前回は、10月1日のエントリーの1894年(明治27年)7月9日付け『機密第121号 本70号』の別紙のうち、甲号と乙号について見ていきました。
今日は別紙丙号を見ていきましょう。
では早速。

『韓国内政改革ニ関スル交渉雑件 第一巻/3 明治27年7月5日から1894〔明治27〕年7月17日(レファレンスコード:B03050308300)』の26画像目から。
大鳥の改革案である、別紙丙号。
長いので、条項毎に見ていく事にします。

丙号

内政改革方案綱目

第1條 中央政府の制度及び地方制度を改正し、并人材を採用する事

一.官司の職守を明にすること
内外庶政を総理する機務は、挙げて之を議政府に復旧し、六曹判書をして各々其分職を守らしめ、而して勢道執権の弊制を廃止すること
内外政務と宮中事務と判然区別を立て、宮中に奉仕する官吏をして一切政務に干渉せしめざること

一.外国交渉の事宜を重じ、国家に代り其責に任ずる大臣をして之を主宰せしむ可き事

一.政事を施行するに必要なる官衙を存立し、其余は総て之を廃止し、又は甲官衙の事務を乙官衙に合併し、以て簡便に従ふ事

一.現在の府郡縣治は其数過多なれば、宜く酌量して之を廃合し、民治に妨なき迄の少数に止むる事

一.事務執行に必要なる官員を存し、其余の冗員は之を沙汰する事

一.従前の格式を打破して広く人材を登用する門を開くこと

一.売官の悪弊を停廃する事

一.時勢を参酌して官吏の俸給を定め、生を資て廉を養ふに差支なからしむる事

一.官吏収賄索銭の悪習を厳禁すること

一.地方官吏の情弊を矯正する法を設くること
まずは政治制度と人材登用関係。
6月4日のエントリーの1894年(明治27年)6月27日起草『機密送第26号』のうち、「一.官司の職守を明かにし、地方官吏の情弊を矯正する事」と「一.外国交渉の事宜を重じ、職守其人を択ぶ事」の関係ですね。

まずは訓令通り、官司の職責の明確化。
政治の総理事務は議政府に戻し、各大臣にその職分を守らせ、勢道政治の弊制を廃止し、国の事務と宮中の事務を明確に区別して、宮中に努める官吏には一切政務に干渉させんな、と。

次に、国の代表者としての責任ある大臣に外交交渉を主宰させろ。
陸奥は、7月16日のエントリーの大鳥への内信で「将来言行一致の行動をなす事を得る実力家、即ち所謂勢道と申す如き人物を外国交渉の当局者に任命せらるる事」って言ってましたが、その辺はずいぶん簡略化されちゃったようで。

で、以下は大鳥オリジナル改革案が続きます。
施政に必要な官庁を残して他は廃止し、事務も統合して簡便に行うこと。
現在の地方行政区域は多すぎなので、統廃合して支障ない程度の少数にすること。
事務の執行に必要な公務員は残して、それ以外はリストラすること。

この3つを簡単に言うと、行政のスリム化ですな。
つうか、そもそも職責や分掌事務を明確化にしなきゃ、出来ない事だと思うんですが・・・。(笑)

で、従来の格式にこだわらない広く人材登用。
売官の停廃止。
官吏の給料を物価に応じて定めて生計が立つようにし、清廉の気風を養うのに差し支えないようにする。
官吏の収賄督促を厳禁する。
まぁ、この辺は大鳥オリジナルとは言っても、6月6日のエントリーの1894年(明治27年)6月27日『親展送第76号』の会計の項で、「貪官汚吏をして其侵蝕を恣にすることを得ざらしむべし。」にも絡んでくるわけですが。

で、最後に地方官吏の情弊を矯正する法律を作る事、と。

つうか、最初っから細かく要求しすぎじゃね?
いや、そもそも「地方官吏の情弊」って言われても、何が情弊なのか細かく言わないと分からないのかも知れませんが。(笑)

第2條 財政を整理し富源を開発する事

一.国家の収入及び支出を調査し、其制度を立つる事

一.会計出納を厳正にする事

一.貨幣制度を改定する事

一.各道の田畝を精査し、租税を改正する事

一.其他の諸税法を改正し、若くは新税を設くる事

一.不必要の支出を減省し、并収入増加の方法を講ずる事

一.国道通衢を推廣修平し、并に京城と要港との間鉄道を建築し、并に全国重要の城市に通ずる電信を架設し、以て通信往来の便を開くこと

一.各開港場にある税関は、一に朝鮮政府自ら之を管理し、他国の干渉を容れざる事
同じく6月4日のエントリーの1894年(明治27年)6月27日起草『機密送第26号』のうち、「一.会計出納を厳正にする事」と「一.幣制を改定する事」と「一.交通の便を起す事」の関係。

一つ目の歳入出を調査して制度化、二つ目の会計・出納の厳正化、三つ目の貨幣制度の改定、七つ目の主要道路の改修・鉄道敷設・電信架設が、陸奥から話があった項目。

それ以外が大鳥のオリジナル。
四つ目が土地調査と租税改正。
五つ目はその他の諸税の改正と新税創設。
六つ目が、歳出削減と歳入増加の方法を講じること。
この3つは、主に財源の確保についてですね。
6月6日のエントリーの1894年(明治27年)6月27日『親展送第76号』の会計の項では「貢租賦税の実を調査」ってだけだったんですが、その改良方法にまで言及してるという。

最後の八つ目は、税関を朝鮮政府自身が管理し、他国の干渉を容れるな、と。
この頃の総税務司は、当ブログでもおなじみのJ.M.ブラウンですが、その他にも各税関雇いの外国人が多数いたようで。
つうか、国際問題になりそうな要求って、やばくね?

第3條 法律を整頓し、裁判法を改正する事

一.旧法中、時宜に適せざるものは概ね之を廃革し、或は新法を制定する事

一.裁判法を改正して、司法の公正を明にする事
古い法律中の時代に合わないものは廃革し、あるいは新しい法を制定することと、裁判法の改正により、司法の公正を明らかにすること、と。
んー、訓令は裁判制度の確立ってだけの話だった筈ですが・・・。

第4條 国内の民乱を鎮定し、安寧を保持するに必要なる兵備及警察を設くる事

一.士官を養成する事

一.旧式水陸兵は一切之を廃し、更に財力の許す所を量り新式兵を増置すること

一.京城及び各城邑に、厳正なる警察を設くること
士官の養成と旧式兵廃止&新式兵増員ってだけじゃ、「国安を保持」するに足りないよなぁ・・・。
他の項目と違って、何故か簡単に済んじゃってますね。

第5條 教育の制度を確立すること

一.時勢を斟酌して学制を新定し、各地方に小学校を設立し、子弟を教育すること

一.小学校の設立準備するを待て、漸次中学及大学を設立すること

一.学生中俊秀なる者を撰抜して、外国に留学せしむる事
学校の創設については、訓令の素案にあったものをわざわざ削除してんのに、大鳥の独断で復活。(笑)
まぁ、大鳥はその経緯は知らないわけですが。

ただ、最後の外国留学に関しては、6月11日のエントリーの1894年(明治27年)6月27日『機密送第27号』に、内政改革要求とは別の、日本の利益に関する要求事項の中にありましたけどね。

つうか、どう見ても「取りあえず」の内政改革に過ぎないんだけど、それでも問題山積みだよなぁ・・・。(笑)


ってところで、途中ですが長くなりましたんで、今日はここまで。



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