後、前記の如き氏設定届書の送付を受けたるときは、職権に依る戸籍訂正の手続を執らしむる様、管下府尹邑面長に相当指示相成度し。

追て自今在外帝国公館に於て受理したる戸籍届書類を返戻せんとする場合に於ては、先づ之を監督裁判所に提出せしめ、監督裁判所に於て其の適否を調査したる上、本府外事部長経由返送せらるる様致したし。
もう既に、氏設定期間を過ぎた9月18日の通牒ですんで、面白くはならないようで。(笑)

まぁ、長々と書いてますが、要は在外公館で期限内に受け付けた届けが、自分のとこに到着したのが期限後だからって返戻すんな、と。
更に、朝鮮以外で朝鮮民事令の改正等が周知徹底されているかといえば、恐らくそうではないわけで、氏設定をしない事が明白な場合に戸主の姓をそのまま氏とするんだから、本籍地外に住んでる者が氏設定届を出したら、職権で戸籍訂正の手続きをとる様に管轄の府尹邑面長に指示しなさい、と。
半島外在住朝鮮人に対する緩和措置ですな。

で、手続き方についても、在外公館で受け付けた戸籍届書類を返戻する場合は、監督裁判所で審査を受けてから返送しろ、と。
お役所仕事防止。(笑)


さて、今日はここまで。
次回で再び一旦休載予定。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(四)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(五)
朝鮮総督府編『朝鮮の姓』より
朝鮮人の氏名に関する件
高元勳
朝鮮戸籍及寄留例規(一)
朝鮮戸籍及寄留例規(二)
朝鮮戸籍及寄留例規(三)
朝鮮戸籍及寄留例規(四)


朝鮮戸籍及寄留例規(四)

テーマ:

はい。
今日は前置きなしで朝鮮総督府法務局編纂『昭和十八年新訂 朝鮮戸籍及寄留例規(朝鮮戸籍協会 1943年12月)』の中から、「朝鮮民事令中戸籍條規及朝鮮戸籍令 附記 第6節 氏の設定」の続きを。

【画像2】 【画像3】

【1423】
依用すべからざる旨定められたる氏を用ひたる届出の効力。
傭女、傭人等、戸籍記載に依り其の家の家族に非ざること顕著なるものを除き、錯誤に因り入籍したる者も戸籍訂正を為さざる限り其の家の氏に更正す。
制令第19号附則第2項、朝鮮人戸主には一家を創立したるに非ざる女戸主をも包含す。
新羅、高麗等を依用したる届出は、受理せざるを可とす。
内地人式読方を為し得る姓を氏と為す届出を強て為す場合は受理す。
戸主死亡し、未だ絶家とらざる戸籍の氏の更正方。

(19.5.48)(昭和15年4月22日各地方法院長、各支庁(除開城)上席又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


首題の件に関し、別紙甲号の通京城地方法院開城支庁判事より照会あり。
乙号の通回答したるに付、御了知相成度為参考通知す。


(甲号) 氏の設定に関する件 (昭和15年3月18日法務局長宛 開城支庁判事照会)

首題の件に関し、左記の通り疑義有之に付、至急何分の御指示相仰度此段稟伺す。

一.府尹邑面長、左記に違反したる氏の届出を受理し、戸籍記載を為したる場合、朝鮮戸籍令第28條の適用ありや。
 (1) 昭和14年訓令第20号第1條。
 (2) 御歴代の御諡号、白河、東山等を氏としたるもの。
 (3) 昭和15年1月16日「昭和14年制令第20号及同年朝鮮総督府令第222号の運用に関する件」通牒中の左記の2。

二.昭和15年1月16日附前記通牒中、「顕著なる神宮名又は神社名、歴史上及現代の功臣の氏に付ては、通牒例示以外のものに付実務上に於ては如何なる範囲に制限せしむべきや。

三.戸籍上「傭女」「傭人」等の附籍者又は家族たる者の連子にして他家の相続人たる者、他家の家族が錯誤に因り其の家に入りたるものに付、戸主が氏の届出を為したるとき、及姓を氏とし記載を更正するに■りては、之等錯誤が戸籍上明白なるものに付ても、悉く氏に関する更正、訂正を為すべきや。

四.制令第19号附則第2項朝鮮人戸主中には、一家を創立したるに非ざる女戸主をも包含せらるるや。

五.往古朝鮮に於ける国名たる新羅、高麗等を依用したる氏の届出は、受理し差支なきや。

六.林、柳、南、桂等の姓を有する者が、林(ハヤシ)、柳(ヤナギ)、南(ミナミ)、桂(カツラ)等内地式の読み方を以て氏と為さんとする場合其の届出の要なきところ、強て届出を為す場合は受理するの外なきや。

七.相続に因り戸主となりたる単身戸主、氏制度実施前又は氏確定前死亡(3年内は絶家の手続を為し得ず)したる場合、氏の届出期間を経過し府尹邑面長が姓を氏としたるに付為す戸籍の記載の更正は、亡戸主欄に為すべきや。
若し一家創立すべき家族ある者に付ては、之が記載を為さざるときは、氏確定せざるものと思料せらる。
尚、此の場合の氏は如何に定むべきや。


(乙号) 氏の設定に関する件 (昭和15年4月22日開城支庁判事宛 法務局長回答)

首題の件、左記に依り了知相成りたし。

一.(1)朝鮮戸籍令第28條の適用あり。
 (2)、(3)右の適用なし。

二.戸籍事務取扱者の適切妥当なる判断に依るの外なきも、努めて寛闊なる取扱を為すべし。

三.傭女、傭人等戸籍記載に依り其の家の家族に非ざること顕著なる場合を除くの外、錯誤に因り其の家に入りたる者と雖も戸籍訂正の手続を為さざる限り、其の家の氏を称するものと■ふべく、従て之が戸籍記載を更正すべきものとす。

四.貴見之通。

五.可成受理せざるを可とす。

六.貴見之通。

七.戸主死亡し、未だ絶家と為らざる家に付、昭和14年制令第19号附則第3項の規定に依り姓を以て氏としたるときは、府尹邑面長は単身戸主なると否とを問はず、亡戸主の事項欄に左の如く記載し(事項欄の記載のみを以て足る)、家族に付ては一家を創立すべき者なると否とを問はず、昭和14年本府訓令第2号様式の記載を為すべし。
氏の届出を為さざるに因り昭和十五年八月拾壱日何を氏とす。
現在北朝鮮にある、開城の判事の疑義と法務局長によるその回答が、各地方法院や各支庁に送られた形となっております。

まずは、府尹邑面長が3つの例示に違反した氏の届出を受理して戸籍記載しちゃった場合、朝鮮戸籍令第28條の適用はあるのか、と。
相変わらず、朝鮮戸籍令のちゃんとしたものは見れて無いんですが、漢字ハングル混じりのテキストを見かけたので、それを見ると、どうやら一度記載してしまった戸籍の訂正等の規程のようです。
というか、これ9月25日のエントリーの【1418】とほぼ同義じゃないかと思うんですがねぇ。
要は、御歴代御諱又は御名と、一家創立の場合以外に戸主の姓じゃない姓を氏にした場合だけは、当然法令違反になりますので訂正等の処置対象になるんですが、9月25日のエントリーの【1416】のように法令で定められているわけじゃない縛りは、受け付けちゃったらそのままね、ということですな。

二つめは、9月25日のエントリーの【1416】中での「顕著なる神宮名又は神社名」とか「歴史上及現代の功臣の氏」とかって、基準は何よ?という疑義に対して、現場の人に任せるけどなるべくおおらかにね、と。
こういう質疑応答って、現場の担当者困るだろうなぁ・・・。(笑)

三つめはちょっと難解っぽく見えるけど、要は戸主が氏の届を出したり姓を氏として記載更正した場合には、戸籍上で他人と見なされているものはそのまま。
錯誤などであっても、戸籍上その家の者とされていれば、戸籍訂正の手続きしない限りそのまま戸籍更正しなきゃ駄目っていう、当たり前の話。

四つめも当然の話で、6月19日のエントリーの制令第19号附則第2項「朝鮮人戸主(法定代理人あるときは法定代理人)は、本令施行後6月内に新に氏を定め、之を府尹又は邑面長に届出づることを要す。」の戸主には、女戸主も含まれますよ、と。
それ以外どうせいっちゅう質疑ですな。

五つめ。
昔の国名である、新羅とか高麗なんかを氏とした届出は、受理しても差し支えない?という疑義に対し、成るべく受理しない方が良いなぁ、と。
9月25日のエントリーにおける、【1416】等の制限事項としては決められていなかった話なんでしょうね。
つうか、ここでも「可成」とか、何故か曖昧にしちゃう。(笑)

そして六つめ。
これが、9月25日のエントリー冒頭で紹介した、金英達著の『創氏改名の研究』における「林、柳、南、桂等の姓を有する者が、林(ハヤシ)、柳(ヤナギ)、南(ミナミ)、桂(カツラ)等内地式の読み方を以て氏と為さんとする場合其の届出の要なきところ」の話。
ところが、金英達氏の引用部分である「林、柳、南、桂等の姓を有する者が、林(ハヤシ)、柳(ヤナギ)、南(ミナミ)、桂(カツラ)等内地式の読み方を以て氏と為さんとする場合其の届出の要なきところ」では質疑は終わってないわけで。
「強て届出を為す場合は受理するの外なきや」という続きがあって、「貴見之通」と。

つまり、届出が必要無い場合であっても、強いて届出が出されれば受理せざるを得ない。
金英達氏が、この引用元からどうやって「戸籍窓口の実際においては、そうした創氏届は受理しなかったことが推測される。」という結論を導き出したのか、とても不思議。(笑)

部分引用で日本批判?
それとも史料記述が読めない?
これに言及せずマンセーしかしてない水野直樹や宮田節子って、馬鹿?


氏の設定は内地人式しか許可されてなかったという、もっとクリティカルな史料載せとけば良いのに。
俺の手間ばっか増えるじゃん。(笑)

ってことで最後の7つめ。
届出等出す前に戸主が死亡したときの手続き事例。
とりあえず、単身戸主であっても家族がいる戸主であっても、亡戸主の事項欄に「氏の届出を為さざるに因り昭和十五年八月拾壱日○を氏とす。」と記載。
その家族については、昭和14年本府訓令第2号様式の記載をしなさい、と。
嗚呼、また宿題が増えた・・・。_| ̄|○  (笑)

ということで、金英達氏の「戸籍窓口の実際においては、そうした創氏届は受理しなかったことが推測される。」という主張について、引用は部分引用であり、実際には正反対の事が書かれてましたとさ。
ま、まだ朝鮮総督府法務局編纂『昭和十八年新訂 朝鮮戸籍及寄留例規(朝鮮戸籍協会 1943年12月)』の中から、「朝鮮民事令中戸籍條規及朝鮮戸籍令 附記 第6節 氏の設定」は残ってますので、連載はもう少々続きます。


今日はこれまで。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(四)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(五)
朝鮮総督府編『朝鮮の姓』より
朝鮮人の氏名に関する件
高元勳
朝鮮戸籍及寄留例規(一)
朝鮮戸籍及寄留例規(二)
朝鮮戸籍及寄留例規(三)


朝鮮戸籍及寄留例規(三)

テーマ:

疑問点というか、宿題が増えていくばかりの今回の連載。
困った。( ´H`)y-~~
ま、不定期連載って最初から言ってるから、後から悠長に調べてみようっと。(笑)

ってことで、今日も朝鮮総督府法務局編纂『昭和十八年新訂 朝鮮戸籍及寄留例規(朝鮮戸籍協会 1943年12月)』の中から、「朝鮮民事令中戸籍條規及朝鮮戸籍令 附記 第6節 氏の設定」の続きを。

【画像2】

【1420】
従来の姓にして内地人式の読方を為し得るものを氏と為す場合、届出及戸籍記載に之を明にする要なし。
右の如き姓を他姓の者に於て氏と為すことは差支なし。

(19.3.40)(昭和15年1月26日咸興地方法院長稟伺 同年2月6日法務局長回答)


首題の件に関し左記の通疑義有之に付、何分の御指示相仰度此段稟伺す。



一.林、柳、南、桂の如き姓を有する者が、林(ハヤシ)、柳(ヤナギ)、南(ミナミ)、桂(カツラ)等内地人式の読み方を以て氏と為さんとする場合、届出及戸籍記載に付之を明かにするの要なきや。

二.他姓の林、柳、南、桂等を内地人式の読み方に従ひ氏と為さんとするには、昭和14年制令第20号第1條第2項の、自己の姓以外の姓を氏として用ひんとするものに該当すと認め、許すべからざるや。


回答

首題の件、左記に依り了知相成りたし。



一.其の要なし。

二.差支なし。
9月25日のエントリーで取り上げた、金英達著の『創氏改名の研究』における「林、柳、南、桂等の姓を有する者が、林(ハヤシ)、柳(ヤナギ)、南(ミナミ)、桂(カツラ)等内地式の読み方を以て氏と為さんとする場合其の届出の要なきところ」の話とはまた別の話です。

まず1番目。
林、柳、南、桂のような姓の者が、内地人式の読み方で氏の設定を行おうとする場合、届出や戸籍にはその旨書くの?という疑義に対して、いや、イラネ、と。
そもそも戸籍に読みが必要なわけでもなく、さらに理由の記載も要りませんってことでしょうね。
というか、この時点で既に林、柳、南、桂のような姓の者が、そのままで届出する場合について想定されているわけで、「事実上、設定創氏は日本風の氏の設定に限定されていた」とする論拠としてはふさわしくないですな。

次に、他姓の者、つまり金さんや朴さんが林、柳、南、桂等の氏を設定しようとする場合、昭和14年制令第20号第1條第2項「自己の姓以外の姓は、氏として之を用ふることを得ず。」に引っかかるとして、却下なの?と。
これに対しては、いや、問題ないよ、と。
んー、要は林、柳、南、桂等は内地人式の氏と見なされてるって事だろうなぁ。
良く言われる「南太郎」と創氏改名するのって、現場ではどうか分かりませんが、法令上や質疑応答上では不可能ではないんですな。

【画像2】

【1421】
金氏、韓姓女等の称呼を有する女子の家が創氏したるときは、右「氏」、「姓女」等は其の儘に為し置くの外なし。
姓を以て氏と為す場合、姓を朱抹して新に氏を記載する要なし。

(19.3.41)(昭和15年1月25日咸興地方法院長稟伺 同年2月9日法務局長回答)


首題の件に関し左記の通疑義生じたるに付、何分の御指示相煩度此の段稟伺す。



一.金氏、韓姓女等の称呼を有する女子の属する家に氏設定せられ、姓を朱抹したる場合、右「氏」、「姓女」等の処置如何。

二.姓を以て氏と為す場合に於ても、戸主の姓を抹消の上新に氏を記載するを要するや(例へば金 朱― 金某等の如し)。


回答




一.其の儘と為し置くの外なし。
但し、努めて命名届を為さしむる様取計はれたし。

二.其の要なし。
朝鮮の女性に名前が無かったという話は頻出なわけですが、1940年に入ってもやはり無いままの人も居たんでしょうなぁ・・・。
ということで、金氏や韓姓女といった呼び名の女性がいる家が、氏を設定し姓を朱書きで抹消した場合、「氏」とか「姓女」とかどうするよ?という疑義に対して、まぁそのままにしておくしか無いでしょう、と。
勝手に名前付けるわけにもいきませんからねぇ。
ただ、当然その場合には、なるべく命名届を出させるように取りはからってね、と。
まぁ、当たり前の話。

次。
姓をそのまま氏にする場合も、戸主の姓を抹消して新しく氏を記載する必要があるのかという疑義に対してイヤ(゚⊿゚)イラネ、と。
9月25日のエントリーでの戸籍謄本や戸籍抄本の交付を請求による戸籍記載の更正を念頭に置いているのか、この後8月に訪れる法定創氏のための疑義か、姓をそのまま氏とする届出がある事を念頭に置いているのかは分かりませんが、普通に姓を氏とする場合の質疑応答があるってのは、面白いですなぁ。

【画像2】

【1422】
氏設定届の取扱方。

(19.3.45)(昭和15年3月15日各地方法院長、同支庁上席又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


府邑面に於ける戸籍届書類の取扱方に関しては従来屡注意を促したる処なるも、尚之が取扱振に付非難の聲を聞くは頗る遺憾とする所なり。
殊に氏設定に関し、職業の記載方又は府尹邑面長の氏名の記載洩、其の他戸籍の記載に支障なき些細なる錯誤遺漏等を理由として届書の返礼を為す向等ありて、届出人の蒙る煩労少からざるのみならず、氏設定届受理の際寄附を強要し、又は氏設定届書の返戻に際し之が戸籍抄本交付手数料を返還せざるが如き事例ありて、半島統治上一時代を画すべき氏制度の運行上、人心に及ぼす悪影響少なからざるものあり。
各位に於ては、一層監督を厳にし、斯る不当の処置なきを期せられたし。

追而■下府邑面戸籍事務管掌者に対しても、右の趣旨伝達相成度。
氏の設定で、職業の記載や府尹邑面長の名前の記載洩れなんかの、直接戸籍記載に関係ない些細な誤記や遺漏で届書の返戻って・・・。_| ̄|○
しかも氏設定届を受理するときに寄附を強要・・・。_| ̄|○
氏設定届書の返戻に当たって、戸籍抄本交付手数料を返還しない・・・。_| ̄|○
_| ̄|○ ばっかりです。(笑)
悪辣な日帝ですね!(笑)

つうことで、そういう不当な処置をしないように一層監督を厳しくし、各所管府邑面の戸籍事務管掌者にもその旨伝達しろ、と。


今日はこれまで。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(四)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(五)
朝鮮総督府編『朝鮮の姓』より
朝鮮人の氏名に関する件
高元勳
朝鮮戸籍及寄留例規(一)
朝鮮戸籍及寄留例規(二)


朝鮮戸籍及寄留例規(二)

テーマ:

前回から再開した創氏改名の連載。
朝鮮総督府法務局編纂『昭和十八年新訂 朝鮮戸籍及寄留例規(朝鮮戸籍協会 1943年12月)』の中から、「朝鮮民事令中戸籍條規及朝鮮戸籍令 附記 第6節 氏の設定」を見ております。
その続き。

【画像1】

【1417】
氏の届出受理件数報告記載方

(19.2.58)(昭和15年1月25日各地方法院長、各地方法■支庁上席判事又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


昭和14年本府訓令第77号(朝鮮人の氏の設定に伴ふ戸籍事務取扱方に関する件)第5條に依る報告には、(イ)氏別件数表、(ロ)職業別件数表の外、左記の表追加提出せらるる様致度。

(ハ)所在地別件数表
 一 鮮内居住者  件
 二 内地居住者  件
 三 満州居住者  件
 四 支那居住者  件
 五 其の他     件
総督府訓令第77号「朝鮮人の氏の設定に伴ふ戸籍事務取扱方に関する件」も見ないと駄目だねぇ。
宿題が増える。(笑)
兎も角、これによって後に統計資料が作られるんですね。

【画像1】

【1418】
受理すべからざる氏を誤て受理したる場合は、昭和14年制令第20号第1條に該当するものの外、其の儘に為し置くべし。

(19.2.56)(昭和15年2月1、2日釜山地方法院管内戸籍事務協議会決議)


氏の設定に付ては、昭和14年制令第20号第1條の規定以外に制限したる例示多数あり。
斯る氏の届出を誤って受理したるときは、其の措置如何。

決議
昭和14年制令第20号第1條に該当するもの以外は、受理したる以上其の儘と為し置くの外なし。
前回も見ましたが、昭和14年制令第20号第1條以外にも色々と留意事項がありました。
しかしながら、明確な法令違反となる昭和14年制令第20号第1條に該当するもの以外は、受理しちゃったら仕方ないからそのままにしておくしか無いよね、と。
当然の話ではあるんですが、多分過酷な統治の一環なんでしょう。(笑)

【画像1】 【画像2】

【1419】
氏の届出件数報告は本籍人のみにて足る。
外国人式の姓或は従来の姓名を其の儘依用する氏の届出は適法ならず。

(19.2.56)(昭和15年1月26日清津地方法院長稟伺 同年2月6日法務局長回答)


首題の件に関し左記の通疑義有之に付、至念御回示相煩稟伺す。



一.監督裁判所が氏の届書の送付を受けたるときの訓令第77号附録第4号書式の報告は、本籍人のみにて足れりや。
又は本籍人、非本籍人たることを問はず報告を要するや。
若し然りとせば、本籍人、非本籍人に区別し報告すべきや。

二.氏の届書又は氏名変更の届書竝に更正報告に依り為すべき戸籍副本の更正は、戸籍事務取扱規程第10條に依り戸主の姓の氏名のみにて足れりと思料す。

三.氏の設定に付、外国人式の姓或は従来の姓名を其の儘依用することは、立法の趣旨に反するものと思料す。
然らば、訓令第77号附録第4号書式、氏別、三其の儘の氏、とは前項を除く単に内地人式と認め得べからざるもの(例へば、本貫或は■■地等を用ひたる場合の如きもの)のみを指すものと思料す。


回答

首題稟伺の件、左記に依り了知相成りたし。



一.本籍人のみにて足る。

二.貴見の通。

三.貴見の通(但し、本貫又は■■地の名称を用ひたる氏と雖も、内地人式と見做し得るものも存し得べし)。
1については、先ほどの総督府訓令第77号で報告するのは、本籍が当該監督裁判所管内にある者だけで良いのか、届出を受けたものは全て報告するのかという疑義に対し、本籍人だけでよいよ、と。

次に2。
って、今度は戸籍事務取扱規程を調べなきゃ駄目か・・・。_| ̄|○
現代日本で言えば、戸籍の正本は市区町村で、副本は管轄法務局で保存されている。
新戸籍を調製した場合なんかに、市区町村長が管轄法務局等に副本を送るわけです。
で、氏の届出書や氏名変更の届出書、更正報告によって行う戸籍の副本の更正は、戸主の姓の氏名だけで良いよ、と。
「戸主の姓の氏名」が既に分からない。(笑)
推測すれば、各届出は戸主が行うわけで、それに附随する副本の更正も戸主の分だけで良いよって話だと思うんだけどなぁ。
ま、やっぱり戸籍事務取扱規程か・・・。

続いて3。
氏を設定するに当たって、外国人のような姓や従来の姓名をそのまま使うのは、立法の趣旨に反すると思うんだけど、そうすると総督府訓令第77号の付録第4号書式の氏別の「3.其の儘の氏」って、外国人のような姓や従来の姓名をそのまま使ったものを除く、単純に内地人式の氏以外のもの、例えば本貫や(発祥地?出身地?)等を用いた場合を指すんだと思うんだけど、どうよ、と。
これに対して、その通りだけど、ただ本貫とか使ってても内地人式の氏と見なせるものもあるよね。

後述するけど、前回の金英達の「設定創氏は日本風の氏の設定に限定されていた」の論拠としては、こっちの方がマシな気がするんだよねぇ。
ただ、文中「姓と姓名」については区別されてるっぽいので、論拠とするに微妙だったのかな?
というか、これも総督府訓令第77号見なきゃ駄目か・・・。

※2008.6.24補記
「三.其の儘の氏」と読んでましたが、正解は「三.其の他の姓」でした。
ついでに、「一.従前の姓と同一の氏」と別途記載あり。
「論拠としては、こっちの方がマシな気」は、気のせいでした・・・。
_| ̄|○


なんか、宿題が増えただけの気もするけど、今日はこれまで。(笑)



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(四)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(五)
朝鮮総督府編『朝鮮の姓』より
朝鮮人の氏名に関する件
高元勳
朝鮮戸籍及寄留例規(一)


朝鮮戸籍及寄留例規(一)

テーマ:

不定期連載を掲げていた創氏改名の連載です。
ちょいと前、某サイトの掲示板でヒントを頂きまして、その結果辿り着いたお話。

まずは、金英達著の『創氏改名の研究』から一部抜粋してみます。

朝鮮総督府法務局の『氏制度の解説』(1940年2月)には、次のように解説されている。
「<期間内に氏を届出でなかった場合はどうなるか>
昭和15年8月10日迄に氏の届出を為さなかった場合は、2月11日に於ける戸主の姓がそのまま氏となります。従って従来の金や李をそのまま氏としたい者は届出をしないで放って置けば良い訳です。」

実務上では、「林、柳、南、桂等の姓を有する者が、林(ハヤシ)、柳(ヤナギ)、南(ミナミ)、桂(カツラ)等内地式の読み方を以て氏と為さんとする場合其の届出の要なきところ」という1940年4月22日付の法務局通牒(7)でうかがわれるように、戸主の姓をそのまま氏とする創氏届は必要ないとされており、戸籍窓口の実際においては、そうした創氏届は受理しなかったことが推測される。

ということは、事実上、設定創氏は日本風の氏の設定に限定されていたのである。
この、「法務局通牒(7)」の出典が、朝鮮総督府法務局編纂『昭和十八年新訂 朝鮮戸籍及寄留例規(朝鮮戸籍協会 1943年12月)』になります。
内容的には例規集なわけですが、取りあえず金英達氏の根拠となっている文は後回しにして、『朝鮮戸籍及寄留例規』の「朝鮮民事令中戸籍條規及朝鮮戸籍令 附記 第6節 氏の設定」について、順に見ていきたいと思います。
画像、ちょっと小さめだけど、その辺は勘弁。

【画像1】

第6節 氏の設定
(民令附則(昭和14年制令第19号)、朝鮮人の氏名に関する件(昭和14年11月制令第20号)、朝鮮人の氏の設定に伴ふ届出及戸籍の記載手続に関する件(昭和14年12月府令第221号))

【1415】
戸主の姓又は前男戸主の姓を以て氏としたる戸籍に付、氏の校正未済のまま其の謄抄本の交付請求ありたるときは、之が校正を為したる上作製交付すべし。
従前の戸籍中、「本貫」欄は「姓及本貫」に訂正すべきものとす。
氏設定に因る戸籍訂正の記載は、新戸籍に移記を要せず。
氏の届書は、10日毎に取纏め、監督裁判所に送付すべし。

(19.2.56)(昭和15年1月10日各地方法院長、各地方法■支庁上席又は一人の判事宛 法務局長通牒)


氏の設定に伴ふ戸籍事務の取扱に付ては、左記事項留意せしめられたし。



一.昭和14年制令第19号(朝鮮民事令中改正の件)附則第3項に依り、戸主の姓又は前男戸主の姓を以て氏としたる戸籍にして、昭和14年朝鮮総督府令第221号(朝鮮人の氏の設定に伴ふ届出及戸籍の記載手続に関する件)第3条第1項但書の規定に依る更正手続未済のものに付、其の謄本又は抄本の交付請求ありたるときは、同規定に基く戸籍記載の更正を為したる後之を作製交付すること。

二.戸籍中「本貫」欄を「姓及本貫」に訂正し「本貫」の次に「姓」を挿入するに当り、欄内に記入し難きときは欄外に記入を為すも差支なきこと。

三.新戸籍編成の場合に於て、氏設定に因る戸籍の訂正の記載(届出を為さざる場合の戸籍の更正を含む)は、之を新戸籍に移記するを要せず。

四.氏の届書に付ては(朝鮮戸籍令第27條及戸籍事務取扱準則第18條の規定に拘らず)、10日毎に之を取纏め、監督裁判所に送付せしむること。
まずは1。
これが、6月21日のエントリーで設定創氏が必ず日本風の氏であるという俗説に、最も疑問だった点。
本来の戸籍業務上どう処理すんの、と。
自動的に姓が氏となる8月まで待てというのは理不尽だろうと思ったわけ。

最も、ここで明確に書かれている通り、戸主の姓や前男戸主の姓を氏にする事にした場合、戸籍謄本や戸籍抄本の交付を請求されたら、戸籍記載の更正をした後謄本や抄本を交付しなさい、と。
特に設定届けは必要ありませんでした。
ウリの予想、外れ。(笑)

次は戸籍の訂正方法に関する件。
一応、戸籍の画像はToron Talkerさんの所からお借りして置いておきます。

戸籍

この戸籍は法定創氏のものなわけですが、「氏の届出を為さざるに因り昭和15年8月11日李を氏としたるに付更正す」と記載があり、先ほどの戸籍記載の更正ってこういう感じなのかな?

次が、新戸籍を編成する場合について。
新戸籍を編成する時は、設定創氏の場合の戸籍訂正の記載も法定創氏の場合も含めて、新戸籍に書く必要は無いよ、と。
新しく独立して一家創設した場合とかの話かな?

4番目が、氏の届出書は10日ごとに取りまとめて、監督裁判所に送りなさい、と。

【画像1】

【1416】
用ふることを得ざる氏

(19.2.56)(昭和15年1月16日各地方法院長、各地方法■支庁上席又は一人の判事宛 法務局長通牒)


氏に関する諸法律は、本年2月21日より施行せらるる処、氏の設定及氏名の変更に付ては、左記事項留意の上之が運用に遺憾なきを期せられたし。



一.御歴代 御諱及 御名は別表の通

二.氏の設定に付ては、御歴代 御諱 御名の外、御歴代の追号、皇族の宮号、王公族の称呼、顕著なる神宮名又は神社名(例へば伊勢、櫃原、宮崎及靖國等)、皇室に由結深き家(例へば近衛、鷹司等の如き5摂家及久邇、■■等臣籍に降下せられし家)、歴史上及現代の功臣の氏(例へば東郷、乃木、西園寺)等を使用したるときは之を受理せしめざること。

三乃至六(略)
6月21日のエントリーでやった、制令第20号の第1条第1項で言われたものより、さらに細部にわたる留意事項ですね。
結構縛りがあります。
というか、これ韓国人に説明するの面倒くさそう。(笑)


今日はこれまで。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(四)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(五)
朝鮮総督府編『朝鮮の姓』より
朝鮮人の氏名に関する件
高元勳


高元勲

テーマ:

先日zero氏から、創氏改名について半島での朝鮮名の使用例を聞かれました。
まぁ、殆どお役に立てませんでしたが。(笑)
それを調べる中で、結構面白い話を見つけたので、ちょっとやってみようかな、と。
それが今回のタイトルの高元勲について。

彼、日本風の創氏改名していない在朝鮮の有名人なわけですが、日本統治時代に道知事となったりで、勿論現代においては親日派認定されております。
ちょっと過去のニュースを見てみましょう。

教え子が師を告発する大学の親日清算

高麗(コリョ)大学総学生会が28日に行った内部調査の結果をもとに“親日教授”10人の名簿を発表した。

この名簿にはこの大学の設立者である金性洙(キム・ソンス)氏をはじめ、兪鎭午(ユ・ジノ)氏、申奭鎬(シン・ソクホ)氏、高元勲(コ・ウォンフン)氏、張徳秀(チャン・ドクス)氏、趙容萬(チョ・ヨンマン)氏、崔載瑞(チェ・ジェソ)氏など、同大学の総長や教授をしていた7人と、李丙燾(イ・ビョンド)氏、イ・カクジョン氏、ソン・ウスン氏など、同大学の卒業生3人が含まれていた。
総学生会は「(今後)生存している前・現職教授の名簿を追加で発表するかについては話し合ってみなければならない」とした。

高麗大学総学生会が“親日教授”と発表した人々の日本植民地時代の行跡と功過に対する評価は見方によって違う。
ひとつふたつの側面から判断し、このような人々が親日だ、そうではないという二分法で分けるのは難しい。

このため、“親日教授”らに対する評価は、今後、政権レベルで展開された親日行跡調査でも論争になる可能性が大きい。
このような中、高麗大学総学生会が先に率先し、自分たちの先輩であり師であった人々を“親日”と規定し、銅像撤去などの作業を繰り広げると誓うのは性急過ぎる。

高麗大学・総学生会は、韓昇助(ハン・スンジョ)氏の「日本の雑誌への寄稿事件」を機に、「日帝残滓清算委員会」を構成し、「高麗大学内の“親日人物”の告発受付」を開始してから半月目に最初の結果を発表した。

いくら反日と親日の清算が重要であっても、先輩であり師である人々の一生を評価する作業であれば、慎重に慎重を重ねてもまだ足りないと考えるのが道理だ。

父親、祖父の日本植民地時代の行跡を独立運動家に仕立て上げたり、自分を産んだ両親を自分の手で審判する政治家たちのあきれた形態が、今度は大学街で教え子が師を告発する姿につながったようで苦々しい。

高麗大学を皮切りに、各大学では「日帝残滓清算運動」に火が付いた状況だ。
大学間で連帯の動きも見えている。
大学が歴史と現実の問題に関心を持つのは当然のことだ。
しかしこの運動が学問的レベルではなく、もうひとつの社会変革運動のように繰り広げられるとすればそれは危険なことだ。

学生たちに“親日派教授”という烙印を押されれば、それを乗り越えることができる教授はいないだろう。
特に、日本植民地時代について研究する教授らは、研究と教育でも学生たちの監視の視線を意識せざるを得ないだろう。
そんな大学は結局、文化大革命時代の中国の大学に似ていくだろう。
まぁ、いつも通り馬鹿だなぁとしか感想も無い記事なわけですが、この中に今回取り上げる高元勲(コ・ウォンフン)氏が入ってますね。

で、アジア歴史資料センター『公文雑纂・昭和十八年・第十五巻・内閣十五・特殊会社役員任命協議/朝鮮証券取引所理事並監事任命ノ件(レファレンスコード:A04018705700)』に、彼の履歴書が残ってます。
3ページ目くらいまでテキスト起こし頑張ったんですが、経歴があまりに長くてそこで飽きてしまったので(笑)、職歴に絞ってさらに抜粋して書いてみますのでヨロシク。

履歴書

原籍地 慶尚北道聞慶郡山南面薪田里
現住所 京城府新橋町6番地

高元勳
明治14年 2月29日生

明治43年 7月13日明治大学法科卒業
明治44年 5月 5日私立普成専門学校講師
明治44年 8月12日朝鮮総督府警部(警務統監部庶務課勤務)
明治45年 1月10日私立養正義塾講師
明治45年 1月15日私立普成専門学校講師
大正 2年 4月 9日私立普成専門学校教授
大正 5年 9月 1日私立普成専門学校教監
大正 6年 1月 9日私立徽文高等普通学校講師
大正 9年 2月21日私立普成法律商業学校長
大正10年 7月23日朝鮮体育会理事長
大正11年 1月10日財団法人普成専門学校理事
大正11年 4月 1日普成専門学校長
大正12年 7月28日京畿道教育会評議員
大正12年 8月 4日朝鮮教育会評議員
大正13年 4月27日朝鮮総督府中枢院参議
大正13年12月 1日朝鮮総督府全羅南道参与官
大正13年12月 6日日本赤十字社朝鮮本部光州支部副長
大正15年 9月 6日朝鮮総督府慶尚北道参与官敍高等官4等
昭和 3年 4月 2日敍従五位
昭和 7年 5月25日全羅北道知事
かなり抜粋。(笑)
っていうか、多すぎだし。
まぁ、取りあえず警務統監部庶務課を出発点として、その後は主に教育畑を歩いて偉くなってった人ですね。

さて、この履歴書のどこが面白いか。

まずは、初っぱなの明治大学法科卒業にあります。
明治大学に居た慶尚北道聞慶郡山南面の高元勳。
実は、もうこのブログに登場したことがありまして。
そう、昨年の11月26日のエントリーを始めとして紹介した、在日韓国留学生を代表して一進会の合邦問題に反対の布告文と内閣に提出する建議書を持って、ソウル入りしたうちの一人です。
時局問題に関する集会、布告文の配布が禁じられている事を知って、(´・ω・`)となって帰ってった人ですね。(笑)

もう一つ面白い部分がありまして。
それが、大正5年9月1日に就任した私立普成専門学校教監。
このHPによれば、3・1独立運動に参加した学生に情状酌量を嘆願する内容の請願書が出されているわけですが、その請願者の署名の中に私立普成法律商業学校教監高元勲が居るわけで。
画像中にもしっかりと見る事が出来ますね。

その上で、今回紹介した史料。
昭和18年7月に朝鮮証券取引所の理事と監事を任命する話でして、ここではしっかり元の漢字のまま高元勳、と。
日本風の氏を創氏してないんですね。

一進会の日韓合邦に反対し、3.1運動の参加学生の情状酌量を嘆願し、創氏改名では日本風の氏に改めない。
それでも親日派として糺弾されるような状況なわけで。

まぁ、過去を全否定して生きていくのは半島の歴史の常態ですから、今更どうこう言う話ではないんですが、つくづく韓国人として生きて死ぬって、大変な事なんだなぁ、と。(笑)

っていうか、ほぼ無名の人物の履歴書一枚で、こんなエントリー書いて、私以外に誰か楽しいんだろうか?(笑)


ってことで、今日は与太話でした。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(四)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(五)
朝鮮総督府編『朝鮮の姓』より
朝鮮人の氏名に関する件