ドラマ用に分かりやすくした脚本もかくや、という朝鮮の惨状。
時代劇であれば、水戸黄門や大岡越前や遠山の金さんや仕事人が出てくるんでしょうがねぇ。(笑)

ってことで、 京城領事の内田定槌から陸奥への、1894年(明治27年)6月26日付『機密第26号』の続き。
アジア歴史資料センター『韓国内政改革ニ関スル交渉雑件 第一巻/2 明治27年6月20日から1894〔明治27〕年7月12日(レファレンスコード:B03050308200)』の12画像目。
右から5行目から見ていきます。

扨又当国地方人民一般の状態を案ずるに、政府積年の弊政により、職業を励みて家産を起し之を蓄積せんとするの念全く消亡し、若し其勤労により多少の財産を貯ふる者有之候ときは、直に地方官の注目する所となり、種々の口実により之を貪ぼり取られ、其身体に迄如何なる災を及ぼすことあるやも測られ難き次第に付、人々自然に惰弱の習慣を養成し、唯僅に其口を糊し、雨露を凌ぐを以て足れりとし、赤貧洗ふが如きを以て最も安全の策なりと考へ、偶々多少の資産を貯ふる者あるも務めて之を秘密にし、家屋衣服の如きも可成之を質素にして、故らに貧困を粧ふ有様に御座候得ば、百般の農工商業は悉く萎靡して少しも開発すること無之候。
一方で、朝鮮の地方の一般ピーポーの状態は、長年の弊政のせいで、仕事を頑張って財産を作り貯めようという考えは全く消え失せ、もし勤労によって多少の財産を蓄える者がいれば、すぐに地方官に注目され、様々な口実によって奪われる。
その身体にはどのような災いが起きるか分からない、ってな状態のため、人々は自然と惰弱の習慣を形成して、ただ僅かに糊口を凌ぎ雨露を凌ぐ程度で十分だとして、非常に貧しくて何も持っていない状態が最も安全だと考え、たまたま多少の財産を蓄えた者がいても、努めて秘密にし、家や服装もなるべく質素にして、わざわざ貧困を装うような有様なので、様々な産業はことごとく衰えて元気が無く、少しも開発されることがない、と。

まぁ「停滞史観」とか言われたりしますが、実際ボロボロだったんだろ?と。(笑)

んじゃ、続き。

夫れ国家の貧富強弱は国民個々の貧富強弱に基き、国民個々の貧富強弱は一に国政の良否に基き、国政の良否は一に行政機関の善悪、百官有志の賢不肖に存するものに御座候処、今や当国行政機関は如此腐敗し、其百官有志如此暗愚残酷なる以上は、民力疲弊せざらんとするも得べからず、国力衰亡せざらんとするも得べからざる儀と存候。
然りと雖ども、若し夫れ当国の諸制度に根本的の大改革を加へ、歳入歳出の途を明にし、厳に官吏の私曲を制し、人民の権利義務を明確にして其生命身体財産の安全を計り、盛んに文明的の教化を敷きて専ら殖産興業の道を奨励したらんには、沃野の広き如此、砿山の饒多なる如此、沿海漁猟の利を有する如此、而も人口1,000万に垂んとする此朝鮮国のことなれば、百般の殖産事業は続々として振興し、外国貿易も亦隆盛に赴き、其富強に至るべきは期して俟つべきことと存候。
国家の貧富強弱ってのは国民個人個人の貧富強弱に基づき、個人個人の貧富強弱は国政の良否に基づき、国政の良否は行政機関の善悪や官吏の能力によるものだ。
しかし、今や朝鮮の行政機関はこのように腐敗し、官吏もこのように暗愚・残酷である以上は、民力が疲弊し、国力衰亡するのも仕方ないだろう、と。

しかし、もし朝鮮の諸制度に根本的な大改革を加え、歳入・歳出の使途を明確にし、官吏の不正を厳しく規制し、人民の権利・義務を明確にしてその生命・身体・財産の安全を計り、盛んに文明的な教化を行って殖産興業を奨励すれば、朝鮮は沃野も広く、鉱山も多く、沿海漁業の利を有し、人口1,000万人になるんだから、様々な殖産事業は次々に振興し、外国貿易も盛んになり、富強に至る事が期待できる、と。

正論ではありますし、以降の日本の援助の基本方針になるわけですが、やるのがヤツらですからねぇ・・・。(笑)

つうか、陸奥は「近代化十字軍」の必要性が無い旨を述べてるように、本来は関わらない方が良いに決まってるわけで。
でも、関わらなければ足を引っ張る。
いや、関わっても足引っ張られるか・・・。
迷惑な国だよなぁ。(笑)

然らば即ち、当国をして其独立を維持せしむる丈けの国力を養成せしめんには、是非共先づ其国政の大改革を行はざる可からざる義と存候処、之を改革するに当り、其方法如何はさて置き、果して当国政府自ら如此大改革を行ひ首尾能く其目的を達し得べきや否や、是れ甚だ覚束なき次第にして、或は望を現国王の御生父たる大院君に属する者も有之候得共、如此大事業は一朝一夕にして其功を奏す可きに非ず、必ずや5年、10年若くは20年前後の長日月を要するものに御座候処、同君仮ひ剛毅英邁の令聞ありと雖ども、70余歳の高齡に及ばれ居るが故に、其独力を以て此回天の大業を成就することは到底出来難きものと存候。
されば、当国政府を輔佐して此大改革を行はしむるものは、即ち我帝国政府の任にして、帝国政府が此事を行ひ、朝鮮国をして清国を始め其他の列国に対し厳然たる東洋の一独立国たる体面を保たしむるは、我国の為め最も名誉なる且つ最も安全なる策にして、亦我帝国の勢力を朝鮮半島に拡張する好手段に外ならずと存候。
ってことで、朝鮮の独立を維持させるだけの国力を養成させるには、是非ともその国政の大改革をしなければならないと思う。
その改革を行うにあたり、方法はさておき、果たして朝鮮自らがこのような大改革を行い、首尾良くその目的を達成できるか否かは非常に覚束なく、望みを大院君にかけてる者もいるけど、これほどの大事業は一朝一夕では効果が出ず、5年、10年、20年と長期を要するものなのだから、大院君に剛毅英邁の評判があるにせよ、70余歳の高齢だし、独力でこんだけの大業を成就するのは到底できないだろう、と。

つうか、そもそも大院君に期待するって時点でなぁ・・・。(笑)

で、そうなれば、朝鮮政府を補佐してこの大改革を行わせるのは日本政府の任であり、日本政府が大改革を行って、朝鮮に厳然たる東洋の一独立国としての体面を保たせれば、日本のために最も名誉且つ安全な策であり、日本の勢力を朝鮮半島に拡大する好手段に他ならないと思う、と。

だから、独立国としての能力を保持していない国に、独立国としての体面を保たせようとするから歪みが出るんだよねぇ。(笑)
まぁ、他に清国やロシアとの緩衝地帯をキープする、良い方法も思いつきませんし、そもそも依存体質の国が相手ですので、仕方のないところでしょうけど。

然るに、我帝国政府が当国の政府に干渉するは、従来当国を以て独立国と公認したるに拘はらず、自ら其独立の権利を侵害するの嫌も有之候処、右は万已むを得ざる次第に付、其不都合を避くる為め、并に諸外国の妨害を避くる為め、此際当国政府に申入れ懇々利害のある所を説明し、将来朝鮮国をして我日本帝国の保護を受けしむるの條約を締結し、内政の改革に関しても亦帝国政府の輔助を受けしむるの特約を為し、帝国政府は条約上の権利として当国政府の内治外交に干渉すること頗る肝要と存候。
尤も、日本政府が朝鮮政府に干渉するのは、従来朝鮮を独立国として公認してたわけで、自分でその独立の権利を侵害する嫌いもあるけど、これは仕方の無い事であり、その不都合を避けるのと諸外国の妨害を避けるために、この際朝鮮政府に申し入れて、その利害を懇々と説明し、将来朝鮮に対して日本の保護を受けさせる条約を締結し、内政改革についても日本の補助を受けさせる特約を結んで、日本は条約上の権利として内治外交に干渉する事が非常に肝要だと思う。

最終的にはそういう方向性に向かうわけですが、後の閣議を見ても日本はこの時点ではまだそこまでの考えは無く。

つうか、属国自主だの意味分かんねぇ事言ってないで、清国が朝鮮を保護国にしとけば分かりやすかったのに。
どうせ、実態としてそうだったんだから。(笑)


ってところで、途中ですが今日はここまで。



日清戦争開戦まで(一) 日清戦争開戦まで(三十一)
日清戦争開戦まで(二) 日清戦争開戦まで(三十二)
日清戦争開戦まで(三) 日清戦争開戦まで(三十三)
日清戦争開戦まで(四) 日清戦争開戦まで(三十四)
日清戦争開戦まで(五) 日清戦争開戦まで(三十五)
日清戦争開戦まで(六) 日清戦争開戦まで(三十六)
日清戦争開戦まで(七) 日清戦争開戦まで(三十七)
日清戦争開戦まで(八) 日清戦争開戦まで(三十八)
日清戦争開戦まで(九)
日清戦争開戦まで(十)
日清戦争開戦まで(十一)
日清戦争開戦まで(十二)
日清戦争開戦まで(十三)
日清戦争開戦まで(十四)
日清戦争開戦まで(十五)
日清戦争開戦まで(十六)
日清戦争開戦まで(十七)
日清戦争開戦まで(十八)
日清戦争開戦まで(十九)
日清戦争開戦まで(二十)
日清戦争開戦まで(二十一)
日清戦争開戦まで(二十二)
日清戦争開戦まで(二十三)
日清戦争開戦まで(二十四)
日清戦争開戦まで(二十五)
日清戦争開戦まで(二十六)
日清戦争開戦まで(二十七)
日清戦争開戦まで(二十八)
日清戦争開戦まで(二十九)
日清戦争開戦まで(三十)


AD