「人間、年をくうと何かのきっかけを見逃しがちになるな。わかってても乗らないというか」
「それは傷つきたくないからよ。へんに経験を重ねることで、余計なプライドができちゃうのね」
「みんな分かっているんだけどさ、やっぱり恥をかきたくないんだよな。誰も気にしないのに」
「やっぱり昨日のことを気にしてたのね。お互いに、いい雰囲気だとおもってたけど」

たしかに酒席は、とてももりあがった。笑い声がたえることなく、誰もが存分に楽しんでいた。
だがメインは嫁探し、婿探しである。いきなりそういかないまでも、きっかけを掴んでほしかった。

「一応、携帯でメアドのやりとりはしたみたいだけど。なんかさ、まだ誘ってないんだって」
「まだ早すぎるわよ。こういうのは、お互いにあたためなきゃ。恋の炎ってやつをね」
「そんなことばかりいってるから、いつまでたっても伴侶がみつからない連中なんだぞ」
「まあ、女の私からみてもちょっとイラっとしたけどね。もうすこしガッツが見たかったわ」

幹事という名の仲人役としては、その後の行方が気になるところ。世話焼き爺そのものだ。

「とにかくさ、みんないい奴らばかりなんだよ。はやく幸せになってほしいんだよなあ」
「女性たちも、みんな美人で性格もよかったよね。なんで彼氏がいないのか本当に不思議」
「やっぱりさあ、この過度な情報社会に問題があるんだよ。知識バカというかさ」
「あまり関係ないと思うけどなあ。とりあえず、きっかけをもっと作ってあげようよ」

というわけで、来週末に我が家でホームパーティーを開くことに。参加費は各人、一品一酒。
なにをするわけでもなく持ちよった品を皆で食べ飲みし、親交を深めることが目的だ。

「本当はさ、みんな誘われたいんだよ。忙しそうなふりをしてさ。その言い訳を俺たちが取り払う」
「あなたって人のことになると、とたんに猛進するよね。たまには私へ振りむけてほしいけどなあ」

きっかけ作りに苦労したのを彼女は知らない。クッキーの試食に毎回、晩メシを抜いていた。
試しにパーティーでの品をリクエスト。もう虫の音を鳴らす必要はないからね、とお腹をさすられた。