• 14 Apr
    • 5(ネフローゼ患者の浮腫形成、腎障害のNa管理、塩素イオン)

      ネフローゼ患者の浮腫形成に関する臨床的研究A clinical study on edema formation in nephrotic patients日本腎臓学会誌Vol.30(1988)No.6p679-686https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjnephrol1959/30/6/30_6_679/_pdf1.ネフローゼ患者の浮腫形成には水、Na利尿不全が大きな役割を演じており、近位尿細管での水,Naの再吸収亢進に基づいていると思われる。ネフローゼ患者では近位尿細管腔圧が上昇し、糸球体濾過液の尿細管腔通過時間が延長するために近位尿細管での再吸収は亢進すると考えるのが妥当と思われる。2.浮腫形成にはレニン・アンギオテンシン系、利尿ホルモンは関与していないと思われる。考察今回我々はネフローゼ患者の浮腫形成機序について臨床的検討を行った。ネフローゼ患者の体液量に関しては浮腫を伴った体重増加があることから、細胞外液量は当然増加しているだろうと考えられる。実際ネフローゼ患者の細胞外液量を測定した報告では浮腫期の細胞外液量は浮腫消失期に比べ63.4%増加している。しかしネフローゼ患者では低アルブミン血症があるために細胞外液量の増加程循環血液量は増加しない。Manningらは腎摘出犬で細胞外液量を40%まで増加させると循環血液量も25%まで直線的に増加するが、血清アルブミン値が低下すると細胞外液量の増加が40%に達する以前に循環血液量は25%以下でプラトーになると認めている。Geersらは健常者とネフローゼ患者における細胞外液量と循環血液量の関係を見ている。細胞外液量を21.4%増加させた際、健常者では循環血液量は11.2%増加するが、高度の膠質浸透圧低下例では循環血液量は2.4%の増加となり、軽度低下例では8.1%の増加であったと述べている。更にFadnesらが健常者と14例のネフローゼ患者の血漿膠質浸透圧及び組織間隙の膠質浸透圧を測定しているが、健常者の血漿浸透圧は24.2mmHgで、組織間隙の膠質浸透圧は12.0mmHgと血漿膠質浸透圧の50%で、その膠質浸透圧差は12mmHgである。低アルブミン患者でも血漿と組織間隙の膠質浸透圧比は変わらないため、血漿膠質浸透圧が低下すると、その膠質浸透圧格差が12mmHg以下となり、組織間隙に体液は貯留する。血清アルブミン値の低下度からみたネフローゼ患者の細胞外液量状態は、血清アルブミン値が高度低下例では循環血液量は正常か軽度増加で、浮腫は高度となり、軽度低下例では、血清アルブミンが高い分循環血液量はより増加し、浮腫は軽度になると予測される。ネフローゼ患者の浮腫期循環血液量は正常以上に保持されており、循環血液量減少が引金となって細胞外液量が増加するとは考えられなかった。血清アルブミン値の低下は細胞外液量の分布に大きく関与しており、細胞外液量増加は腎による利尿不全に基づくと思われる。ネフローゼ患者における体液量増加因子としては1)糸球体濾過量の低下、2)近位尿細管での水、Na再吸収亢進、3)ADHによる水、Na再吸収増加、4)レニン・アンギオテンシン系の亢進、5)Na利尿ホルモン(α-hANP)の減少を可能性として考えた。微小変化群患者の糸球体濾過量Ccrは低下していることで緒家の意見は一致している。微小変化群患者の腎血行動態を検討した報告では腎血漿流量は減少しておらずに糸球体濾過率が低下してCcrが低下している。その機序は腎の間質浮腫により尿細管腔静水圧が上昇して糸球体濾過率が健常者の1/2-1/7と著明に低下するために生じると述べられてる。Shapiroらはネフローゼ患者9例を水負荷後5時間で飲水量の37%しか排尿できない患者と105%排尿した患者間でも比較を行っている。血圧、心拍出量、末梢血管抵抗、PRA、PAC、norepinephrineに差はみられず、head-out water immersionいて水利尿不全患者は水、Na排泄が増加し、同時に平衡してCcrも増加したことから、Ccr低下が水利尿不全の原因であると報告している。今回の検討では浮腫期のCcrが尿量、尿中Na排泄量と相関せず、水負荷後の尿量/飲水量、自由水クリアランス、Naクリアランスとも相関しないため、Ccr低下が利尿不全の原因であるとは言えなかった。微小変化群患者では入院時の1日尿中Na排泄量は高度に低下しており、Na摂取量よりも少なかった。微小変化群患者の尿中Na排泄量低下は実験腎炎、臨床的にも尿細管でのNa再吸収亢進に基づくことが確認されている。実験的にはラットにネフローゼを作成し、micropuncture法にて尿細管でのNa再吸収を検討している。Godonは正常ラットとネフローゼラットに生理食塩水を負荷し、この時のNa再吸収を検討しているが、Na再吸収量は正常ラットの57%に比較し、ネフローゼラットでは79%に増加しており、この吸収量増加は近位尿細管の通過時間と正相関することを示している。またKurodaらも正常ラットとネフローゼラットの比較をしているが、ネフローゼラットの近位尿細管腔は拡大し、静水圧は上昇し、尿細管の濾過液通過時間は延長して、水、Na再吸収は亢進しているので、糸球体濾過液の通過障害が原因ではないかと考えている。臨床的にはBrownらは6例の微小変化群患者の1日尿中Na排泄量を連日測定している。ステロイド剤投与後8日間の尿中Na排泄量は食塩摂取量よりも少なかったが、9日から10日目の尿中Na排泄量は食塩摂取量と同量となり、その後、尿中Na排泄量は増加して浮腫が消失したことを確認している。この間の循環血液量と血清アルブミン値は不変で、このNa利尿開始は尿蛋白量の改善と同時にみられることから、糸球体腎炎が尿細管でのNa再吸収亢進を引き起こして体液量を増加させていると述べている。我々の結果でも微小変化群患者の入院中Na排泄量は非常に少なく、浮腫消失期には尿中Na排泄量は増加した。また尿中Na排泄量が循環血液量と負の相関を示したことから体液量の増加には尿中Na排泄量が大きな役割を演じていると思われる。水負荷を施行すると微小変化群、膜性腎炎群共に高度なNa利尿不全がみられた。Pedersenらの結果も浮腫期は著明な水、Na利尿不全を認めているが、寛解時の水負荷では全く健常者と差はなかったため、この水、Na利尿不全はネフローゼ発症時の一過性現象であると考えられる。現在このNa再吸収亢進の機序は明確にされていないが種々の報告からは糸球体濾過液の近位尿細管通過時間の延長、近位尿細管腔圧の上昇、Na利尿ホルモンの減少等が考えられている。ネフローゼ患者のADHは微小変化群、膜性腎炎群共に循環血液量は増加した状態で軽度上昇していた。Usbertiらはネフローゼ患者に等張正アルブミンを注入するとADHは低下し、利尿がみられるために、ネフローゼ発症時のADH上昇は低アルブミン血症によって起こっていると考えている。Pedersenらはネフローゼ患者に水負荷を施行し、負荷前後共に健常者に比較してADHは高値で、自由水クリアランスと負の相関を認めていることから、ADHがネフローゼ患者の尿量減少、浮腫形成に繋がる原因と述べている。しかし我々の結果では負荷前より高値で、負荷後には水、Na利尿不全時ADHは軽度低下しており、相関性もないことから利尿不全には関与しないと思われれる結果であった。Shapiroらはネフローゼ患者で利尿不全の有る患者と無い患者でのArginine vasopressin濃度に差を認めておらず、Pedersenらは入院時と寛解期における水負荷時のArginine vasopressin値に差がなく、不変であることから、Arginine vasopressinは浮腫に関与していないと意見を変更している。血漿レニン活性は浮腫形成に関与していないと思われる。Brownらは連日微小変化群患者のUNaVを測定した際に、PRAとPACの推移を見ているが、入院時のPRAとPACは共に増加しており、Na排泄増加に伴って減少し、Na排泄減少と共にPRAとPACは再上昇している。この機序として入院時macula densaに達する尿細管腔内のNa量が少ないためにPRAは増加しており、Na利尿と共に尿細管腔内のNa量が増加してPRAは抑制されたと考えている。またPedersenらはネフローゼ患者に水負荷後4時間のNa, K排泄は減少しており、アンギオテンシンⅡとpACは不変で、相関がみられないことを示している。更にDussingらはネフローゼ患者6例にsaralasinを2μg/Kg/minから10μgを持続点滴したが、尿中Na,K排泄量に変化はみられなかったことから、浮腫形成にレニン・アンギオテンシン系は関与していないと考えている。我々の結果も微小変化群患者ではPRAは高値であったが、PACは正常範囲内で変化がなかったことから、浮腫形成にレニン・アンギオレンシン系は関与していないと思われた。またPRAが尿中Na排泄量と負の相関を示したことは、近位尿細管にて水とNaが再吸収され、遠位尿細管腔に達するNa濃度が低下したことがmacula densaを刺激してPRAを上昇させていると思われる。α-hANPは心房細胞で合成、貯蔵されて血中に分泌されている。α-hANPを投与した時の腎での作用は腎血液流量の増加、糸球体濾過率の亢進、尿量、尿中電解質排泄量増加がみられると報告されている。循環血液量増加により心房は伸展され、α-hANPは分泌されると考えられ、健常者と膜性腎炎群では循環血液量とα-hANPは正相関がみられたが、微小変化群患者では循環血液量が増えてもα-hANPは増加しなかった。現在微小変化群患者で何故循環血液量が増加してもα-hANPは上昇しないのか説明できないが、もし微小変化群患者の利尿不全にα-hANPが関連しているならば、微小変化群患者にα-hANPを投与した時に糸球体濾過率が上昇して、水、Na排泄も改善することになり、因果関係が明らかにされると思われる。しかし膜性腎炎群では健常者や微小変化群よりも有意に上昇しており、α-hANPの減少でネフローゼ患者の利尿不全を説明することは難しい。以上より浮腫形成には水、Na利尿不全が主体をなし、近位尿細管における水、Naの再吸収亢進によると思われた。ネフローゼ患者では近位尿細管腔圧が上昇し、糸球体濾過液の尿細管腔通過時間が延長するために近位尿細管での再吸収は亢進すると考えるのが妥当と思われる。膜性腎炎群患者は微小変化群患者と比較すると尿中Na排泄量、尿量は水負荷後2時間は同程度障害されているが、その後遅れて水排泄はなされており、1日尿中Na排泄量は摂取量に維持されていることが両群の浮腫の差に連ながっていると思われる。対象対象は全例、初回腎炎発症例で、腎生検にて確診した微小変化群患者7例、膜性腎炎患者7例で、対照として健常者8名を選んだ。対象及び対象の性別は各群1例ずつは女性で、他は男性。年齢は微小変化群36.3±14.0歳、膜性腎炎群47.8±12.1歳。健常者32.9±4.8歳であった。なお膜性腎炎群は全例原発性で、電顕像はChurg分類のstage2と3であった。はじめにStarlingの法則が90年前(約120年前)に報告されて以来ネフローゼ患者の浮腫形成機序は大量の蛋白が尿中に漏出するために血清アルブミン、膠質浸透圧が低下し、循環血液量が減少する。二次的に交感神経系とレニン・アンギオテンシン系が活性化されて、水、Na再吸収は亢進し、増加した体液は細胞間隙に貯留して、浮腫が発生すると低アルブミン血症を一原論とする浮腫発生機序が考えられてきた。しかし近年ネフローゼ患者の循環血液量は低アルブミン血症にも関わらず増加しているとの報告がみあっれることから、浮腫形成機序に関する考え方が変わりつつある。また臨床的にネフローゼ症候群を呈する微小変化群患者と膜性腎炎患者では浮腫の強度に差があると思われる。今回我々はネフローゼ患者を微小変化群患者と膜性腎炎患者に分けて、両群の浮腫期と浮腫消失期における体液量、血漿レニン活性、血漿アルドステロン、心房性Na利尿ホルモン、尿中Na排泄量の推移を調べ、更に水負荷を施行して水、Na排泄障害が体液量増加の原因であるか、微小変化群と膜性腎炎患者で利尿不全に差があるか検討した。方法入院後食事中の食塩量を5gとし、入院3日目の早朝に30分の安静仰臥位後血漿レニン活性(PRA)、血漿アルドステロン(PAC)、心房性Na利尿ホルモン(α-hANP)、生化学検査用の採血を行い、その直後に125I-human serum albuminを肘静脈に注射し、10分後に反対側の肘静脈から採血を行い、循環血液量(BV)、循環血漿量(PV)をウエル型シンチレーションカウンターにて測定した。その後predonisolon 60mgを連日投与し、臨床的に浮腫が消失した約1ヶ月後に、入院3日目に行った同項目の検査を同様に施行した。更に心エコーにて心機能が正常であることを確認した後微小変化群、膜性腎炎群核6例と、健常者の3例に対して、午前8位より午前10時までを負荷前(period 0)とし、午前10時から1時間で体重あたり20mLの飲水を経口摂取させ、午後4時まで2時間毎に3回採尿(period1-3)を行った。採血は各periodの採尿前に行い電解質、クレアチニン、抗利尿ホルモン(ADH)、浸透圧を測定した。PRA(トラベノール社キット)、PAC(ダイナボット者キット)、α-hANP(三菱油化メデイカルサイエンス)、ADH(SRL)はradioimmunoassayで測定した。なおBV,PVの単位は浮腫消失期の体重で割ったmL/Kgで表した。水負荷時の近位尿細管におけるNa再吸収量は1-[CNa+K+CH20)/Ccr]の式より算出した。結果1.ネフローゼ患者14名の浮腫期及び浮腫消失期における臨床推移をtable1に示した。入院時より浮腫消失期にかけての体重では微小変化群は約5kg、膜性腎炎群は約3kg減少した。微小変化群び尿蛋白量は9.0g/dayから0.6g/dayと著明に改善し、血清総蛋白は4.7mg/dLから5.9へ、血清アルブミンは2.4g/dLから3.7へ、クレアチニン・クリアランスCcrは48.8mL/minから88.1へと有意に改善した。しかし膜性腎炎群では尿蛋白y労の減少、血清総蛋白とCcrの改善は微小変化群に比べ軽微であった。2.BV,PV,PRA,PAC,α-hANP,尿中Na排泄量(UNaV)の推移をtable2に示した。浮腫期のBV,PVは両群共健常者に比較して有意に増加しており、浮腫消失期には、微小変化群のBVは、健常者のBVまで減少したが、膜性腎炎群のBVはなお高値であった。PVは両群共健常者のPV下限以下となった。微小変化群の浮腫期PRAは健常者に比較して有意に上昇しており、浮腫消失期にかけて体液量の減少と共に減少した。膜性腎炎群の浮腫期PRAは軽度上昇あり、浮腫消失期にかけて有意に増加した。PRAの推移に反して微小変化群の浮腫期PACは健常人よりも軽度上昇していたが、浮腫消失期にかけて変化はみられなかった。浮腫期膜性腎炎群のPACは健常者と変わりなく、浮腫消失期にかけて軽度上昇した。PV,PRA,PACの浮腫期から浮腫消失期にかけての推移を個々の症例でみても、関連した推移は認められなかった。α-hANPでは微小変化群は浮腫期、浮腫消失期共に健常者と差がなく、BVの減少に関連した有意な変化はなかった。しかし膜性腎炎群の浮腫期、α-hANPでは、健常者や微小変化群より有意に上昇しており、浮腫消失期にかけて軽度減少した。微小変化群の浮腫期UNaVは、食塩摂取量よりも少ないNa排泄量で、浮腫消失期にかけて有意に増加した。しかし膜性腎炎群では浮腫期には食塩摂取量よりもやや多いUNaVで、浮腫消失期にかけて食塩摂取量よりも少量となった。3.全22例でみた上記検査項目間における相関性をFig.1-3に示した。UNaVはBVやPRAと有意な負の相関が認められた。また健常者におけるα-hANPとPVは正相関が認められたが、全例では相関はなかった。Fig.3の如く微小変化群はPVが増加してもα-hANPは上昇しないために相関性を妨げており、微小変化群を除く健常者と膜性腎炎群でも有意な正相関がみられた。4.水負荷時の変化をtable3に示した。健常者では飲水開始後2時間以内に飲水量の60.5%、4時間以内に97.6%の水排泄がみられた。微小変化群では2時間以内は飲水量の27.8%しか排尿出来ず、4時間以内は43.4%。6時間以内は53.0%と健常者や膜性腎炎群に比較して利尿不全が著明であった。膜性腎炎群では各々39.5%、63.8%。82.5%で健常者に比較して利尿不全を認めるが、微小変化群よりは軽度であった。健常者の自由水クリアランス推移では負荷前-1.17mL/minからperiod1は3.28, period2は1.92, period3は-1.13と推移し、最大利尿は負荷後2時間以内にみられた。微小変化群の負荷前は-1.02で健常者と差はないが、period1は1.14と健常者と比較して有意に低下しており、period2は0.57と健常者、膜性腎炎群よりも低下していた。4時間以内の利尿不全にも拘らずperiod3は-0.29と水を再吸収していた。膜性腎炎群の負荷前は健常者や微小変化群と差を認めないが、period1は1.39と健常者よりも低下しており、period2は1.88と遅れて最大利尿がみられ、微小変化群よりは有意に水排泄を行っていた。利尿不全に対するADHの関与をみるために3群間のADH推移を調べた。健常者ではperiod0からperiod3にかけて各々2時間毎の平均ADHは3.3pg/mL, 3.4, 3.7, 3.5へと低下を示したが、膜性腎炎群では3.5から3.9, 3.7,3.3とperiod2から3にかけて増加した。ADHは尿量や自由水クリアランスとの相関はなかった。Naクリアランスを各群別にみると、健常者では負荷前は1.1mL/minで、period1は1.4, period2は1.5と尿量の増加と共に軽度増加したが、微小変化群では負荷前0.8からperiod1は0.6,period2は0.4と経時的に低下し、健常者と比較して有意にNa排泄障害が認められた。膜性腎炎群では負荷前から0.6,0.5,0.5と経時的に不変であった。近位尿細管におけるNa再吸収量では健常者は負荷前99.7%であったのが、period1は95.2, period2は95.9へと低下したのに対し、微小変化群と膜性腎炎群のperiod1は99.0,97.2と有意に再吸収が亢進しており、period2では膜性腎炎群は95.2と健常者と同値であったが、微小変化群はなお98.6と再吸収が亢進していた。微小変化群の負荷前Ccrは50.7mL/minと健常者の141.1, 膜性腎炎群の88.9に比較して低下しており、period1は65.9と負荷前よりは軽度増加したが、健常者の107.2,膜性腎炎群の75.5よりは低下していた。5.水負荷前の検査結果は負荷後2時間以内に顕著な所見が見られることから、この時の相関を見ると、尿量/飲水量とCcrは正相関を示した(fig.4,Fig5)Ccrは尿量やCNaとの有意な相関を呈さなかった。腎障害におけるNa管理Nutritional management of sodium in renal disease and renal failure静脈経腸栄養Vol.24 No.3 2009https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/24/3/24_3_775/_pdf血圧とは独立に、食塩負荷は腎での酸化ストレスやアルブミン尿増加により腎障害をきたす。腎は生体内の水・Na調節を主導し血圧調節に深く関わる。食塩過剰摂取による高血圧は腎障害の一因となる一方、腎障害は高血圧や体液・水代謝異常の原因になり悪循環を形成する。急性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、急性腎障害、保存期及び透析期慢性腎臓病、妊娠高血圧症候群など各種病態に応じた食塩摂取基準があり適切な食塩摂取を行うことが病態改善に重要である。はじめに人体組成の約60%は水で、細胞内液ICFに40%、細胞外液ECFに20%が分布する(ECFでは血漿:間質=1:3に分布)。Naは主にECFに存在する陽イオンで、ECF量と血漿浸透圧Posmを規定する重要な役割を持つ。有史以前の人類にとって食塩を得ることは困難で(推定食塩摂取量0.5-3.0g/日以下)、脱水・Na喪失の危機にさらされていたため、Na保持機構が発達した。現代では調味料・加工食品摂取により体内食塩量は過剰となり高血圧を含め様々な病態を起こす。食塩摂取の世界的疫学研究(INTERSALT)では食塩制限による降圧は約3g/日未満が顕著で、血圧管理の理想的食塩摂取量は3g/日未満である。実際アフリカ内陸部住民などは食塩摂取2g/日程度でも活動的生活を維持している。グアム島帰還兵の横井庄一さんがジャングルに隠れていた時に塩が欲しくて仲間と海岸へ行ったが道路と施設があり見つかると断念したというシーンがあった。内陸部だと塩が欲しいんだろうな、武田信玄も。本邦の平均食塩摂取量は約11-12g/日と以前多く許容量の約4倍にあたる。食物中の自然含有食塩は1.5-2g/日で実証された幻覚は食塩制限研究DASH-sodium研究では3.8g/日が限度である。腎は生体内の水・Na調節を主導し血圧調節にも深く関わる。高血圧は腎障害の下人となる一方、腎障害は高血圧や体液・Na代謝以上の原因となり悪循環を来す。本稿では腎における血圧・水・Na調節機序と各種腎疾患におけるNa動態・食事基準について述べる。A.総論2.高血圧と腎血圧は主に心拍出量(体液量)と末梢血管抵抗で規定され腎は体液量調節や様々な血管作動性物質産生により血圧を調節する。健常人では血圧のわずかな上昇でも速やかに腎が反応してNa排泄増加・体液量減少を図り血圧は低下し復旧する。逆に血圧低下時はNa排泄減少・体液量増加で対処し、血圧は上昇し復旧する。食塩摂取量が変化しても血圧は大福に変動せず、食塩負荷時も血圧はほぼ不変でNaは排泄される。腎でのNa排泄における圧利尿曲線(図1)は横軸切片が心臓-濾過糸球体までの血圧低下度(主に輸入細動脈血管抵抗)を示し、傾きはその逆数が(糸球体基底膜の)濾過係数と尿細管でのNa再吸収を反映する。高血圧は①正常より高い血圧で腎機能が正常に保持される場合(食塩非感受性高血圧)と②Na排泄増加に血圧上昇率を上げる必要がある場合(食塩感受性高血圧)がある。実際は咬合型も少なくない。一般に夜間高血圧は低下する(dipper型)が、腎障害時は日中のNa排泄が不十分なため、夜間血圧を下げずにNa排泄を増やす(non-dipper型)圧利尿機序では血圧上昇により腎髄質血流も増加する結果、腎被膜に包まれた閉鎖空間である腎間質全体の圧が上昇し、尿細管全体のNa再吸収も低下し、Na排泄が増加、血圧も下がる。最近アルドステロンが体内に広く分布する鉱質コルチコイド受容体MRを介して心筋・血管・糸球体上皮細胞障害を起こすことがわかってきた。食塩負荷すると、酸化ストレスの関与によりMR発現が亢進し、臓器障害に働く。(略)本態性高血圧の主な病態は持続する高血圧により腎最小動脈硬化が起こり、糸球体輸入細動脈の血管抵抗が上昇することである。通常食塩負荷でレニン分泌は抑制され、アンギオテンシンⅡ(強力な昇圧物質)分泌も低下し、糸球体輸出細動脈は拡張、糸球体毛細管圧PGCが低下し、同時に腎血流量が増えて、負荷された食塩は排泄され血圧は上昇しない。食塩感受性高血圧では食塩負荷時にPGCが増加し、GFRが増える。このPGC上昇は①輸入動脈の拡張、②輸出動脈の収縮のいずれか、または両者による(詳細な機序は不明)食塩感受性高血圧では糸球体高血圧と共に、尿中アルブミン排泄が増加し、腎障害は加速する(蛋白尿増加は最大の腎障害悪化因子)また血圧とは独立に高食塩食ではレニン分泌抑制・腎内酸化ストレス亢進が生じる(減塩食では逆反応となる)1.腎における水・Na調節機序平常成人では不感蒸泄(呼吸・発汗)900mL、尿1000mL、便100mL。計薬2,000mL/日の水が排泄される。一方食事中の水分約1,000mL、代謝水(栄養素代謝で発生)300mL、その他水分摂取で計1,300nL+αmL/日の水が入り平衡している。食塩NaCLは10-15g(170-250mEq)/日を摂取し、ほぼ等量は尿中に排泄される。正常の糸球体濾過GFRは約140L/日(ECFの10倍以上)で、糸球体濾過された水・Naの99%を尿細管で再吸収し体内に戻している。糸球体で老廃物・水・溶質を大量に濾過後、必要に応じて尿細管で再吸収・分泌し、体液成分を調節する方が効率的で電解質濃度の変動も小さく抑えられる。Na再吸収部位は近位尿細管50-55%、ヘレンのループ35-40%、遠位尿細管5-8%、集合管2-3%である。腎における水・Na調節は主に浸透圧調節系(主に水分量を調節)と容量調節系(主にNa量を調節)による。浸透圧調節系は口渇中枢や抗利尿ホルモンADHからなり、約2%の血漿浸透圧Posmの変化に敏感に反応する。容量調節系はレニン・アンジオテンシンRA系、心房性Na利尿ペプチドANP、交感神経系などからなり、圧受容体(大動脈・心房・腎傍糸球体装置に存在)で5-8%のECF減少を感知し、反応は浸透圧調節系よりも持続する。GFR、プロスタグランジン系、カリクレイン・キニン系、エンドセリン等も、腎における水・Na調節に関わる。水分減少でPosmが上昇すると浸透圧調節系では視床株浸透圧受容体が感知し口渇を生じて水分摂取を促し、水分摂取量を増やす。飢餓は慣れや感じなくなるが、口渇に慣れはなく、意識がある限り渇水に苦しむ。また下垂体後葉からのADH分泌により腎遠位尿細管における水再吸収を促し、水分排泄が減りPosmを一定に保つ。Na摂取増加等によりPosmが上昇するとICFからECFへ水分が移動してECF量が増えレニン活性・アルドステロンとも減少し、容量調節系によりNa排泄が増える。逆にNa摂取量・循環血症量低下では圧需要タオが感知し、腎交感神経が亢進しNa貯留を行う。同時に腎輸入細動脈血流低下により傍糸球体装置からレニン分泌が増えRA系亢進・Na貯留が起きる。B.各論ネフローゼ症候群(NS:nephrotic syndrome,表2)病態:原因にかかわらず糸球体基底膜の透過性が亢進し多量の蛋白尿が領主づする症候群。低蛋白・低アルブミン血症、浮腫、高脂血症などがみられる。原因は一次性(原発性糸球体腎炎)と二次性(全身性疾患)があり成人では70-80%が一次性である(成人では膜性腎症・巣状糸球体硬化症など、小児では微小変化群)。二次性にはループス自然、紫斑病性自然、悪性腫瘍、薬剤性などがある。浮腫は眼瞼、下肢、陰嚢などにみられ、病前より2-3kg体重が増える。胸腹水を伴う著明な全身浮腫を呈する例もある。一般に腎生検で病理組織確定診断し原疾患の治療をする。NSの発生機序:NSでは①大量蛋白尿により低アルブミン血症が出現しPosmが低下する結果、血管腔から間質(血管外)に体液が移動し、循環血漿量が減る。循環血漿量減少はRA系・交感神経系・ADHを刺激しANP分泌を抑制して腎での尿中水・Na排泄が減少し、循環血漿量が戻り浮腫が増強する(underfill説)、②NSの腎障害自体により腎血流量やGFRが低下し腎での水・Na貯留が起こる(over flow説)の2機序が共同して浮腫が起こるとされる。浮腫の本体は間質(血管外)における過剰な水・Na貯留でありNSでは浮腫軽減のため原因治療(ステロイドなど)と共にNa制限・利尿剤投与を行う。NSの食事制限:(表3:日本腎臓学会食事療法基準)治療反応性が良好な微小変化群によるNSと、他病院によるNSに分けて考える。食塩制限は病状により増減し、著明な浮腫では食塩0-4g/日の範囲とし、浮腫が軽減すれば6-7g/日として良い場合もある。利尿期に入れば食塩制限は低Na血症を来しかえって危険なこともあり注意する。NSではステロイド等の原疾患治療が奏功すると蛋白尿減少に先行して少なかった尿中Na排泄が著増する。最近は有効な利尿薬や腎疾患薬物治療の発達により激しい食塩制限(3g/日未満)無しでも浮腫管理可能である。保存期慢性腎臓病CKD血清Cr値、性別、年齢による日本人のGFR推算式(日本腎臓病学会,2008)eGFR(mL/min)=194×血清Cr-1.094(mg/dL)×年齢-0.287(女性では左記結果×0.739)糖尿病性腎症(DMN)の食塩制限:現在はCKD基準に準ずるがDMN基準がある。第1-2期(早期腎症)まで制限せず。第3期(顕性腎症)7-8g/日、第4期(腎不全期)5-7g/日、第5期(透析治療期)維持透析患者の食事療法に準ずる。DMNでは高血圧・浮腫を生じやすく機序は①糖尿病では腎症がなくても体内Na量は正常よりも約10%多い。②RA系亢進によるNa再吸収促進、Ⅲ腎症がある場合は腎障害・蛋白尿によるNa排泄作用低下等が想定される。クエン酸や重曹のNa負荷は血圧上昇をおこさない報告あり(まだ定説にはなっていないしNa負荷はあるのでサプリメントを推奨量以上に多量に飲むのは注意)食塩感受性高血圧ラットの脳卒中発症および血圧に及ぼす塩素の影響Effects of chloride on stroke incidence and blood pressure in salt-sensitive hypertensive rats日本栄養・食糧学会誌Vol.54(2001)No.3p147-153https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs1983/54/3/54_3_147/_pdf塩素による血圧上昇は血清ACE活性亢進に起因することが示唆された。食塩の過剰摂取が高血圧の発症に関与していることは古くからよく知られているが、その作用機序についてはいまだ明らかでなく、ナトリウムと塩素のどちらが主に血圧上昇の原因となるかも見解は一致していない。ナトリウムの測定が困難であった1904年にAmbard&Beaujardは塩素の体内貯留増加が血圧上昇に関与している論文を発表した。しかしナトリウムの測定が容易になるとナトリウムに注目した研究が盛んになり1954年にはDahl&Loveによりナトリウムだけが血圧上昇に作用するという現在広く信じられている説が登場した。これまで血圧に及ぼす塩素あるいはナトリウム単独の作用を検討するには塩化ナトリウムの代わりに塩化アンモニウム等のナトリウムを含まない塩化物や、重炭酸ナトリウム等の塩素を含まないナトリウム塩を投与する方法が一般的であった。しかしアンモニウムや重炭酸イオンの過剰投与は体重減少とそれに伴った血圧低下をもたらすため、塩素あるいはナトリウムと血圧上昇との関係に結論ろ出すのが困難であった。kato et al.はこれらの問題を解決する方法として高食塩水とともに塩素と結合するキトサン、または、ナトリウムと結合するアルギン酸を経口投与し、それぞれ糞中に排泄させる実験系を用いて塩素あるいはナトリウムの血圧上昇に及ぼす影響について検討した。その結果塩素がより血圧上昇に関与し、そのメカニズムとして塩素による血中のアンジオテンシン変換酵素(ACE)[EC3.4.15.1]の活性化が重要であるという仮説を提示した。今回Kato et al.の仮説を検証することを目的として、脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)およびDahl食塩感受性(DahlS)ラットを用いて高食塩食により誘発される脳卒中発症および高血圧に及ぼす塩素の影響をとくに血清ACE活性の関与について検討した。

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    • 4(慢性腎臓病CKDと栄養、ネフローゼsyndの食事、インドキシル硫酸)

      慢性腎臓病CKDと栄養-慢性腎臓病CKDの最適治療になぜ食事療法が必要か-The optimal reason for diet control in the treatment of chronic kidney disease(CKD)栄養学雑誌Vol.69(2011)No.3p109-114https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi/69/3/69_3_109/_pdf2)蛋白質の過剰摂取は糸球体濾過を過剰に促し、蛋白尿の悪化を招くので、その是正は蛋白尿を減少させる可能性があり、そのことが糸球体や尿細管の障害の軽減につながる可能性がある。3)食塩の過剰摂取は高血圧の原因になる。高血圧は動脈硬化、更には糸球体血圧の上昇を介して蛋白尿の増悪を招く。蛋白尿は糸球体や尿細管を障害し、CKDを悪化進展させることが知られている。従って食塩の過剰摂取の是正は血圧の正常化をもたらすのでCKDの進展抑制につながる。4)糸球体につながる尿細管では、尿細管上皮細胞を主たる排泄経路とするインドキシル硫酸などの有機酸の過剰負荷がおきている。このような負荷をとることはCKDの進展抑制につながる。インドキシル硫酸の出発はたんぱく質の構成成分の1つであるトリプトファンから作られるためたんぱく質制限はインドキシル硫酸の体内濃度を低下させる。これによりCKDの進展抑制がもたらされる。このことは経口吸着薬によってもたらされた知見が傍証になっている。5)アンモニアが体内に蓄積すると非免疫学的に補体を活性化させることが知られている。活性化補体は尿細管上皮細胞を障害するので、アンモニアの供給源である蛋白質制限はCKD(病期3-5)への進行抑制をもたらすことが期待される。6)食事療法によるリンの過剰摂取制限が腎不全の進行抑制に寄与することが以前から知られている。この機序が何によるものなのか明らかではないが、高リン血症にともなう二次性副甲状腺機能亢進症による腎細動脈の異所性石灰化あるいは副甲状腺ホルモンそのものの作用に起因すると考えられてきた。著者はリンの過剰や体内蓄積はリン利尿因子の過剰発現の原因になる可能性があると考えておりそのようなリン利尿因子にはFGF23(線維芽細胞増殖因子23)が知られているので、このものによって糸球体メサンギウムの線維化、尿細管間質の線維化が促進され、腎硬化の原因になるのではないかと想像している。7)CKDにおける貧血は病期3から認められ、これを放置することは尿細管細胞の阻血性障害の原因になる。鉄欠乏性貧血、ビタミンB12、葉酸欠乏による貧血は食事療法により発症を阻止する必要がある。8)高尿酸血症は細動脈硬化症、痛風腎の原因になる。プリン体摂取制限など食事療法が必要である。9)高LDL血症は細動脈硬化症の原因となるだけでなく糸球体濾過値の低下、蛋白尿の原因になると言われており、過度の脂肪摂取をさけるなど食事療法は不可欠となる。トリプトファンの終末代謝産物であるインドキシル硫酸は腎から排泄されるため慢性腎臓病ではその病期の進行に伴い血中濃度は増加する。このインドキシル硫酸は尿毒症物質の1つであり、血管内皮障害や糸球体硬化の促進に関与することが細胞モデル等の実験で明らかになりつつある。腎不全ラットにインドキシル硫酸、インドールを投与すると腎不全が進行することからインドキシル硫酸は腎不全の進行を促進するウレミックトキシンであるインドキシル硫酸はトランスフォーミング増殖因子TGF-β1、メタロプロテアーゼ組織インヒビター(TIMP)-1、プロα1(Ⅰ)コラーゲンの発現を増加させ、腎臓の間質線維化や糸球体硬化症をきたす。インドキシル硫酸は有機アニオントランスポーター(OAT1,OAT3)を介して近位尿細管細胞に蓄積し、活性酸素種(ROS)の産生と抗酸化系の障害により尿細管障害をきたし、間質の線維化を促進する。インドキシル硫酸は糸球体メサンギウム細胞におけるNADPHオキシターゼを活性化して、スーパーオキシドなどのROSを増加させる。さらにインドキシル硫酸は腎臓における抗酸化酵素であるスーパーオキシドジスムターゼの活性を低下させる。インドキシル硫酸は近位尿細管細胞においてROSの誘導、NF-κBの活性化、p53の発現を介して細胞老化と線維化の促進、細胞増殖の抑制をきたし腎不全の進展を促進する。(p53は癌抑制遺伝子、癌の抑制は細胞を正常に老化させ細胞死させること、高齢者は癌の進行が遅い)インドキシル硫酸を高血圧ラットに経口投与すると血管平滑筋細胞増殖(大動脈壁肥厚)や大動脈石灰化、血管内皮細胞障害、心筋細胞の肥大化などCVD進行、また骨代謝異常とも関連ネフローゼ症候群における食事療法昭和医学会雑誌Vol.70(2010)No.2p117-120https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsma/70/2/70_2_117/_pdf1.蛋白質ネフローゼ症候群は他の栄養障害による低蛋白血症と血清アルブミン濃度が低下し、血漿膠質浸透圧が減少するために水分が血管内から血管外に移る点で同じであるが、食事蛋白の補給により是正されない点で異なっている。以前までは充分量または科料の蛋白質を摂取させる必要があるとの考え方が一般的であったが、しかし高蛋白質食の持続は糸球体の過剰濾過を生じてしまうために腎機能低下の原因となりうる可能性が指摘されるとともに尿蛋白量も増加することがわかり、蛋白質摂取量は制限ないし普通量とすることが推奨され、治療抵抗性ネフローゼ症候群では蛋白制限が蛋白尿を減少させることが知られるようになった。日本腎臓病学会におけるガイドラインではベフローゼ症候群の食事療法を治療に対する反応が良好な微小変化型ネフローゼ症候群と他のネフローゼ症候群を分けて考えるべきであることを推奨している。ステロイド薬に反応がよく通常糸球体硬化の進展がない微小変化型ネフローゼ症候群に対してはその他のネフローゼ症候群と異なり高度の蛋白質制限を積極的にかける必要がない。現在のところ低蛋白血症を伴うネフローゼ症候群では過度の低蛋白質食による栄養障害の危険は否定されておらず、特に0.6g/kg/day以下の蛋白制限食は注意が必要である。したがって現時点ではネフローゼ症候群に低蛋白質食を適用する場合にも0.8g/kg/day程度にとどめておいた方が無難であるとする考え方が一般的であり微小変化型ネフローゼ症候群以外の原因によるネフローゼ症候群では、蛋白質0.8-1.0g/kg/dayと推奨している。日本人の食事摂取基準(2005年版)による一般成人に対する蛋白質摂取推奨量0.93g/kg/day、高齢者1.03g/kg/dayからすると若干少なめにする必要がある。ネフローゼ症候群における蛋白質制限食においてはさまざまな報告がなされており、血漿フィブリノーゲン値をも低下し、合併症の血栓防止の観点から望ましい効果であるという報告もある。またWaslerらは成人ネフローゼ症候群を対象とし0.3g/kg/dayの超低蛋白食と10-20gの必須アミノ酸補給により治療開始時にGFR≦30mL/minの11例は透析導入に至ったが、GFR32-39mL/minの5例は蛋白尿が9.3g/dLから1.9g/dLに、血清Albは2.5g/dLから3.8g/dLに改善したことから、GFRの低下が高度でない成人ネフローゼ患者への蛋白制限食は、長期寛解を誘導可能であることを報告しており、エネルギー不足、アミノ酸不足とならなければ、微小変化型ネフローゼ症候群以外のネフローゼではガイドライン以上に蛋白制限をかけた方がよい可能性がある、アミノ酸の腎血行動態に及ぼす効果はその種類によって異なり、GFRや腎血流量は側鎖アミノ酸の静脈投与では増加しないが、アルギニン投与では増加する。食事の蛋白質負荷による腎血行動態の変化は含まれる特殊なアミノ酸による可能性もある。アルギニンはNO産生の基質であるため、アルギニンによる腎血管拡張はNOを介する可能性があることを示唆されている。ネフローゼ症候群における蛋白質制限がTGF-βを減少し、間質の線維化を抑制することも報告され、蛋白質および塩分の制限はRAS阻害剤の効果も高めると言われており、アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬のみではTGF-βを完全に阻止できないが、これらに低蛋白質食を加えるとTGF-β阻止に相乗効果が得られることも報告されている。血漿免疫グロブリン、IgGの低値がネフローゼ症候群の易感染性を生じる可能性があり、低蛋白質食によるさらなるIgG合成低下が懸念されてきたが、ネフローゼ患者ではIgG合成は増加しており、IgG合成が蛋白0.6g/kg/dayの低蛋白質食と1.2g/kg/dayと差がないことも報告されている。2.エネルギー蛋白の異化を予防するためには十分なエネルギー補給が重要であり、ネフローゼ症候群では通常35kcal/kg/dayは必要となる。低蛋白質食ではエネルギーも低下してしまうことが多く、特殊食品を取り入れる場合もある。充分なエネルギー補給とともにアミノ酸補給も考える必要があるが、ステロイド薬使用によりステロイド糖尿病などをきたす可能性がある時には糖尿病に準じたエネルギーの減量を考慮する。3.脂質ネフローゼ症候群において脂質異常症が出現する機序としては、低蛋白血症に対して肝臓でのタンパク合成能が増加する際、リポ蛋白の合成が高まることや、あるいはリポ蛋白を含むアポリポ蛋白の異化が障害されることが原因とされている。血清コレステロール、中性脂肪、low density lipoprotein(LDL)、intermediate density lipoprotein(IDL)の増加による脂質異常症が特徴的である。High-density lipoprotein(HDL)コレステロールは不変か低値であり、LDL/HDL比は増加する。アポ蛋白(アポB,C-Ⅱ,E)、リポプロテイン-a[Lp(a)]の増加も認められる。Lp(a)が動脈硬化の危険因子であることはよく知られており、ネフローゼ患者の脂質異常症が動脈硬化を促進するか否かは充分なエビデンスがないが長期間ネフローゼが持続する場合には血漿脂質を減少させるように食事・薬物療法が必要である。食事脂肪酸は二重結合を持たない飽和脂肪酸(saturated fatty acid;SFA)、1つの二重結合をもつ一価不飽和脂肪酸(monounsaturated faty acid;MUFA)2つ以上の二重結合をもつ多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid;PUFA)に大別される。PUFAは魚貝類に多く含まれるomega-3PUFA(エイコサエンタエン酸、ドコサヘキサエン酸)と植物油に多く含まれるomega-6PUFA(リノール酸、ガンマリノレイン酸、アラキドン酸)に分類される。PUFAは哺乳動物では合成されず、食事のみからのみ利用できる。4.塩分、水分低アルブミン血症による血漿膠質浸透圧の低下のため浮腫が生じる。間質に流入する液体が最大リンパ流を超えると、血管内脱水はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の賦活によりNa貯留を生じ、抗利尿ホルモンの分泌を増加して、水貯留を生じる。著明な浮腫があれば塩分0g-4g/dayの範囲とし、治療に反応し、浮腫が軽減すれば6g-7gとしてよいこともある。乏尿、浮腫が高度の場合には水分摂取量の制限が行われることもある。ネフローゼ症候群が軽快し利尿が得られた後に漫然と水分制限を行っていると脱水状態にならないようにする。利尿期には症例によって高度の塩分制限のため低Na血症をきたすこともあるので注意する。5.その他長期のステロイド投与により尿中へのカルシウム排泄が増加する。骨粗鬆症の予防のためにもカルシウムは300-400mg/dayの補給が必要であるとしている。米国ではビタミンD欠乏があれば1,25-(OH)2-D3投与を勧めている。利尿期には多量の水分排泄と共にカリウムが多く失われる。またループ利尿剤によっても低カリウム血症が起こる。血清カリウムが低下傾向にあるときは新鮮な野菜や果物を十分にとりカリウムを補給する必要がある。鉄欠乏があれば鉄剤投与を行う。

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    • 3(ネフローゼ症候群を呈した膜性腎炎の間質病変)

      ネフローゼ症候群を呈した膜性腎炎の間質病変Tubulo-interstitial lesion in idiopathic membranous glomerulonephritis with nephrotic syndrome日本腎臓学会誌Vol.28(1986)No.2p151-162https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjnephrol1959/28/2/28_2_151/_pdf考察原発性膜性腎症の予後は当初不良を考えられていたが最近の報告では良好とすうrものが大勢を占めている。これは膜性腎症では糸球体係蹄基底膜の上皮下にelectron densa depositを認めるものの、メサンギウム基質や糸球体基底膜の内皮細胞↓にdensa depositが沈着することはなく、原属としてメサンギウム細胞の増殖を伴わないという組織学的特徴によるものと思われる。すなわち膜性腎症は糸球体基底膜の上皮下に始まるdensa depositの沈着と基底膜肥厚のみの変化で、メサンギウム細胞の増殖はないかもしくはあっても軽微に留まるのであれば、糸球体基底膜係蹄の血管腔はよく保たれ、腎機能低下を招来するほどの糸球体障害には至らないと考えられる。また膜性腎症の組織学的所見でしばしば引用されるEhernich,Churgらのstage分類は糸球体基底膜の変化にだけ注目したものであってネフローゼ症候群の経過は説明し得ても腎機能低下とは直接関係ないものと考えられ、さらに長期経過を観察し得たものでは、糸球体基底膜が正常化した例もみられる。従って慢性に経過する他の多くの原発性糸球体腎炎とは異なって、膜性腎症の糸球体基底膜病変は、本質的には可逆的な病変すなわち修復可能な病変であると考えられ、本来は進行し難い腎炎と考えられる。しかし長期間の経過観察においては少数ではあるが腎機能の低下を認めた例もあり、また初診時よりすでに腎機能低下を示していた例も経験される。このようなことから腎機能低下を示す膜性腎症はどのような形態学的特徴を有するかには極めて興味がもたれる。腎機能と組織学的所見との関連について著者の成績では膜性腎症でネフローゼ症候群を呈したものでは平均尿細管萎縮度とCcrに良好な正の相関を認め、また膜性腎h層でネフローゼを呈さないものでも正の相関を認めたが(Fig.2)糸球体障害度指数とCcrについてはネフローゼの有無に拘わらず相関を認めなかった。また対照とした微小変化群、増殖性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎については平均尿細管萎縮度とccr、糸球体障害度指数とCcrのいずれについても相関を認めなかった。すなわち膜性腎症の腎機能に関連ある組織学病変は、糸球体よりも尿細管間質の方が重要であろうと考えられた。大沢らは膜性腎症36例のうちの死亡例ないしは腎機能障害例など予後に問題のあると思われる5例を取り上げてこれに検討を加えているが、糸球体には硝子化はほとんどみられず、メサンギウムや基質に軽度の反応を認めたのみで、明らかな増殖性糸球体腎炎の合併はみられなかったとしている。吉永らも膜性腎症で糸球体病変は比較的軽度であるにも拘わらず、び漫性に間質の増加が認められた症例で腎不全に進行したことを経験したと述べている。Riemenschneiderらも膜性腎症の72生検標本よりの検討で、糸球体濾過率は間質領域の拡大と良好な逆相関を示したのに、糸球体病変の程度とは相関しなかったと述べ、またbohleらは膜性腎症40例の形態学的研究において血清クレアチニン値と糸球体病変との間には明らかな相関は認められなかったのに、これとrelative interstitial volumeとの間には正の相関を認めたと述べている。Risdonらもpersistent glomerulonephritis50例において、Ccrは糸球体病変より尿細管萎縮により有意な相関を認めたとし、またIgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、微小変化群、巣状糸球体腎硬化症などにおいても、腎機能は糸球体病変より間質病変に相関したとする報告がみられる。もちろん尿細管間質病変は糸球体病変の進行に基づく乏血性変化もしくは無為萎縮などによる二次的な病変として出現することは当然考えられる。佐野らは膜性腎症において膜性変化以外の糸球体病変としてglobal sclerosis, segmental sclerosis, adhesion(糸球体係蹄壁とBowman嚢との癒着)、hyalinosisを腎機能低下群に高頻度に認めたとし、Ehrenreichらは、膜性腎症の進行増悪には、focal sclerosisが重要な過程であったと述べている。Zollingerらもこの進行性病変としてprogressive glomerular obsolescenseを上げている。確かに腎機能低下の一因としてこれら糸球体病変は重要なものと考えられるが、その病変もどちらかというとfocalなもので、それのみで腎機能が低下するかどうか疑問がもたれた。Heptintallによると、膜性腎症の腎組織の終末像は係蹄壁の著系な肥厚と読みに血管腔の狭小化があって、糸球体全体としてsolidificatioになるとしているが、前述したごとく糸球体基底膜の変化は本来は可逆的なものと考えられる。著者が検討した膜性腎症の例ではいずれも糸球体障害の度合は軽度で(糸球体障害度指数は最高でも1.71)、係蹄壁が保たれている例においても尿細管における間質病変が高度な例では腎機能低下を認めた。逆に尿細管間質病変を認めなかった例では糸球体病変の如何に拘わらず腎機能は正常なものが大部分を占めた。佐々木らは糸球体障害度指数が2以下と比較的軽度な症例においては尿細管萎縮はほとんど認めないかあっても軽度で、この程度の発生機序は糸球体変化以外に求めるべきとし、また諏訪は糸球体障害度指数が2を超えた段階で、糸球体濾過率や腎血流量に影響を与えたと述べている。従って膜性腎症における尿細管間質病変もただ単に糸球体障害に基づくネフロンの荒廃にのみ成因を求めるわけにはいかず、腎機能の低下は尿細管間質の病変自体に求めるべきと考えさせられた。膜性腎症における尿細管間質病変の発生機序もしくは成因はまだ判然と解明されていない。しかし第一には糸球体病変の進行に基づく続発性のものと考えがあろうがこれは前述したごとく否定的であった。第二の可能性としては間質性腎炎と類似の発生機転が考えられこの際は少なくとも糸球体病変は欠如しているのに間質に病変が生ずるもので免疫学的機序の他、薬剤の影響などが考えられる。著者の対象としたネフローゼ症候群を呈した膜性腎症患者に使用したサイクロフォスファマイドやインドメサシンについて検討を加えてみたところ、インドメサシンについては平均尿細管萎縮度値が使用群で有意に低下していた。本剤を難治性症例に追加したこともその因子に影響を与えたとも考えられたが、しかし透析に陥った2例においては、インドメサシンの使用によって急速に腎機能の低下を認めたことも経験された。インドメサシンについては浮腫の発生やプロスタグランデイン抑制に基づく高血圧の惹起や、動物実験における尿細管上皮細胞の障害など、腎機能低下を招来するとの報告もある。免疫学的機序としては体液性および細胞性の両面より検討する必要がある。体液性免疫によるものとしては免疫複合体による間質および尿細管基底膜の障害、抗尿細管基底膜抗体の関与が考えられるが、著者の検討では、蛍光抗体法で間質や尿細管にimmune complexの沈着は認められず、また尿細管基底膜のliniarな蛍光所見も認められなかった。細胞性免疫については間質に細胞浸潤を認めた例もあって、その関与が疑われたが、これについては今後の検討をまつ。その他、多量の尿蛋白の再吸収による尿細管の障害(変性)や低蛋白血症に基づく間質の浮腫による尿細管間質の病変も考慮に入れておかねばならない。このことは著者の例においても非ネフローゼ性の膜性腎症では尿細管間質病変がほとんどみられなかったことやネフローゼ症候群が長期間持続した患者では平均尿細管萎縮度の低下を認めるものが多かったことなどこれを裏づける症例も経験された。高血圧の持続による血管病変-腎血流の低下-から間質病変が惹起されることは当然考えられる。著者の成績では血管病変にはとくに触れなかったが、高血圧持続例には平均尿細管萎縮度値の低下が多く認められた。Riemenschneiderらは膜性腎症における間質病変の出現は間質の線維化が進行することによるとし、この線維化の進行は、1)間質や尿細管に免疫複合体が沈着すること、2)低蛋白血症による間質の浮腫、3)加齢、などを原因として挙げている。Fischbachらも間質の線維化は重要な要因でこれは間質の浮腫や免疫学的機序によって起こるとしている。大沢らは間質の変化は血管病変の関与が強く示唆されるとし、椎見らは膜性腎症の腎機能障害は高血圧や低蛋白血症による間質病変の出現によるとしている。尿細管間質病変がどのような機序で腎機能障害を招来するかは明らかにされていない。Bohleらは腎機能障害は間質の線維化が増強することにより、post glomerular capillary retworkの抵抗が増強し、糸球体血流を障害するためとしており、Haenらは尿細管の萎縮がNaの再吸収を障害し、tubular glomerular feedback mechanismにより糸球体濾過率を障害すると述べている。膜性腎症における糸球体病変は腎機能障害という点からはその関与は少なく、より尿細管間質の病変が影響を与えているものと考えられた。またこの尿細管間質病変は腎糸球体変化に基づくものが主因ではなく、間質自体の変化によるものと思われ、その間質の変化は加齢や高血圧、ネフローゼ状態の持続や再発などによって進行していくものと考えられた。原発性膜性腎症における尿細管間質病変と治療効果については、組織学的に間質病変の強いものは治療効果も不良であった。また経時的な腎生検によって間質病変の経過を観察したところ著者の成績では発症より長期間経た時点で急に間質病変の増強を認めた症例もあり、それらの例では再発もしくは再燃が契機となっているようである。

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    • 2(糸球体疾患に続発する尿細管間質障害と酸化型albumin)

      糸球体疾患に続発する尿細管間質障害と酸化型albuminの関係-種々の尿中パラメーターとの関連-The relation between secondary tubulointerstitial disorder associated with glomerular deaease and oxidized plasma albumin-Evaluation of various urinary parameters- 杏林医学会誌Vol.41(2010)No.2+3 p19-25https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyorinmed/41/2%2B3/41_2%2B3_19/_pdf要旨中等度以上の蛋白尿がみられる原発性糸球体腎炎の患者では尿細管間質障害の進展に伴って腎機能は進行性に低下すると考えられている。また末期腎不全症例では血漿中の酸化型albumin (human nonmercaptalbumin:HNA)比率が増加している。そこで原発性糸球体腎炎に続発する尿細管間質障害の進展機序にalbumin分子の酸化/還元状態が関与する可能性について検討した。外来で経過を観察中の原発性糸球体腎炎と保存期の慢性腎不全患者計60症例を検討の対象とした。血漿albuminの還元化率の測定にはHPLC(high performance liquid chromatography)法を用いた。同時に尿蛋白(u,Pr)、尿中低分子量蛋白(α1-microglobulin:uα1-m.β2-microgulobulin:u.β2-m)、尿中トランスフェリン(urinary transferrin:u.Tf)、尿中肝型脂肪酸結合蛋白(urinary liver-type fatty acid-binding protein:u.L-FABP)の各濃度と尿中ライソゾーム(urinary N-acetyl-β-glucosaminidase:u.NAG)を測定した。また血中のalbumin濃度(s.alb)と血中L-FABP(s.L-FABP)も併せて測定し、それぞれの関連について検討した。血漿albuminの分画測定の結果、eGFR(estimated glomerular filtration rate)の低下に伴って血漿中のHNA比率は増加し、還元型albumin(human mercaptalbumin:HMA)比率は減少した。u.Pr、u.L-FABP、u.α1-m、u.β2-mの各濃度およびu.NAG活性とeGFRの間にはいずれも負の相関が認められた。これらのことから、原発性糸球体腎炎では血漿中のHNAの尿細管上皮細胞への負荷が細胞内の還元環境を障害することで、尿細管間質病変を進展させると推察された。また尿細管間質の酸化的障害にはトランスフェリン結合鉄と脂肪酸の関与が示唆された。緒言尿細管上皮細胞は糸球体から漏出した種々の血漿成分を再吸収・異化する機能を担っており、この代謝の過程で様々な酸化的ストレスを受けると考えられている。酸化的ストレスの増大には一般に鉄の関与を指摘する報告が多い。原発性糸球体腎炎の患者では尿細管間質障害の進展に伴いα1-m、β2-mなどの尿中低分子量蛋白や尿中NAG活性が増加し、またTfの排泄量も増加する。一方L-FABPは実験的な研究の結果などからL-FABP自体が尿細管間質障害を進展させるとされており、糸球体腎炎を対象とした臨床例の検討でもu.L-FABPの増加は腎機能障害の進行性を示す指標であるとされている。我々はこれまで腎機能の低下に伴って血漿中のHMAが減少しHNAが増加することを報告してきた。今回の検討では糸球体から漏出したalbuminの尿細管間質への負荷、またHMAの減少による血漿還元能の低下が尿細管間質障害を促進させる可能性について、尿細管間質障害を示す種々の尿中パラメーターを用いて検討した。考察病変の主座が糸球体にある原発性糸球体腎炎でも腎機能の低下は尿細管間質病変の拡がりと関連することが知られている。尿細管間質病変の進展には糸球体後毛細血管(post-glomerular capillary)の低酸素が関与していると考えられている。腎血流の80%は皮質を還流しており、腎髄質は低酸素に曝されやすい状態にある。また高度な糸球体性蛋白尿を認める例では進行性の腎機能低下をきたしやすいことが知られている。そこで原発性糸球体腎炎に続発する尿細管間質障害の進展機序にalbumin分子の酸化/還元状態が関与する可能性について、尿細管間質障害の進展を示す尿中パラメーターとの関連より検討した。今回測定した尿細管間質障害のパラメーターは尿中低分子量蛋白(α1-m,β2-m)、尿中NAG活性、尿中L-FABP、尿中Tfである。α1-m(30kDa)は肝で産生され、急速に代謝される蛋白rapid turnover proteinで、その構造中に糖鎖を有するため尿中でも安定である。β2-m(11kDa)は遊郭細胞表面のHLAの微小部分small componentで、炎症や腫瘍でも血中濃度が上昇する。α1-m,β2-mはいずれも糸球体から濾過され、ほぼ100%が近位尿細管上皮細胞で再吸収・異化される。一方NAGは血中にも活性が認められるが、分子量が120kDaと大きいため尿中には排泄されにくい。したがって尿中NAG活性の上昇は尿細管上皮細胞でのライソゾーム活性の亢進を反映する。Tfは分子量81kDaの鉄担送糖蛋白で、三価の鉄二分子と結合する。尿中に検出される鉄のほとんどはTf結合鉄である。糸球体のサイズバリアが障害されると尿中へ排泄されるので尿中Tfは尿蛋白の選択制の指標として利用されている。L-FABP(14kDa)は細胞内の脂質の移送と代謝などを担う可溶性蛋白である。尿中L-FABP尿細管上皮細胞への蛋白や脂肪酸の負荷、また微小循環障害などによるストレスに応答する遺伝子の発現誘導を受けて尿中への排泄が増加するとされている。血漿albuminは脂肪酸担送蛋白としての役割を担っており、糸球体蛋白尿を生じた症例では、近位尿細管上皮細胞に脂肪酸が負荷されることになる。糸球体腎炎を対象とした臨床例での検討の結果でも、尿中L-FABPの測定は腎機能低下の進行性を表す指標として有用であると報告されている。一方Hofstraらは40例の膜性腎症を対象に尿中α1-m,尿中β2-m, 尿中Tfまた尿中L-FABPの測定を行い、尿中L-FABPが腎機能の低下を示す予知的な指標とならなかったと報告している。近年、α1-m,やβ2-mなどの低分子量蛋白やalbuminまたTfなどと同様にL-FABPもmegalin, cubilinのリガンドであることが明らかにされてきた。今回我々の検討の結果でもL-FABPは低分子量蛋白と極めて類似した尿中への排泄態度を示し、糸球体腎炎におけるu.L-FABPの診断的意義は尿中低分子量蛋白と同様であると思われた。またeGFRが低下した例ではs.L-FABPも高値となっており、両者の間には有意な負の相関が認められた。さらにs.L-FABPとu.L-FABPの間にも正の相関が認められた(Table2)HPLC法による血漿albuminの酸化/還元比率と腎機能(eGFR)の相関をFig.2に示した。腎機能低下とともに血漿中のHMAは減少し、HNAは増加した。恵良らは若年健常者を対象とした検討の結果、血漿albuminのほぼ75%が還元型のHMAであると報告している。一方、腎機能低下例においてはalbumin分子のCys-34のSH基にCysteineあるいはGSHが結合したHNA-1が増加し、SH基がフリーのHMAが減少することを我々は報告した。albumin分子のHMAからHNA-1への変化はmercapt-nonnercapt変換と呼ばれ、albumin分子が存在する酸か/還元環境に依存する可逆性の反応である。腎機能の低下と共に、血漿中のHMAが進行的に減少することは慢性腎不全患者において種々の酸化的ストレスに対する防御能(抗酸化能)が低下していることを示唆している。以上の検討より糸球体病変に続発する尿細管間質障害を進展させる機序として異化の要因が推察された。すなわち脂肪酸の移送蛋白でもある血漿中のalbuminが尿細管腔に漏出すると近位尿細管上皮細胞に取り込まれてL-FABPの発現を誘導する。また腎機能の低下に伴って、増加したHNAが尿細管上皮細胞に負荷されると、細胞内の還元環境が障害されると考えられる。さらに、今回の検討でu.Tfとu.Prとはp<0.001のきわめて強い正の相関関係が確認された。albuminは脂肪酸の移送蛋白であり、尿細管腔に漏出したTfもalbuminと同様にmegalin, cubilinによって尿細管上皮細胞内へエンドサイトーシス(endocytosis)によって取り込まれる。糸球体性蛋白尿が認められる病態では近位尿細管上皮細胞に脂肪酸と鉄が同時に負荷されることになる。Tfと結合した鉄はHaber-Weiss反応あるいはFenton反応を介したヒドロキシラジカル(・OH)の生成を促し、細胞質内に増加した脂肪酸の過酸化を促進する可能性が考えられた。結論原発性糸球体腎炎における尿中l-FABPの診断的意義はα1-mやβ2-mなどの尿中低分子量蛋白と同様に近位尿細管上皮における再吸収障害の結果を反映するものと考えられた。糸球体腎炎に続発する尿細管間質障害の進展に、糸球体濾過量の低下に伴って増加する血漿中のHNAが関与する可能性が示唆された。また尿細管腔に漏出するalbuminと結合した脂肪酸やTf結合鉄がこの病態に重要な役割を果たすものと思われた。対象と方法外来に通院中の原発性糸球体腎炎患者と原発性糸球体腎炎による保存期の慢性腎不全患者60症例を検討の対象とした。臨床病型では無症候性蛋白尿/血尿が54例(内11例で複数回の測定を行った)、ネフローゼ症候群が6例であった。60例のうち24例に腎生検を行い、IgA腎症18例、非IgAメサンギウム増殖性糸球体腎炎2例、膜性腎症4例と診断された。糖尿病性腎症などの二次性腎疾患は検討の対象から除外した。年齢は58.4±17.1歳(平均±標準偏差)、男性30例、女性30例またMDRD簡易式による糸球体濾過量(GFR)に日本人係数0.881を乗じたeGFRは56.5±23.4/mL/min/1.73m^2であった。血漿albuminの酸化/還元比率の測定にはSogamiらが報告したShodex-Asahipak ES-502Nカラムを用いるHPLC法によった。血漿albuminには分子内のCys34のSH基(-SH)がフリーになっているHMAと、Cys34の-SHにcysteineあるいはGSHが結合したHNAがある。HNAはHNA-1と、HNA-1より微量で酸化数の多いHNA-2からなる。HPLC分画では、HMA,HNA-1,HNA-2の順でピークが得られる。血漿albuminの還元化率、酸化率は以下の算出式によった。HMA%=HMA/(HMA+HNA)×100HNA%=HNA/(HMA+HNA)×100ただしHNA='HNA-1'+'HMA-2'尿中の低分子量蛋白(u.α1-m,u.β2-m)はラテックス凝集免疫法(栄研化学,栃木)、u.Tfはラテックス凝集比濁法(ニットボーメデイカル,東京)、またNAG活性はMCP-NAG法(塩野義製薬,大阪)によった。u.L-FABPの測定にはヒト型L-FABPを特異的に認識するモノクローナル抗体を用いたELISAキット(免疫生物研究所,高崎)を使用した。またL-FABPについては尿中濃度を合わせて血中濃度s.L=FABPも測定した。以上の測定値には同一対象11名における6.1±1.6ヶ月(平均±標準偏差)の間隔をおいた複数回の結果を含めた。albuminの分画測定のために採取した血液は直ちに4℃、4000Gで15分間遠心分離して血漿を分離し、測定に供するまで-80℃で凍結保存した。また採取した尿検体は-20℃の保冷庫で測定に供するまで凍結保存した。尿を検体としたu.Pr,u.L-FABP, u.α1-m, u.β2-m,u.Tfとu.NAG活性の測定結果はいずれも尿中クレアチニン濃度で除したクレアチニン補正値である。測定結果の統計解析にはt検定を使用し、危険率(p値)0.10未満を傾向あり、0.05未満を有意とした。結果eGFR, u.Pr, u.L-FABP, u.Tf, u.NAG, u.α1-m, u.β2-m,s.L-FABP, HMA, HNA-1, s.albおよびHMAとs.albの積値で得られるs.alb*HMAの各測定項目の平均値と標準偏差をtabke1に示した。また各測定項目間の相関係数(r)とrに対する有意性の危険率(p)をtable2に示した。1)eGFRと種々の尿中パラメーターeGFRとu.Pr,u.L-FABP, u.β2-m, u.α1-m, s.L-FABPとの間にはp<0.001の有意な負の相関関係が認められた。しかし、eGFRとu.Tfとの間にはp<0.10と負の相関を示す傾向が認められたものの、有意な相関関係は認められなかった。腎機能と尿中低分子量蛋白、尿中NAG活性との関係は従来からの報告ともほぼ一致するものであった。Fig.1a-1eにeGFRに対するu.β2-m, u.α1-m, u.NAG, u.L-FABP, s.L-FABPの相関分布図を示した。いずれの相関分布図においてもeGFRとの間に有意な負の相関が認められた。またtable2に示したようにu.L-FABPとs.L-FABPとの間にも有意な正の相関が認められた。腎機能がほぼ保たれている対象ではu.α1-m, u.β2-m, u.L-FABP, s.L-FABPの値が回帰直線からかけ離れて高い測定値を示した症例はなく、またu.β2-m, u.α1-mと比較してu.L-FABPの測定値だけ明らかに高い値を示した症例も認められなかった。2)尿蛋白と尿中パラメーターとの関係尿蛋白(u.Pr)とu.L-FABP, u.Tf, u.NAG, u.β2-m, u.α1-mとはいずれもp<0.001の有意な正の相関が認められた(table2)3)尿中L-FABPと他のパラメーターとの関係尿中L-FABP(u.L-FABP)はu.Tf, u.β2-m, u.α1-mに対してp<0.001の有意な正の相関を示した。しかしu.NAGに対しては有意な相関は認められなかった(table2)4)eGFRと血漿albuminの酸化/還元比率の変化eGFRとHPLCによる血漿albuminの酸化/還元比率の変化をFig.2に示した腎機能の低下とともにHMAは有意(p<0.002)に低下する一方、HMAは有意(p<0.002)に上昇し、血漿albuminの還元化率が腎機能の低下とともに減少することが確認された。また血漿中のs.alb*HMAもeGFRに対してp<0.001の強い正の相関が認められた(table2)5)HMA(%)およびs.alb*HMAと種々のパラメーターとの関係HMA(%)と種々ノパラメーターとの関係をtable2に示した。HMA(%)はeGFRとはp<0.002, u.α1-mおよびNAGとはp<0.005,u.Prとはp<0.01の有意な相関関係を示したが、u.L-FABP, u.Tf, u.β2-m, s.L-FABPに対しては有意な関連は認められなかった。また、血漿中のs.alb*HMAはeGFRとはp<0.001, u.Prとはp<0.002, u.L-FABPとはp<0.01, u.α1-mおよびu.NAGとはp<0.02の有意な相関関係が認められたが、u.Tfに対してはp<0.10の負の相関を示すにとどまり、u.β2-mに対しては有意な関連は認められなかった。肝硬変患者におけるBCAA製剤投与時の酸化型アルブミンの検討http://netconf.eisai.co.jp/nash/report/002/2_04.pdf肝硬変患者 BCAA投与は血清アルブミン濃度に対して量的な変化が惹起されない段階においても質的に改善させる可能性、酸化型Albの低下近年慢性肝疾患のおける肝細胞障害や線維化の原因の1つに酸化ストレスが注目されている。一方酸化ストレスは血清アルブミンに対して酸化型アルブミンの増加ならびに還元型アルブミンの低下という質的な変化をもたらす。BCAA顆粒は肝硬変患者の低アルブミン血症に臨床の場でひろく利用されているがアルブミンの質的な変化に対する影響については明らかにされていない。今回低アルブミン血症のある肝硬変患者にBCAA顆粒を投与し、酸化型・還元型アルブミンの変化ならびに抗酸化物質への影響を検討した。BCAA顆粒投与前後で血清アルブミン値3.3±0.2g/dLから3.4±0.3g/dLへ増加したが有意な変化ではなかった。BCAA顆粒投与前と比較し、投与8週後の還元型アルブミンの比率は60.3±11.0%、から、66.9±9.1%へと有意に上昇(p<0.05)し、酸化型アルブミン(可逆型)の比率は36.3±9.7%to30.4±8.4%へと有意に低下した(p<0.05)

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    • 1慢性腎臓病

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    • (老人性振戦等)

      老人性振戦の臨床生理学的研究Clinical and physiology studies on senile日本老年学会誌Vol.35(1995)No.10p623-627https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/32/10/32_10_623/_pdf考察高齢発症で姿勢振戦のみを唯一の症状とする振戦は老人性振戦と呼ばれる。老人性振戦は周波数が比較的低く、振幅の大きい場合には安静時にも振戦を示し、パーキンソン病にみられる静止時振戦に類似することもある。われわれの今回の例でも老人性振戦では若年発症の本態性振戦と比べて周波数は低かった。しかし周波数は発症年齢より検査時年齢に依存していることから、低い周波数は老人性振戦の特徴というより、検査時に高齢である患者の特徴と考えられた。即ち成人にみられる振戦の周波数は加齢とともに低下するとする報告と一致し、これは本態性振戦の特徴であるともいえる。ただ発症年齢との関係については本疾患がきわめて緩徐に発症するため今回確実に発症年齢を述べた患者であっても本当の発症年齢は不明確である場合も考えられ、すぐに結論づけるのは危険かもしれない。周波数が加齢とともに低下する理由は明らかではないが、Elbleらは小脳のpurkinje細胞の減少や小脳虫部の萎縮など小脳の加齢変化が関係していると考えている。われわれの検査ではとくに高齢者で筋電図上、拮抗筋同士が相反性に活動する例が多く、その点ではパーキンソン病の振戦と類似していた。本態性振戦症の特徴として拮抗筋同士が同期して活動することを強調し、相反性放電を示す場合には後にパーキンソン病に発展する可能性があるとする報告もある。しかし本態性振戦はむしろ相反性放電を示す場合も多く、また長時間の筋電図記録で相反性と同期性の両者が交代することや、拮抗筋の一方からのみの放電を示すものもある。拮抗筋同士の相反性あるいは同期性放電の臨床的意義については不明であり、従って今回のわれわれの検討では老人性振戦に拮抗筋同士が相反性に活動する例が多かった理由も明らかではないが、前述の周波数の低下が脊髄より中枢の病変の関与を示唆しているとする考えを考慮すると、高齢者の振戦ではパーキンソン病と病変部位が同じではないにせよより若年者の本態性振戦よりも中枢の病変が症状発現に関わっているためかもしれない。いずれにせよ現実には相反性放電の有無で本態性振戦を診断することは不可能である。今回、他動的な筋伸張で老人性振戦でも本態性振戦でも振戦の周期がre-setされた。このようなre-settingは特に生理性振戦で顕著である。この理由として他動的な筋伸張は脳幹や大脳基底核などと比べ脊髄により直接的に作用し、脊髄伸張反射や脊髄反射弓内のoscillationが発現機序関与している生理振戦の律動が影響を受けているためと考えられている。本態性振戦でも、特にパーキンソン病の振戦と比較するとre-setされやすく、その発現に多少なりとも脊髄反射弓内でのoscillationが関与していると考えられる。いずれにせよ他動的筋伸張による振戦律動のre-settingの態度は老人性振戦でも若年発症の本態性振戦でも変わらず、この2つの振戦に共通した特徴であると考えられた。家族性振戦を本態性振戦の1つの代表とするとその発症年齢は10歳代からせいぜい50歳代までで、今回の老人性振戦の発症年齢とは明らかに異なり、両者が同一の疾患ではない可能性もある。しかしもとより本態性振戦は単一疾患とは言えず従って臨床的に診断された本態性振戦にはいくつかの亜型が混じあしていると考えられる。今回の検査で老人性振戦もより若年で発症する本態性振戦も類似の所見を示したことから、その発生機序の共通性を示唆し、現時点では老人性振戦が本態性振戦の一型であるとする見解を支持していた。要旨高齢で発症し上肢の姿勢振戦おるいは頸部の振戦を有するが振戦以外の症状を呈さず、原因の明らかでない老人性振戦について臨床・生理学的に検索し、その特徴を検討した。60歳以上で発症し、上肢の姿勢振戦を主徴とする男6例、女10例、計16例(検査時平均年齢73.4歳)の患者の上腕二頭筋、上腕三頭筋、前腕屈筋群、前腕伸筋群の表面筋電図を記録し、振戦の周波数を測定するとともに拮抗筋同士が交代性に活動しているか否かについて調べた。一部の例では手関節を機械的に急速に背屈または掌屈させ、振戦の周期の変化を見た。同様の検査を臨床的に本態性振戦と診断された発症年齢60歳未満の男15例、女7例、計22例(検査時平均年齢54.1歳)でも行い対照とした。振戦の周波数は老人性振戦で6.2±1.3Hz(平均±SD)、対照群で7.3±1.5Hzと、前者で低かったが、対照群でも検査時に60歳以上の患者では6.0±0.8Hzと低く、周波数は検査時年齢と負の相関を示し、発症年齢との関連はなかった。拮抗筋同士の筋放電は、老人性振戦では15例で相反性を示した。対照群のうち7例では拮抗筋同士が同期して活動していたが、検査時に高齢の患者では相反性放電を示す例が多かった。手関節に機械的刺激を与え筋に伸長を加えた例では全例で振戦の周期がre-setされた。以上より老人性振戦は周波数が低く、拮抗筋同士が相反性放電を示す例が多いが、若年発症本態性振戦でも検査時に高齢の患者では同様の態度をとり、こういった現象は発症年齢よりも検査時年齢に依存し本態性振戦の特徴と考えられた。この結果は老人性振戦が本態性振戦の一型であるとする考えを支持していた。緒言高齢者にはさまざまな不随意運動がみられる。脳血管障害による舞踏運動やバリズム、口周辺のジスキネジア(oral dyskinesia)、向精神薬や胃腸薬、降圧薬などによる遅発性ジスキネジア(tardive dyskinesia)などが代表的であるが、日常診療でよく遭遇するのはおそらく振戦であろう。高齢者にみられる振戦にはパーキンソン病に伴うものや脳血管障害の症状として発現するものもあるが、主として上肢にみられる原因不明の姿勢振戦も少なくない。その中には若年で発症した本態性振戦が持続しているものもあるが、高齢で発症するものもあり、老人性振戦と呼ばれている。一方、老人性振戦は本態性振戦の一型とする見解もある。われわれは老人性振戦を臨床・生理学的に検索し、この振戦のより若年で発症する本態性振戦との異同を検討した。方法対象は60歳以上で発症し、上肢の姿勢振戦を主徴とする男6例、女10例の計16例(検査時年齢66-82歳、平均年齢73.4歳、標準偏差5.4歳)である。振戦を頸部にも認める例もあったが、全例、他の神経学的症候は示さず、頭部CTスキャンなどの画像からも血管障害や特殊な神経変性疾患は否定された。末梢神経障害も認められない。頸椎レ線写真で頚椎症を示す例もあったが、それによる神経症状を呈する場合は対象から除外した。また明らかな神経症状を有さない場合でも手指の不規則なゆれを示すものも対象から除外した。甲状腺機能は全例正常であり、血液、尿検査から糖尿病も否定された。これらの患者の上腕二頭筋、上腕三頭筋、前腕屈筋群、前腕伸筋群の筋腹上の皮膚表面に直径10mmの銀/塩化皿電極2個を約3cm離して装着し、筋電計で表面筋電図として時定数0.005秒で活動電位を記録した。記録はまず立位で上肢を下垂した状態で行い、次いで上肢を前方に水平位に固定してもらった。その際、最も振戦のおこりやすい筋緊張の状態を保ってもらった。表面筋電図では振戦の周波数を測定するとともに拮抗筋同士の相反性放電の有無を調べた。同様の検査を発症年齢60歳未満の本態性振戦症患者、男15例、女7例(検査時年齢29-74歳、平均年齢54.1歳、標準偏差11.9歳)でも行い対照とした。明らかな家族歴は対象患者の5例にみられたが、老人性振戦では家族歴がないか不明であった。老人性振戦と対照患者のうちそれぞれ5例では手関節を機械的に急速(60°;20ms)に背屈あるいは掌屈させ、筋に他動的伸長を加えることにより振戦の律動の変化をみた。成績振戦は上肢を下垂した状態でもみられる患者もあったが、前方挙上で増強された。振戦の周波数は老人性振戦で4.7-8.5Hz、平均6.2Hz、対照で5.0-10.0Hz、平均7.3Hzと、老人性振戦で有意に低かった(図1)しかし対照群でも検査時に60歳以上の患者では5.0-6.5Hz、平均6.0Hzと低く、老人性振戦における周波数と有意差がなかった(t=-0.454, N.S.)今回このような疾患では正確な発症年齢の確認は難しいがほぼ正確な発症艶麗の判明している29例について周波数と発症年齢との関係について調べたところ、両者の間には有意な相関はみられなかった(r=0.252,N.S.)これに対し、周波数は検査時年齢と負の相関を示し、高齢者ほど周波数が低かった(図2)拮抗筋同士の筋放電パターンとしては、交代性に活動しているもの(相反性(+),図3)が老人性振戦で16例中15例(93.8%)、対照で22例中15例(68.2%)と老人シエ振戦で多い傾向にあったが、有意ではなかった(χ2=3.64, N.S.)しかし対照例も含め、検査時の年齢が60歳以上の患者では15例中8例で相反性(+)と、高齢者で有意に相反性放電を示す例が多かった(図4)対照例の中には拮抗筋の一方からのみの放電を示すものがあったが、老人性振戦で相反性放電を示さないものは拮抗筋同士が同期した放電を呈していた。手関節に機械的刺激を加え、筋に受動的伸長を加えると老人性振戦でも対象でも全例で振戦のリズムが崩され、新たに振戦の律動が開始された。すまわち振戦の周期がre-setされた(図5)ファモチジン投与によりパーキンソン症状の出現した本態性振戦の一例こういう数は少ないが報告例はある報告って、製剤(工業製品)なんだから、薬効成分ばかりではなく含有化合物が原因もあるのでは。だからファモチジンと書かずに、メーカー名と商品名も書いてほしい。メーカーにより含有添加物は違う。たまたまアスパルテームが目を引いたが添加物は多種類使われている。ビタミン剤含めて製剤に添加物は避けて通れないので必要に迫られて飲むものだということ。ファモチジン製剤に含有添加物のアスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物)の神経毒性(パーキンゾニズム)引用開始http://tsuji-c.jp/%E3%80%90%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%94%98%E5%91%B3%E6%96%99%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%AE%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%AF%92%E4%BD%9C.htmlアスパルテームから発生するメチルアルコールがアスパルテーム特有の分子構造に助けられてメチルアルコールが単体で存在する場合よりも500-5000倍毒性作用が高まる。アルコール中毒による神経変性疾患、アル中患者にパーキンソン病が発症する原因はアルコール飲料に含まれるメチルアルコールのせい。(アルコール飲料は穀類から精製するグレインアルコールで大部分エチルアルコールだがごく微量にメチルアルコールも含まれており神経組織の退行的変性neurodegenerationを引き起こす要因になっている。パーキンソン病特有の脳の損傷部位は脳の基底核であるがこの部位はジカルボン・アミノ酸という神経興奮性毒素によって損傷を受ける場所であることが知られている。パーキンソン病による神経組織の退行的変性が生じている場所では脳の基底核に損傷ができておりその原因がアスパラギン酸である。メチルアルコールによるパーキンソン病発症のメカニズムと同様、アスパルテームの分子は、アスパラギン酸が単独で存在しているよちもその神経毒性を5000倍以上に高めてしまう可能性がある。ドーパミンを産生する脳内の神経組織が失われると、脳の情報伝達回路が正常に働かせるのに必要な神経伝達物質が十分なドーパミンを作りだせなくなるがアスパルテームはフェニルアラニンの代謝作用に破壊的な影響を及ぼしてドーパミンの産生を著しく低下させ、結果的にパーキンソン病を悪化させる。代謝によって分解できずに体内に蓄積したフェニルアラニンは脳の神経細胞の酵素が働く部位で他のアミノ酸と競合し、そうしたアミノ酸の正常な代謝を阻害してしまう。こうした酵素作用部位のなかには、デカルボキシラーゼ酵素の作用部位も含まれ、その結果、アミノ酸の一種であるチロシンが本来行われるべき脱カルボキシル化作用を受けられなくなりそのせいで脳内のドーパミンの産生が出だしから阻害される。こういう事情で脳内のドーパミン・レベルが著しく急降下する。The potential toxicity od artificial sweetenersAAOHN J.2008 Jun;56(6):251-9;PubMed comprises more than 23 million citations for biomedical literature from MEDLINE,life science journals,and online books.Citatations may include links to full-text content from PubMed Central and publisher web sites https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/18604921/(人工甘味料とリンパ腫、白血病、膀胱癌、脳、慢性疲労症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、エリテマトーデス、自閉症との関連も)引用終わりファモチジン投与によりパーキンソン症状の出現した本態性振戦の一例Famotidine induced parkinsonism in a case of essential tremor日内会誌Vol.91(2002)No.1p456-458https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/91/1/91_1_456/_pdf概要症例は70歳女性、20歳頃より両手指の姿勢時振戦を認め悪化傾向なく経過していた。65歳より近医でパーキンソン病としてL-DOPAを投与されていたが、振戦以外の症状は認められず、1999年にL-DOPA中止後も症状の増悪は認められなかったため本態性振戦と診断された。2000年2月よりファモチジンの内服を開始したところ3月頃よりパーキンソン症状が出現した。ファモチジンが薬剤性パーキンソニズムの原因になり得るかどうか今後の臨床的観察が必要と考え症例を報告した。考察本症例は69歳の入院時にパーキンソン症状はなく、本態性振戦と診断されていた。外来で経過観察中、消化器科でファモチジン40mg/日を投与された1ヶ月後より安静時振戦、筋固縮、姿勢反射障害などのパーキンソン症状が出現したと考えられた。ファモチジン中止後、パーキンソン症状は改善したものの残存した。本症例でパーキンソン症状を呈した病態については3つの病態が考えられた。1番目に、本態性振戦からパーキンソン病に移行した可能性が考えられ、2番目にファモチジン内服による薬剤性パーキンソニズムを呈した可能性が考えられ、3番目にもともとパーキンソン病に移行しやすい本態性振戦というリスクファクターを有しているところにファモチジンを投与され、パーキンソン症状が誘発された可能性の3つの病態である。本態性振戦とパーキンソン病の関連についての報告はこれまでにいくつかみられる。Hornabrookらは本態性振戦の患者におけるパーキンソン病の合併頻度は正常コントロール群に比べ35倍であると報告しており、同様にGeraghtyらは24倍であると報告しており、本態性振戦はパーキンソン病を生じるリスクファクターと考えられる。しかし一方でMarttilaら、Rajputら、Cleevesらのように本態性振戦とパーキンソン病との間いに特に関連は認められなかったとの報告もみられる。これまでに報告されているパーキンソニズムを示す薬物を表に示す。H2レセプターブロッカーのうち、ファモチジンについてはこれまでにパーキンソニズムをきたしたという報告はない。ファモチジンによりパーキンソニズムを生じた機序について考察する。ファモチジンはH2受容体遮断薬であるが、ヒスタミンは哺乳類の神経系において神経伝達物質として作用し、記憶の補助や覚醒作用を有することが知られている。本症例ではH2レセプターブロッカーであるファモチジンの投与により、脳内ヒスタミン系のバランスが崩れ、大脳基底核におけるドパミン系のバランスに破綻をきたし、パーキンソニズムを生じた可能性が考えられた。なおH2レセプターブロッカーのうちシメチジンでパーキンソニズムを呈したとの報告はあるが、これはもともと抗パーキンソン薬を内服しており、シメチジンによる胃酸分泌低下により薬剤が吸収されにくくなったためと考えられている。ファモチジンが薬剤性パーキンソニズムの原因になり得るかどうか今後の症例の集積が必要と思われた。臨床経過ファモチジン中止後、パーキンソン症状の改善が認められたが残存した。抗パーキンソン病薬であるドパミン受容体作動薬の投与により安静時振戦、筋固縮、姿勢反射障害は軽快し現在外来通院中である。症例患者:70歳女性主訴:両手指振戦家族歴:兄、パーキンソン病現病歴:20歳頃より両手指の姿勢時振戦を認めていたが悪化傾向なく経過していた。65歳より近医でパーキンソン病としてL-DOPAを投与されていたが振戦以外の症状は認められず、1999年(69歳)にL-DOPAを中止し、その後症状の増悪は認められなかったため本態性振戦と診断された。2000年2月より消化器科にてファモチジン40mg/日の内服を開始された。3月頃より振戦の増悪が認められたため精査、加療目的で入院となった。入院時現症:血圧126/70mmHg、体温36.8℃、その他一般理学的に異常を認めなかった。神経学的所見では脳神経系は異常なく、運動系では四肢の筋固縮、動作緩慢、左上肢に目立つ安静時振戦、手指の姿勢時振戦を認めた。四肢深部腱反射は異常なく病的反射は認めなかった。起立・歩行では突進現象を認めた。一般検査所見では血清でヘモグロビン11.8g/dL、ヘマトクリット36/1%と軽度の貧血を認める以外は特に異常はみられなかった。特殊検査所見では甲状腺ホルモン正常、体性感覚誘発電位、神経伝導速度、聴性誘発電位は正常、頭部MRIでは右放線冠に小梗塞を認めた。

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    • (振戦の病態生理等)

      上肢振戦の子、ビタメジン1g服用5日目「手が震えない。水を持てる。」即答頭部CTも虫部と両側半球に萎縮著明+だが4年前の頭CTと比較して著変ない。失調型脳性麻痺とその画像診断Ataxic cerebral palsy and brain imaging脳と発達 Vol.24(1992)No.5p441-448https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn1969/24/5/24_5_441/_pdfⅡ.考按1.失調型脳性麻痺の診断上の問題点紹介した5例のうち4例は1歳以前に身体が柔らかい、頸や体幹がぐらぐらするなどの訴えで医療機関を受診し筋緊張低下を指摘されている。座位保持が可能となり四つ這いをするようになって失調の存在が疑われている。症例2は5歳で医療期間を受診しているが、1歳5ヶ月頃には症状が出ていたようである。5例とも早期から発症し、四肢、体幹、言語に失調症状を主とする姿勢運動障害がみられることから、失調型の脳性麻痺と診断されたものである。神経学では失調を小脳失調と脊髄失調とに分けているが、失調型脳性麻痺という時には小脳失調を年乙においているようである。アテトーゼやてんかん脳症後遺症などで筋緊張の低い症例では、失調が加味されていると思われることがあるが非定型例は失調型に含めない方がよいと考える。紹介した5例は脳性麻痺の臨床状態からの定義(早期から発症する非進行性の姿勢運動障害)からは問題ないあが、病因論からは検討の余地を排除できない。症例1は母指発生例であり、早発性遺伝性非進行性小脳失調症候群が疑わしく遺伝子異常の可能性が高い。症例3は失調症状の進行はないものの、早期に白内障や低身長などを合併したMarinesco-Sjoegren syndromeと診断され遺伝子異常と考えられる。症例1noCT像は1歳から2歳8ヶ月の間に萎縮の進行を示したが、臨床的には運動発達がみられ、母親と同様に慢性非進行性の経過をたどることが予想される。症例5は非進行性の胎内奇形と思われるが、症例1-4では小脳病変の非進行性の見極めには長期間の経過観察が必要であろう。失調型脳性麻痺の診断は臨床的になされるが、小脳病変には奇形、破壊、萎縮など種々の病態が含まれることが予想され、遺伝子異常、変性疾患との区別が難しい場合が少なくない。Hagbergら、Sannerらはさまざまな名称で検討されている非進行性の先天性小脳失調症状をNPAと総称し、この中にジメストリーを主障害とするCCAと平衡障害、空間での身体認知障害を主とするDESの2型があることを提唱した。2.NPAの検討我々の5例もNPAの症例として統一的な検討が可能である。症例1,2は上肢のジメストリー、振戦、失調歩行などを主症状とするCCA症例3,4,5は強い平衡障害を伴って運動発達の著しく障害されるDESと考えた。症例の運動発達の様子や神経症状、平衡機能などを宇根らの報告を参考にして表2にまとめてみた。CCAの2例はジスメトリー、振戦がみられ2歳以前に歩行ができるようになり、身辺自立もどうにか可能となっている。DESの3例は平衡機能に著しい障害があり、2例は10歳の現在も歩行できず、1例は8歳になってようやっと歩くようになるなど、CCAとは明らかな相違があり、両者を区別して検討することの意義が認められた。症例1は下肢の痙直を伴い、CCA with spastic diplegiaに区分されると思われた。症例2は平衡機能の障害を伴っていて、CCAとDESの中間的な症状と思われた。DESの症例で筋緊張低下が変化することはHagbergら、宇根らの報告があり、症例5で観察された。CCAとDESには病因や知能に差異があると報告されているが、我々の症例は少数なので表示のみで検討を差し控える。我々の症例には認知の異常は特にないように思われたが症例4,5で身体を傾けられた際にバランス動作が出ないのに全く不安を感じない様子は空間認知の異常を推察させるものであった。発語の異常が強い症例は虫部の中央部の障害を考えるべきであると報告されている。症例5はその症状を示した。坂井は小脳離断した症例にcerebellar mutismと呼びうる病態が生じうると述べているが、症例5に見られた1歳半から3歳頃まで自閉的と記載されていた様子は、病態が先天的に起こった場合でも同様な精神症状が出る可能性を示唆するものである。現在は固執は認めるが孤立の自閉的症状はなくなっている。3.画像診断の特徴CTは小脳周囲の槽、第四脳室を描出し、その拡大や小脳回の拡大所見などから小脳や脳幹病変を示唆する。MRIは小脳ばかりでなく脳幹、脊髄などを明瞭に区別して示してくれ、障害の拡がりが判り、形成不全か萎縮かなど病変の性格まで推定させてくれる場合すらある。臨床的に失調の存在が疑われた症例における小脳および関連脳神経系の病変部位の判定に画像診断は極めて有用である。我々の症例の画像診断では、CCAは主として前方小脳(脊髄小脳)障害が考えられた。DESでは橋、脊髄、小脳にまたがる広い範囲の障害(症例3,4)の場合と、小脳虫部の形成不全の症例とが観察された。症例3,4と症例5では臨床像、平衡機能テストに相違点があり、障害部位の違いを反映していると思われた。小脳虫部障害と平衡機能障害との関連は坂井の報告にも認められている。CCAは主に小脳のみの障害で、DESはより広範囲な固有知覚神経系の障害を含むと考えられているが、両者の区別は臨床的になされ、画像診断でのCCAとDESの区別は難しいと報告されている。MRIは病変の拡がりを示すので、画像診断はCCAとDESの病態の解明に貢献しうると思われ今後の症例の積み重ねが期待される。要旨失調型脳性麻痺の5例の臨床像につき、画像診断(CT,MRI)を加えて検討した。失調型脳性麻痺は、筋緊張低下から失調症状へ臨床像が変化し、遺伝子の関与が考えられる症例、随伴症状などから症候群が想定される症例、非進行性の見極めが難しい症例などが含まれ、non-progressive ataxic syndromeと一括する方が症例の特異性の検討に適切である。失調症状を主とした2例はcongenital cerebellar ataxicと、著しい平衡障害を合併した3例はdysequilibrium syndromeと診断された。画像診断、中でもMRI病変部位とその拡がりを判定するのに極めて有用であった。1例は早発性遺伝性非進行性小脳失調症候群の母指発生例と思われ、1例はMarinesco-Sjoegren症候群と診断された。はじめに失調型脳性麻痺は稀で、早期診断は難しいとされている。早期の臨床症状は筋緊張低下と非特異的で、成長して失調症状が現れて診断が下される。発生原因に遺伝子の関与が考えられる症例、随伴症状などから特定の症候群が想定される症例、非進行性の見極めが難しい症例が含まれるなど、失調型脳性麻痺び疾病概念の生理にはさまざまな問題があるので、non-progressive ataxic syndrome(NPA)と一括して症例毎の特異点を論ずるのがよいと考える。NPAは失調症状を主として立位平衡機能の異常はないsyndrome of congenital cerebellar ataxia(CCA)と平衡機能の異常を伴って運動発達が著しく障害されるdysequilibrium syndrome(DES)の2型に分類される。CTは第三、第四脳室を描出し、その拡大や小脳回の拡大などから小脳や脳幹の病変を推察させ、MRIは小脳、脳幹、脊髄などを明瞭に描出し、病変部位とその拡がりを判定し、形成不全か萎縮かなどの病態の推定に有用である。自験5例についてNPAの臨床像を検討し画像診断により病変部位を確認した。Ⅰ.症例5例の概略を表1に提示した。症例1:血族結婚はない。母親に運動障害がある。母系祖母の妹が精神遅滞である。第一子は自然流産。症例は第二子で、現在1歳6ヶ月の健常な第3子がいる。妊娠初期と妊娠6ヶ月の時に切迫流産で入院治療を受けた。38週に前期破水で3回の入院をしそのまま出産となった。2,240gの不当低体重出生時であうr。Apgar score 1分7点、5分8点で、4日間保育器に収容された。6ヶ月検診では正常と判定されたが、7ヶ月に上気道炎の症状で小児科を受診した際に、筋緊張低下を指摘された。肢体不自由児母子訓練センターを紹介され、機能訓練を受けることになった。定顎4ヶ月、寝返り6ヶ月、8ヶ月には座らせると側方に手をついて保持するのがみられた。10ヶ月に四つ這いを始めた。足の開きが大きく体重移動が大きく不安定であった。1歳6ヶ月につかまり立ちから手を放して歩くようになったが両足の開きが大きく足をもつらすような歩き方であった。2歳に床より立ち上がり歩く、膝が反張してぎこちなく失調歩行と思われた。膝蓋腱反射、アキレス腱反射が亢進し、足クローヌス陽性、足関節の可動域が低下、下肢の痙直を認めた。積み木をさせると、机に肘をつけて行いたがる様子で、ペグを通す際などに振戦がみられた。1歳9ヶ月に発語を開始、現在は簡単な文も話すが、構音に誤りが多く、浴用がなく、言語発達も遅れている。1歳6ヶ月の津守式発達検査ではDQ=63、2歳2ヶ月ではDQ=53であった。眼底に異常なく、眼振を認めない。立位で身体を側方に傾けるとすぐに足を送ってバランスをとる。後方に傾けると腰を曲げて状態のバランスを保持できる。現在は腰を曲げ、両足を内旋し、よろめくように歩き、痙直性の歩行障害が加わった歩き方と思われた。母親も同一疾患と思われる。母は1歳6ヶ月で歩いた。小学校は普通校に通ったが中学校、高校は養護学校に進学した。現在左手にクラッチをつけて内反尖足で歩いている。手の使い方がぐこちなく肘をついて行おうとする。早発性遺伝性非進行性小脳失調症候群の母子例と思われ検索中である。症例の1歳のCTには異常を認めなかったが、2歳8ヶ月のCTで上小脳槽、小脳回、小脳間溝が広がって萎縮が疑われた。3歳1ヶ月のMRI(図1)で前方小脳に強い小脳の萎縮、および橋の軽度萎縮が認められた。症例2:家族歴に特記すべき異常はない。現在9歳の健常な兄がいて症例は第2子である妊娠歴は正常で38週、3,050gの正常出産である。定顎3ヶ月、座位保持8ヶ月、四つ這い11ヶ月、伝い歩き1歳3ヶ月、1歳5ヶ月で歩き始めた。前傾姿勢で両足が内旋し速度調節ができず転びやすい歩き方であった。1歳で始語が見られたが聞き取りにくかったとのことである。3歳頃不器用だと思われた。5歳になって走る際に足がもつれて転びやすうことを主訴に大学小児科を受診した。眼球運動に異常なく眼底所見も異常ない。末梢神経伝導速度は正常であった。5歳2ヶ月の津守式発達検査でDQ=87であった。運動障害の特徴から小脳失調と診断され、肢体不自由児母子訓練センターで訓練を受けることになった。言語は断綴性で抑揚に乏しいが構音は明瞭で速度も問題となる程ではなく十分聞き取れる。8歳にWPPSI知能診断検査を行ったが言語性検査71、動作性得kンサ66、全IQ=62であった。認知の異常はないと思われた。現在も座位が不安定で椅子をつかんでいる。文字、図形を書けるが、ジスメトリーを認める。ビーズ通しや書字の際に振戦が見られる。膝蓋腱反射、アキレス腱反射は低下、関節の可動域は拡大し、筋緊張低下と判定した。転びやすいがいくらでも歩ける。つぎ足歩行はできない。立位で身体を側方または後方に傾けるとそのまま倒れそうになり、体幹の立ち直りに乏しいが、少し待ってやると足を送る。バランス動作の機能訓練を行っている。CT(5歳2ヶ月)では四丘体槽、第四脳室、小脳回の拡大がみられ、小脳虫部の萎縮が疑われた。5歳3ヶ月のMRI(図2)では、半球および虫部の萎縮、特に小脳前方(上方)部の萎縮が著しいことが判明した。症例3:血族結婚はなく、一族に神経疾患、眼疾患の者はいない。現在24歳の健常な姉がいるが異母姉で、症例は第一子である。妊娠歴は正常、出産は40週、3.250gの正常産である。4ヶ月頃から顎や体幹がぐらぐらしているのに気づき、6ヶ月に地元の医師を受診、1歳には大学病院を受診している。1歳頃どうにか定顎し、3歳で座位保持ができるようになったが、体幹が柔らかく手を前方について支えていた。4歳に四つ這いを始めたが、膝から下をあげたままの形(feet in the air)であった。4歳8ヶ月につかまり歩きができるようになったが、ふらふらして安定せず、失調型の脳性麻痺が疑われた。4歳頃より両側白内障となり、6歳7ヶ月に両水晶体摘出術を受けた。10歳で118.4cm(標準135.3cm, 標準偏差5.72cm)と低身長である。9歳頃から頭頂部に1×3cm位の前後方向に長い骨性隆起が出てきた。骨シンチグラフィー、血管造影など行ったが特に所見なく頭頂骨の骨性肥厚と診断された。この際の血管写で天幕下の血管が細いことが観察され天幕下病変と関連するものと思われた。現在は養護学校の4年生で、座位が軽度不安定、両クラッチで歩いている。膝蓋腱反射、アキレス腱反射は低下し、股、足関節の可動域の拡大を認め筋緊張低下と判定した。立位で身体を側方または後方に傾けても上体、手でバランスをとることなく足の運びも見られない(falling without stepping reaction)大きな字で書き軽度のジスメトリーを認めた。言語はかすれ声で抑揚に乏しく、断綴性でゆっくりした話し方である。下が動揺し子音に誤りがあるが聞き取れる。8歳の時の田中ビネー知能検査ではIQ=78であった。知能テストや日常の様子を観察したり学校の担任の意見を総合して認知機能に異常があるように思われなかった。白内障、低身長などを合併するMarinesco-Sjoegren syndromeと診断された。6歳のCT(図3)で第四脳室から大槽にかけての大きな低吸収域が認められ、橋および虫部につよい小脳病変が疑われた。9歳6ヶ月のMRI(図3)にて小脳溝の拡大、橋から延髄に至る周囲の槽の拡大、第四脳室の拡大があり、脊髄にも萎縮所見が認められた。小脳、脳幹、脊髄にかけての萎縮が証明された。CTによる追跡では喉頭部の低吸収域の拡大所見はない。症例4:家族歴に特記すべきことはない。1歳上に健常な姉がいて症例は第2子である。妊娠歴は正常、39週、2,850gの正常出産であるが、羊水が混濁していた。6煮詰めに黄疸が強く(15mg/dL)光線療法を1回受けた。4ヶ月頃にぐにゃぐにゃしている、そり返りが多いとの主訴で肢体不自由児総合療育センターを受診し、機能訓練を受けることとなった。1歳で定顎、1歳1ヶ月の時に偉大小児科で行った筋生検では筋背にの軽度の大小不同が見られたが、中枢性の障害によるものと判定された。2歳頃お座りをさせると2つ折りとなりようやく保持、長坐位を好まない様子がみられた。1歳6ヶ月の時にけいれん発作がみられ脳波に棘波を認め、てんかんの診断で服薬を開始した。その後4歳と7歳の2回発作があり抗痙攣薬の服薬を続けている。4歳にようやく四つ這いができるようになったが足を浮かせた形であった。7歳頃つかまり歩きを始めたがバランスが悪く不安がった。現在10歳であるが、座位が不安定、上肢もジスメトリー著明、ふらふらして両クラッチで辛うじて歩く。立位で左右あるいは前後に身体を傾けるとバランスをとろうとせず、足も送らない。バランス反応が出ないことに特に不安はないらしくニコニコしている。言語は抑揚がなくゆっくりとした話し方で、構音に誤りがあるが聞き取れる。下肢の腱反射が低下し、股、足関節の可動域が拡大、筋緊張低下が認められた。8歳の時の田中ビネー知能検査で推定IQ=85であった。学校の先生の印象では特に認知の異常は感じられなかったとのことである。9歳で115.8cm(標準130.1cm, 標準偏差5.73cm)と低身長であるが身体各部のバランスはとれている。6ヶ月のCTで第三、第四脳室の拡大と後頭部に低吸収域があることから脳幹および小脳虫部の病変が疑われた。4歳8ヶ月のCT(図4)では異常所見の進行はない。8歳8ヶ月のMRI(図4)で脊髄、橋および小脳の著しい萎縮、周囲の槽、第四脳室の拡大を認めた。症例5:血族結婚はない。症例の母の弟1人(3人兄弟、男子2人)と母方祖母の兄弟2人(9人兄弟、男子2人)が色弱(赤緑色盲)とのことである。症例は第一子で下に5歳の健常男子がいる。妊娠歴は正常。出産は38週、3,455g, apgar score 9点、黄疸で光線療法を1回受けた。4ヶ月の時に定顎がなく著しくぐらぐらである、左右に頸を振る、眼振、眼球が左偏するなどの主訴で大学病院を受診した。6ヶ月から運動発達の遅れ、筋緊張低下のため機能訓練を受け始めた。生下時より後頭部に直径2cmくらいの軟らかい腫瘤があり触れられるのを嫌がる様子であったが脂肪腫と考えられていた。1歳に定顎、1歳6ヶ月頃一人遊びに固執し常同行動が強く、自閉的であったが、3歳頃には改善した。眼球左偏は2歳頃には見られなくなり、眼振(水平性)も目立たなくなった。1歳11ヶ月の津守式発達検査ではDQ=77であった。2歳頃座位保持ができるようになったが、横座りで、両手を前方について安定をとっている。下肢の腱反射は低下、筋緊張は低下していた。4歳で四つ這いをしたが足を浮かせた形であった。7歳でいざり這い移動をはじめた。8歳で歩き始めたが膝がほとんど曲がらず、両足をひろげ、両手を上げ、口を開いて(緊張のため?)よろめきながらの歩行であった。現在前方に30cm位歩けるようになっているが、方向転換は困難である。立位で体幹を後方に傾けると、腰をのばしたままで立ち直りがなく、側方に傾けてやると片足立ちとなるが足の送りは全くなく、上体の立ち直りもなく、手でバランスをとろうともしないが強く傾けると保護伸展反応は出て、手をつく。特に不安ではないらしく、テストをいやがりはしない。膝蓋腱反射は亢進し、反射導出範囲も拡大している。足関節の可動域の軽度低下を認め軽度痙直と思われた。5歳頃までは全く発語がないと思われたが、いわれたことは理解できると思われた。5歳になったカーというのがオッカー(母)またはアカ(赤)の意味だと判明した。現在も理解はよいのだが構音の異常が強く、カ、タ、ダ、マなどの音を1音だけ爆発的に発するので何を言っているかほとんど聞き取れない。単語の最初あるいは最後の1音だけを発音し、指さししたり、身振りで示したりで簡単な内容なら伝えることができる。文字(平仮名、数字が書ける)を書いたり、話す気持ちは充分である。8歳の田中ビネー知能検査でIQ=50-60と推定された。長方形の組み合わせ、迷路などができること、学校(肢体不自由児の養護学校)の担任(児童3人受け持ち)の意見を総合して認知の障害はないように思われた。遠視性乱視で眼鏡を着用している。発語の著しい異常から小脳虫部中央部の障害が疑われた。4ヶ月、1歳8ヶ月および3歳2ヶ月のCTで第四脳室前髄帆の挙上、上小脳槽との連続がみられ、小脳上虫部の形成不全が疑われた。4歳7ヶ月のMRI(図5)で静脈洞交会部に頭蓋骨欠損(二分頭蓋)、前髄帆から上虫部の形成不全が認められた。シルビウス裂の形成が不十分、白質と灰白質の分離が不十分で脳の成熟の遅れと考えられた。振戦の病態生理-不随意運動の病態生理-Pathphysiology of tremor rythm臨床神経学53巻11号(2013:11)https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/053111276.pdf中枢性振戦中枢性振戦のリズム発生機序は詳しくはわかっていない。振戦の出現に深くかかわる部位は臨床的な病変部位の検討からいくつか知られている。よく知られているのは小脳や赤核、オリーブ核、視床、基底核などである。大脳皮質に起源があるとされている皮質性振戦は、皮質性ミオクローヌスが連発して出現して、臨床的には振戦に見えるものである。したがって筋電図の群放電はみられない。中枢性の振戦は、原因病変の部位ごとに臨床的特徴を有する。例えば、視床や赤核などの病変では、Holmes振戦と呼ばれる3Hz程度の遅い周波数の振幅の大きな振戦が安静時および姿勢時に生じる。また、小脳の病変では企図時の遅い振戦が出現する。基底核の調節障害によると考えられるパーキンソン病の振戦は、安静時の中程度の速さの振戦を呈する。これらは逆に振戦の症状から、原因部位を推察することができ病変部位が振戦の名前について表されることも多い。このように振戦は原因部位により振戦の性質や周波数がことなることがあるため、単純には、その部位にリズムをつくる1つのペースメーカーが存在するとも考えられるが、近年では中枢神経内のネットワークの異常により神経活動の同期性が異常に亢進した結果リズムができるのではないかと考えられることが多い。Holmes振戦では、古くから知られる下オリーブ核・赤核-小脳(歯状核)-視床のGuillain Mollaretの三角のいずれかの部位の障害で同様な振戦が生じる。この中の一ヶ所にペースメーカーがあるのではなく、ネットワーク内でリズムは作られていると考えられる。また、小脳振戦は、小脳による筋活動のフイードバック調節の障害により生じると考えられる。また、本態性振戦やパーキンソン病の振戦の発生において小脳系ネットワークの関与が示唆されている。動物にharmalineを投与すると4-12Hzの動作時および姿勢時振戦が生じ本態性振戦の動物モデルとされているが、このHarmaline振戦では下オリーブ核のニューロン活動の同期がみられ、登上線維を介してプルキンエ細胞および小脳核も同期性の発火がみられる。このことから、本態性振戦の発生に小脳の活動が関与しているとされている。ヒトの本態性振戦においては、voxel-based morphometryでは中脳・後頭葉・右前頭葉白質・両側小脳灰白質・虫部などの容積減少が報告され、拡散テンソール画像法では中脳・小脳・歯状核・上小脳脚・下小脳脚などのfractional anisotropy(FA)値が低下するなど、画像検査で小脳をふくむ変化が示唆されている。しかしその発生機序の詳細はわかっていない。以上のように振戦の病態機序は解明されていない部分が多いものの近年の電気生理学的手法や画像検査を用いて発生に関与する部位や発生機序について新しい発見がでてきており今後の解明が望まれる。末梢性振戦脱髄性ニューロパチーやIgM gammopathyでみられることのある手指振戦は末梢性の振戦であり、上記の方法により荷重によって周波数が変化する。これは末梢性の入力の障害により脊髄、脳幹を介する反射ループの反応に異常をきたしたことにより生じていると考えられる。筋低下や筋のunitの減少なども出現を増強すると考えられる。球脊髄性筋萎縮症の初発症状として頻度の多い手指振戦も末梢性の要因による振戦である。器械的要因のものと、反射性の要因による両方の場合がある。甲状腺機能亢進や低血糖時などに出現する生理的振戦の亢進は、筋電図で記録すると群化放電があまり明瞭にみられず、周波数も早めの事が多いが、これは荷重で周波数が変化する機械的な要因によるものが多い。しかし、発生機序には一部中枢性の機序もかかわっていると近年報告される。本態性振戦には、中枢性機序と末梢性機序の両方のタイプがあると知られている。また心因性の振戦は心因性の要因によるものであるが、振戦の発生機序としては、クローヌスが亢進した反射性の機序のものがある。要旨振戦とは律動的な筋活動を示す不随意運動である。そのリズム発生機序は、脳に発生源がある中枢性と、筋や感覚入力が関与する末梢性に分けられる。末梢性には四肢にかかる重力や心臓の拍動などの物理的な要因と、末梢-中枢間の反射回路がかかわるものがある。末梢性と中枢性の鑑別法の1つには、荷重により振戦の周波数が変化するかをみる方法がある。変化すると感覚入力が関与する末梢性が示唆され、変化しないと中枢性と推察される。中枢性の機序はよくわかっていないが、振戦の周波数などから、小脳振戦やHolmes振戦、パーキンソン病の振戦など原因病変部位が推察されることが多い。その病変部位にリズム発生のペースメーカーが存在するという可能性の他に、その部位を含む中枢神経内ネットワークの機能によりリズムが作られる可能性がある。近年では本態性振戦の発生に小脳オリーブ核の関与が注目されている。はじめに律動性を持ち一定の周波数をもつ規則的な不随意運動が振戦である。つまり、振戦は筋収縮の状態を一定に保つことができず、あるリズムで筋が動かされてしまう状態と言える。このリズムが振戦の特徴であり、リズムがどこで作られているかが振戦の発生機序を考える上で重要となる。振戦の発症機序一定のリズムを作る発生機序には脳のどこかにリズム発生源が存在する中枢性機序と、末梢性機序によりリズムが出現する末梢性が考えられる。末梢性機序には、末梢性入力と筋への出力という入出力と、それらを介在する反射中枢からなる反射ループによって生じた周期的な興奮と抑制がリズムをつくる機序が関与している。また心臓の動きや重力による揺れを筋力低下などによりおさえられず、四肢を保持した時に揺れてしまうという物理的な要因による機械的な機序もある。この物理的な要因には、四肢の重さや粘性などの出力側の物理的な要因も、振戦の周波数に影響を与える。したがって発生機序を分類すると、中枢性と末梢性とわけられ、末梢性のなかに反射性と機械的要因によるものがあると考えられる。これらの発生機序の鑑別は、臨床的な観察のみでは難しいことがあるが、表面筋電図と加速度計の記録が役立つ。まず、物理的要因による震えの場合は、震えが筋電図活動にのみ起因しないため、加速度計と表面筋電図の周波数が一致しない。また、中枢性と末梢性の振戦の鑑別には、振戦がみられる部位に荷重をかけた時の周波数変化を観測することが役立つ。手指の姿勢時振戦であれば上肢の姿勢を保持している腕に荷重をかけたときに、振戦の周波数が変化するようであれば、末梢性の入力の影響がリズム発生に大きくかかわっていると考えられる。変化がみられない場合には、末梢からの入力にリズムは影響を受けない中枢性機序が考えられる。薬剤性末梢神経障害(抗癌剤等)http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1c15.pdf軸索障害、神経細胞体障害、髄鞘障害末梢神経障害に対症療法的に向神経ビタミン群(VitB1,6,12)投与髄鞘障害(脱髄)は(by wikipedia)中枢疾患では多発性硬化症(視神経脊髄炎、同心円硬化症)、急性散在性脳脊髄炎炎症性広範性硬化症感染(亜急性硬化性全脳炎)、進行性多層性白質脳症(PML、HIV感染者)中毒・代謝性(低酸素症、橋中心髄鞘破壊症、VitB12欠乏症)血管性(Binswanger病末梢疾患ではギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎健常成人に発症した銀杏中毒の一例A case of Ginkgo seed poisoning in a healthy adult日本救急医学会誌Vol.21(2010)No.12p956-960https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaam/21/12/21_12_956/_pdf1985年Wadaらにより、銀杏中毒の原因物質がMPN(4-0-methylpyridoxine)であることが証明された。MPNは製造がvitB6(pyridoxal phosphate)に類似しており、生体内では拮抗する作用を来す。vitB6活性を持つ化合物のうち、PLPはグルタミン酸脱水素酵素の補酵素として働き、グルタミン酸からγ-アミノ酸(GABA)の生成過程に関わる。グルタミン酸は中枢神経の興奮性アミノ酸として、GABAは中枢神経系の抑制性アミノ酸伝達物質として作用するが、MPNはvitB6に競合性に拮抗し、グルタミン酸からGABAの生成を抑制する(Fig.1)脳内でのグルタミン酸の上昇、GABAの低下の結果により、痙攣が発症すると考えられている。痙攣以外の症状の発症機序については不明である。痙攣発作の間欠的な発症はMPMの腸肝循環によると考えられている。なおMPNと同様、PLPと競合する薬剤としてIsoniazid、D-penicillamineが挙げられる。これらの薬剤の投与下ではより少量の銀杏摂取で中毒を発症する可能性が考えられるが、過去の文献を検索した限りでは確認できなかった。銀杏中毒の診断にはMPNの血中、髄液中濃度の測定が有用とされている。しかしMPNを測定できる期間が限られているため即時に結果を確認することは困難である。そのため摂取歴と症状から治療を開始する必要がある。治療は対症治療が中心となるが痙攣発作に対してはPLP静注の有効性が示されている。本症例は健常な成人での発症である。詳細な病歴聴取を行ったが既往歴は確認できなかった。アルコール常習歴、内服薬もなかった。るい痩もみられず、経口摂取も良好で偏食も確認できなかった。来院時のPLPが低値を示していたが服用31時間後のPLPは正常値を示しており潜在的なvitB6欠乏症に罹患していたかは不明である。PLPは経口摂取した場合大部分は消化管で加水分解され、pyridoxalとなり、吸収され、肝臓で再びPLPに転換される。(vitB6は腸内細菌も合成する)安田らは健常成人にPLP60mgを内服させ、血中濃度の推移を観察したところ、Tmaxは30分であり、Cmaxも1458mg/mLと高値を示し、その後血中濃度は漸減した。当院ではPLP静注薬は常備しておらず本人の意識が清明であったため経口投与としたが投与30分で症状が全て消失し、入院中痙攣の再燃はみられなかった。文献上では痙攣後に経口投与を行った例は一例あり、投与後の痙攣の再発はみられていない。そのためPLPの経口投与は効果があると考えられる。PLPの静注製剤を常備していない施設でも早期の経口投与を航路すべきであると考える。本症例では痙攣の発症はみられなかったがPLP投与により全ての症状が消失したことから痙攣以外の症状にも効果があると推測される。痙攣を発症していない銀杏中毒にも積極的にPLPを投与すべきである。要旨症例は41歳女性。既往歴特記事項なし。銀杏60子を摂食し4時間後から吐き気、嘔吐、下痢、めまい、両上肢の振戦、悪寒が出現した。6時間後救急要請、当院に搬送となった。(両上肢の振戦は静止時にもみられ、動作時の増強はみられなかった。指鼻試験、踵膝試験も左右差なく迅速に行えた。自覚症状は左方向の回転性めまいであったが、耳鳴りはなく複視、眼振ともみられなかった。pyridoxal phosphate(PLP)400mg(8mg/kg)の経口投与を行った。PLP投与20分後より吐き気消失、30分後には全ての症状が消失した。来院時ではMPNの高値とPLOの低値を示し、7時間後にはMPNの低下、PLPの上昇を来し、31時間後には正常値に回復していた(table.2))イーケプラで稀にみられる副作用の刺激性、易興奮など精神症状にビタミンB6が効果あった報告あるとのこと 重症心身障害者/児 医療ハンドブック第2版 p200 三学出版より血清中、髄液中にvitaminB6の低値を認め、静脈内vitaminB6投与により症状の一過性改善を認めた脊髄小脳変性症の一例Juvenile spinocerebellar degeneration with low vitamin B6 concentration both in serum and in cerebrospinal fluid日内会誌Vol.77(1988) No.12p1896-1897https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/77/12/77_12_1896/_pdf考察VitaminB6欠乏による中枢神経症状としては新生児痙攣が知られている。新生児けいれんの機序としてはVitaminB6欠乏により、GABAの産生が低下し中枢での抑制が十分に働かない場合と、GABAreceptorに問題があり、VitaminB6dependentの症例では、正常人より大量のVitaminB6を必要とする。一方VitaminB6は小脳細胞、特にpurkinje細胞の発達に必要であり、実験動物では、VitaminB6欠乏母親ラットの仔ラットで小脳萎縮を認めた報告がある。しかしVitaminB6欠乏症を原因とする脊髄小脳変性症の報告はない。わずかに脊髄小脳変性疾患者において血清VitaminB6濃度の低下を示した症例を中田らが報告しているにすぎない。我々の症例では患者・母親・妹の血清VitaminB6濃度は低値であったが、父親の血清vitaminB6濃度は正常であった。またvitaminB6経口負荷により、血清vitaminB6濃度の上昇を認めた。これらの事実からこの症例で認められた血清・髄液vitaminB6濃度の低値は、食事・吸収不良以外の母方による因子による可能性が高い。この患者における小脳・脳幹萎縮とvitaminB6濃度の低値について、次のような説明が考えられる。(1)母親の血清vitaminB6濃度が妊娠中も低値であったため、胎生期・成長期を通じて小脳の発達が阻害され、CT/MRI画像上の小脳萎縮像を呈した。(2)vitaminB6濃度が低値であったにも関わらず、GABA濃度が高値であったことを考慮すると、この患者ではGABAに対するreceptorの感受性が低下しており、十分な抑制を得るためには正常人に比較して大量のGABAが必要であった可能性(1)についてはvitaminB6欠乏動物では実験により確認されている。この症例ではvitaminB6の投与により一過性の症状改善がみられ、その後外来にて経口で120mg/日の投与を継続中であるが、投与前に比較して重心動揺の減少が認められた。GABAreceptorはある限度を超えた過剰のGABAに対しては反応が悪くなり十分な抑制効果を発揮しない。この患者では経口によるvitaminB6投与を継続的に行ったところ、vitaminB6濃度、GABA濃度共に投与前の約2倍となっていることが確認された。症状の改善と併せて考慮すると、この患者ではGABA濃度が上昇して過飽和状態になっているとは考え難く正常人に比較して上昇していると考えるのが妥当である。本症例における髄液・血清vitaminB6の低下と脊髄小脳変性症の関係についてはなお検討の余地がある。概要:我々は脊髄小脳変性症の症例で、本人、母親、妹に血清VitaminB6濃度の低下を認め、VitaminB6静脈内投与により症状の一部の一過性改善を認めた。vitaminB6投与と脊髄小脳変性症の関連について述べた報告はほとんどなく貴重な症例と考えられる。VitaminE欠乏症により小脳変性症が起こることは知られている。しかしVitaminB6と小脳変性症についての報告はほとんどない。今回われわれは血清vitamonB6濃度の低値を示した脊髄小脳変性症の1例を経験したので報告する。患者は16歳男性、満期産、3歳時にX脚、4歳時より知能発達遅滞を指摘された(IQ<60)体育は他の子供たちと同様にできた。15歳時よりふらつきが著明となり、同時に、上下肢に振戦とミオクローヌス様の不随意運動が出現した。当科受診時には、腰椎の側弯、X脚を認めた。胸・腹部に異常はなかった。脳神経系、筋力、反射は正常で、病的反射は認めなかった。筋トーヌスは左右差なく上下肢ともに低下していた。指鼻試験・指指試験・踵膝試験は両側とも稚拙であり、dysmetriaを認めた。歩行はwide based、歩行時に振戦の増強を認めた。Romberg徴候は陰性であった。検血、検尿、肝機能、脂質、腎機能、電解質は正常であった。ACTH、cortisol、血清pyruvate・lactate、vitaminB1・B12・E、biotine、極長鎖脂肪酸、lysosomal enzymeのarylsulfataseA、beta-galactosidase、hexosaminidaseAは全て正常であった。血清、髄液ともにvitaminB6濃度は低値、GABA濃度は高値であった(表1)CTおよびMRIでは、小脳・脳幹両者の著しい萎縮が認められた(図1)表面筋電図により振戦とミオクローヌスが確認された。vitaminB6 120mgの経口投与により血清vitaminB6濃度は正常値近くまでに上昇した。vitaminB6 120mg静脈内注射によりふらつきの一次的改善が確認された。運動浴訓練により小脳性失調の改善がみられた脊髄小脳変性症の一例Underwater exercise improves cerebellar ataxic in a patient with spinocerebellar degeneration(A case report)日本温泉気候物理医学会誌Vol.71(2007-2008)No.4p203-210https://www.jstage.jst.go.jp/article/onki1962/71/4/71_4_203/_pdfⅢ.考察(略)古典的な小脳性失調に対するリハビリテーションにおいて、間野及び真野は小脳性失調症における弾性緊縛帯・重錘負荷は、筋紡錘からの求心性発射を増加させ、中枢への固有感覚入力を増加させる機序を推定している。Frenkelは、脊髄癆性失調症の治療は繰り返し運動による中枢神経システムの教育が基本であり、教育により四肢の位置関係等末梢部からのわずかな刺激をはっきりと知覚することが可能になり、いわゆる感受性が高くなると述べている。近年では深部脳刺激法による治療が試みられているが、確立された治療方法とはなっていない。小脳性失調における運動浴訓練の有用性として、池永らによる髄膜炎に伴う小脳性失調患者に対する水中歩行訓練が報告されている。今回、我々は37℃の温水で水深を心窩部に設定して運動浴訓練を行った。運動浴訓練における温水の物理作用としては、温熱・静水圧・浮力・粘性抵抗・摩擦抵抗が挙げられ、酸素摂取量が0となる水温を不感温度とすれば、37℃前後で身体への負担が最も少ない。温熱は筋力や筋肉の仕事量を増加させたり筋肉の循環を改善させ、訓練効果の増強が期待される。また温熱による中枢神経系の血流の増加が期待され、これは小脳の可塑性への関与が期待される。静水圧は末梢血流量を増加させ、筋肉の循環改善による訓練効果の増強が期待されるとともに、水中の各筋紡錘から小脳への求心性発射の増加が期待され、弾性緊縛帯と同様の機序が全身性に期待される。浮力は体重の軽減により各種運動が容易になり、負担を軽減した上での反復運動が可能となり、Frenkel体操に準じた反復訓練を容易に行うことが可能である。粘性抵抗はそれぞれの筋力に応じた運動負荷を与えることにより、拮抗筋の協調不全に対する強制力を働かせた入力を個々の筋力に応じて行うことが可能であり、重錘負荷を個々の筋力に応じて行うことが可能となる。本井らは、脊髄小脳変性症における足首および腰部前面重鎖負荷は、歩行が可能だが、歩行障害の目立つ症例に改善傾向が高い傾向にあるとしている。水深を心窩部とした運動浴訓練は重錘負荷効果が腰部・下肢に期待され、歩行障害が目立つ症例により効果的であると推察される。また患者の身体は粘性抵抗により支えられ、平衡障害を生じる小脳性失調において、訓練を安全に実施することが可能となる。よって運動浴訓練は古典的な小脳変性失調症に対するリハビリテーションにおける複数の訓練方法を同時に無理なく安全に実施可能な訓練であり温熱による付加効果が期待される訓練である。中でも歩行障害が目立つ小脳性失調により効果的なリハビリテーションとして期待される。脊髄小脳変性症は体幹・下肢運動では走る・幅跳び等の動的バランスを必要とする課題の遂行能力が著しく低く、上肢運動ではペグボート・小さなスイチノブを押す等の巧緻動作で低下がみられ、上肢と体幹・下肢を比較すると、体幹・下肢が上肢より機能低下が著しい。結果、脊髄小脳変性症の日常生活動作障害は体幹・下肢機能を必要とする入浴・更衣・排泄動作ほど障害が重く、上肢機能・構音機能を必要とする整容・食事・会話の順に障害が軽くなる。よって、脊髄小脳変性症の機能障害に対するリハビリテーションにおいては、体幹・下肢に対するアプローチが重要となる。前述のように、運動浴訓練は古典的な小脳性失調に対するリハビリテーションにおける複数の訓練方法を同時に無理なく実施可能な訓練であり、歩行障害が目立つ小脳性失調におけるより効果的なリハビリテーションとして期待される。よって運動浴訓練は脊髄小脳変性症におけるリハビリテーションにおいて重要な方法になると考える。内藤らは脊髄小脳変性症のような変性疾患は薬物療法や理学療法による本質的な機能回復は期待できず、二次的障害の予防や老化に伴う廃用性障害の予防が重要であると述べている。しかしPeerez-AvilaⅠら、およびHarris-LoveMOらは、脊髄小脳変性症におけるリハビリテーションによる機能回復を報告している。本症例では3年半に渡る定期的な運動浴訓練の結果、入院時における企図振戦と測定障害、歩行状態が改善し、退院時における屋外歩行距離が延長した。よって脊髄小脳変性症において定期的に繰り返し行う運動浴訓練は進行性の変性疾患における機能障害を改善する可能性があると示唆される。脊髄小脳変性症(SCA6)による失調性構音障害における交互反復運動速度低下要因の検討:動作解析を用いた口唇運動の分析Motion analysis study of decreased alternating motion rates in persons with ataxic dysarthria人間と科学 県立広島大学保健福祉学雑誌 8(1) 129-134 2008http://ci.nii.ac.jp/els/110007025321.pdf?id=ART0008949008&type=pdf&lang=en&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1489975052&cp=脊髄小脳変性症(SCA6)による失調性構音障害患者4名および健常者7名を対象に口唇の交互反復運動検査を施行し下唇の動作解析を行った。その結果、失調症群では健常群に比べて、下唇の平均最大運動距離が有意に延長する一方、健常群に比べて下唇の平均最大運動速度は有意に速い傾向があった。失調症例においては運動調節機能の障害により、下唇の運動速度が過剰に高速となったこと、および運動停止のタイミングの遅れにより、運動距離が顕著に延長された結果、口語反復運動速度が低下した可能性が示唆された。運動障害性(麻痺性)構音障害dysarthriaの検査法-第一次案 短縮版の作成音声言語医学 40:164-181,1999https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/40/2/40_2_164/_pdf声のon-off検査の臨床的意義-痙性麻痺性ならびに失調性構音障害患者における硬い声たて繰り返し課題の検討-Clinical implications of on-off phonation test-Acoustic analysis of repetition of interrupted vowel in soasric and ataxic dysarthrics-音声言語医学Vol.29(1988)No.2 p161-167https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/29/2/29_2_161/_pdf

      テーマ:
  • 22 Mar
    • (小脳メモ2, 小脳の線維連絡)

      小脳の求・遠心路求心路苔状線維系古小脳系(前庭小脳)前庭小脳路①:前庭神経節・前庭神経核→索状傍体→同側の片葉小節葉・室頂核(非交叉性)旧小脳系(脊髄小脳)前脊髄小脳路②:脊髄後角基部の細胞(脊髄の前白交連で対側へ交叉)→前脊髄小脳路→(交叉)→上小脳脚→同側の小脳皮質(旧小脳)後脊髄小脳路③:脊髄のClarke胸髄核→後脊髄小脳路→下小脳脚→同側小脳皮質(旧小脳/中間部)(下肢からの入力:非交叉性)楔状束核小脳路:外側楔状束核lateral cuneate nucleus→同側小脳皮質(同側、虫部錐体)(上肢からの入力:非交叉性)新小脳系(橋小脳)橋小脳路④:大脳皮質(主に前頭葉と側頭葉)→橋核→(交叉)→中小脳脚→小脳皮質(新小脳)その他三叉神経脊髄路核からの三叉神経小脳路、網様体小脳路など登上線維系オリーブ小脳路⑤:大脳皮質・中心被蓋路→下オリーブ核→(交叉)→下小脳脚→対側小脳皮質遠心路小脳赤核視床路⑥:小脳皮質→小脳核(歯状核・中位核)→上小脳脚→上小脳脚交叉→赤核→視床VA/VL(ventral anterior/ventral lateral nucleus of thalamus)→大脳皮質一次運動野(→赤核脊髄路は腹側被蓋交叉で、皮質脊髄路は錐体交叉で、再び交叉するので、結局小脳と同側の下位運動ニューロンに作用する。)小脳前提路/小脳網様体路など⑦:小脳虫部→室頂核→(下小脳脚の索状傍体:非交叉性、上小脳脚の鉤状束uncinate fasciculus:交叉性)→同側・対側の前庭神経核、脳網様体(→網様体脊髄路・前庭脊髄路により姿勢反射など錐体外路系の下位運動ニューロンに影響)小脳の線維連絡ヒトの小脳入力線維:出力線維=40:1であり、出力に比べて圧倒的に入力量が多い。小脳の入出力線維は上・中下小脳脚を通り上の表(表-小脳の求・遠心路)のようにまとめられる。小脳半球外側部からの線維は歯状核へ(新小脳系)、小脳半球-虫部の移行部からは中位核へ(旧小脳系)虫部からは室頂核へ投射し(古小脳系)小脳核から遠心路がでる。小脳と赤核、下オリーブ核の線維連絡は、左赤核で記載すると、左赤核-(中心被蓋路)-左下オリーブ核-(下小脳脚)-右小脳皮質/歯状核-(右上小脳脚・上小脳脚交叉)→左赤核。の回路を形成している。(ギラン・モラレ三角Guillain-Mollaret triangle)ギラン・モラレ三角右赤核-(中心被蓋路)-右下オリーブ核-(下小脳脚)-左小脳皮質・歯状核-(左上小脳脚・上小脳脚交叉)→右赤核の回路を形成している。4V:第四脳室fourth ventricleCTT:中心被蓋路central tegmental tractDN:歯状核dentate nucleusICP:下小脳脚inferior cerebellar peduncleIO:下オリーブ核inferior olivary nucleusRN:赤核red nucleus上小脳脚superior cerebellar peduncleTh:視床thalamus旧小脳系(脊髄小脳)(中位核入/出力系)ASCT:前脊髄小脳路anterior spinocerebellar tractPSCT:後脊髄小脳路posterior spinocerebellar tractCTT:中心被蓋路central tegmental tractOCbT:オリーブ小脳路olivocerebellar tractImZ:小脳半球中間部intermediate zone of cerebellar hemisphere(paravernal zone)Pk:purkinje細胞IO:下オリーブ核inferior olivary nucleusSCP:上小脳脚superior cerebellar peduncleICP:下小脳脚inferior cerebellar peduncleRN:赤核red nucleusVA/VL:ventral anterior/ventral lateral nucleus of thalamusIpN:中位核interposed nucleus新小脳系(橋小脳)(歯状核入/出力系)LatZ:小脳半球外側部lateral zone of cerebellar hemisphereDRThT:歯状核赤核視床路dentatorubrothalamic tractPCbT(MCP):橋小脳路(中小脳脚)pontocerebellar tract(middle cerebellar peduncle)OCbT(ICP):オリーブ小脳路(下小脳脚)olivocerebellar tract(inferior cerebellar peduncle)IO:下オリーブ核inferior olivary nucleusCPT:皮質橋路corticopontine tractDN:歯状核dentate nucleusPk:purkinje細胞purkinje cellPoN:橋核pontine nucleusVA/VL:ventral anterior/ventral lateral nucleus of thalamus古小脳系(前庭小脳)(室頂核入/出力系)VZ:小脳虫部域vermian zoneUnF:小脳の鉤状束uncinate fasciculusFN:室頂核fastigial nucluesFNo:片葉小節葉flocculonodular lobeVestN:前庭神経核vestbular nucleusRF:脳幹網様体reticular formationPRsB:索状傍体pararestiform bodyICP:下小脳脚inferior cerebellar peduncleCNⅧ:前庭神経vestbular nerveVestG:前庭神経節vestbular ganglion小脳機能と障害時の症状前庭性小脳片葉小節葉-室頂核系:身体平衡前庭神経→片葉小節葉→室頂核系→前庭脊髄路、網様体脊髄路→脊髄脊髄性小脳虫部-室頂核系:体幹の筋緊張調節中間部-中位核系:四肢の筋緊張調節(前・後脊髄小脳路、副楔状束核小脳路→脊髄小脳(虫部・中間部)→中位核→赤核・視床→赤核脊髄路、皮質脊髄路)橋性小脳外側部-歯状核:連続運動の企図planning(大脳皮質→橋核→小脳半球外側部→歯状核→赤核・視床→大脳皮質一次運動野→赤核脊髄路、皮質脊髄路)障害時には、円滑な巧緻運動の障害、四肢の推尺障害overshoot, undershoot小脳症状は同側に生じる。小脳からの出力は上小脳脚交叉で交叉し、赤核脊髄路や皮質脊髄路でまた交叉するので結局、同側の脊髄と線維連絡するからである。

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    • (小脳メモ1, 小脳内部構造等)

      小脳による運動制御https://www.igaku-shoin.co.jp/seigo/00601/p159_5-18.pdf登上線維の刺激の程度に応じて平行線維からの刺激に対するpurkinje細胞の長期感度が変化する。非運動状態では登上線維は1秒に約1回の低頻度でしか発火しない。しかしハッカのたびごとにpurkinje細胞の樹状突起全体に強い脱分極が生じ、purkinje細胞がスパイクを発する。未経験の運動を行って、それが意図したのとは食い違った場合、登上線維の発火頻度は4サイクルからゼロサイクリまで著明に変化する。これにより平衡線維からの刺激に対するpurkinje細胞の感度が変化して、時間の経過とともに小脳による運動のコントロールが上達すると推測される。小脳による運動制御小脳による運動制御は、前庭小脳、脊髄小脳(小脳虫部と中間部から構成される)、大脳小脳に分けて考えるとわかりやすい。1)前庭小脳前庭小脳は頭の動きや重力に対する頭の相対的な位置の情報が前庭三半規管や耳石器から苔状線維を介して入る。この部位のpurkinje細胞は、前庭神経核に直接投射してニューロンを抑制する。外側前庭神経核lateral vestibular nucleusからは内側および外側前庭脊髄路medial and lateral vestibular tractが発して、体幹の筋や四肢の伸筋(抗重力筋)の動きを調節する。一方、前庭神経核の一部は外眼筋核に作用し前庭動眼反射vestibulo-ocular reflexや視運動反応optokinetic responseを惹起する。2)脊髄小脳後脊髄小脳路posterior spinocerebellar tractと前脊髄小脳路anterior spinocerebellar tractは脊髄灰白質の介在ニューロンから発して、下小脳脚を経由して苔状線維として脊髄小脳に達し下肢の筋や関節の固有感覚を伝える。脊髄小脳のうち、①虫部のpurkinje細胞は室頂核のニューロンを抑制する。室頂核ニューロンは左右の脳幹網様体と前庭神経核に投射しており、前者からは網様体脊髄路reticulospinal tractが発し、後者からは外側前庭脊髄路lateral vestibulospinal tractが発して、抗重力筋の活動を調節する。小脳による運動の制御http://www7.bpe.es.osaka-u.ac.jp/~yasushi/images/Oldstory.pdf運動機能と認知機能に関わる小脳の出力信号の仕分けhttp://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2012/121122_3.htm小脳は長年、運動の実効機能を担っていると考えられてきましたが最近、認知機能、特に行動の認知側面に関わっていることが示唆されています。実際、小脳で処理された情報の出口の1つである小脳核の中位核は連合運動学習などの認知機能に関与していることが知られていますがそれを実証する解剖学的知見が得られませんでした。小脳核(中位核と歯状核)は、運動機能と認知機能に関わる小脳からの信号を部位特異的に仕分けして、大脳や脊髄に出力していることを明らかにしました。シナプスを超えて神経回路を構成するニューロンをラベルすることができる狂犬病ウイルスを用いて、それぞれ運動機能と認知機能の高次中枢である大脳皮質の一次運動野や前頭前野(特に46野)に多シナプス性に入力する小脳核ニューロンの分布を解析しました。その結果、運動情報は後中位核と歯状核の背側部や前中位核から、視床を介して、一次運動野に入力するのに対して、認知情報は後中位核と歯状核の腹側部から、異なる視床の領域を介して、前頭前野に入力することを見出しました。このことは、後中位核が、歯状核と同様に、運動機能と認知機能に関わる2つの出力チャネルを持っているのに対し、前中位核は運動チャネルのみを持っていることを示しており、小脳失調の際に発現する運動障害や認知障害の治療ターゲットを特定するのに寄与できると考えられます。http://plaza.umin.ac.jp/~02nrw-t/utino.pdf小脳は前葉、後葉、前庭性小脳の3葉からなる。前葉と後葉は第一裂で分かれるが前葉は小さい。小脳は正中傍溝によって小脳虫部と両側小脳半球に分かれる。小脳半球はさらに中間部と協議の小脳半球に分かれる。小脳皮質は大脳皮質に比べ薄い。三層構造で表面から分子層、プルキンエ細胞層、顆粒層。入力系は中小脳脚および下小脳脚を介して小脳に入る。オリーブ小脳路は登上線維でプルキンエ細胞に終止する。その他の大部分は苔状線維で顆粒細胞に終止する。中位核(栓状核+球状核)。小脳核(深部灰白質)は4個、外側から歯状核、栓状核、球状核、室頂核。出力系は小脳核から起こり、主に上小脳脚を介して、対側の赤核、視床へ向かう。室頂核からは鈎状束を介して、対側の前庭神経核群などへ向かう。片葉小節葉からは同側の前庭神経内側核へ投射する。小脳性運動失調は推尺障害overshoot, undershootで、小脳虫部の損傷で両側性の駆幹失調が起こり、小脳半球の損傷で同側四肢の運動失調が起こる。片葉小説葉の損傷では前庭機能異常や眼球運動障害が起こる。歯状核=外側核、栓状核=前中位核、室頂核=内側核、球状核=後中位核中位核は前中位核と後中位核に分けられ、前中位核は外側核と、後中位核は内側核と形態的にも機能的にも複合体を作る。前者の中、前中位核は四肢の一般的基本運動に、外側核は四肢の基本運動の外に手の運動にも関与する。後者の中、内側核は平衡運動に、後中位核は躯幹及び頭部の運動の外、一部平衡運動にも関与するものと考えられる。外側核に於ける鋸歯形成は、人、狭鼻猿類並びに広鼻猿類の一部に限り認められ、その発達は外側核の発達に比例する。3小脳核は高級哺乳類では完全に分離独立し、又中位核も前中位核と後中位核とに分離するが、動物が下級になるに従って互に融合の傾向が強くなり、最下級の単孔類では1つの核塊として表わさされる。小脳の内部構造小脳皮質と髄体小脳皮質の組織学的な構造は均一で、表層から順に分子層molecular layer、Purkinje細胞層Purkinje cell layer(神経細胞層)、顆粒層granular layerの3層から成る(図-小脳皮質の三層構造と入出力線維)。表面には横走する細かい小脳溝cerebellar sulcusと小脳回cerebellar foliumがある。小脳白質は髄体corpus medullareといい、小脳回に向かって白質の突起(白質板laminae folium)がある。髄体と白質板は正中矢状断で樹枝状に見えるので、小脳活樹arbor vitae cerebelliと呼ばれる。髄体内部に小脳核が含まれる。小脳皮質の機能帯前庭小脳系を別にすると小脳皮質の機能帯は小脳溝に垂直、すなわち矢状方向に帯状域が順に配列している。内側からA.小脳虫部vermian zone(室頂核へ投射)、B中間部intermediate zone(虫部に隣接する小脳半球内側部で傍虫部域paravermian zoneとも呼ぶ)(中位核へ投射する)、その外方のC外側部lateral zone(歯状核へ投射される)に区分される。また下肢が腹側、上肢がその背側、顔面が最背側に配列する体制局在somatotopiaがある小脳核cerebellar nuclei小脳の出力線維は前庭系を除いた全て、小脳核を経由する。歯状核dentate nuclei(外側核)系統発生学的に新しい灰白質で、第四脳室の後外方に位置する。前内方の第四脳室後上陥凹posterior superior recess of fourth ventricleに向かって開くC字型をしており、その開口部を歯状核門hilus of debtate nucleusという。橋小脳路、オリーブ小脳路を受け、また小脳半球外側部の皮質purkinje細胞からの線維を受けて、歯状核赤核視床路を出す(上の図)視床VA/VLから大脳皮質一次運動野へのfeedback loopをなす線維連絡によって巧緻運動の協調性に関与する。中位核interposed nucleus球状核と栓状核は、外側の歯状核と内側の室頂核の間に位置し、併せて中位核interposed nucleusと称される。いずれも小脳半球-虫部移行部の中間部から入力を受け、上小脳脚より歯状核赤核視床路(小脳核赤核視床路)に関与する他、網様体に出力する。特に手足筋の緊張や協調運動に関与する。栓状核emboliform nucleus(前中位核)歯状核門の内側で栓をするように位置する楔形の核球状核globose nucleus(後中位核)栓状核の内側にある小さな核室頂核fastigial nucleus(内側核)系統発生学的に最も古く、第四脳室の室頂に接して最も内側にある。小脳虫部、片葉小節葉、前庭系からの入力を受け、前庭神経核、網様体に出力し、脊髄の前角細胞に影響する。体幹の平衡や歩行に関与する。ABBk:籠細胞basket cellClmF:登上線維climbing fiberDN:歯状核dentate nucleusGrc:顆粒細胞granular cellICP:下小脳脚inferior cerebellar peduncleIO:下オリーブ核inferior olivary nucleusMCP:中小脳脚middle cerebellar peduncleMoF:苔状線維mossy fiberPk:purkinje細胞purkinje cellPrIF:平行線維parallel fiberSCP:上小脳脚superior cerebellar peduncleSte:星状細胞stellate cell左側断面は体幹の矢状方向に平行な面であり、右側断面は前額面すなわち小脳溝に平行な面である。青:入力線維、赤:出力線維苔状線維MoF、登上線維CFはともに興奮性で、小脳核DNへ達してこれが小脳の主要回路を形成する。すなわち小脳への情報は小脳核へ行ってそこから出力する。両線維はさらに小脳皮質まで達してPurkinje細胞Pkから小脳核に同一入力に由来する抑制性のfeedbackがかかる。またこの経路には籠細胞Bkなどの介在ニューロンも関与する。小脳への入力線維には登上線維climbing fiberと苔状線維mossy fiberの2種類がある。登上線維は下オリーブ核からのオリーブ小脳路の線維であり、分子層まで上行してpurkinje細胞の樹状突起に終わる。苔状線維は、中小脳脚や下小脳脚を通る入力線維の大部分をなし、これは顆粒層の顆粒細胞に終わる。顆粒細胞の軸索は分子層まで上行してT字状に分岐し、体幹の前額面、すなわち小脳溝に平行する平行線維parallel fiberとなる。平行線維はpurkinje細胞の樹状突起と連絡する。この間に種々の側枝を出し、また分子層に分布する籠細胞basket cell、星状細胞stellate cell、顆粒層に分布する抑制性のGolgi細胞などの介在ニューロンと種々の回路を形成する。purkinje細胞は小脳皮質の出力ニューロンで、その軸索の大部分は小脳核に、部分的には前庭神経核に連絡する。小脳核からの出力は上小脳脚から赤核や視床を経由して大脳皮質に投射する。小脳の機能区分小脳虫部は室頂核→大脳皮質・脳幹→腹内側下行系ventromedial descending systemにより近位筋を小脳半球中間部は中位核→大脳皮質・脳幹→背外側下行系dorsolateral descending systemにより遠位四肢筋をコントロールし、外側部は歯状核→大脳皮質一次運動野に投射して随意運動のplanningに関与する図中のhomunculusは脊髄小脳内における脊髄からの入力の体性局在を示す上小脳脚superior cerebellar peduncle(結合腕branchium conjunctivum)主に出力線維からなる。歯状核赤核視床路dentatorubrothalamic tractは歯状核から出て中脳下半の上小脳脚交叉decussation of superior cerebellar peduncleで交叉し、対側の赤核や視床VA/VLに投射する。室頂核からは鉤状束uncinate fasciculus(注・側頭葉前部-前頭葉間の連合線維も同名)が出て、前庭神経核や脳幹網様体に連絡する(前庭脊髄路や網様体脊髄路を介して脊髄運動系に関与)入力線維としては前脊髄小脳路anterior spinocerebellar tractが小脳の主に前葉内側部に分布する。中小脳脚middle cerebellar peduncle(橋腕brachium pontis)入力線維である橋小脳路pontocerebellar tractからなり、下小脳脚の外側に位置する。橋小脳路は大脳皮質一次運動野からの入力を伝える。橋核から出て橋で交叉し、対側の中小脳脚を通って対側の小脳半球皮質に連絡する。脊髄小脳路は前・後の2つに分けられるが、これは発生過程で新小脳路の中小脳脚が2つの脊髄小脳路の間に割り込んだためである。下小脳脚inferior cerebellat peduncle(索状体restiform body)ほとんど入力線維からなり、延髄上部背側部から第四脳室株の外側壁をなす。オリーブ小脳路(→交叉性に小脳半球、小脳核へ)、後脊髄小脳路(同側の胸髄核→虫部上部へ)、前庭小脳路(→虫部、小脳核へ)などが含まれる。前庭神経核と片葉小節葉を結ぶ入出力線維は、下小脳脚内側部の索状傍体juxtarestiform bodyを通る。小脳核と橋小脳路(横断像の模式図)4V:第四脳室fourth ventricleⅥ:外転神経abducens nucleusCNⅦ:顔面神経seventh cranial nerve(facial nerve)CbC:小脳皮質cerebellar cortexCPT:皮質橋路corticopontine tractDN:歯状核dentate nucleusEN:栓状核emboliform nucleusFN:室頂核fastigial nucleusGIN:球状核globose nucleusICP:下小脳脚inferior cerebellar peduncleMCP:中小脳脚middle cerebellar peduncleML:内側毛帯medial lemniscusMLF:内側縦束medial longitudinal fasciculusPCbT:橋小脳路pontocerebellar tractPoLF:橋縦束pontine longitudinal fasciculusPoN:橋核pontine nucleusPyT:錐体路pyramidal tractSCP:上小脳脚suerior cerebellar peduncle

      テーマ:
    • (先天性小脳失調症)

      SCD鑑別のための血液・尿検査若年発症アルブミンコレステロールαフェトプロテイン葉酸VItEIgA乳酸/ピルビン酸アンモニア血中・尿中銅セルロプラスミンホモシステインコレステロール極長鎖脂肪酸ライソゾーム酵素活性アミノ酸分析尿中有機酸中年期発症甲状腺機能VitB1VitB12SSA/SSB抗GAD65抗体抗グリアジン抗体抗TPO抗体抗Tg抗体抗mGLUR1抗体傍腫瘍症候群関連抗神経抗体Hu, Yo, Ri, Tr, VGCC, CRMP5, Ma1, Ma2, PCASCD鑑別の疾患二次性小脳失調症脳血管障害腫瘍アルコール中毒VitB1,B12,葉酸欠乏薬剤性(フェニトイン等)炎症神経梅毒多発性硬化症傍腫瘍性小脳失調症免疫介在性小脳失調症橋本脳症シェーグレン症候群グルテン失調症抗GAD抗体小脳炎甲状腺機能低下症低セルロプラスミン血症脳腱黄色腫症ミトコンドリア病二次性痙性対麻痺脊柱疾患に伴うミエロパチー脊髄の占拠性病変に伴うミエロパチー多発性硬化症NMO脊髄炎HAMアルコール性ミエロパチーAMNVutB1,B12,葉酸欠乏その他鑑別診断二次性小脳失調症の除外が重要である。中年以降発症、進行性の小脳失調症で、明らかな家族歴が認められない場合、免疫介在性小脳失調症、傍腫瘍性小脳失調症を念頭において精査をすすめる必要がある。特に傍腫瘍性小脳失調症は腫瘍の出現に先行して小脳失調症状が出現することがあり注意を要する。若年発症の場合、代謝性疾患、ミトコンドリア病等を念頭に鑑別を進める。痙性対麻痺の場合、VitB12欠乏による亜急性連合変性症、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、副腎白質ジストロフィー、多発性硬化症、脊髄炎、脊柱疾患に伴うミエロパチーなどの二次性痙性対麻痺の鑑別が必要である。筋委縮性側索硬化症において、上位運動ニューロン障害が目立つ病型(原発性側索硬化症を含む)があり、注意が必要である。診断基準 主要項目①小脳性ないしは後索性の運動失調、または痙性対麻痺を主要症候とする。②徐々に発病し経過は緩徐進行性である③病型によっては遺伝性を示すがその場合、常染色体優性遺伝性であることが多いが、常染色体劣性遺伝性の場合もある。④その他の症候として、錐体路症候、パーキンソニズム(振戦、筋強剛、動作緩慢)、自律神経症候(排尿困難、発汗障害、起立性低血圧)、末梢神経症候(しびれ感、表在感覚低下、深部感覚低下)、高次脳機能(幻覚(非薬剤性))、失語、失認、失行(肢節運動失行以外)障害などを示すものがある。⑤頭部MRIやX線CTにて小脳や脳幹の萎縮を認めることが多いが、病型や時期によっては大脳基底核病変や大脳皮質の萎縮を認めることもある。⑥二次性小脳失調症を鑑別する(上記)SCD診断カテゴリーDefinite脊髄小脳変性症・痙性対麻痺に合致する症候と経過があり、遺伝子診断か神経病理学的診断がなされている。Probable①脊髄小脳変性症に合致する症候があり、主要項目①②⑤および鑑別診断を満たす。または痙性対麻痺に合致する症候があり、主要項目①②および⑥を満たす。Probable②当該患者本人に脊髄小脳変性法・痙性対麻痺に合致する症状があり、かつその家系内の他の発症者と同一とみなされる。(遺伝子検査がなされていない場合も含む。)Possible脊髄小脳変性症・痙性対麻痺に合致する症候があり、主要項目①②⑤を満たす。または痙性対麻痺に合致する症候があり、主要項目①②を満たすが、⑥が除外できない場合。SCDまずざっくり孤発例(SCD全体の2/3)オリーブ橋小脳萎縮症OPCA中年以降発症。小脳、橋の萎縮。日本のSCDで最も多い病型。初発-初期症状として歩行時ふらつき、手のつかいにくさ等の運動失調。経過とともにパーキンソニズム、起立性低血圧、発汗障害、排尿障害など自律神経の障害も伴う。病理学的に類似点の多い線条体黒質変性症、シャイ・ドレーガー症候群を合わせて多系統萎縮症。皮質性小脳萎縮症(孤発性のうち多系統萎縮症を除いた残りが小脳症候のみの皮質性小脳萎縮症)中年以降発病。パーキンソニズムや自律神経症候が現れることはほとんどない。小脳症状のみ。進行はゆっくり。アルコール、薬物、腫瘍、炎症、血管障害など二次性小脳失調症と鑑別必要。遺伝性(SCD全体の1/3)SCA1(遺伝性OPCA)頻度少ない。20-55歳発病。30代-40代発症が多い。眼振が著しい。外眼筋麻痺、小脳性運動失調(歩行障害での発病が多い)。構音障害。錐体路徴候(腱反射亢進)。SCA3(Machado-Joseph病)と鑑別が困難。SCA2,3等と臨床症状の相同性がある。SCA2とは緩徐眼球運動や腱反射の減弱、SCA3とは錐体外路症候、眼球運動障害の程度・頻度において異なる。CAG伸長の程度により4-74歳まで報告がある。CAG伸長数や罹患期間により各症状の出現頻度や程度は変化する。同一家系内では表現促進現象を認める。遺伝子診断:Ataxin-1遺伝子解析によりCAG反復配列の異常伸長≧39repeatを証明する。眼振:一定方向を向いた時や何もしてない時に眼球が細かく揺れる。眼振のみを止める治療はない。眼振にめまいが伴う時にめまいに対しての治療のみ、あまり効果ない。SCA2(遺伝性OPCA)頻度少ない。2-65歳発病。成年発症が多いがCAG伸長数により発症年齢は様々。同一家系内で表現促進現象を認める。小脳性運動失調と、眼球を上下左右に速く動かすことができず、眼球がゆっくり動く緩徐眼球運動。眼振の頻度は少ない。腱反射低下(polyneuropathy)。構音障害。副症状:筋委縮(進行期)。dystonia、myoclonus、tremor(進行期やCAG伸長数の長い症例)。認知機能の低下(中程度)。fasciculation、myokymia(進行期やCAG数の長い症例)。20歳以前の若年発症者(CAG repeat>45)では症状の進行が速い傾向がある。CAG伸長数や罹病期間により各症状の出現頻度や程度は変化する。。遺伝子診断:Ataxin-2遺伝子解析によりCAG反復配列の異常伸長≧32repeatを証明する。Ataxin-2における27-33repeatのCAG反復配列intermediate lengthは孤発性ALSの発症リスク因子として報告されている。本疾患を疑う重要点:常染色体優性遺伝性の家族歴を有する進行性の小脳性失調症。緩徐眼球運動や腱反射消失は本症の可能性を示唆する。眼振の頻度は少ない。SCA1,2等との症候の相同性あり臨床症候のみで診断するのは困難。SCA3(Machado-Joseph病)日本で最も頻度が高い家族性脊髄変性症。若年-中年発病。運動失調が先に現れ、ビックリ眼、ジストニア、筋委縮等。進行ゆっくり。Ⅰ型:10-30歳代。進行性の錐体路+錐体外路徴候(主にジストニア)Ⅱ型:20-50歳代。小脳失調+錐体路徴候が前景に立ち、錐体外路徴候も呈することがある。Ⅲ型:40-70歳代。小脳失調+末梢神経障害(筋委縮、感覚障害、腱反射低下・消失)を呈する。Ⅳ型:発症年齢は様々。パーキンソン症状+末梢神経障害を呈する。Ⅱ,Ⅰ型の臨床病型をとることが多いが、稀に痙性対麻痺や純粋小脳失調症を呈する場合あり。中核症候:緩徐進行性の小脳失調(体幹失調、四肢失調、失調性構音障害)、錐体路徴候(痙性、腱反射亢進、病的反射陽性)、錐体外路徴候(主にジストニアで、アテトーゼ様運動やパーキンソン症状を呈することがある)、末梢神経障害(遠位筋の筋委縮、感覚障害、腱反射減弱・消失)。副症状:進行性の外眼筋麻痺(外転、上転障害)、注視方向性眼振(水平性が多い)。衝動性眼球運動障害ビックリ眼(眼瞼後退)動作誘発性の顔面・舌の筋線維束攣縮様運動声帯麻痺(嗄声)、前庭機能障害、自律神経障害、レム睡眠行動障害*、情動障害、腰仙骨領域の慢性疼痛を呈することがある。認知機能は保たれる(障害は軽度に留まる)。同一家系内でも臨床症状は多様。頭部MRI:小脳。脳幹(橋、中小脳脚、中脳、上小脳脚)の萎縮、第4脳室の拡大。特に小脳虫部上面に優位の萎縮を認める。小脳虫部・脳幹の萎縮は、リピート数および撮像時年齢と相関する。T2強調・FLAIR像で淡蒼球の異常信号を認めることがある。診断:MJD1遺伝子におけるCAGリピート異常伸長の解析。発症年齢と伸長アレルのCAGリピート数には負の相関関係がある。ホモ接合体例は同じリピート数を有するヘテロ接合体例に比し発症年齢が早く、臨床症状が重症である(遺伝子量効果の存在)。リピート数が少ない患者では臨床診断に苦慮することが多い。本疾患を疑う重要な点:常染色体優性遺伝性の家族歴30-40歳前後発症が多い緩徐進行性の小脳失調症と錐体路徴候を中核症候とし、錐体外路徴候と末梢神経障害が様々な程度で組み合わさる。ビックリ眼、外眼筋麻痺、顔面・舌の筋線維束攣縮様運動は特異性が高い。ジストニア:体を持続的に捻るようなorひきつけるような運動。SCA6(Holmes病)若年-中年期発病。19-71歳(平均43-52歳)。関西圏で多い病型。眼振、歩行障害、構音障害等小脳失調を現す。経過は慢性。小脳症状のみが多い。臨床症状:初発症状は歩行のふらつき、つまずき、構音障害が多い。ほぼ純粋な小脳失調症を呈する。小脳性失調性歩行、四肢の運動失調、構音障害、注視方向性眼振(水平性、下眼瞼向き)頭位変換時のめまい感や動揺視などの症状を伴うことがある。腱反射異常(亢進or低下)、足底反射陽性、痙性、深部覚低下、ジストニアなどの不随意運動、外眼筋麻痺、凹足変形などを伴うことがある。頭部MRI:小脳に限局した萎縮。小脳萎縮は虫部上面に強く、半球で軽度。脳幹や大脳は保たれる。診断:CACNA1A遺伝子におけるCAGリピート異常伸長の解析。本疾患を疑う重要点:常染色体優性遺伝性の家族歴20-66歳発症。45歳前後。緩徐進行性の小脳失調症。ただし腱反射異常、病的反射陽性、軽度の深部感覚障害などは本疾患を否定する根拠にならない。一方、感覚障害、レストレスレッグ症候群、視力異常、筋委縮は来しにくい。頭位変換時のめまい感や動揺視、下眼瞼向き眼振は本症を支持する所見。MRIで小脳に限局した萎縮DRPLA歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症小児-老年期発病。発病年齢によって症状が異なる。世代を経るに従って発病年齢が若くなる表現促進現症が認められる。病型は1.若年型、2.早期成人型、3.遅発成人型若年型では、てんかん、ミオクローヌス、痴呆、早期成人型では、痴呆、小脳失調、舞踏病アテトーゼ、遅発成人型では、小脳失調、舞踏病アテトーゼ。ハッチントン舞踏病との鑑別必要。舞踏病アテトーゼ:脳の運動機能の異常により、筋が正常に動かずに自分の意思とは無関係に持続的にゆっくり動く症状。フリードライヒ失調症日本では遺伝子で確定した家系はない。遺伝性痙性対麻痺(痙性対麻痺はSCD全体の5%)若年発病。優性遺伝と劣性遺伝の場合がある。下肢の痙縮で発病。視神経萎縮、痴呆など合併。診断には多発性硬化症などの痙性対麻痺を除外する。その他病因・病態孤発性のものの大多数は多系統萎縮症。一部小脳症状に限局した小脳皮質萎縮症がある。皮質性小脳萎縮症は単一疾患ではなく複数の疾患が含まれていると考えられ一定の割合で遺伝性のもの(SCA6,SCA31など)が混在している。アルコール多飲や腫瘍に伴って失調症状を示すことがある。遺伝性脊髄小脳変性症は非常に遺伝性異質性の高い疾患である。現在までに50以上の病因遺伝子が同定されている。2016年6月現在、AD-SCDではSCA1-42, DRPLAの30疾患、AR-SCDはフリードライヒ運動失調症、ARSACS、EAOH/AOA-AOA4、SCAN1、SCAR5-23んどの29疾患、X-linked SCDはSCAX1の1疾患において病因遺伝子が報告されている。他に遺伝子座は報告されているが、病因遺伝子が同定されていない疾患が数多く存在する。遺伝性脊髄小脳変性症の中で90%以上が常染色体優性遺伝性SCD(AD-SCD)、残りが常染色体劣性遺伝子SCD(AR-SCD)、稀にX染色体連鎖性小脳変性症も認められる(X-linked SCDはSCAX1の1疾患において病院遺伝子が報告されている)日本のAD-SCDでは、Machado-Joseph病(MJD/SCA3)、SCA6、SCA31、DRPLAの頻度が高い。(この4病型でAD-SCD全体の60-70%)病因遺伝子未同定の遺伝性SCDは全体の10-20%。遺伝性痙性対麻痺も同様に遺伝的異質性が高く、SPG1-76の疾患が存在する。純粋型遺伝性痙性対麻痺で最も多いのはSPG4孤発性痙性対麻痺もある。多くは原因不明だが一部遺伝性の病因遺伝子変異を有する場合がある。その場合、AD, AR, X-linkedの遺伝形式をとる。複合型の遺伝性痙性対麻痺の中で脳梁ひ薄化を伴っている場合、頻度が高いのはSPG11。AD-SCDのSCA1,2,3,6,7,17,DRPLAでは病因遺伝子の翻訳領域におけるCAGという3塩基の繰り返し配列が伸長することにより起こる。CAG繰り返し配列は、アミノ酸としてはグルタミンとなるため、本症は異常に伸長したグルタミン鎖が原因であると考えられる。他に同様にグルタミン鎖の伸長を示すハンチントン病、球脊髄性筋萎縮症と併せて、ポリグルタミン病と総称する。本症の遺伝子診断はこの繰り返し数の長さにて診断している。各々の正常アレルの繰り返し数の上限の目安は、SCA1:39, SCA2:32,, MJD/SCA3:40, SCA6:18, SCA17:42, DRPLA:36である。これを超えた場合、疾患の可能性を考えるが、この周辺の繰り返し数の場合、真に現在の病態に寄与しているかについては臨床症状を加味し慎重に診断する。特にMJD/SCA3, DRPLAにおいては、稀に正常アレルと病的アレル(MJD/SCA3:60以上、DRPLA:49以上)の間の繰り返し数を有するちゅかん型アレルが認められることがあり解釈が難しい場合もある。ポリグルタミン病においては、伸長したポリグルタミン鎖によって作られる凝集体が、細胞内に認められる。このことから伸長ポリグルタミン鎖の凝集体が直接、もしくは間接的に細胞毒性を持つと考えられている。現在は凝集体そのものはむしろ防御的で、それが形成される前の多量体が神経細胞への毒性を持つとする説が強い。伸長ポリグルタミン鎖によってもたらされる細胞毒性の詳しい機序については、転写障害、細胞内カルシウム調節異常、カスペース活性化、ミトコンドリア機能異常、オートファジー障害、興奮性アミノ酸毒性、酸化ストレス、小胞体ストレス、プロテアソーム障害、軸索機能障害、シナプス機能障害、細胞骨格異常など、諸説あり結論がついていない。発病や進行を阻止できる根治的な治療方法の開発につながる病態機序はまだ明らかになっていない。症状運動失調の代表的な症状は、立位・歩行時のふらつき、上肢の運動機能障害、構音障害などである。診察所見は眼振注視方向性眼振が典型的である。SCA6では下眼瞼向き眼振が特徴的で、注視眼振でははっきりしなくても頭位変換眼振としてはよく見られる。構音障害構音障害の特徴は前後の音節が連続的につながってしまったり(slurred speech)、個々の音節が途切れ途切れになったり(scanning speech)、発音が唐突に大きくなったりする(explosive speech)筋トーヌス低下四肢の筋トーヌスは低下し、肩ゆすり試験で上肢の懸垂性pendulousnessが亢進する。測定障害四肢の動きでは測定障害のため、運動の目標に正確に到達できなくなる。運動分解運動分解により手足の動きにおいて目標に直線的に到達させようとしても左右あるいは軸方向にぶれる。リズム異常一定の動作を繰り返してもリズムや振幅が乱れる。これらの症状は上肢では指鼻試験finger-nose-finger test;FNFT、回内回外試験diadochokinesis、下肢では踵膝脛試験heel-knee-shin test;HKSTなどで検出する。企図振戦動作時に誘発され、到達目標に近づくと大きくなる企図振戦が生じる。体幹失調体幹失調のため立位・座位の保持が困難になり、体幹が前後に揺れる症状titubationが生じる。歩行障害失調性歩行は足幅を横に拡げて歩くwide-based gait歩き方が特徴的である。歩幅も一定せず、踏み出す足の位置が不規則にずれる。遺伝性脊髄小脳変性症は運動失調症状以外にも多彩な症状を合併する。眼球運動障害(SCA2, MJD/SCA3)眼球運動失行(AOA1-4)網膜黄斑変性(SCA7)末梢神経障害(MJD/SCA3, AOA1, AOA2, TDP1)運動ニューロン障害(SCA1, SCA36)ミオクローヌスてんかん(DRPLA)認知機能障害(SCA1,SCA17,DRPLA)錐体路徴候(MJD/SCA3, SCA17)パーキンソン症状(SCA2,SCA17,SCA21)ジストニア(MJD/SCA3,SCA17)舞踏病(DRPLA,SCA17)などが代表的である。AD-SCDの多くを占めるポリグルタミン病では、CAG繰り返し配列の長さと、発症年齢に負の相関があり、一般にリピート数が長いほど若年で発症し、重症となる傾向がある。ポリグルタミン病は家系内でも症状が多彩で、世代を経る毎に重症化する傾向(表現促進現象)を認める。痙性対麻痺の場合、症状は歩行障害であることが多く、駆け足、下り坂歩行、階段下りがうまくいかなくなる。診察所見としては、下肢痙性、腱反射亢進、Babinski/Chaddock徴候陽性を認める。疾患によっては認知機能障害、筋委縮、感覚障害、小脳性運動失調、膀胱直腸障害など多彩な症状を認めることがある。診断脊髄小脳変性症の診断は、運動失調症を主体とする進行性の神経症状、画像検査による小脳萎縮の検出、二次性運動失調症の除外により行われる。純粋小脳型は頻度かあrSCA6,SCA31を考える。非純粋小脳型では頻度からMJD/SCA3, DRPLA, SCA1,2,17を考える。MJD/SCA3のビックリ眼、DRPLAおミオクローヌスてんかん、SCA2の緩徐眼球運動、SCA7の網膜黄色変性などは鑑別に有用な症候である。一方、MJD/SCA3, DRPLAでも高齢発症の場合は純粋小脳型の臨床像を呈することがある。AR-SCDの多くは多系統障害型であり、後索障害、錐体路障害、末梢神経障害などを伴う場合が多い。眼球運動失行を認める場合、EAOH/AOA1, AOA2を疑う。EAOH/AOA1の診断には低アルブミン血症が参考になることがある。AOA2はαフェトプロテインが診断に有用である。痙性が強い場合、頻度的にはAR-SACSを疑うが、頭部MRIにおいて橋のT2線状低信号が特徴的な信号である。遺伝性脊髄小脳変性症では遺伝子検査が有用である。特にAD-SCDでは頻度の高い疾患の多くは遺伝子検査が可能である。トリプレットリピート病はPCRによる伸長リピートの検出で容易に診断できる。その他の反復配列伸長による疾患においても、PCRによる反復配列を含んだアレルの検出、repeat-primed PCRによる反復配列伸長の解析で診断可能である。AD-SCDの残りの疾患、及び、AR-SCDの大部分の疾患における遺伝子検査は塩基配列解析が必要であり、診断には労力と経費がかかる。孤立性SCDの場合、二次性の運動失調症の鑑別が前提である。そのうえで、パーキンソン症状、自律神経症状の合併があればMSAを疑う。頭部MRIで特徴的所見を呈していれば確定的である。それ以外の孤発性SCDの大部分は皮質性小脳萎縮症CCAと診断されるが、一定の割合でSCA6, SCA31などの遺伝性SCDが含まれている。痙性対麻痺の場合、二次性痙性対麻痺を除外した後に、純粋型か複合型か、遺伝形式は何か、を考慮しながら診断をすすめる。遺伝子性の場合、多くの病因遺伝子が存在し、それらすべてを検索するのは現実的ではない。純粋型の場合、比較的頻度の高いSPG4をまず念頭において精査を進める両親のいずれも発症していない。純粋小脳型であるSCA6SCA31(その他の多くはSCA31)MJD/SCA3(高齢者)成人発症例SCA8純粋小脳型でない痙縮があるARSACS痙縮がないAFP高値があるAOA2眼球運動失行を伴う失調症2型ataxia with oculomotor apraxia type210-22歳発症。小脳萎縮。軸索型の運動感覚性ニューロパチー、眼球運動失行、αFP高値、AOA1除外。Ataxia telangiectasia毛細血管拡張を伴う失調症1-4歳で発症する進行性の小脳失調症。眼球運動失行、頻回の感染症発症、舞踏病アテトーゼ、眼球結膜の毛細血管拡張、免疫不全、白血病やリンパ腫など悪性腫瘍のリスク。検査所見として末梢血リンパ球の核型分析にて7;14染色体の転座を同定、免疫不全の証明、ATM遺伝子解析。AFP高値がないAOA1/EAOH眼球運動失行を伴う失調症1型ataxia with oculomotor apraxia type1AR-SCDは本邦では少ない。本邦のAR-SCDにはアプラタキシン欠損症(EAOH/AOA1)、AOA2、AR-SACS、VitE単独欠損症等。そのうちEAOH/AOA1の頻度が比較的高い。小児発症型の劣性遺伝性では純粋小脳型を示すことは少なく、他の随伴症状を伴うことが多い。欧米ではこの範疇に入る疾患としてフリードライヒ失調症の頻度が高く有名だが本邦にはいない。本邦でフリードライヒ失調症と考えられていたものの多くはEAOH/AOA1両親のいずれかが発症している。純粋小脳型であるSCA6SCA31MJD/SCA3(高齢者)成人発症例SCA8SCA14SCA15純粋小脳型でないMJD/SCA3SCA1SCA2SCA7SCA17小脳萎縮が明瞭である小脳萎縮が明瞭でないGSSGerstmann-Straeussler-Scheinker(ゲルストマン・ストライスラー・シャインカー病)(ブリオン病)日本では遺伝性ブリオン病はブリオン病全体の19.4%でGSSは全体の3.6%。発症年齢は40-50歳代、若年20-30歳代もみられる。常染色体劣性遺伝性痙性失調症ARSARCS, Charlevoix-Saquenay型(Autosomal Recessive Spastic Ataxia of Charlevoix-Saquenay)12-18ヶ月の幼児期発症で歩行困難や歩行時のふらつきを特徴とする。神経学的には小脳失調、構音障害、痙性麻痺、病的反射陽性、遠位筋の筋委縮、下肢優位の運動感覚性ニューロパチー、水平注視方向性眼振などが見られる。これらはたいていの場合進行性である。カナダケベック州出身のARSACS家系では網膜の視神経乳頭辺縁から放射状に伸びる有髄神経の増生がみられる。このような網膜変化はフランス人、チェニジア人、トルコ人のARSACS家系では稀である。ARSACSの患者は平均41歳で車椅子生活となるが認知機能はよく保たれ晩期までにづ上生活動作は可能である。その他の常染色体劣性遺伝性小脳失調症日本から精神遅滞と末梢神経障害、著しい小脳萎縮を伴う失調症が報告されている。常染色体劣性遺伝性の小脳失調症と軸索型の感覚運動性ニューロパチーを呈するサウジアラビアの1家系は第14染色体長腕(14q31-q32)に連鎖することが知られていたが、TDP1遺伝子(トポイソメラーゼ1依存性DNA損傷修復酵素をコードする)の変異によることが判明した。脊髄後索の変性と網膜色素変性を伴う失調症が記載されている。低ゴナドトロピン性機能不全症を伴う失調症が記載されている。類似の症状をもつ同胞にはコエンザイムQ10の欠損がみられている。失調症、難聴、視神経萎縮を伴い、6p21-p23に連鎖する家系が報告されている。上肢に時々動作時振戦、器を落とす。歯状核、およびこれと連絡する神経路の障害による振戦は運動時に著明である。ことに小脳と中脳を結ぶ上小脳脚(結合腕brachium conjuctivium(Lラテン語))の病変により、いわゆる企図振戦intention tremorが起こるとされる。コップを持たせて水を飲むように命じると口元に近づくほど手が強く震える。これは多発性硬化症、ウイルソン病、その他の小脳疾患で認められる。多発性硬化症では随意運動に際してきわめて激しい不随意運動を伴うことがある。これは振戦と呼ぶにはあまりにも激しいものであり意図動作時運動過多症hyperkineesie volitionnelle(F仏語)という名称の方が適当であるとされている。赤核症候群(赤核の上外側部の障害で、反対側に小脳性運動失調と振戦を呈する)でもこのような激しい振戦を呈することがある。この激しい振戦の責任病巣としては小脳または赤核上部から視床の腹外側核にかけてが重視されているが、脊髄レベル以下の末梢求心性神経線維の関与も推定されている。小脳半球の障害では姿勢時振戦ないしは運動時振戦を認めるが、企図振戦とは異なるとされている。例えば上肢を水平に前方挙上させると、上肢末梢は筋緊張の低下で僅かに下垂し、これを補正しようとして上方への運動が起こり、その反復が振戦としてみられる。4年前の頭CT、小脳回拡大+、第四脳室拡大+小脳半球cerebellar hemisphere、虫部vermisの萎縮+ or 形成不全SCDの進行で企図振戦一過性に↑稀なんだけど(5%未満)一応イーケプラの副作用に振戦はあり神経過敏(わずかな刺激で↑)単純部分てんかん発作緊張亢進飲食と服薬の組み合わせで一過性に 低Ca or 高Ca→振戦(ワイン(の保存剤)やミノマイシンで低Caで振戦)SCDの進行基底核にかかる?←静止時振戦ではないので可能性低い?一般人の健常者でも原因不明の振戦はあり昨年2月の摂食嚥下評価で言葉の出方が悪くなった評価あり(SCDの進行?前頭葉は?)軽度構語障害あり体幹失調、起き上がり・立ち上がりは一部介助、四つ這い移動+車椅子自走VitB6経口投与予定(十分量)Vitb12 1500μgは定期服薬中(肝臓に蓄積)B12に合わせるとビタメジン1.5g(シアノコバラミン1500μg、ピリドキシン塩酸塩150mg、チアミン塩化物塩酸塩150mg)ビタメジン1.0g+メチコバール1錠(500μ)バップフォー40mg(バップフォーは胃下垂疑い(若年男性)で中止した人がいた、食後1-2時間激しい腹痛、1-2時間を過ぎると軽減を繰り返す、腹部X線で胃下垂疑い、でバップフォーかと中止したら症状消失。本当は更に検索必要、若年でもスキルス胃癌等あるので)1.小脳性振戦小脳疾患のうち歯状核、およびこれと連絡する神経路の障害による振戦は運動時に著明である。ことに小脳と中脳を結ぶ上小脳脚(結合腕brachium conjuctivium(Lラテン語))の病変により、いわゆる企図振戦intention tremorが起こるとされる。コップを持たせて水を飲むように命じると口元に近づくほど手が強く震える。これは多発性硬化症、ウイルソン病、その他の小脳疾患で認められる。多発性硬化症では随意運動に際してきわめて激しい不随意運動を伴うことがある。これは振戦と呼ぶにはあまりにも激しいものであり意図動作時運動過多症hyperkineesie volitionnelle(F仏語)という名称の方が適当であるとされている。赤核症候群(赤核の上外側部の障害で、反対側に小脳性運動失調と振戦を呈する)でもこのような激しい振戦を呈することがある。この激しい振戦の責任病巣としては小脳または赤核上部から視床の腹外側核にかけてが重視されているが、脊髄レベル以下の末梢求心性神経線維の関与も推定されている。小脳半球の障害では姿勢時振戦ないしは運動時振戦を認めるが、企図振戦とは異なるとされている。例えば上肢を水平に前方挙上させると、上肢末梢は筋緊張の低下で僅かに下垂し、これを補正しようとして上方への運動が起こり、その反復が振戦としてみられる。小脳疾患では頭部が間断なく揺れる頭部揺動head titubationもみられる。2.生理的振戦physiological tremor疲労、感情的興奮、寒冷時の振戦。この振戦は姿勢時あるいは運動時に出現し一過性でfineなものであり、1秒間に5-15回(Hz)3.本態性および家族性振戦essential and familial tremor静止時にはなくて上肢を前方へ伸ばした姿勢をとらせると、手指によく出現する。振戦の振幅は中-大、振動数は6-10Hz運動時にも振戦を認める、すなわち姿勢時振戦が主体で、運動時振戦もある。運動時に出現しても終末期の増強は認められず、そのほかの神経症候もない。精神緊張で増強し、アルコールや鎮静剤で軽減する。家族性のものは主に思春期から青年期に発症し、同一家族にこのような振戦を認め、常染色体雄性遺伝を示す。本態性ではなんらの原因も認めない。治療は抗痙攣剤(クロナゼパム)、交感神経β遮断剤(プロプラノロール)、精神安定剤(ジアゼパム)を用いる。4.老人性振戦senile tremor老人に起こり次に述べるパーキンソン症候群の振戦と似ているが、随意運動でかえって増強され、筋緊張の亢進や、その他のパーキンソン症候群の症候がないので鑑別しうる。老人性振戦は上肢、頭、下顎、口唇、舌に著明である。ことに座位、立位での頭部振戦が多く、前後に揺れたりyes tremor、左右に揺れたりno tremorする。本症は本態性振戦の孤発、晩発型と考えられている。5.中毒性振戦toxic tremor甲状腺機能亢進症や尿毒症などの内因性疾患や、アルコール、タバコ、水銀、コカイン中毒でみられる。姿勢振戦で、上肢末梢に好発する。バセドウ病の振戦は振幅は小-中で、10Hzぐらい。慢性アルコール中毒の振戦も振幅はfineであるが規則性に乏しい。アルコール中毒による振戦せん妄や慢性水銀中毒はcoarseな振戦をみる。6.パーキンソン振戦パーキンソン病では四肢に粗大な静止時振戦を認め、筋強剛、随意運動障害(無動)を伴う。振戦は上肢ことに手に著明で、静止時at restに認められ、手指の動きは丸薬を丸めるような運動pill-rolling movementである。下肢では足に認められ、座位では足先やかかとで床を叩く動作tapping movementを認めることもある。振戦は一側上肢に始まり、下肢に拡がり、しばらくおいて他側の上下肢にも起こる。振動数は1秒に4-8回である。振戦は上肢を水平位に保持させると軽減ないし消失したり、随意運動で一時的に抑制される。しかし感情的な興奮では増加し、睡眠中は消失する。振戦は頭や下顎、舌に起こることもある。振戦を誘発するには、上肢の力を抜かせて、手を膝の上にのせ、肘と手首を軽く屈曲させる。7.固定姿勢保持困難asterixis、羽ばたき振戦flapping tremor手関節を背屈させ、手指は伸展させて、そのままの姿勢を保持するように指示する。すると手関節、中手指節関節の急激な掌屈と、元の背屈位への復帰が反復し、羽ばたいているように見える。この固定姿勢を保持できないことを固定姿勢保持困難asterixisという。asterixisで起こる手の羽ばたき様の振戦が羽ばたき振戦flapping tremorギリシャ語のsterigmaは支持するの意味で、asterixisは手を一定の位置に保持することができないことをいう。本症は四肢を一定の位置に保つために収縮している筋が間欠的に緊張を失うために起こる。羽ばたき振戦は肝性昏睡、尿毒症、CO2 narcosis、低ナトリウム血症など代謝疾患による脳症の初期、ジフェニルヒダントイン中毒などに出現する重要な徴候である。また両側視床傍正中梗塞症候群、視床出血でも出現する。8.羽ばたき運動肩関節で上肢全体が羽ばたくように大きく動く不随意運動をいう。ウイルソン病で起こる。上肢を伸ばしたまま側方に水平に挙上させ、そのまま保持させると、この運動が出現する。

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  • 09 Mar
    • dysphagia関連7(嚥下時における舌骨運動のX線学的研究

      嚥下時における舌骨運動のX線学的研究A cinefluorographic study of hyoid and laryngeal movements during deglutition日本耳鼻咽喉科学会報 Vol.90(1987)No.5p669-679https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka1947/90/5/90_5_669/_pdfA 緒言嚥下とは食塊を口腔から胃へ搬送する一連の運動でありこのために舌や下顎、咽頭、食道の筋群が高度の協調運動を行っている。嚥下運動はすでに1817年にMagendieが3相に区分しており彼は1)bokusが口峡を通り過ぎるまでの口腔期、2)口峡より上食道口通過までの咽頭期、3)上食道口より噴門通過までの食道期に区分している。この区分は運動生理の面からみると第1期は随意期、第2期は不随意期(反射期)、第3期は不随意期におおよそ対応している。この各期のうち2期と3期の区別は比較的容易である。すなわちbolusがすべて食道内へ入り食道の蠕動運動が開始される時点が第3期の始まりである。第2期に関する研究は古くからおこなわれており、食道内圧を測定した研究、X線映画(ビデオ)を用いた研究、筋電図を用いた研究、これらを同時に組み合わせた研究などが報告されているが、1期・2期の境界つまり随意期から不随意期への移行に言及している報告は少ない。平野は筋電図学的立場から、第2期の始まりは輪状咽頭筋の弛緩におおよそ一致すると述べている。嚥下時には内舌筋群・外舌筋群・内外喉頭筋群・舌骨上下筋群等多数の筋が活動しその結果は舌・舌骨・喉頭などの運動として現れる。この点に注目して古川は嚥下時のX線フイルムから甲状軟骨の運動の解析を行い、急速に挙上する時期を反射期の開始としている。今回は嚥下時に作用する多くの筋が付着している舌骨に注目して嚥下時の舌骨・喉頭運動の両者の関係について解析を試み随意期と反射期の受け渡しについて考察を行った。B.目的舌骨は舌と喉頭の中間に位置する器官であり、嚥下時に活動する多くの筋群が付着している。したがって嚥下時にはこの筋群の活動によって舌骨は大きく運動する。嚥下全経過において舌骨はどのような運動を行うかを解析し、嚥下第1期-第2位への移行の状態を舌骨の運動の面から推定することを目的とした。さらに舌骨・喉頭を1つの運動系とみて嚥下の期間中両者はどのように関係しているかを検討した。C.研究対象咽喉頭異常感を訴えて外来受診し、下咽頭・食道透視検査を行った患者のうち器質的・機能的異常が認められず、咽喉頭異常症と診断された成人男性24名。年齢は35-60歳。対象の選定条件としてX線フイルム上嚥下期間中に舌骨体・喉頭が明確に同定しうるもの。D.方法被験者を立位、バリウム嚥下時に頸部側面からX線映画撮影を行い、得られたフイルムからmotion analyzerを用いて舌骨・喉頭運動を解析した。造影剤は硫酸バリウム100w/v%を使用し、1回嚥下量は20mLとした。撮影は1回の嚥下毎に行った。撮影速度は30コマ/秒に固定した。1コマあたりの露出時間は1/68秒。X線条件は6-70kv、1mA。撮影時に前頚部正中に長さ2cmの鉄片を貼布し、フイルム計測時の実長の基準とした。計測点としてフイルム上で認められる次の5点をとった(図1)①第3頸椎前縁上端、②第5頸椎前縁下端、③舌骨体の上端、④舌骨体の下端、⑤甲状軟骨の前縁下端である。このうち①②の2点を結ぶ直線を基準線とし、これと③、⑤をそれぞれ舌骨・喉頭の代表として測定点の移動を見る。④は舌骨の回旋をみるための測定点。またbolusの移動についてはその先端と後端とを測定点とした。フイルムをナック製のmotion analyzerモデル350を用い1コマごと各5点、さらにbolusの出現しているコマでは各7点を座標値としてPC-980・PC-100を用いて処理。各点の移動距離を各座標から計算し、上下方向・前後方向に分解して経時的に運動曲線として表示した。E.結果[1]嚥下時における舌骨運動(1)舌骨体の運動(図2)舌骨は嚥下時には図2に示すように概ね三角形に類似した曲線を描くように運動しており、これを3相からなる運動区分として図のように命名した。第1に比較的ゆっくりと挙上運動を始めるが、この際わずかに後退運動を伴うことが多い(挙上後退運動)次いで第二に舌骨は大きく挙上、同時に急激に前進する(挙上前進運動)そして最大挙上①および最大前進①に停滞した後に第三の運動、すなわち元の位置へと復元するために後退・下降運動を行う(下行後退運動)この舌骨運小津を上下・前後の成分に分けて経時的に記録した曲線の代表的な一例を図3に示す。上のグラフが前後方向(頸椎上の2点を結んだ基準線に対して垂直に移動する運動)下のグラフが上下運動(基準線に対して平行に移動する運動)を表している。これを図4のようにもし気化して区分を試みた。二次元的に見ると舌骨体の運動の軌跡は三角形を形づくり3つの成分に分かれたが、経時的にみると前後・上下ともに運動の速度の違いや、運動が一時ストップする時期があることから5つの成分に分かれた。しかし前後方向運動の後部2つの成分ははっきり区分することが困難でありここは1つとして扱った。1)上下方向運動舌骨上下運動は5つの成分に区分できる。①比較的ゆっくり挙上していく相(挙上第1相)、②続いて急速に挙上する相(挙上第2相)、③②に続き下降する前に最大挙上位置にとどまる相(停滞相)、④停滞相から急速に下降する相(下降第1相)、⑤最後に緩徐な下降を示す相(下降第二相)2)前後方向運動大きく4つに区分できる、a)わずかに後退する相(後退相)、b)急速に前進する相(前進相)、c)bに続き最大前進①にとどまる相(停滞相)、d)元の位置へと復元するために下降する相(復元後退相)この復元後退相は上下方向運動の下降第1相・第2相に相当するが、前後方向ではその区分が明瞭に現れず1つの相とした。3)両方向の運動の時間関係について上下方向運動と前後方向運動は互いに挙上第1相と後退相、挙上第二相と前進相、停滞相と停滞相、下降第一・第二相と復元後退相、というように対応する。挙上第一相と後退相はほぼ同時に開始する。症例によってはごくわずか挙上運動が速く開始されることがあるがその差は最大でも0.06秒である。続いて挙上第二相と前進相に移り、この際多くの症例では(24例中18例)前進相が挙上第二相よりも早く始まるがその差は平均0.02秒であり、分解能からみて判定できない。相の長さについては停滞相は上下方向運動・前後方向運動はほぼ同じであり、また下降第一相+第二相は復元後退相よりも0.08秒長いという結果を得た。(2)舌骨運動における各成分の所要時間および移動距離について(表2)1)上下方向運動a)挙上第一相挙上開始からの比較的ゆっくりとした時期の運動であり所要時間は0.44±0.12秒、平均5.1±2.1mmの挙上を示す。速度は11.5±3.5mm/秒。b)挙上第二相第一相に続く急速に舌骨が上方へと運動する相である。平均0.26±0.15秒、11.2±3.2mmの挙上。速度は37.3±8.5mm/秒と、第一相の3倍以上の値を示す。挙上第一相と第二相の合計が嚥下による舌骨挙上距離で平均16.3±3.9mmである。c)最大挙上位置にとどまる相挙上第一・第二相で最大上昇位置に到達した舌骨はここに停滞する相を有する。その平均時間は0.32±0.08秒である。d)下降第一相cに続いて舌骨は下降を開始する。初期には比較的速い運動であり、その平均時間は0.28±4.2mm/秒と挙上第一相よりも速い。e)下降第二相最後に舌骨はゆっくりとした下降第二相に入り、舌骨は一定の位置へ達し、嚥下による運動を終了する。これには0.47±0.12秒を要し、平均移動距離は4.5±2.6mmである。その速度は9.5±2.4mm/秒である。下降第一相と第二相を合計したものが嚥下時の舌骨下降距離に相当し、平均12.4±3.5mmである。これからわかるように舌骨の嚥下終了時には嚥下前の安静時の位置まで下降しておらず途中の位置に停滞している。2)前後方向運動a)後退相これは上下運動における挙上第一相に相当する。この際後退する場合が多いが、症例によってはほとんど元の位置に停滞したままのもの(すなわち挙上運動のみの例)、あるいは逆に前進するものがあるが、後退する症例が最も多く(24例中14例)、便宜上後退相と命名した。開始時は上下方向運動における挙上第一相とほぼ同じであり、所要時間は0.46±0.14秒、移動距離は平均1.9±1.2mmである。速度は前進した症例・後退した症例をともにその移動距離を絶対値として算出、3.1±0.4mm/秒と非常にゆっくりしたものであった。b)前進相一度わずかながら後退した舌骨は大きく前進する。これは上下方向運動における挙上第二相に相当する。所要時間は0.27±0.06秒。移動距離は10.3±2.5mm。速度は38.2±5.5mm/秒。嚥下時の舌骨運動のなかでは最大の値を示す。c)停滞相最大前進位置に達した舌骨は挙上時と同様にここに停滞する。上下方向運動における停滞相に相当する。時間は平均0.32±0.07秒。d)(復元)後退相最後に舌骨は元の位置に戻るための後退運動を行う。上下方向運動における下降第一・第二相に相当する。上下運動と同様に2段階に分かれて後退する場合もあるが、その境界が明瞭でないため、ここでは単一相とした。このため所要時間は0.67±0.18秒と最も長く、移動距離は8.1±2.4mm、速度は12.1±3.5mm/秒と比較的ゆっくりしたものであった。舌骨はここでも嚥下終了時には安静時の位置まで後退しきっていない。これは後述すうりょうに甲状軟骨の場合と同様である。(3)嚥下時の舌骨の回旋運動について(図5)嚥下時に舌骨は単純な平行運動をしているのではなく、体部を中心として大角が垂直面上で回旋運動を行っている。この回旋は舌骨の上・下端を結ぶ直線と先に設定した基準線との角度を舌骨体の傾きの変化として計測した。後述するようにフイルム上で計測された舌骨体上の上・下端の長さは一定ではなくコマごとに変化している例が多く、信頼できる計測例は5例であった。その結果を図5に示す。安静時には舌骨体の角度は基準線に対して24-30度であるが、運動を開始し挙上後退相に入るとこの角度は大きくなり(すなわち舌骨体は水平に近づき)、挙上後退相の終了付近では38-42度の角度となる。次いで挙上後退相に入るが舌骨体はそのままか、もしくはやや角度を減じながら(すなわち垂直に近づき)運動、この相の終了時には30-35度となり安静時と比較すると傾斜はやや小さくなる。このあと元の位置に下降してくる時にほぼ安静時の角度に復元している。[2]嚥下時における舌骨と甲状軟骨運動との関係について舌骨の運動を計測する際に同時に甲状軟骨の運動も計測した。両者の関係について述べる。古川は嚥下時の喉頭運動を甲状軟骨を代表させて上下方向では5段階に、前後方向では2段階に区分しており、今回の舌骨運動との関係を図6(上下方向運動),図7(前後方向運動)に示した。双方の運動相の区分を記載した。上下方向運動では舌骨と甲状軟骨はよく類似した運動を行い、動揺の経時的区分をすることができる。前後方向運動では甲状軟骨が前進・後退という単純な運動を行うのに対して、舌骨はより複雑であり、停滞相を有することが大きな相違である。甲状軟骨運動の時間経過・移動距離・所要時間を表3に示す。[3]舌骨運動の経時的推移および甲状軟骨の関係について(図8)ここで嚥下時における舌骨と甲状軟骨の時間的経過についてまとめる。嚥下の開始とともにまず舌骨の挙上第一相と後退相が始まり、次いで甲状軟骨の挙上第一相、さらに舌骨の挙上第二相と前進相が始まる。続いて甲状軟骨の挙上第二相が開始、最後に甲状軟骨の前進相へと続く。この時間関係を図8に示す。舌骨と甲状軟骨の挙上第二相が同時に開始している症例(24例中4例)もあった。しかし甲状軟骨が舌骨よりも早く挙上第二相を開始する症例は1例もなかった。嚥下運動後半期においては両者の時間関係が一定しないため図示していない。[4]舌骨・喉頭運動とbolusの移動との関係について(図9)舌骨・甲状軟骨の各運動相はbolusの通過とどのように関係しているのかという点について述べる。bolusの先端が口峡を超える時点は舌骨挙上第二相および前進相の開始後平均0.09±0.02秒である。すなわち舌骨の急速挙上相を反射期の開始とした場合、反射期はbolusが口峡を超える時点、すなわちbolusの移動から見た第二期よりももっと早くから始まっているのである。甲状軟骨との関係でみると甲状軟骨の挙上第二相は舌骨の挙上第二相と嚥下第二期開始との間にあり、舌骨との時間差は0.08±0.05秒であった。前述したように舌骨の挙上第二相と甲状軟骨の挙上第二相との差がほとんどない症例もあった。この場合には舌骨の挙上第二相とbolusの咽頭流入との時間差がほとんどないことになる。しかしbolusの咽頭流入が舌骨の挙上第二相よりも速い症例は1例もなかった。嚥下第二期の終了は舌骨が最大挙上・最大前進位置に停滞している間であるが、甲状軟骨との関係では第二期の終了は停滞相の終了付近に相当している。F.考察舌骨は口腔底、下顎、舌などと喉頭との中間に位置しいわばこれらの器官の間に宙づりにされた格好になっており、多数の筋が舌骨を経由している。これらのうち直接に舌骨に付着する筋だけでも顎二腹筋、茎突舌骨筋、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、胸骨舌骨筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋、咽頭舌骨筋、中咽頭収縮筋などがある。これらの筋が活動することで咀嚼、嚥下、発声など巧妙な動作がなされている。したがって舌骨の動きを調べることにより嚥下の動態を観察できると考えられる。(略)筆者は反射期における筋群の急激な活動が舌骨・喉頭運動の変化として表現されるだろうと考えX線映画撮影法を用いて同一フイルムにこの両者の運動(移動)を同時に記録しその軌跡を追うことにより嚥下時に解析を試みた。1.研究対象について今回の症例は全て男性であり、若年者を含んでいない。古川も述べているように女性では喉頭の計測点である甲状軟骨の前下縁の石灰化が十分でなく、計測点を定めることが困難であること、若年者は咽喉頭異常感を訴えることが少ないため症例が集まりにくいこと。造影剤の量については各報告者により異なるが、この量により嚥下の全経過時間、特に嚥下第二期がかわってくる、すなわち造影剤の量が少なければ短く、多ければ長くなるとされている。今回は通常の食事の摂取量に知覚、しかも一回で嚥下可能で二度飲みしない量として20mLと定めすべて1回飲みとした。また筆者は嚥下時の舌骨大角の方向、すなわち垂直方向の舌骨の回旋運動にも注目した。これを舌骨体の上端、下端の2点をとって両者を結ぶ直線の傾きよして測定を試みたがフイルム上に投影される見かけ上の舌骨体の長さ・幅はコマごとに変動を生じる例が多く、定量的な解析を行えるだけの例数が集まらずに定性的な検討に終わった。2.撮影法について被験者は立位としてバリウムを嚥下させた。舌骨の運動は頸部の状態(伸展・前屈)により変化すると思われるが、前屈した状態では舌骨が挙上した際にその撮影が下顎の陰影に重なり計測できないしたがって本研究はある程度頸部を伸展させた状態での測定結果である。この際なるべく自然に近い状態にするために頸部の固定は行っていない。このため嚥下時に頸部が大きく前後に動く症例では基準線・舌骨運動に相対的な変化が現れると考えられるため対象から外した。基準線を第3・第5頸椎間においたのは喉頭は安静時にはほぼ第5頸椎の高さにあること、また嚥下時に舌骨・喉頭はだいたい第3・第5頸椎間を動くこと、さらに基準点の決定が比較的容易であること、などの理由からである。撮影速度は可変式であるが30コマ/秒に固定して行った。bolusの曲がれに重点を置き、その解析を中心に行おうとするならばさらに高速度の撮影が必要だろう。Saunsersらは舌骨・喉頭よりも速い喉頭蓋の運動解析のために30コマ/秒以上の速さが必要であるとし、Ramseyは嚥下時の舌骨・喉頭の観察のためには30コマ/秒を推奨しており、Sheddが24コマ/秒でよいとしている。(略)今回30コマ/秒とした理由として①運動がbolusや喉頭蓋ほど速くなく、コマ数を上げる必要がないこと、②被験者の被曝量をでdきるだけ少なくするため、である。このため1/30秒(0.033秒)以下の時間関係の比較については言及できない。3.嚥下における舌骨運動の区分舌骨運動を上下方向では5段階に、前後方向では4段階に区分した。舌骨運動を上下前後別に測定した例はSaundersや古沢らの報告があるが、区分を試みた報告は少なく松本・古沢らの報告のみである。舌骨の運動経過を上下・前後別に図示したものに古沢らの報告がありその曲線は今回の研究で得たものと類似しているが、時間的な区分や運動距離については触れていない。舌骨運動を古沢は上下方向では5段階に区分し、これは本研究と一致しており、前後方向でも5段階に区分している。これは前述したように復元こう体操を下降第一相・第二相と同じように2つの層に区分したためで、本研究ではその境界がはっきりしないという理由から後退そうは1つの層としてあつかった。また古沢は舌骨運動を運動曲線としては現しておらず、実際の移動距離は椎体高にたいする相対的なものとしており、この天に関してはSaundersの報告も同様である。今回の研究では移動距離を計算する目的もあって移動距離は実測値として求めた。4.測定結果について今回測定した嚥下による舌骨運動の全経過は1.80±0.25秒であり、これは従来の報告とほぼ一致するか、やや大きい値である。従来の主な嚥下運動計測の報告を表4に示した。また各区分ごとの経過時間・運動距離を古沢の報告した学童期における舌骨運動計測と比較したものが票5である。各区分ごとの時間をみると上下方向でほぼ一致したのは舌骨の挙上前進運動器にあたる居城大2層のみで他はすべて1.5-2倍ほど今回の研究の値のほうが大きい。古沢の報告における嚥下全経過時間は約1秒であり、これは票4からもわかるように他の報告に比してかなり小さい値である。これは最初の挙上第1相の開始点および最後の下降大2層の終了天の決定の相違によると思われる。挙上第1層の開始は運動曲線の変化が少ないことから決定が難しい症例が少なくない。筆者は舌骨、喉頭、さらにBolusの移動状態から嚥下の経過を観察したが、これは舌骨だけからみると上記の理由のため見かけ上は第1層が短くなる可能性もあると考えられる。また下降第2相については前述したように舌骨や嚥下がすべて終了したあともしばらく安静時よりもやや高い位置にとどまっており、この時期のとりかたによって下降第2相の長さに差が出たものと思われる。次に停滞相の長さについて述べる。停滞相とは舌骨が最大前進・最大挙上位置にとどまる時期っであり、これは下咽頭腔を最大限に拡張してbolusの通過を助けるという意義があると考えられる。したがって舌骨はbolusが咽頭を通過し、全て食道内に入るまで停滞している必要がある。今回測定した嚥下第2相の長さは約0.60秒であり、これは挙上第2相と停滞相の合計の長さにほぼ一致する。bolusが全て食道内に入ってから舌骨は下降・後退を始めるのであり、これはSunadersの報告とも一致している。筆者の停滞期におけるdataが古沢のそれよりも2倍も大きな理由の1つに造影剤の量の違いが考えられる。古沢は1回嚥下量を5mLとしており、これに対して筆者の研究では20mLで行った。前述したように1回嚥下量が多くなれば嚥下第2期の所要時間は長くなり、このため両者の結果に大きな差がでたものと思われる。次に運動距離について比較してみる。古沢やSundersらは運動距離を椎体高を基準とした相対的な値として現している。椎体高として第4頸椎を代表させ、寺田らの頸椎モアレ写真を基に日本人の第4頸椎平均高を12mmと定めてこれから運動距離を算出したものが表5である。古沢の報告では下降相、あるいは後退相の数値が無く、またSundersらも下降相における結果を提示していない。したがって比較検討できるのは挙上相における運動距離のみである。この表から大きな差があるのは挙上第2相での移動距離である。本研究では舌骨と甲状軟骨の運動を同時に測定しておりこの両者の関連からみるとこの時期には舌骨のみならず喉頭も大きく挙上しておる、その活動量は25-30mmにも達する。この喉頭挙上は後述するように甲状舌骨筋の収縮による部分と、オトガイ舌骨筋などの収縮による舌骨挙上によって牽引される部分とから成っており、喉頭の挙上距離を考えると舌骨も相当量の運動を行っていると考えられる。古沢は挙上第一相と第二相とで役10.0mmとしているが、これは今回得られた結果と比較するとやや小さい数値のように思われる。この理由として加齢による舌骨の位置変化が考えられる。すなわち学童期には舌骨・喉頭はともに高い位置にあり、このため嚥下の際にもあまり大きく運動する必要がない。加齢とともに舌骨・喉頭はしだいにその位置が低下してくるために嚥下時には運動量が大きくなるものと思われる。(ネアンデルタール人のように喉頭の位置が高ければよかったのに)舌骨は喉頭と同様、嚥下終了時には前後・上下方向ともに安静時の位置には戻っていないが、これはすぐ次の嚥下に備えるためと思われる。通常の食事時には次々に食塊が送り込まれてくるが、その際その都度ごとに安静時の位置から運動を繰り返すのでは運動量が多すぎ追従できない恐れがある。やや挙上した位置からであれば容易に挙上第二相に移行でき、連続した嚥下にも対応できるものと考えられる。これは喉頭の場合でも同様であり、やはり嚥下終了時には前後・上下方向ともに安静時の位置まで戻っていない。5.嚥下における舌骨運動観測の意義嚥下における舌骨運動の役割は①挙上・後退することによる舌の保持、②前方への移動およびさらに大きく挙上することによる-同時に挙上する喉頭の作用と相まって-食道入口部の拡大にあると考えられる。すなわちbolusが口腔内から咽頭へ送り込まれる際には舌が後方へ移動し、bolusを後方へ押し込む。この際、舌骨が舌を後下方から保持することが必要であり、さらに咽頭腔を拡大するためにわずかに挙上する。この際、舌骨はその大角が水平に近づいて後下方に倒れ込む舌を保持する。咽頭へ送り込まれたbolusは食道入口部へ向かうが、この際舌骨はさらに挙上、そして大きく前進して下咽頭腔を拡大する。また同時に喉頭をも引き上げ、この作用を増強するとともに誤嚥の防止に役立つ。また舌骨は最大前進・最大挙上位置にとどまり、この間に嚥下第2期が終了する。これはbolusが入口部に全て流入する間、下咽頭腔を拡大しておくためであると考えられる。このように考えると舌骨運動で最も重要なのは挙上第2相と前進相、および停滞相であると考えられる。特に嚥下第2期に相当する挙上第2相・前進相では短時間のうちにこれらの動作を完了しなければならず、これは舌骨の移動速度がこの時期最大であることに現れている。挙上第1相や後退相ではbolusの咽頭流入に備えるためのいわば準備段階であるからこの時期での移動はあまり高速である必要はなく、事実これらはその値がごく小さい。また下降相や復元後退相ではすでにbolusが食道入口部を通過してからの運動で、下降第1相は比較的高速で行われているが、これは喉頭の場合と同様である。6.嚥下第2期の開始点と舌骨運動嚥下第2期とはbolusの面からみると、その先端が口峡をこえる時点から後端が入口部にかかった時点までの期間である。また筋電図的にみると輪状咽頭筋が弛緩している時期に一致するといわれている。これを舌骨の面から考察する。輪状咽頭筋の弛緩の開始した時点を第2期の開始と考えるならば、これは舌骨の挙上第2相の開始に相当すると考えられる。これは甲状軟骨の挙上第2相よりも0.08秒早い。古川は嚥下第2期の開始を甲状軟骨の挙上第2相としたが、舌骨はこれよりも早く急速挙上を開始している。ここで文献上から嚥下時に舌骨・喉頭に関与する筋の作用について考察してみたい。嚥下第2期の主な働きと主に関与する筋の関係はまず舌の運動では内舌筋群、外舌筋群が関与し、舌骨の動きには舌骨上筋群、舌骨下筋群、舌骨咽頭筋、外舌筋が、そして喉頭の位置変化には舌骨上筋群、舌骨下筋群、中・下咽頭収縮筋などが関与する。嚥下時に舌骨を挙上させる筋は解剖学的には顎二腹筋・顎舌骨筋・オトガイ舌骨筋・茎突舌骨筋が考えられ、また喉頭を挙上させる筋としては舌骨上筋4筋と、舌骨下筋では甲状舌骨筋が考えられる。胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋はその筋放電が嚥下時には抑制され、喉頭の挙上にはあまりあkンよしていないとされる。これらの筋のうち最も強力に舌骨を挙上させるのは顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋であり、また喉頭を引く上げるのはオトガイ舌骨筋、そして最も強く挙上させるのは甲状舌骨筋であるという点で緒家の報告は一致している。嚥下初期にはまずオトガイ舌筋が収縮し、次いでオトガイ舌骨筋が収縮する。挙上第1相・第2相がそれぞれ主としてオトガイ舌筋・オトガイ舌骨筋の収縮によると思われるが、この際すでに喉頭もわずかながら挙上を開始しておりこれは舌骨が喉頭を牽引するように引き上げていくためと思われる。このように舌骨と甲状軟骨の動きはわずかに舌骨が先行し、甲状軟骨はそれに追従するような形で運動を開始する。このあと甲状舌骨筋にて喉頭はさらに引き上げられる。吉田はオトガイ舌骨筋の収縮はbolusお先端が口峡を通過する時点より常に速いと報告しており、これはbolusがまだ口腔内にとどまっている時期に舌骨が挙上第2相を開始することを裏づけている。舌骨の挙上第2相開始と嚥下第2期の開始との差は平均0.13秒である。またこのことは口腔内にbolusがあるときからすでにbolusの受け入れ体制が整っているものと考えられる。G.結語正常者の嚥下における舌骨・喉頭運動を分析し次のような結果を得た1.舌骨運動は上下方向では緩徐な挙上期(挙上第1相)、急速な挙上期(挙上第2相)、最大挙上位置にとどまる時期(停滞期)、急速な下降期(下降第1相)、緩徐な下降期(下降第2相)に分かれ前後方向では後退期(後退相)、前進期(前進相)、最大前進位置にとどまる時期(停滞相)、元の位置に復元するための後退期(復元後退相)に分かれる。2.嚥下時にはbolusの通過を助けるためと誤嚥防止のために下咽頭腔の拡大および喉頭を挙上させる必要がある。これたの作用は舌骨の上下・前後運動に反映されていると考えられる。すなわち舌骨が大きく前進することにより下咽頭腔を拡大し、挙上することにより喉頭を引き上げる。誤嚥防止。3.bolusの先端が口峡を通過する以前に舌骨の挙上第2相は始まっている。

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    • dysphagia関連6(自発嚥下時における顎筋、舌骨筋群活動の時系列的検討

      自発嚥下時における顎筋、舌骨筋群活動の時系列的検討The time course of jaw and hyoid muscle activities during swallowing following mastication日本補綴歯科学会誌Vol.45(2001)No.5p582-291https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjps1957/45/5/45_5_582/_pdf摂食咀嚼嚥下は口腔から咽頭への一連の過程として機能するため、嚥下を考える上で嚥下咽頭期のみならず摂食咀嚼機能を含めた嚥下口腔期を理解することが重要である。咀嚼に引き続く自発的な嚥下の際の顎筋、舌骨筋群の活動様式を検索したところ、時系列的に一定の協調運動を行っていることが明らかになった。この活動様式の把握は摂食咀嚼嚥下障害の診断、治療に有意義な情報をもたらすと考えられる。抄録 目的:咀嚼運動に引き続く自発的な嚥下の際の顎筋、舌骨筋群の時系列的な活動様相を明らかにする。方法:被験者は成人有歯顎者9名。被験食品は直径、ゼリー強度、ゾル粘度を一定に調整した球状寒天。被験者には習慣性咀嚼側での咀嚼を指示し、食品摂取から自発的な嚥下終了まで、いずれも両側の咬筋、側頭筋前部、舌骨上筋群・下筋群の筋活動と下顎運動、喉頭運動を同時記録した。結果:咀嚼運動に引き続く自発的な嚥下に際し、咀嚼時とは異なる開閉口ストロークが観察され、この時期に舌骨上筋群・下筋群に第一の活動が認められ、舌骨上筋群・下筋群の順に活動を開始し、ほぼ同時に活動が停止した。次いで閉口動作に伴って、咬筋、側頭筋前部、が活動を開始し、遅れて舌骨上筋群・下筋群が第二の活動を開始し、咬筋、側頭筋前部、舌骨上筋群が静止した後、遅れて舌骨下筋群が静止した。この間下顎は閉口位を保持し、二峰性の喉頭運動波形が観察された。舌骨上筋群・下筋群の第一活動期はtransport stroke、咬筋、側頭筋前部の活動期および舌骨上筋群・下筋群の第二活動期は下顎の固定、口腔送り込み期、嚥下咽頭期が形成されていると推察された。結論:咀嚼から自発的な嚥下に至る過程において顎筋、舌骨筋群は時系列的に一定の協調活動を行っていることが明らかとなった。考察1.方法について1)被験食品について嚥下運動は咀嚼運動と同様、被験食品の性状によって影響を受けることが知られており、嚥下動態に関するこれまでの研究においても、液体として水、舌と口蓋で押しつぶしうる食品としてプリン、固形食品としてレーズン、マフィン、リンゴ、クッキーなどさまざまな被験食品を用いて比較検討がなされてきている。本研究では今後被験食品の量や硬さ、粘度が咀嚼運動に引き続く自発的な嚥下に及ぼす影響を明らかにすることを念頭におき、これら食品の性状を任意に調整しうる寒天を被験食品とした。Daetは大きさ、硬さを任意に変化させた球状寒天を被験食品として用い、食品性状が咀嚼時の下顎運動、顎筋活動に対する影響を報告しており、本研究はこれらの結果と比較検討を行いうる利点も有する。また本実験の嚥下閾あるいは自発的な嚥下回数に関する結果は、今回の被験食品がほぼ一定の性状で調整され、咀嚼の過程を通した食品性状の変化が各試行において一定であり、ほぼ一回の嚥下動作で全量の嚥下を終了しうる正常を備えていることを示している。すなわち今回用いた被験食品は本実験の目的に適した条件を備えたものであったと考えられる。2)被験筋について嚥下に際し、舌骨上筋群は舌骨、喉頭の引き上げ、舌骨下筋群は舌骨の固定や喉頭の引き下げ、といった機能を担っている。また嚥下時には下顎は引き上げられ、上下顎歯が接触する下顎位、すなわち嚥下位に固定される。今回の実験では被験筋として舌骨上筋群・下筋群、咬筋、側頭骨筋前部を選択し、表面電極により筋活動を導出した。山田、塩沢らは、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋が、舌骨上筋群のなかでは特に嚥下咽頭期に対応した活動を示すとしている。しかしながらこれらの筋は深部に位置し、筋活動を導出するためにはワイヤー電極を筋内に刺入する必要がある。表面電極を用いてこれらの筋活動を導出した場合、塩沢らも報告しているように記録された活動は周囲の舌骨上筋群の活動も含んだ集合電位であることは否定できない。そこで、被験者間での差がより少なく、再現性があり、侵襲がないことを念頭に表面電極を顎二腹筋前腹相当部位に貼付し、舌骨上筋群の筋活動を導出、検討した。同様に、舌骨下筋群は胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋、甲状舌骨筋などから構成され、各筋活動を導出するもはワイヤー電極の刺入が必要である。そこで再現性のある方法として、Craryらの報告を参考に表面電極を貼付し、舌骨下筋群の筋活動を導出、検討した。3)喉頭運動の記録について喉頭運動に伴う甲状軟骨の上下動は、嚥下咽頭期を表す重要な指標である。本実験の結果から、各試行ごとに咬筋、側頭筋前部の活動期と舌骨上筋群、舌骨下筋群の第二活動期において二峰性の波形が明瞭に記録された。これは食物が咽頭通過後、甲状軟骨の下方への動きに伴う波形である。この波形は咀嚼運動中および舌骨上筋群・下筋群の第一活動期においては認められず、体動や振動によるものとは明確に区別することができた。すなわちこの波形により嚥下咽頭期を確実に把握できたものと考えられる。なお記録される波形は記録装置を貼付した皮膚の下を甲状軟骨が通過する際の圧の変化である。このため記録装置の貼付位置や頭位変化などによる頸部皮膚の緊張状態の変化により記録装置と甲状軟骨との位置関係が変化する。したがって今回の実験では喉頭運動に関する時間的分析は行わなかった。喉頭運動と筋活動の時間的な関係についての詳細な検討はデジタルビデオやX線ビデオ(Videofluorography)などを用いた喉頭運動の視覚的記録方法により行うべきであろう。2.実験結果について1)各被験者の嚥下閾、咀嚼運動中の嚥下回数および咀嚼に引き続く自発的な嚥下回数河村ら、塩沢ら、Daetは同一試料を摂取した場合の嚥下閾は被験者ごとに差異が認められるが各被験者においてはほぼ一定であると報告している。また嚥下閾には食品の粉砕度や性状が深くかかわってくるとされる。本実験の結果は、咀嚼から嚥下に至る過程が各被験者において比較的安定していたことを示すものである。またPalmerらは水、ピーナッツ、マフィン、リンゴ、ガムを、Hiimaeらは、水、チキン、バナナ、クッキーを被験食品として用い、X線ビデオ(Videofluorography)により咀嚼から嚥下に至る過程の食物動態を観察した結果、咀嚼運動中に食塊の咽頭への送り込みは認められたが、咽頭を通過する狭義の嚥下は認められなかったと報告している。谷本らはペースト状食品としてプリン、軟性線維性食品としてレーズンおよびその混合食品を被験食品として用い、開閉口筋群の活動時期の検討から、咀嚼運動中に嚥下を伴う運動が認められると報告している。本実験では咀嚼運動中には嚥下咽頭期を示す二峰性の明らかな喉頭運動波形は認められなかった。また咀嚼終了後に二回連続した嚥下が観察された割合は6.7%であった。これらinterposed swallow、咀嚼に引き続く自発的な嚥下回数に関しては、食品性状、量を変化させた今後の詳細な検討が必要である。2)咀嚼運動に引き続く自発的な嚥下時における顎筋、舌骨筋群の時系列的な活動様相Palmerらは摂食、咀嚼から嚥下に至る一連の過程において、咀嚼および嚥下時の下顎、舌の運動、食物の動態と各筋筋活動との関係を検索している。また虫本ら、古山も、咀嚼から最終嚥下終了までの各サイクルごとに開閉口筋活動の同期性を判定し咀嚼傾向と嚥下傾向は判別できること、食品の性状、量の違いによる咀嚼傾向と嚥下傾向の特徴を評価できること、さらにこの嚥下動作の評価から咀嚼機能の加齢変化が評価できると報告している。Palmerらは各開口ストロークの最大開口点を基準として分析しており、本研究の分析とは表現方法が異なっているが、食物の咽頭通過が観察される嚥下ストロークでは閉口に伴い咬筋活動が観察され、その後閉口位に至り、オトガイ舌骨筋、顎二腹筋前腹が著明な活動を示し、嚥下咽頭期に至るとしている。またこの嚥下ストロークでは咬筋活動は閉口後も持続し、顎二腹筋活動の初期には重複して観察されるとしている。また虫本らの報告においても、喉頭運動が観察される嚥下ストロークでは、咬筋、側頭筋後部の筋活動と、顎舌骨筋、顎二腹筋前腹の筋活動の活動開始時期が、咀嚼ストロークと比べ時間差が少なく、各被験筋の筋活動の重複が認められるとしている。今回の結果で、喉頭運動が観察される咬筋、側頭筋前部の活動期、舌骨上筋群・下筋群の第二活動期の様相もこれらの報告に一致するものであった。さらに本研究ではこれらの筋群の活動開始時期、静止時期の違いを明らかにしえた。すなわちこの活動期においてはまず下顎を固定するために閉口筋である咬筋、側頭筋前部が活動し、舌骨上筋群の活動により舌骨を上方へ移動させ、舌による食塊の咽頭への送り込みが生じ、嚥下咽頭期が形成されていると考えられる。一方、これらの活動に先行して認められた舌骨上筋群・下筋群の第一活動期はPalmerらによるtransport strokeに相当するものと考えられる。Palmerらの報告では嚥下ストローク直前のストロークでは、開口開始から舌が口蓋前方から後方へ押し付けられ、食物が咽頭へ移送される様子が観察された。そのストロークでは舌運動に伴い顎二腹筋前腹、オトガイ舌骨筋には二峰性の活動が認められ、その活動を反映して開口運動軌跡も咀嚼ストロークとは異なり、いったん閉口に転じ、閉口位に至る前に再び開口に転じるとしている。本実験においても今後被験食品の性状の変化が顎筋、舌骨筋群の活動に影響を及ぼすことも考えられ、詳細な検討が必要である。咀嚼運動から嚥下に至る顎口腔機能を考える上では嚥下咽頭期を含む狭義の嚥下のみならず、その準備段階としてのこれらのストロークを含めた運動に対する検討も必要である。また一般の被験食品を用いた際には厳密には食品の性状を規定しこれらを変化させることは難しい。今回得られた知見は今後被験食品の性状を変化させた際の研究の基礎となるものであり嚥下障害の診断治療を行ううえで有意義な情報となるものである。Ⅴ.結論1.咀嚼に引き続く自発的な嚥下に際し、咀嚼に伴う最後の咬筋、側頭筋前部のバースト状活動の静止とほぼ同時期に、舌骨上筋群・下筋群は開口動作に伴う活動(第一活動期)を開始し、閉口動作に移行するまで比較的長く持続した。その間、咬筋、側頭筋単于は活動を静止したが、閉口動作に伴って活動を開始し、比較的長く接続した。この間、下顎は閉口位を保持した。舌骨上筋群・下筋群は第一活動期の後、活動がいったん静止し、その後、閉口位が保持されている時期にさらなる活動(第二活動期)が観察された。この時期に嚥下咽頭期の喉頭運動を反映する甲状軟骨の上下動を伴う二峰性の波形が観察された。これらの結果から舌骨上筋群・下筋群の第一活動期はtransport strokeに相当し、咬筋、側頭筋前部の活動期および舌骨上筋群・下筋群の第二活動期に、下顎の固定および口腔送り込み期と嚥下咽頭期が形成されると推察された。2.本実験の結果から咀嚼から自発的な嚥下終了に至る過程における顎筋、舌骨筋群の時系列でみた協調活動様式が明らかになった。Ⅱ.方法1.被験者および被験食品被験者は顎口腔系に機能以上とその既往を認めない健康な成人有歯顎者9名(男性9名。年齢23-32歳、平均25.4±2.2歳)とした。被験食品にはアクリル樹脂製の型枠(工匠プラスチック,仙台,特注)にて球状(直径15mm)に調整した寒天を用いた。食品の硬さはゼリー強度730g/cm3、粘度はゾル粘度20cpと一定に設定した。2.顎筋、舌骨筋群筋活動、下顎運動および喉頭運動の記録被験者をシールドルーム内の歯科用治療椅子に頭部を固定することなく安静状態で座らせた。つまようじに刺した被験食品を被験者に手渡し、食品摂取から自発的な嚥下が狩猟するまでの顎筋、舌骨筋群の筋活動と下顎運動、喉頭運動をデータレコーダ(TEAC,XR7000)に同時記録した。記録は各被験者について5試行ずつ行った。このとき被験者には、習慣性咀嚼側による咀嚼を指示した。また下顎運動記録の基準位を得るため各試行の開始前と終了後に、咬頭□合位で下顎を保持することを指示した。筋活動は、咬筋、側頭筋前部、舌骨上筋群および舌骨下筋群から表面筋電図を両側性に導出し、記録した。咬筋、側頭筋前部の筋活動は、電極間距離20mmに固定した直径2mmの銀-塩化銀皿状表面電極を、筋繊維走行に沿って貼布し、双極導出した。舌骨上筋群の筋活動は顎二腹筋前腹相当部位に、舌骨下筋群の筋活動は甲状軟骨の側方約1cmの胸骨舌骨筋相当部位に、それぞれ電極を貼布して双極導出した。導出した筋電図は生体信号用増幅器(日本電気三栄,バイオトップ6R12)にて5~1,500Hzで帯域濾過後増幅し、メモリスコープ(日本光電,VM-68G)上で観察した。下顎運動は、Mandibular kinesiograph(Myotronics,MK-5)を用いて、下顎切歯点の三次元的な運動軌跡として記録した。喉頭運動は高感度圧トランスデユーサー(共和電業,PSL-200GA)を組み込んだ自作の圧記録装置を甲状軟骨上方の皮膚上に貼布し、嚥下咽頭期にみられる甲状軟骨の上下動に伴う圧変化とした。3,分析実験終了後、筋電図、下顎運動軌跡記録をサンプリング時間0.5msecでA/D変換し、シグナルプロセッサ(日本電気三栄7T18)に入力し、分析に供した。本研究での分析項目は、各被験者の食品摂取から嚥下開始までの咀嚼回数、すなわち嚥下閾、および嚥下時の開口開始点を基準とした各日献金の活動開始および静止までの時間、活動持続時間などの筋活動の時間的要素とした。これらを比較することにより時系列的な顎筋、舌骨筋群の活動様相について検索した。嚥下閾は下顎運動軌跡の垂直成分波形から咀嚼回数を算出することにより求めた。各被験筋の筋活動開始、静止までの時間は、シグナルプロセッサのモニターに表示した下顎運動軌跡の垂直成分上で嚥下時の開口開始点、筋電図上で筋活動開始点、静止点をカーソルを用いて手動で指定することにより求めた。なお筋活動開始点はbaseline activityの2SDを超えた時点、筋活動静止点はbaseline activityの2SDに戻った時点として設定した。各被験筋の筋活動開始、静止までの時間は、被験者9名それぞれ5試行の合計45試行の平均値として求めた。統計学的解析には各被験者における5試行の平均値を代表値として用い、分散分析(ANOVA)とTukey testによる多重比較を用いた。Ⅲ.結果1.各被験者の嚥下閾、咀嚼運動中の嚥下回数および咀嚼に引き続く不発的な嚥下回数各被験者の平均嚥下閾を表1に示す。嚥下閾は4.6±0.5~19.2±1.6回に分布し、被験者間での嚥下閾は異なった。しかし、各被験者個々の標準偏差は小さく、全被験者において今回の比肩食品を咀嚼、嚥下する過程は比較的安定していた。さらに本実験では、筋電図、喉頭運動波形から咀嚼運動中の嚥下interposed swallowは認められなかった。また、咀嚼に引き続く自発的な嚥下は全45試行中3試行(6.7%)のみで、2回連続する嚥下として観察された。ほかのすべての試行では嚥下は1回で終了していた。なお2回嚥下が観察された試行に関しては1回目の嚥下を対象として分析した。2.自発的な嚥下時の顎筋、舌骨筋群活動咀嚼に引き続く自発的な嚥下の際の顎筋、舌骨筋群活動の一例を図1に示す。嚥下時の下顎運動軌跡は、咀嚼運動に伴う開閉口ストロークに引き続き、持続時間が比較的長い開閉口ストロークとして観察された。このときの運動経路は咀嚼ストロークとは明らかに異なり、この図のように途中でいったん閉口動作に伴うものが数多く観察された。次いで閉口位に至った後、喉頭運動記録装置による二峰性の波形が明瞭に観察された。これらの開閉口動作、喉頭運動に対応し、顎筋、舌骨筋群には以下のような活動がみられた。咬筋、側頭筋前部の咀嚼に伴う最後のバースト状活動の静止とほぼ同時期に、舌骨上筋群、舌骨下筋群は開口運動に伴った活動(第一活動期)を開始し、比較的長く持続した。その間、咬筋、側頭筋前部は活動を静止していたが、下顎が閉口動作に移行し閉口位を保持している時期に、持続時間の比較的長い活動が認められた。舌骨上筋群、舌骨下筋群は第一活動期の後、いったん活動が静止したが、咬筋、側頭筋前部の活動期とほぼ同時期に、さらなる比較的持続時間の長い活動(第二活動期)が観察された。喉頭運動波形はこの活動期に同期して記録された。これらの下顎運動、喉頭運動に対応した筋活動の様相はすべての被験者において同様に認められた。3.自発的な嚥下時の顎筋、舌骨筋群活動に関する時系列的分析1)舌骨上筋群、舌骨下筋群の第一活動期とこれらに先行する咬筋、側頭筋前部の活動期について本研究では舌骨上筋群、舌骨下筋群の第一活動期とこれらに先行する咬筋、側頭筋前部の活動期における各被験筋の活動開始点、活動静止点を第一の分析項目として設定した。図1いこれらの時系列的な活動様相に関しての分析区間(点線で囲まれた部分)を示す。なお計測にあたっての時間的な基準点は、嚥下時の開口開始点とした。図2ならびに表2に9名の被験者各5試行の平均値を示す。票2は左右側すべての被験筋の活動開始点、静止点の平均時間を示したものである。いずれの筋においても左右側間には有意な差を認めなかった。そこで以下に右側被験筋間での時系列的な協調活動様相を述べる。舌骨上筋群、舌骨下筋群の第一活動期は、舌骨上筋群は開口開始に130±110msec先行して活動が開始し、650±340msec後に活動が静止した。舌骨下筋群は開口開始に30±140msec先行して活動が開始し、700±350msec後に活動が静止した。活動開始までの時間は被験筋間で統計学的有意差が認められた(ANOVA,p>0.05)すなわち咀嚼から嚥下へと移行する時期において、開口運動に伴う舌骨上筋群の活動がまず開始し、次いで舌骨下筋群が活動を開始した。これらの開始時期とほぼ同時に咀嚼運動に伴う最後の咬筋、側頭筋前部の活動が静止した。その後、舌骨上筋群は約780msec、舌骨下筋群は約730msec活動が持続し、ほぼ同時に活動が静止した。2).咬筋、側頭筋前部の活動と舌骨上筋群、舌骨下筋群の第二活動期次に、咬筋、側頭筋前部の活動期と舌骨上筋群、舌骨下筋群の第二活動期を第二の分析項目として設定した。分析区間を図1(実線で囲まれた部分)に、結果を図3、表3に先と同様に示す。咬筋、側頭筋前部は開口開始からそれぞれ830±600、840±580msec後に活動を開始し、1,760±760、1,800±740msec後に静止した。咬筋を基準として舌骨上筋群、舌骨下筋群の第二活動期を比較すると、舌骨上筋群は咬筋の活動開始から200±170msec遅れて活動を開始し、舌骨下筋群はさらに90±120msec遅れて活動を開始した。これらの筋活動は、咬筋の活動静止から舌骨上筋群が160±290msec、舌骨下筋群は210±280msec遅れて静止した。また最後の咀嚼ストロークに伴う咬筋、側頭筋前部の活動が静止した後、咬筋、側頭筋前部が活動を開始するまでの時間は、咬筋が900±690msec、側頭筋前部が920±670msecであった。この活動期における活動開始、活動静止までの時間は、被験筋間で統計学的有意差が認められた(ANOVA,p<0.05)多重比較の結果、咬筋と舌骨上筋群間、咬筋と舌骨下筋群間、側頭筋前部と舌骨上筋群間、側頭筋前部と舌骨下筋群間の活動開始点、咬筋と舌骨下筋群間の活動静止点に統計学的有意差が認められた(Turkey test,p<0.05)すなわち嚥下咽頭期を含むこの時期においては、咬筋、側頭筋前部の活動がまず先行して開始し、これらの活動は、約850-960msec持続し、咬筋、側頭筋前部、舌骨上筋群が活動を静止した後、舌骨下筋群の活動が静止した。

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    • dysphagia関連5(嚥下時における舌骨の運動様相と食塊移送の検討)

      嚥下時における舌骨の運動様相と食塊移送の検討Spatial and temporal relationship between swallow-rellated hyoid movement and bolus propulsion during swallowing日本顎口腔機能学会誌Vol.20(2015)No.1p22-32https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka1947/90/5/90_5_669/_pdf抄読 本研究は、嚥下障害のある患者と健常者の舌骨運動時間と距離、舌骨位、および食塊移送のタイミングを比較することにより嚥下障害における病態の1つと考えられる舌骨位の下垂が嚥下機能にどのように影響しているかを検証することを目的とした。対照は嚥下障害を主訴として来院され嚥下造影検査を行った65名の患者(以下患者群)、対照として健常被験者10名(以下健常群)とした。また第4頸椎前下縁を基準として舌骨位を計測し、患者群と健常群で比較を行った。患者群では食塊移送時間が口腔、咽頭ともに延長しており、更に食塊の咽頭流入は嚥下反射惹起を示す急速な舌骨挙上と比べ有意に先行していた。第4頸椎を基準とした場合、患者群と健常者群に明らかな舌骨位の違いは認めなかった。疾患別の検索を行うと嚥下反射以降は各疾患とも類似した舌骨の動きが認められたが、嚥下反射前は複雑な軌跡を示した。いくつかの疾患では嚥下反射惹起前の舌骨の移動距離と移動時間に正の相関関係が認められたため、舌骨位が嚥下反射惹起遅延に影響を与えている可能性が考えられた。Ⅰ 緒言嚥下は広義には食塊を口腔から胃へ搬送する一連の消化管活動を指す。中でも食塊が咽頭を通過する協議の嚥下、嚥下咽頭期には、咽頭・喉頭の筋の他、舌、舌骨筋群などが関与し、嚥下のパターン発生器の制御舌で一定の活動様式を示す。その際、咽頭筋や舌筋とともに舌骨上筋群が収縮して舌骨が上前方に移動し、これに追従する形で舌骨下筋群の収縮により喉頭が挙上し、併せて輪状咽頭筋の弛緩と収縮が連続的に生じて食塊は食道入口部を通過する。一方これらの活動は、食塊が喉頭に進入するのを防ぐ気道防御にも関わっており、複雑で緻密に制御された動きは、ヒトを含めたすべての哺乳類でわずか0.6から1.0秒程度で遂行される。脳血管疾患や加齢などの理由によりこの嚥下反射時の一連の活動の協調性が崩れることで、食塊の咽頭残留、喉頭侵入や誤嚥を生じ、結果、死の原因ともなりうる誤嚥性肺炎を招く。以上のような嚥下咽頭期は嚥下障害の臨床において最も大切な評価対象となる。嚥下障害における、主たる病態のひとつに喉頭や舌骨下垂があげられる。舌骨・喉頭複合体の前方移動量の低下は、喉頭侵入、誤嚥のリスクを高めていたという報告や、頭頸部腫瘍術後患者は舌骨移動量の減少が認められたという報告がなされている。しかしながら食塊移送に伴う嚥下反射のタイミングで示される時間的要素と、舌骨位やその移動量で示される空間的要素との協調性を定量的に調べた報告は少ない。嚥下障害を主訴に来院された患者と健常者の嚥下動態を比較して、安静時の舌骨位や嚥下咽頭期における舌骨の運動様相および食塊移送との協調性について検証することを目的とした。Ⅱ.研究方法1.被験者および検査方法対象は嚥下障害を主訴として来院され、嚥下造影Videofluorography,VFの実施に同意した65名の患者(男性55名、平均年齢71歳)(患者群)および対照として20-30代の健常被験者10名(男性8名、平均年齢29歳)(健常群)とした。患者群の内訳は神経筋変性疾患16名、脳血管疾患12名、口腔腫瘍術後8名、呼吸器疾患10名、消化器疾患10名、その他の疾患9名であった。VF検査時点で、いずれの患者も直接訓練を含む何らかの経口摂取を行っていた。また患者群においてはVF施行時に誤嚥がみられなかった症例を選択した。その理由として検査食であるとろみ付液体を誤嚥するような重度の嚥下障害患者は舌骨・喉頭の運動量が極めて小さい場合が考えられ、それらのデータを含めることによる分散の増大、舌骨位計測の偏りを避けるためである。(略)被験者は90度座位、頸部中間位の姿勢をとらせた。検査食は2%w/wのとろみ付与(トロミアップパーフェクト、日清オイリオ)を施した40%w/v硫酸バリウム溶液3mLとし、検査者が被験者の舌下部にシリンジにて注入した後に、被験者が各自のタイミングで嚥下(Dropper type swallow)するように指示し、VF側面画像(図1)の撮影を行った(ULTIMAX 80,東芝メデイカル)撮影時、おとがい下部正中に直径11mmの鉄球を貼布し、これを実測値計測の際の基準とした。撮影された映像を30コマ/秒のサンプリング速度にてパソコンに取り込んだ。2 画像の解析方法画像解析は画像ソフト(ImageJ ver.1.4.5,National Institutes of Health)を用いて行った。画像結果よりA 随意嚥下開始に伴う舌尖の運動開始、B 舌骨挙上運動開始、C嚥下反射開始に伴う急速な舌骨挙上開始、D舌骨の最前上方位到達、E舌骨の急速下行開始、F嚥下終了後の舌骨安静位、の各時刻を舌尖の運動開始を基準として計測した。(図2)舌骨位および運動の計測に際し、過去の報告に基づき、第4頸椎の前下縁を原点、第2頸椎および第4頸椎の前下縁を通過する直線をY軸、Y軸に直行して原点を通過する軸をX軸とした座標系を設定した。各計測項目の画像における舌骨大角前下縁の座標点を舌骨位とし、原点からのX-Y座標点(mm)で計測した(図1)さらに、食塊移送の状態を調べる目的で、Ⅰ食塊先端が下顎枝後縁を通過(食塊の咽頭流入開始)、Ⅱ食塊後端が食道入口部に到達、Ⅲ食塊後端が食道入口部を通過の各時刻を舌尖の運動開始を基準として求めた(図2)全パラメーターを対象として、健常群と患者群の平均値を比較した。また疾患別の検索では平均値の比較に加え、舌骨挙上開始から急速な舌骨挙上までの舌骨移動時間、および移動距離に関して、値の相関関係を検討した。3.統計検定健常群と患者群の同一のイベント間に要した時間や動きの比較にはマンホイットニーのU検定、同一群内の舌骨運動と食塊流入のタイミングの比較にはウイルコクソン符号順位和検定、舌骨移動時間と移動距離の相関関係はスピアマンの順位相関係数を用いて解析を行い、いずれも5%以上を有意水準とした。Ⅲ.結果1.舌骨の動きと食塊移送にかかる時間経過との比較舌尖の運動開始を基準とした舌骨運動と食塊移送の時間経過を比較すると、患者群では遅延していた。(図3)また各イベント間に要した時間の比較では、健常群に比べ、患者群では舌尖の運動開始から舌骨挙上開始、および舌骨挙上開始から嚥下反射惹起に伴う急速な舌骨挙上までの時間が、有意に延長し、食塊移送にかかる時間も延長していた(図4)嚥下反射開始を示す急速な舌骨挙上を基準として、食塊の咽頭流入の指標となる食塊先端の下顎枝後縁通過を比較すると、健常群では有意差は認められないものの、急速な舌骨挙上が先行する傾向を認めたが、患者群では有意に食塊移送が先行し、嚥下反射惹起前の食塊の咽頭部早期流入傾向を示した。(図5)一方、嚥下反射終了を示す舌骨急速効果開始と食塊後端の食道入口部通過を比較したところ、健常群では有意差は認めないが、食塊移送が遅れる傾向が認められた(図5)また食塊移送に関して患者群では食塊の咽頭内通過時間が有意に延長していた。(図6)2.頸椎を基準とした健常群、患者群の舌骨位の違い第4頸椎を原点とした舌骨運動の軌跡を比較したところ、舌骨最前上方位、安静位を含め、患者群と健常群の舌骨位に有意な差は認められなかった(図7)しかしながら各イベントの舌骨位に関して、患者群では、変動係数がX座標(0.145-0.191)、Y座標(0.412-0.802)で、健常群はX座標(0.080-0.142)、Y座標(0.300-0.997)であり、両群ともY座標ではX座標に比べより大きな個人差が認めた。またX座標に関しては健常群より患者群の方が変動係数は大きく、水平移動量の個人差が考えられた。3.疾患別による舌骨の移動時間と移動距離舌骨移動時間に関して各イベント間に要した時間の比較では、いずれの疾患も健常群と比べると嚥下反射惹起に伴う急速な舌骨挙上までの時間が延長しており、これらに有意差は認められないものの、疾患により、相違を認めた(図8)一方急速な舌骨挙上(反射惹起)以降の各イベントは同様な時間経過となっていた。舌骨の移動軌跡に関しては、各疾患とも反射惹起以降の軌跡に比べ、反射惹起前は、複雑な運動を呈していた(図9)舌骨位の有意差は認めなかったが、患者群は上方への移動量が少ない反面、前方移動量が大きい傾向が認められた。嚥下半反射惹起前の舌骨挙上開始から急速な舌骨挙上までの舌骨移動距離と要した時間との間の相関を調べたところ、呼吸器疾患と消化器疾患では正の相関を認めたが、神経筋変性疾患や脳血管疾患、口腔腫瘍術後では相関関係が認められなかった(図10)Ⅳ.考察1.食塊移送のタイミング患者群では、舌尖の運動開始から舌骨の急速挙上開始まで、すなわち随意運動開始から嚥下反射惹起までの時間が延長していたが、その後の舌骨運動の時間経過、すなわち嚥下咽頭期における舌骨運動にかかる時間については両群間で差が認められなかった。過去の報告では咽頭への食塊流入に対する嚥下反射惹起の遅れにより喉頭侵入のリスクが高まったという報告があり、特に高齢者にその傾向が認められている。また嚥下障害を呈する筋委縮性側索硬化症例では、嚥下反射前の食塊咽頭早期流入、クリアランスタイムの延長があり、喉頭侵入、誤嚥のリスクが高いこと、同様に、脳梗塞患者で誤嚥のある患者は嚥下反射惹起遅延や、咽頭通過時間の延長に加え、喉頭閉鎖時間の短縮を認めたことを報告されている。本研究では患者群において、口腔、咽頭内の食塊移送時間がともに延長していた。特に嚥下咽頭期では咽頭への食塊流入に対する嚥下反射惹起時間の遅延を認め、これらの嚥下運動の協調性が崩れていたことは、喉頭侵入や咽頭残留につながるリスクを増長すると考えられる。咽頭期の食塊移送と喉頭挙上、咽頭収縮のタイミングに関して、食塊の物性の違いにより嚥下タイミング、喉頭挙上時間の変化が生じ、食塊量が多くなるほど移送時間が延長することが知られている。本研究では1種類の検査食であったが、食塊の物性や量の違いによる嚥下のタイミングの変化や、舌骨の運動様相の検索も必要である。2.舌骨位測定の基準と舌骨移動量舌骨位は健常群と患者群で有意な差が認められなかった。その理由の1つは基準点の設定位置の問題が考えられた。これまでの報告では舌骨位やその運動量測定の基準点を頸椎としているものが多く、本研究でもその中でも特に報告の多い基準点の1つである第4頸椎前下縁を原点とし、第二、第四頸椎前下縁を結ぶ線をY軸とするものを選択した。一方で、第三頸椎上端と第五頸椎下端をY軸とし、第五頸椎を原点としている報告もある。Steeleらは頸椎間距離が男性で女性よりも有意に大きかったと述べており、健常者においても頸椎椎間板の加齢変化として狭小化が生じ、頸椎や、椎間板自体が様々な要因で変化していることが考えられる。本研究の結果においても、舌骨位のY座標の変動係数は健常群、患者群ともに大きく、頸椎や椎間板の男女差や年齢差などが影響した可能性が考えられた。また測定方法に関して、第二・第四頸椎を基準にした場合と、第二・第五頸椎を基準にした場合、舌骨位の計測結果に有意に差が認められている。さらに画像解析痔の測定誤差は考慮しなければならない。健常若年者と健常高齢者を対象としたVF画像を解析し、、カンペル平面を基準面とした場合には舌骨の動きと食道入口部の開大に相関が認められ、嚥下造影検査の基準としてカンペル平面は有用であったと述べた研究がある。一方で、下顎下縁平面を1つの基準として、液体の連続嚥下の際に、舌骨の挙上が、下顎下縁平面を超えない場合に、機械的な喉頭侵入像がより多く認められており、下顎にたいする舌骨・喉頭複合体の挙上量や位置は嚥下動態を反映する可能性は考えられる。舌骨は舌骨上筋群と下筋群により結ばれ、下顎と喉頭の中間位にある解剖学的な点を考慮しても、舌骨・喉頭下垂という病態を考える上で、頸椎を基準として舌骨位を考えることには議論の余地があると考えられた。舌骨の移動量に関しては本研究では健常群における水平移動量が9.56±2.18mm、垂直移動量が16.0±6.7mmであった。健常被験者で同量の食塊3mLの液体を用いた過去の報告では、水平移動量が9.7±1.4mmで、垂直移動量が12.1±1.1mmであり、また過去の評論では5mL以下の食塊のみに注目すると、水平移動量約9.0-18.0mm、垂直移動量が約7.8-18.0mmと幅のある範囲で示されており、これらの値と本研究の舌骨移動量は大きく剥離していないものの、舌骨移動量の計測は、被験者の嚥下機能、年齢層のみならず、検査食の物性や量、計測指標の違いによりその数値は異なると考えられた。また頸椎を基準にした場合、患者群は健常群に比べると舌骨の上方移動量はやや減少し、前方移動量が増加する傾向にあり、過去の報告の健常高齢者のデータと一致していた。前方移動量の増加は加齢、もしくは嚥下機能低下による舌骨・喉頭複合体の挙上不足を補う代償的なものであり、また、これらの個人間の差が患者群の舌骨位のX座標の変動係数にも表れた可能性が考えられた。今後、筋電図や舌圧計測などを駆使して舌骨移動量の違いを評価する方法を考えていきたい。3.舌骨移動時間と舌骨移動距離の関係本研究では患者群において、随意嚥下開始から嚥下反射惹起までの時間が健常群に比べ延長していたが、その後の急速な舌骨挙上以降の舌骨運動の時間経過、すなわち嚥下咽頭期における舌骨運動に関わる時間については両群で差が認められなかった。さらに患者群では健常群に比べ舌骨移動時間や移動距離において標準偏差が大きく、バラツキが認められたため、原疾患による何らかの違いが予測された。嚥下反射惹起前の舌骨位および移動時間に注目した結果、疾患別の違いが認められた。舌骨移動距離に関する過去の報告では、特定の疾患のみに注目した報告が散見され、頭頸部腫瘍術後患者で舌骨挙上、および前方移動量が低下していた。あるいは脳血管疾患患者を対象に誤嚥のある患者は舌骨の挙上時間が短い傾向にあったという報告がある。一方舌骨移動時間に関する既報として、Kendallらは、嚥下障害のある高齢者と健常高齢者、健常若年者の食塊の咽頭流入と舌骨移動のタイミングを比較し、高齢者では食塊の咽頭移送に対する舌骨挙上開始の遅れが有意に認められたと述べている。この報告の中で、嚥下反射惹起の舌骨挙上のサイクル時間に差が認められなかったという結果は、本研究で得られた嚥下咽頭期の舌骨移動時間が健常群、疾患群の両群で差がなかったという知見と一致している。舌骨移動距離と移動時間の相関関係を分析した研究は我々が知りうる限りでは過去に報告例がない。舌骨挙上開始から急速舌骨挙上までの舌骨移動距離が短い患者は、嚥下反射惹起前の舌骨位が、反射惹起地点に近い高位にあり、より短い時間で嚥下反射惹起が可能であり、舌骨移動距離が長い(舌骨・喉頭下垂)患者は舌骨が反射惹起地点より遠く、嚥下反射惹起には時間を要すといえる。今回、呼吸器疾患、消化器疾患に舌骨移動距離と移動時間の間に正の相関を認めたが、神経筋変性疾患や脳血管疾患、口腔腫瘍術後症例では相関が認められなかった。神経筋変性疾患や脳血管疾患は神経学的な問題、口腔腫瘍術後患者は器質的な問題が嚥下反射惹起遅延の理由になり、舌骨位そのものへの影響が少なかったのかもしれない。一方、呼吸器疾患や消化器疾患症例における反射惹起(移動時間)の遅れは、嚥下関連器官の神経学的や器質的な機能低下がないため、舌骨・喉頭下垂を含めた舌骨位(移動距離)の影響が直接反映され、そのことが舌骨移動距離と移動時間の正の相関関係に示されたと考えられる。本研究の限界として以下の点があげられる。1つは対照群を若年健常者としているため、群間の比較では嚥下障害の他に加齢要因が関わってくる可能性を無視できないことである。加えて食塊の物性、量による嚥下動態や舌骨位の違いの検討も必要であろう。今後は健常高齢者を対象として追試を行うことに加え。母集団を増やし、病態に応じた細分類を目指すとともに、スクリーニング検査上の臨床症状との間で対応するパラメーターを検討し、舌骨位などから、嚥下障害パターンの予測、診断の一助となる可能性を期待する。Ⅴ.結果患者群では食塊移送時間が口腔、咽頭ともに延長しており、嚥下運動パターンと食塊位置のバランスが崩れていた。これらは喉頭侵入や咽頭残留につながると考えられた。第四頸椎を基準とした場合、患者群と健常群に明らかな舌骨位の違いは認めなかった。疾患別の検索を行うと、嚥下反射以降は各疾患とも似たような舌骨の動きが見られたが、嚥下反射前は単曲線では示されない複雑な軌跡を示し、反射惹起の遅れはその移動距離と移動時間の相関関係から舌骨位の影響が大きいと考えられる疾患が存在した。

      テーマ:
    • dysphagia関連4(ヒト茎突舌骨筋の舌骨停止部のSEM観察)

      ヒト茎突舌骨筋の舌骨停止部のSEM観察   Scanning electron microscopic study of the insertion of the human stylohyoid muscle into the hyoid bone  歯科基礎医学会誌Vol.43(2001)No.1 p8-15 https://www.jstage.jst.go.jp/article/joralbiosci1965/43/1/43_1_8/_pdf 抄録 舌骨は嚥下や発声において複雑な運動を示す。 茎突舌骨筋は舌骨を後上方に引き上げる筋で、舌骨に付着する部位はこれまで明確にされていなかった。 SEMを用いて観察した結果、茎突舌骨筋は正中部を除く舌骨体下面に広く付着していることが明らかになった。 この筋の付着部に熱さ0.5-1mm、長さ10-17mmn線維軟骨塊が舌骨体の下面に沿って求められた。 茎突舌骨筋の腱線維束は線維軟骨に入る前に、他の舌骨付着筋と錯綜していた。 また線維軟骨塊の内部においても同様の錯綜が認められた。 このように線維軟骨塊に多くの筋が入り込むことは、嚥下運動などにおいて、筋で指示されている舌骨がその位置を変える運動を円滑にしている。 嚥下運動において舌骨は同時に回転運動を行うことがすでに知られている。 多くの筋が線維軟骨塊に入り込むことは、この線維軟骨塊を固定することを可能にしている。 したがって舌骨は線維軟骨塊を軸として、オトガイ舌骨筋や甲状舌骨筋により前後に回旋すると考えられた。   緒言   舌骨を含む喉頭領域の運動は嚥下や発声に大きく関与しており、その運動は古くからX線テレビや映画などを用いて2次元的、3次元的に調べられてきた。 またヒトと他の動物との比較解剖学的な研究からヒトとサルの舌骨は他の骨と関節を持たず、筋で吊り下げられていることが指摘されている。 このことは舌骨の運動が3次元的でその解析が難しいことを示唆している。 このような舌骨の複雑な運動を行うために多くの小筋、舌骨上・下筋や咽頭収縮筋が舌骨に付着している。 しかしこれらの筋の舌骨付着部については多くの報告があるが、成書においての記載は一致していない。 最近ネアンデルタール人が言語を発したかどうかについて論争が、舌骨の形態をもとにして活発になっているように、 舌骨への筋の付着部を明らかにすることは、舌骨の運動を考察する上で重要である。 また嚥下運動時などの舌骨の位置変化や回旋運動が明らかにされているが、その考察は行われていない。 舌骨体は矢状断面において「く」の字形に曲がっている。 このため舌骨後面はくぼんでいる。 この舌骨後面は筋がなく、喉頭脂肪体を入れる場を提供している。 これ以外の舌骨体は筋に覆われている。 つまり舌骨体前面はオトガイ舌骨筋が広く付着し、舌骨体上縁にはオトガイ舌骨筋の下部筋線維束が停止する。 これ以外の舌骨上・下筋は、舌骨の全面下部に順次付着し、それぞれの筋の付着部は交錯しないと考えられていた。 しかし舌骨体下縁においてオトガイ舌骨筋の一部と顎舌骨筋後部筋側、それに胸骨舌骨筋や肩甲舌骨筋がそれぞれ重複して停止することが報告されている。 このことから舌骨の筋付着部位は再検討の必要があると考えられる。   舌骨上・下筋のなかで、オトガイ舌骨筋と顎舌骨筋については再検討がなされているが、 そのほかの筋については行われていない。 そこで、舌骨上筋の1つである茎突舌骨筋についての再検討を行うことにした。 この筋の付着部の位置については、舌骨体上縁、舌骨体と舌骨大角の結合部付近の下部、 それに舌骨大角の舌骨体基部と、種々の報告があり、一致していない。 しかもこれまでの方法は肉眼的な解剖をもとに、付着部に小孔などで印をつける方法をとっており、多くの小筋が付着する舌骨においては、この方法は適切でない。 そこで本研究ではSEMを用いて茎突舌骨筋の舌骨付着部を明らかにし、他の舌骨上・下筋とともに、嚥下や発声における舌骨の運動に茎突舌骨筋がどのように関与しているかについて考察を行た。   材料と方法   (略)解剖学実習用の成人遺体13体(49歳-93歳まで)を使用した。 舌骨上筋を剖出して観察したあと、舌骨下縁の直下で水平断して頭部をはずし、その後、舌骨と舌骨上筋を取り出した。 これらは茎突舌骨筋を剖出してからデジタルマイクロスコピー(Keynence社,VH-7000)を用いて撮影を行った。 次に、茎突舌骨筋以外の筋を舌骨から取り除き、Plamk-Rychlo液で2日間脱灰した後、中和処理した。 茎突舌骨筋はその舌骨付着部を1cmほど舌骨側に残して取り去り、この筋の腱が舌骨に入る方向に沿って、前頭断に近い方向で切断した。 この場合、舌骨体は少し弯曲しているので、舌骨の正中部から大角の基部までができるだけ1つの切断面に入るように、舌骨の正中部の前面と舌骨大角の基部の後面を結ぶ線で、舌骨を前頭断に近く切断した。 これらの試料はタンニン・オスミウム法で導電染色したあと、アルコール系列で脱水し、t-ブチルアルコールを通して凍結乾燥を行った。次に金パラジウムを薄く蒸着し、走査型電子顕微鏡(日立S3500N)で観察と撮影を行った。   考察   茎突舌骨筋と顎二腹筋後腹における両筋の位置関係は、多くの成書において、茎突舌骨筋の舌骨付着部が二分して顎二腹筋を挟み込むとされている。 しかし日本人においては、茎突舌骨筋が顎二腹筋の内側を通るものが70%あるいは58.5%と報告されており、人種差のあることが知られている。 今回用いた試料は、例数が少ないが、26例中22例(84%)で茎突舌骨筋が顎二腹筋の内側にみられたことから、典型的な日本人の型を示しているといえる。 この茎突舌骨筋が舌骨に付着する部位について、これまで種々の異なる報告があり、一致した見解が得られていなかった。 今回の観察により茎突舌骨筋の付着部は茎突舌骨筋と顎二腹筋の位置関係に関わらず、線維軟骨塊(Fig.11:*)を介して、 正中部を除く舌骨体底に広く付着していることが明らかになった(Fig.11:2) またこの部位には胸骨舌骨筋や肩甲舌骨筋が付着し、オトガイ舌骨筋の一部と顎舌骨筋が、線維軟骨塊を介して広く付着することも明らかにされている。 したがって、舌骨下縁の線維軟骨塊には、左右やや後方から茎突舌骨筋、左右やや前方から顎舌骨筋、前方からオトガイ舌骨筋、 そして下方から胸骨舌骨筋や肩甲舌骨筋が入り込むことになる。 この線維軟骨塊は、微細な線維の集合体として観察されたが、走行の異なる線維束が混在していたことから、線維軟骨塊に入り込む各筋の腱線維が線維軟骨塊のなかで交錯していることが明白であった。 これは顎舌骨筋の停止部にみられる形態と一致している。 一般に近の付着部位では筋繊維に続く腱線維、線維軟骨、石灰化した線維軟骨、そして骨と並んでいる。 これらの報告では線維軟骨の軟骨細胞は線維の方向に沿って並ぶが、舌骨の線維軟骨塊の軟骨細胞は散在し、不規則に配列していた。 これは腱背に即が線維軟骨塊のなかで錯綜していることを示すものである。 また線維軟骨塊に入り込む前の段階でも、各腱線維束が錯綜していたことから、茎突舌骨筋は線維軟骨塊に入る前と、入ってからの両部位において他の筋の腱線維と交錯することで、線維軟骨塊の強固に結合していると考えられた。 四足動物に比べてヒトの喉頭部の形態は特殊であり、舌骨が頭蓋骨と関節を作らないことと、気道が屈曲していることなどの特徴がある。 四足動物の茎突舌骨筋はヒトに比べて筋束の発達が悪く、イヌでは退化的でさえある。 これに対してヒトとサルの茎突舌骨筋は発達がよい。 一方哺乳動物のなかで舌骨が頭蓋骨から遊離しているものは少なく、ヒトとサルでみられる。 このように茎突舌骨筋の発達と舌骨の頭蓋からの遊離は何らかの関連性がありそうである。 四足動物の舌骨は数個の軟骨によって茎状突起と一体化しており、頭蓋骨と関節で連結している。 さらに舌骨大角が甲状軟骨と関節をもつものも多い。 発生学的に舌骨と茎状突起は連続した第二鰓弓軟骨に由来するので、四足動物の茎状突起を含めた舌骨装置は基本形を保っていりことになる。 この頭蓋に関節する四足動物の舌骨装置は筋で吊り下げられたヒトの舌骨に比べて運動の自由度が少ないことを示している。 四足動物の場合、頭部の気道と喉頭はほぼ垂直に並び、しかも鼻腔と喉頭は位置が低いため、嚥下運動に伴う舌骨の運動は、前後運動(ヒトでは上下運動)が主体になっていると考えられる。 また四足動物では頸部が水平位をとるため、舌骨や喉頭はこれらに直接付着する筋の他に、頸筋膜や深頸括約筋によって頭蓋や頸椎で指示されると考えられる。 また四足動物の舌骨体下縁は茎突舌骨筋の起始部よりも前方(ヒトでは上方)にあることが多いことから、茎突舌骨筋は舌骨の指示よりも主に舌骨を後方に引く働きをしていると考えられる。 これらのことは四足動物の茎突舌骨筋は舌骨の指示にはあまり働かず、主に嚥下時に舌骨を後方へ引いて食塊の乗った舌根部を後方へ引く働きを行っていることを示していると考えられる。 これに対してヒトは発達した茎突舌骨筋をもつ。 ヒトの舌骨は頭蓋と連絡をもたないことが特徴で、これは運動の自由度が高いことを示している。 また四足動物の気道が直線的であるのに対してヒトの気道は屈曲している。 これは直立に伴い頭蓋が前下方に屈曲したために頭蓋底と脊椎のなす角(craniovertebral angle,occipito-vertebral angle)が小さくなったことで生じたと考えられている。 この屈曲によってヒトの喉頭部は下方に押され、舌骨体下縁は第四頸椎体の下縁(成人男性)、または第四頸椎体の中央(成人女性)の高さに位置することになる。 直立によって下降した喉頭部には重力がかかることになるので、舌骨や喉頭を引き上げるために多くの筋が関与する。 このなかで茎突舌骨筋の起始部は四足動物でもヒトでも、頭蓋と頸椎の結合部に近く位置している。 しかし、ヒトは直立に伴う頭蓋底の屈曲によって、茎突舌骨筋の起始部が舌骨よりも高い頭蓋底に位置することになる。 したがってヒトの茎突舌骨筋は舌骨を後上方に引き上げる部位に位置することになる。 直立する時間の多いサルにおいて、ヒトと同様に茎突舌骨筋が発達していることは、直立の影響が茎突舌骨筋の発達に関与することを示している。 またヒトの喉頭は下降が著しいが、サルの喉頭はヒトほど下降していない。 それにもかかわらず茎突舌骨筋が両者で発達していることは、喉頭の下降が茎突舌骨筋の発達に直接関与していないことを示している。 これらのことは茎突舌骨筋の発達は気道の屈曲に伴って生じたことを示している。 つまり嚥下運動は直線的な気道においては前後方向の動きで済んでいたが、気道が屈曲したことによって、屈曲に合わせた二方向の運動が必要となったわけである。 舌骨はこの気道の屈曲部に位置していることから、上下方向と前後方向に自由に動くことが要求され、これに対応して舌骨と頭蓋の関節結合は消失し、かわりに筋が舌骨と頭蓋を結ぶことになったと考えられる。 この結果、舌骨は自由な運動を得、この頭蓋の屈曲で舌骨を後上方に引く位置にきた茎突舌骨筋が発達したと考えられる。   これまで多くの報告から嚥下時の舌骨の挙上は主にオトガイ舌骨筋と顎舌骨筋によるとされている。 x線を用いた報告によると、嚥下時の舌骨の動きはわずかに後上方に挙上した後、急速の上前方に大きく挙上し、そのあと一定時間滞在した後、下後方に戻る。 解剖学的にみて、オトガイ舌骨筋は舌骨を前方へ、顎舌骨筋はそれを上方に引くから、両者が同時に働いた場合、嚥下時のように舌骨を上前方に引くことになる。 解剖学的には舌骨を挙上する筋として顎二腹筋、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、茎突舌骨筋が考えられる。 このなかで実際の嚥下時に茎突舌骨筋が主要な筋とならないのは、茎突舌骨筋が舌骨の後上方に位置しているらめ、 単独では舌骨を後上方に引き、オトガイ舌骨筋や顎舌骨筋と協力しても、舌骨を上方に引き上げるためである。 つまり茎突舌骨筋は舌骨を前方に引くことができないため、嚥下運動の初期に、舌骨をわずかに後上方に引いて、食塊を後方に送る舌を支えることと、前上方に挙上した舌骨を後方に戻す運動に関与するにとどまると推察される。   一方、嚥下時に舌骨が回旋運動することが報告されている。 この回旋運動は外側面から見て、舌骨体軸と垂線のなす角度が、舌骨の安静期、挙上後退期、挙上前進期において それぞれ41.2、50.5、36.6、 あるいは、24-30、38-42、30-35と変わる一連の運動を言う。 しかしこの運動時に舌骨体がどの部位を軸として回旋するかは明らかではない。 今回の結果を含めて線維軟骨塊には、茎突舌骨筋、オトガイ舌骨筋の一部、顎舌骨筋の後部筋束、それに肩甲舌骨筋などが、 種々の方向から線維軟骨塊に付着することが明らかになってきた。 またこれらの筋は下顎神経、顔面新規柄、頸神経と、多くの神経支配を受けている。 このように神経支配の異なる筋が狭い部位に集中して付着する部位は舌骨にだけみられる特徴で、ある。 線維軟骨塊に入るこれらの筋の腱線維が種々の方向から入り込んで、互いに錯綜して走ることは、 舌骨への結合を強化し、同時に線維軟骨塊に付着する筋同士の結合を強めて、舌骨の移動を円滑にすると考えられる。 一方舌骨体下面という狭い領域に多くの方向からやってきた筋が線維軟骨塊を介して舌骨に付着することは、これらの筋が舌骨の回旋に関与しないことを示している。 つまり多方向からやってくる筋が舌骨体下面の狭い領域に付着することで、舌骨を固定し、 舌骨体下面以外に付着する筋が線維軟骨塊を回転軸として舌骨の回旋を行うと推察される(Fig.12) これは、嚥下運動などで舌骨の位置が移動しても条件は同じである。 嚥下に伴う舌骨の回旋運動は、線維軟骨塊を軸とすると、 軸から上方に延びる舌骨体前面にオトガイ舌骨筋が付着することで舌骨の前方回旋運動を行い、 舌骨大角に付着する甲状舌骨筋や一部の中咽頭収縮筋が舌骨の後方回旋運動を行うと考えられた。 また嚥下時の第一段階で舌骨が挙上後退するときに、舌骨の後方回旋運動が起こるのは、甲状舌骨筋が喉頭を強く引き上げる運動を反映していると思われた。   結論   茎突舌骨筋の舌骨付着部を主にSEMを用いて観察し以下の結論を得た。 1.茎突舌骨筋の舌骨付着部は従来いわれていた舌骨大角基部、あるいは舌骨体と舌骨大角の結合部ではなく、正中部を除く舌骨体下面に広く付着していた。 2.茎突舌骨筋の舌骨付着部に厚さ0.5mmないし1.0mm、長さ10ないし17mmの線維軟骨塊が認められた。 この線維軟骨塊は舌骨体下面に広く分布していた。 3.茎突舌骨筋の腱線維束は、線維軟骨塊に入り込む前に、他の筋の腱線維束と錯綜していた。 4.茎突舌骨筋の腱線維束は、線維軟骨塊のなかで、他の筋の腱線維束と錯綜していた。 5.茎突舌骨筋が多くの舌骨上・下筋と錯綜していたことは、これらの筋が他害に舌骨への結合を強め合うと考えられた。 以上のことから茎突舌骨筋を含む多くの筋は種々の方向から舌骨体下面に拡がる線維軟骨塊に付着することで舌骨の位置移動を円滑にし、しかも線維軟骨塊を軸とした回旋運動を可能にしていると結論づけられた。   結果 本研究で用いた13体26側の茎突舌骨筋のなかで、茎突舌骨筋が顎二腹筋の内側を通る型は22例あり、 残り4例は茎突舌骨筋の舌骨停止部側が二分して、顎二腹筋をその間n挟み込んでいた。 いずれの場合も茎突舌骨筋は舌骨体と舌骨大角の結合部付近で舌骨体下縁に停止していた(Fig.1) 舌骨下縁で切断した部位を下面からみると、胸骨舌骨筋と甲状舌骨筋の断面が認められ、これらは舌骨体から舌骨大角の前半部に付着していた(Fig.2) 茎突舌骨筋はこれらの筋の付着部に外側後方から交叉して入り込んでいた。 また、顎舌骨筋の後部筋束が舌骨下縁の同じ部位に外側方向から入り込んでいた。   茎突舌骨筋が二分して顎二腹筋を挟み込む例においても、その舌骨付着部は舌骨下縁にみられた。 この例の顎二腹筋を取り外し、茎突舌骨筋の舌骨付着部の外側下端を切断して、上方に翻すと、茎突舌骨筋の内側端が、リング状の腱膜を形成して顎二腹筋を固定していたことがわかる(Fig.3) また、茎突舌骨筋の腱の一部は舌骨に直接入り込まず、リング状の腱膜の付着していた(Fig.3:*) このように茎突舌骨筋は顎二腹筋の内側にある場合と、顎二腹筋を筋束で挟むいずれの場合でも、 最終的には腱線維となって舌骨下縁に達し、10mmから17mmの長さに渡って舌骨体下縁に沿って走っていた。 オトガイ舌骨筋を舌骨から取り去ると、舌骨の前面が露出される。 舌骨体は「く」の字形をしており、屈曲部が舌骨体前面の中央に左右に走る線として現れる(Fig.4) この線の舌骨体後端に舌骨小角の結合部が位置している。 茎突舌骨筋は、舌骨体と舌骨第各の結合部付近から、舌骨体前面にほぼ平衡な方向で舌骨体下縁に入り込んでいる。 この茎突舌骨筋の舌骨付着部を茎突舌骨筋の走行に沿って前頭断に近い方向で切断すると、 茎突舌骨筋の舌骨付着部と舌骨小角が断面として現れる(Fig.5) 舌骨体の断面において、舌骨体の周囲は緻密骨で取り巻かれている。 舌骨体下縁に厚さ0.5ないし1mm、長さ10ないし17mmの線維軟骨塊が断面として現れる。 線維軟骨塊は正中部でその厚さが薄くなっている。 茎突舌骨筋は、線維軟骨塊に外側後方から2.5ないし3mm以上の長さに渡って入り込んでいる(Fig.5,6) この茎突舌骨筋の腱線維束は厚さ約0.5mmあり、舌骨体下面に沿って走りながら、ところどころで上方に向きを変えて線維軟骨塊に向かっていた(Fig.7) 線維軟骨塊は平滑な断面として現れ、軟骨細胞の入っていた跡が孔として多数散在していた(Fig.7) 茎突舌骨筋の腱線維束は、線維軟骨塊の下方に入り込んでおり、短径17μm前後の楕円形の断面が集合体を作っている像が認められた。 また、これと交叉する別の腱線維束も認められた(Fig.8) 拡大鏡で線維軟骨塊を観察すると、軟骨細胞に特有な円形や半円形の液体が認められた(Fig.9) 細胞周囲は多数の微細な線維で形成されており、同じ断面の中に横断や銃弾された微細線維が混在して認められた。 この線維の密度や走行の違いから、直径20ないし40μmの円形の領域がしばしば識別できた。(Fig.9) 舌骨体下縁部は厚さ15ないし40μmの緻密骨が層板をなしていた(Fig.10) 舌骨体下面に向かう線維軟骨塊の微細な線維がところどころに観察された。

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    • dysphagia関連3(気管切開後の嚥下における喉頭運動の解析

      気管切開後の嚥下における喉頭運動の解析Swallowing dysfunction after tracheostomy耳鼻咽喉科臨床 補冊Vol.1991(1991)No.supplement42 p119-124https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirinsuppl1986/1991/Supplement42/1991_119/_pdf気管切開症例で最も問題となることは、その人がもっていた最大挙上位置まで嚥下時に喉頭が到達しないことと、喉頭が下降する時期に嚥下物がまだ咽頭にあることである。これによって喉頭挙上型誤嚥と、喉頭下降型誤嚥が起こる可能性が高くなる。気管切開例症例はこのような異常な嚥下運動になっているわけで、正常人と比べて誤嚥しやすいのは当然と思われる。今回の検討はX線映画を用いた喉頭運動の解析についてのものであるため、嚥下時の声門下圧の問題については検討していない。嚥下時に声門下圧が上がらないことは、嚥下圧の低下を引き起こし、誤嚥を起こしやすくなると思われ、おそらく気管切開症例では、この両者により誤嚥しやすい状態になっていると考えられる。まとめ気管切開を受けた症例において、気管切開の1-2ヶ月後に嚥下における喉頭運動をX線映画を用いて解析した。その結果、1)挙上第一相における喉頭挙上は正常であった。2)挙上第二相における喉頭挙上は障害されていた。3)喉頭の前後運動は障害されていなかった。嚥下第二期と喉頭運動の関係は1)嚥下第二期の開始時期と喉頭の挙上第二相の開始時期について検討すると、正常よりも嚥下第二期の開始時期が早くなっていた。2)嚥下第二期の終了は喉頭が下降する時期であった。以上のことから気管切開症例は誤嚥しやすい嚥下動態であると確認された。考察一般には嚥下における喉頭の挙上距離は約1頸椎分であるとされている。1.5cmあれば正常で、1,9cm以下では病的であり、0.5cm程度の挙上では誤嚥を生じる筈であると具体的に述べている報告もある。しかしこの喉頭挙上距離は年齢によって変化するため必ず年齢について考慮しなければいけない。今回の対象症例と比較検討する意味で、われわれが食道透視痔にX線映画撮影を施行し結果的には器質的、機能的異常をみとめられなかった症例(48例)について年代別に検討した成績を図7-9に示した。そしてその図に気管切開症例の移動距離をプロットした。挙上第一相の移動距離は気管切開症例(平均9.2mm)と喉頭運動に異常のない症例(平均10.8mm)を比較して、あまり値に差がみとめられない。しかし、挙上第二相の移動距離はかなり減少している。喉頭運動に異常のない症例ではこの挙上第二相の挙上距離は平均22.6mmであり、今回の気管切開症例の挙上距離は9.4mmと著明に減少している。前後運動距離は正常例は平均8.0mmで、気管切開症例との間に差はみとめられない。この挙上第二相の移動距離の減少は、気管切開孔を閉鎖した症例5でも同様であるので、気管切開孔の有無がこういう結果をおこすのではなく、やはり手術操作による皮膚と気管の癒着が原因であろうと考えられる。1)嚥下における喉頭運動の意義嚥下における喉頭運動の役割は1.挙上することによる二次的な気道閉鎖2.前方へ移動することによる食道入口部の拡大、と考えられる。声帯・仮声帯の内転、喉頭蓋の倒れ込みと、喉頭が挙上して舌根部と接触するという多重の機構によって気道の閉鎖がおこなわれている。挙上することによっておこる下気道の防御は、解剖学的関係から当然、最大挙上位置で最も強い効果がある。だから嚥下第二期での喉頭挙上が制限されてその人の本来あるべき喉頭最大挙上位置が低下している気管切開症例では、声門上のスペースが拡大されることとなり、喉頭挙上期型誤嚥が起こりやすいわけである。今回検討した気管切開症例では、挙上第一相の挙上距離平均9.2mmと、挙上第二相の挙上距離平均9.4mmの合計18.6mmが嚥下における喉頭挙上距離となる。正常者では挙上第一相の挙上距離は平均10.8mm、挙上第2相の挙上距離は平均22.6mmで、合計33.4mmが嚥下における喉頭挙上距離である。この結果から気管切開症例では平均14.8mmもの挙上障害がある。これだけの挙上障害があれば誤嚥しやすいのは当然といえよう。従来の報告では、嚥下における喉頭挙上距離は約1頸椎もしくは1.5cmあれば正常とされていた。従来の報告と比較すれば、気管切開症例の喉頭挙上は正常であるとしかいえなくなってしまう。おそらく従来いわれていた喉頭挙上距離というのは、嚥下第二期(つまり嚥下物が口峡を通過してから食道入口部に全て入るまでの期間)に限定しての測定ではないかと想像されるのである。しかしそうであるならば正常例では挙上第二相の途中からの測定になり、(われわれの測定結果をこれにあてはめると20mm以下になり、従来の喉頭挙上距離に近くなる)、次項で述べるように、嚥下に異常のある症例では、挙上第一相の挙上距離の一部が含まれる症例が出てくる。つまり嚥下物の中心においた測定では何を測定しているのかわからなくなってしまい、正常、異常の比較ができない。だからわれわれのように挙上第一相、第二相を分けて測定する方法が必要と考えられる。また嚥下では喉頭の前方運動が重要であり、これが障害されれば、誤嚥が出現しやすくなるとされており、気管切開症例では前方移動の障害が起こるとする報告もあるが、われわれの計測では前方運動は障害されておらず、嚥下物の通過できるスペースは充分あると考えられる。今回の症例は気管切開後1-2ヶ月時の嚥下の結果であるので、気管切開孔を閉鎖した症例でも挙上が抑制されている。おそらく手術による局所の癒着、瘢痕は時間の経過によって少しづつ解除され正常な喉頭挙上に近づくのではないかと考えられるが長時間経過した症例については検討していないのではっきりしたことはいえない。2)嚥下物と喉頭運動(嚥下第二期における喉頭運動について)嚥下第二期と喉頭運動の関係についてみると、正常な嚥下ではだいたい急激な挙上(挙上第二相)が開始されてから嚥下物が咽頭に入ってくる。そして嚥下物がすべて食道に流入してから喉頭は下降を開始する。つまり最大挙上位置(誤嚥を防御する効果が最も強い位置)に喉頭がある間に、嚥下物がすべて食道にはいるという誤嚥防止に有利なメカニズムをもっている。前後運動については、嚥下物が咽頭に入る前に喉頭の前方移動が開始されており、嚥下物が通過するスペースを拡張するわけである。今回の気管切開症例では嚥下第二期と挙上第二相の関係がかなり正常と異なり、全ての症例で喉頭が下降している時期に、まだ嚥下物が咽頭に残っており非常に誤嚥しやすい状態にある。嚥下第二相の開始についても、正常では、喉頭の挙上第二相が開始されてから咽頭に嚥下物が流入する(嚥下第二期の開始)わけであるが、嚥下第二期の方が喉頭の挙上第二相の運動より早くはじまる例がある。特に症例2では咽頭に嚥下物が流入してから0.18秒後に挙上第二相が始まっている。正常例では嚥下第二期の開始から0.23秒後にはもうすでに頸部食道を嚥下物が充満していることから、非常に誤嚥しやすい状態といえる。つまり、咽頭に嚥下物が充満し嚥下物の先端が食道に入ろうとする時期に、喉頭はやっと挙上第二相の運動を開始するといった異常な嚥下動態になっているわけである。気管切開症例で最も問題となることは、その人がもっていた最大挙上位置まで嚥下時に喉頭が到達しないことと、喉頭が下降する時期に嚥下物がまだ咽頭にあることである。これによって喉頭挙上型誤嚥と、喉頭下降型誤嚥が起こる可能性が高くなる。気管切開例症例はこのような異常な嚥下運動になっているわけで、正常人と比べて誤嚥しやすいのは当然と思われる。今回の検討はX線映画を用いた喉頭運動の解析についてのものであるため、嚥下時の声門下圧の問題については検討していない。嚥下時に声門下圧が上がらないことは、嚥下圧の低下を引き起こし、誤嚥を起こしやすくなると思われ、おそらく気管切開症例では、この両者により誤嚥しやすい状態になっていると考えられる。はじめに気管切開はいろいろな原因によって施行される手術であり、気管切開を受けた症例では誤嚥を起こすことが多いのは周知の事実である。一般には気管に孔が開くために、声門下圧が嚥下のときに上がらないことが原因であるとされている。しかし嚥下時の喉頭の運動が抑制されたためであるとする意見もある。最近嚥下における緒器官の作動様式についてX線映画やX線ビデオを使用して解析しようとする試みがでてきた。われわれは食道透視時にX線映画撮影を施行した症例の中で、気管切開を受けた症例の嚥下時の動態について解析を行い、若干の知見を得た。対象対象は舌、咽頭、喉頭食道など嚥下に重要な臓器には異常がなく、炎症性疾患によって気管切開を受けた症例である。嚥下動態の観察は気管切開施行後だいたい1-2ヶ月後におこなった。症例1は55歳男性、肺炎による呼吸不全のため気管切開を受けた。症例2は69歳男性、肺線維症に肺炎を合併したため気管切開を受けた。症例3は66歳男性、結核による胸郭形成術後であり肺炎により呼吸不全のため気管切開を受けた。症例4は60歳男性、肺炎による呼吸不全によって気管切開を受けた。症例5は46歳男性、急性喉頭蓋炎により気管切開を受け1週間後に所見の改善をみたため気管切開孔を閉鎖し、3週間後に透視を受けた1-4までの症例は透視時にカニューレを抜去しカニューレによる影響をなくした状態で検査を行った。方法立位で頸部側面からバリウム嚥下時にX線映画撮影を行い、そのフィルムをナック社製フィルムモーションアナライザーMODEL350を用いて解析した。X線映画撮影にはナックGV-35 シネカメラを使用した。撮影速度は毎秒30オマ、造影剤は硫酸バリウム 100W/V%である。撮影時には前頸部正中に2cmのマークを貼付し、フイルム計測時に拡大率の補正を行った。喉頭の運動を解析するために撮影フイルム上で測定点として1.甲状軟骨前縁下端の石灰化点を選び、基準点として2.第三頸椎前縁上端、3.第五頸椎前縁下端、をとり以上の3点をコマ毎に計測した。つまり2,3の2点を結ぶ線を基準線として、この基準線に対する甲状軟骨の測定点の移動をみるわけである。基準線の設定は撮影時に被験者が動くことによって生じる測定誤差をできるだけ小さくするためである。得られた結果から喉頭運動曲線図を作製した。嚥下における喉頭運動に異常のない例の喉頭運動パターンを図1に示す。喉頭運動を垂直方向移動成分と水平方向成分(基準線に対して)に分けて表したものである。垂直方向成分(すなわち挙上運動)はまず緩徐に移動する挙上第一相、そしてそれに続く急激に移動する挙上第二相、最大挙上位置にとどまる時期、急激に下降する下降第一相、緩徐に下降する下降第二相に分類される。水平方向移動(すなわち前後運動)は前進相と後退相に分類される。移動距離、時間などは得られた喉頭運動曲線図から算出された。四角でかこんである時期は嚥下第二期つまり嚥下物の先端が口峡を通過してから嚥下物の後端が食道入口部を通過するまでの期間を示している。これによって嚥下物と喉頭運動のタイミングを知ることができる。結果1)嚥下における喉頭移動距離図2-6までが今回の対象症例の喉頭運動曲線図である。症例1の挙上第一相の移動距離は10mm、挙上第二相の移動距離は7mm、前方移動距離は8mmである。症例2の挙上第一相の移動距離は11mm、挙上第二相の移動距離は10mm、前方移動距離は8mmである。症例3の挙上第一相の移動距離は10mm、挙上第二相の移動距離は11mm、前方移動距離は8mmである。症例4の挙上第一相の移動距離は9mm、挙上第二相の移動距離は11mm、前方移動距離は10mmである。症例5の挙上第一相の移動距離は6mm、挙上第二相の移動距離は8mm、前方移動距離は6mmである。2)嚥下第二期と喉頭症例1では嚥下第二期の開始と挙上第二相が同時に起こり、抑制された最大挙上位置から0.09秒後、つまり下降期になって、嚥下第二期が終了となる。症例2では嚥下第二期がはじまってから0.18秒後に挙上第二相が開始となり、本症例での最大挙上位置に達してから0.27秒後(下降期)に嚥下第二期が終了となっている。症例3では挙上第二相の開始と嚥下第二期の開始は同時である。下降開始から0.12秒後に嚥下第二期が終了となっている。症例4では挙上第二相の開始より嚥下第二期は0.03秒早く開始される。嚥下第二期の終了はゆっくり下降する。下降期が開始されてから0.12秒後である。症例5では嚥下第二期と挙上第二相の開始は同時であり、嚥下第二期の終了は下降期が開始されてから0.24秒後である。

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    • dysphagia関連2(摂食嚥下障害を理解するための解剖)

      摂食嚥下障害を理解するための解剖歯科学報Vol.109,No.3(2009)http://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/1670/1/109_324.pdfはじめに摂食嚥下は食物の認識(先行期)からはじまり、捕食・咀嚼・食塊形成(準備期)、食塊を口腔から咽頭に送り込み(口腔期)、嚥下反射にて咽頭から食道入口へ移動(咽頭期)を経て、食塊が食道を通過し胃に入る(食道期)までの連続動作である(図1)。この摂食嚥下動作は随意運動と不随意運動の連携によってなされる。そのため摂食嚥下システムの一ヶ所に故障が生じてもシステム全体の動きが低下し、摂食嚥下障害が惹起することとなる。摂食嚥下器官の中で最初に食物が入る口腔は食物に関する情報をキャッチし唾液を分泌、咀嚼筋の働きによる下顎運動を介して食塊形成が行われる重要な場である。咀嚼が不十分であると次の段階の嚥下がスムーズに行われなくなる。口腔に続く咽頭は食塊の通路であると共に空気の通り道である。嚥下の際は食塊の通路が優先する。咽頭に続く食道の内腔は通常では閉鎖しており、食塊が通過するときのみ拡がり、蠕動運動によって食塊を胃に送る。口腔、咽頭、食道におけるこれらの動作は粘膜での感覚情報が中枢に伝達され解析し運動神経を介して口腔・院乙周囲の筋が絶妙なタイミングで収縮することで摂食嚥下がスムーズに行われる。摂食嚥下のメカニズムを理解するためには、①正常時の摂食嚥下の基本動作、②口腔、咽頭、食道、喉頭の構造の把握、③摂食嚥下に関与する筋とその神経支配を理解することが重要である。1.摂食嚥下の動作摂食嚥下の動作は食物の認識から始まり、食塊が食道を通過し胃に入るまでを言い、5段階に大別できる。1)先行期(食物の認識)(図1a)食物の性状を視覚、聴覚、嗅覚などを通して認識し、記憶している情報と照合、食べてよいと判断すると唾液胃液の分泌が盛んになり食べる準備がなされる。この期では食欲が起こり目を開けて食物であることを認識できることが大切である2)準備期(1)口腔への取り込み(図1b)口唇、歯によって食物を口に取り込む期。食物を口腔へ取り込むためには前頚部に走行する舌骨上筋群と舌骨下筋群の働きによって開口することから始まる(図2,表4,5)これと共に口腔への取り込みには表情筋が重要な働きをなす。口腔周囲の表情筋として、大頬骨筋、小頬骨筋、上唇挙筋、上唇鼻翼挙筋、口角挙筋、下唇下制筋、口角下制筋、口輪筋、頬筋などがあげられる。これら表情筋の運動は全て顔面神経に支配される(表1)顔面神経が麻痺すると口唇の閉鎖が不完全となり食物が口からこぼれ落ちるため捕食の効率が悪くなる。表情筋の中で、口輪筋は咀嚼筋と共に閉口に働く。表1.口裂周囲の表情筋群筋の名称起始停止作用支配神経大頬骨筋頬骨側頭突起上唇・下唇の皮膚口角を上方に引く顔面神経小頬骨筋頬骨前面上唇の皮膚上唇を上方へ引く上唇挙筋上顎骨前面上唇の皮膚上唇を上方へ引く上唇鼻翼挙筋上顎骨前面突起上唇の皮膚上唇を上方へ引く口角挙筋上顎骨前面(犬歯窩)口角・下唇の皮膚口角を上方へ引く口角下制筋下顎骨(下顎底)上唇の皮膚口角を下方へ引く下唇下制筋下顎骨(下顎底)下唇の皮膚下唇を下方へ引くオトガイ筋下顎骨(前歯部)オトガイの皮膚オトガイの皮膚を挙上笑筋咬筋の筋膜口角部口角を外側方へ引く頬筋上・下顎骨大臼歯部歯槽部外面翼突下顎縫線上唇・下唇・口角・口輪筋口角を外側方に引き、口裂を閉鎖、頬壁を歯列に押し付ける口輪筋頬筋を主とした周囲筋群口角周囲の皮膚口裂を狭め、閉鎖するその他の表情筋:広頚筋顔面部、眼輪筋、眉毛下制筋、鼻根筋、皺眉筋、鼻筋、鼻中隔下制筋など表2.咀嚼筋群筋の名称起始停止作用支配神経咬筋頬骨弓下顎枝外面(咬筋粗面)下顎骨を挙上下顎神経側頭筋側頭窩筋突起下顎骨を挙上下顎骨を方法へ引く内側翼突筋蝶形骨(翼突窩)下顎枝内面(翼突筋粗面)下顎骨を挙上外側翼突筋上頭:蝶形骨大翼側頭下面下頭:蝶形骨翼状突起外側板外面下顎骨関節突起の翼突筋窩下顎骨の前方運動下顎骨の側方運動表3.舌筋群筋の名称起始停止作用支配神経外舌筋オトガイ舌筋オトガイ棘舌尖から舌体舌を前方・下方に引く舌下神経舌骨舌筋舌骨舌の外側舌を後方・下方に引く茎突舌筋茎状突起舌の外側から舌尖舌を後方に引き舌の外側を上げる内舌筋上縦舌筋舌内部舌内部舌を短縮し舌尖と側面を上方に巻き上げる下縦舌筋舌内部舌内部舌を短縮し舌尖を下方に巻く横舌筋舌内部舌内部舌を細くし伸ばす垂直舌筋舌内部舌内部舌を平たくし拡げる表6.軟口蓋の筋群筋の名称起始停止作用支配神経口蓋帆張筋蝶形骨の舟状窩軟口蓋の口蓋腱膜軟口蓋を緊張下顎神経口蓋帆挙筋側頭骨岩様部の下面軟口蓋の口蓋腱膜軟口蓋を挙上咽頭神経叢(舌咽神経・迷走神経)口蓋垂筋後鼻棘口蓋腱膜口蓋垂の内部口蓋垂を短縮口蓋舌筋舌側縁軟口蓋口峡を狭くする口蓋咽頭筋軟口蓋翼突筋咽頭壁口峡を狭くする表7.咽頭の筋群筋の名称起始停止作用支配神経茎突咽頭筋側頭骨の茎状突起咽頭の粘膜下組織、喉頭蓋、甲状軟骨咽頭を挙上舌咽神経耳管咽頭筋耳管軟骨咽頭の後壁・外側壁咽頭を挙上咽頭神経叢(舌咽神経・迷走神経)上咽頭収縮筋翼突咽頭部:翼状突起頬咽頭部:翼突下顎縫線顎咽頭部:顎舌骨筋線舌咽頭部:横舌筋咽頭縫線咽頭腔を狭くする中咽頭収縮筋舌骨咽頭縫線咽頭腔を狭くする下咽頭収縮筋甲状軟骨、輪状軟骨咽頭縫線咽頭腔を狭くする迷走神経表4.舌骨上筋群筋の名称起始停止作用支配神経顎二腹筋前腹:下顎底の二腹筋窩舌骨舌骨固定時:下顎骨を下制前腹:下顎神経後腹:側頭骨の乳突切痕下顎骨固定時:舌骨を挙上後腹:顔面神経顎舌骨筋下顎体内面の顎舌骨筋線舌骨舌骨固定時:下顎骨を下制下顎神経下顎骨固定時:舌骨を挙上オトガイ舌骨筋下顎体内面のオトガイ棘舌骨舌骨固定時:下顎骨を後方へ引く舌下神経(頸神経)下顎骨固定時:舌骨を前方へ引く茎突舌骨筋側頭骨の茎状突起舌骨舌骨を挙上顔面神経表5.舌骨下筋群筋の名称起始停止作用支配神経胸骨舌骨筋胸骨丙、鎖骨舌骨舌骨を下制頸神経ワナ肩甲舌骨筋肩甲骨上縁舌骨舌骨を舌後方へ引く胸骨甲状筋胸骨丙、第一肋骨甲状軟骨甲状軟骨を下制甲状舌骨筋甲状軟骨舌骨舌骨固定時:甲状軟骨を挙上甲状軟骨を固定時:舌骨を下制(2)咀嚼と食塊形成(図1c)口腔内に食物が取り込まれると食物に関する温度感覚、触覚、圧覚、味覚の情報は、口腔粘膜の感覚受容器から三叉神経によって大脳皮質の体性感覚野(中心後回)に送られる。一方特殊感覚である味覚の情報伝達経路は舌の部位により異なり、受容器である味蕾からそれぞれ顔面神経(舌前2/3)、舌咽神経(舌後1/3の領域)、迷走神経(舌の奥、喉頭蓋付近)を介して大脳皮質の味覚野へ送られる。大脳はこの感覚情報を解析して中心前回運動野の運動神経細胞のニューロンを介して咀嚼筋を主とした筋群に働き、下顎運動を行う。咀嚼筋群は咬筋、側頭筋、内側翼突筋、外側翼突筋から構成され、全て下顎枝に停止する。これらの運動は下顎神経に支配される(表2)下顎骨を下方に動かし平衡に働く筋として舌骨上筋群と舌骨下筋群が大きな役割を担っている(図2)舌骨下筋群(胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋)の助けにより舌骨が固定され、舌骨と下顎骨を結ぶ舌骨上筋が収縮すると、開口する。舌骨が固定されていなければ開口はできない。舌骨上筋群は下顎骨に付着する顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、顎二腹筋(前腹・後腹)と下顎骨に付着しない茎突舌骨筋とである(表4)咀嚼筋、舌骨上筋によって下顎運動が行われ、歯によって食べ物は粉砕される。このとき食物が歯列の外側(口腔前庭側)に落ちないように舌と頬が協調して食物を歯列の上に乗せ、上・下顎の歯によってすりつぶす(図3)この頬を動かしているのが表情筋の1つであり、表情筋の中では深部(口腔側)に位置する頬筋である(図4)咀嚼が不十分であると次の段階の嚥下がスムーズに行われない。3)口腔期(舌根部・咽頭への送り込み)(図1d)咀嚼され唾液と混和した食塊が舌の運動により口唇から舌根部へと移動する期。この動作も随意的にコントロールされる。舌を動かしているのが舌筋で、様々な方向に走行する舌筋によって舌の複数の動きが可能となっている。舌筋は起始部が舌の中にある内舌筋(上縦舌筋、下縦舌筋、横舌筋、垂直舌筋)と、舌外にある外舌筋(オトガイ舌筋、舌骨舌筋茎突舌筋)とに大別される。内舌筋は舌の形を変え、外舌筋は舌の位置の移動に関与する(表3)4)咽頭期(咽頭通過、食道への送り込み)(図1c)咽頭に入った食塊が食道に入るまでの時期。運動は全て嚥下反射(不随意運動)によって行われる。正常では1秒以内に食塊が咽頭から食道の入口に達する。食塊が舌の後方へ移動し、咽頭、喉頭蓋、軟口蓋の粘膜中に分布する感覚受容器が刺激されると嚥下反射が起こる。そのため食塊が舌根部に送られても感覚受容器および知覚神経の閾値が高い場合には嚥下反射は起こりにくい。さらに咽頭に入った食塊が口腔、鼻腔に逆流しないようにする運動(口蓋筋、咽頭筋の働き 表6,7)喉頭腔に逃げないようにする運動(舌骨上筋・下筋、咽頭筋の働き)と食塊を咽頭から食道へ進めるためる運動(咽頭収縮筋の働き)とが協調して行われる。食塊が食道へ送られる時、気道に入らないように喉頭蓋が後屈して喉頭口を閉鎖するのみではなく、声門も閉鎖し一時的に無呼吸となる。5)食道期(食道通過)(図1f)(食道上部1/3は随意筋で横紋筋、中間1/3は横紋筋と平滑筋の混在、胃まで液体では1-6秒)食塊が食道の入口より胃に至るまでの期で、重力と蠕動運動により行われる。蠕動運動は不随意運動で迷走神経に支配される。食道上部に始まる蠕動波は約5-6秒で胃に達する。2.口腔の構造口腔は食物の取り込み、咀嚼、食塊形成などの役割を担っている。口腔は口裂から口峡までのスペースで、前方を口唇、側方を頬、上方を口蓋(硬口蓋、軟口蓋)、下方を口腔底で囲まれている。この口腔は歯列と口唇・頬との狭い間隙である口腔前庭と上・下顎の歯列に囲まれたスペースである固有口腔とに分けられる。固有口腔の大部分を舌が占める(図5)頬などに麻痺が生じると口腔前庭に食物が溜まることがある。口腔の内面は口腔粘膜で覆われ、口腔内は唾液により常に湿潤している。口腔内面に開口する唾液腺には第唾液腺と小唾液腺がある。大唾液腺は分泌細胞(腺細胞)でつくられた唾液が太い導管により、口腔の特定の場所に排出される。この大唾液腺には耳下腺、顎下腺、舌下腺の3種類がある。唾液には澱粉の消化酵素であるアミラーゼを多く含んだ漿液性唾液と、粘膜の表面をなだらかにする粘液性唾液がある。耳下腺は漿液性唾液を分泌し、導管である耳下腺管は、上顎第2大臼歯付近の口腔前庭粘粘膜にみられる耳下腺乳頭に開口する。耳下腺唾液の分泌は舌咽神経(小錐体神経)に支配される。顎下腺と舌下腺は、口腔底に存在し、漿液と粘液の混合性唾液を分泌する。顎舌骨筋をはさんで舌下腺は上方に。顎下腺は下方に位置する。顎下腺・舌下腺の分泌は顔面神経(鼓索神経)に支配される。口腔粘膜は表層から重層扁平上皮よりなる口腔粘膜上皮、緻密な結合組織よりなる粘膜固有層、疎な結合組織よりなる粘膜した組織の3層で構成される。粘膜固有層には触・圧覚、温度感覚、痛覚などの受容器が存在し、粘膜下組織には小唾液腺が分布する。しかし機械的刺激が強く加わり咀嚼粘膜に分類される歯肉と正中部の硬口蓋粘膜は粘膜下組織を欠く。3.咽頭の構造咽頭は頸椎の前方で鼻腔と口腔の後方に位置する。咽頭の上端は後頭骨の下面に接し、下端は第6頸椎の高さで食道に移行する。長さ約12cmで、下方は細いロート状を呈する中空性器官である(図6)咽頭腔は、上部より鼻部(上咽頭)、口部(中咽頭)、喉頭部(下咽頭)に区分される。咽頭は食物の通り道であるとともに空気の通り道でもあり、食物は口腔から咽頭を経て後方の食道へ、空気は鼻腔から咽頭を経て前方の喉頭・気管へと送られる。嚥下の際は食物の通り道が優先で、瞬時であるが鼻腔と咽頭の間が閉鎖され呼吸を止め、さらに喉頭蓋で喉頭の入口を塞ぎ、声門を閉鎖し喉頭・気管へ食塊が入るのを防止する。喉頭蓋のタイミングがずれると誤嚥が生じる一因となる。喉頭蓋は横紋筋よりなり、内層の縦走筋と外層の輪走筋(上・中・下咽頭収縮筋)で構成される。縦走筋は咽頭の挙上に、輪走筋は咽頭腔の収縮に働く。これらの筋には迷走神経、舌咽神経、交感神経とからなる咽頭神経叢が分布する(表7)4.食道の構造食道は咽頭下部に続き、第6頸椎の高さから始まり気管の後方を下行する胃の噴門部までの約25cmの中空性気管である。最初は気管と頸椎の間をまっすぐに下降するが次第に左方に寄り、左気管支の後方を通る。食道内腔は通常閉鎖しており、食塊の通過時にのみ広がる。このことにより飲食物が食道から咽頭へ逆流することと、呼吸時に空気が食道へ流入するのを防止する。(腹CTを撮ると食道に空気が入っている子がいる)食道壁の上部は横紋筋、下部は平滑筋で中部は横紋筋と平滑筋の両者で構成される。食道入口部(輪状軟骨狭窄部)、気管支分岐部で大動脈弓と気管支が交差する部(大動脈狭窄部)、横隔膜を貫く部位(横隔膜狭窄部)の狭窄部位がある。これらの狭窄部位は食塊、異物がつまりやすい部位として重要である。食道壁は粘膜(重層扁平上皮からなる粘膜上皮と粘膜固有層)、粘膜下組織、筋層、外膜から構成される。粘膜固有層と粘膜下組織の間には、平滑筋からなる粘膜筋板が存在する。筋層は内輪筋層と外縦筋層からなり、両筋層間には筋層間神経叢(アウエルバッハ神経層)が存在し、筋層の運動を司る。食道に入った飲食物の中で、液体は重力のみでも胃に運ばれるが、食塊は主として筋層の蠕動運動によって運ばれる。蠕動運動は食塊の進む前方の筋が弛緩すると同時に食塊後方の筋が収縮することにより食塊を順次、胃の方に推し進める運動。そのため仰臥位でも食塊は送られる。5.喉頭の構造喉頭は咽頭中に開口した空気の取り入れ口であり、食物が起動へ流入しないように防ぐ働きと共に、発声器としての役割を果たす中空器官である。喉頭の上部は喉頭口で、前方には喉頭蓋が位置する。舌根底部と喉頭蓋の舌面基部が接する陥凹を喉頭蓋谷、喉頭蓋両側縁下部に陥凹を梨状陥凹と呼ぶ(図6)嚥下機能が低下するとこれらの領域に食塊が停留しやすくなる。喉頭の外枠は軟骨により形作られる。この軟骨には甲状軟骨、輪状軟骨、披裂軟骨、喉頭蓋軟骨などがある。多くは硝子軟骨よりなるが、喉頭蓋の中隔をなす喉頭蓋軟骨は形を柔軟に変えることができる弾性軟骨からなる。喉頭筋には声帯を緊張させる輪状甲状筋、声門を開く後輪状披裂筋、声門を閉鎖させる外側輪状披裂筋、披裂筋、甲状披裂筋などがある。この中で、輪状披裂筋のみは喉頭軟骨の外側に位置し、迷走神経の上喉頭神経に支配されるが、そのほかは喉頭軟骨の内側にあり、迷走神経の反回神経・下喉頭神経支配である。嚥下の際には舌骨・甲状軟骨がこれらに付着する筋の収縮により引き上げられ、喉頭蓋が喉頭口を閉じて食物が起動に入らないようにする。喉頭の下端は輪状軟骨を介して気管とつながる。気管は空気の通り道のため壁には約10-12個のC字型をした気管軟骨が縦にならび管腔を常に確保している。6.摂食嚥下に関与する筋と支配神経顎・口腔、頭頸部周囲には多くの筋群が存在しこれらの筋が協調して収縮することにより摂食嚥下運動がスムーズに行われる。(表1-7)

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      (左肺に無気肺+?)、th1-8 右72度、th8-L4 左132度のS字カーブの側弯、胸郭扁平、(左気管支一部狭窄+?)胸郭変形高度→舌骨下筋群の動きも左右非対称になり嚥下咽頭期の負担が大?(食事で疲労がみられ時間がかかる、肩呼吸をすることがある。摂食嚥下の低換気+酸素需要大があるため?)摂食嚥下評価では、咽頭期から嚥下までに時間がかかるとのこと \/suprahyoid mC3 uC4/\infrahyoid mC5舌骨下筋群infrahyoid m:舌骨を引き下げ、喉頭引き上げ。舌骨上筋が下顎を後方へ下げ開口・咀嚼をするには舌骨が舌骨下筋によって固定されてる必要あり。嚥下・発声のさい舌・舌骨・喉頭の運動前頸部で喉頭・気管・甲状腺の表側にあり下方から上行して舌骨に付く。細長いベルト状の筋群頸神経ワナC1-4および舌下神経を通じて頸神経前肢の線維を受けるi)胸骨舌骨筋sternohyoid m胸骨丙の内面→上行して→舌骨体に付く胸骨丙・胸鎖関節・第1肋軟骨後面→舌骨体部下縁ii)肩甲舌骨筋omohyoid m下腹と上腹の2腹からなり中間腱で結ばれる筋肩甲切痕付近→頸筋膜の気管前葉(中間腱)→舌骨体、舌骨引き下げ肩甲骨と舌骨の間を中間腱をはさみながら上腹・下腹に分かれ、下側に弓なり下腹は肩甲骨上縁・上肩甲横靭帯→内上方に向かい→中間腱になり、(後腹に於いて中間腱から起こり舌骨体下縁部外側に停止)上腹は中間腱から上方に走り→舌骨体に付く。中間腱は胸鎖乳突筋の深側で鎖骨の上方にあって頸筋膜の肥厚によって鎖骨に固定される。iii)胸骨甲状筋sternothyroid m胸骨舌骨筋の深側にある。胸骨丙の内面→甲状軟骨の外面に付く、喉頭引き下げ胸骨舌骨筋直下の体側を上下に走り甲状腺を覆いながら→甲状軟骨に停止iv)甲状舌骨筋thyrohyoid m甲状軟骨斜線、甲状軟骨の外面→舌骨の体と大角の後面過去ログ頭部伸展筋・回旋筋は嚥下筋2015/05/31http://ameblo.jp/dovob-schutzstaffel/entry-12033122801.html続き)嚥下障害関連2016/06/06 http://ameblo.jp/dovob-schutzstaffel/entry-12166319942.html 続き2)嚥下障害関連 2016/06/07 http://ameblo.jp/dovob-schutzstaffel/entry-12167880007.html続き3)嚥下障害県連 2016/06/08 http://ameblo.jp/dovob-schutzstaffel/entry-12166324283.html続き4)嚥下障害県連 2016/06/10 http://ameblo.jp/dovob-schutzstaffel/entry-12168809177.html続き5)嚥下障害県連 2016/06/10 http://ameblo.jp/dovob-schutzstaffel/entry-12168831177.html続き6)嚥下障害県連 2016/06/20 http://ameblo.jp/dovob-schutzstaffel/entry-12168577701.html嚥下障害関連 2016/06/06 http://ameblo.jp/dovob-schutzstaffel/entry-12166156658.html舌骨上筋群suprahyoid m頭蓋底・下顎骨と舌骨を結ぶ。舌骨が固定されると下顎を下方に引き下顎の下制・開口、咀嚼の補助筋になる。下顎が固定されるときは舌骨を上へ引き上げ嚥下を行う。舌骨下筋とともに舌骨を固定し舌を支持して舌自体の運動を可能にする。i)顎二腹筋digastricus m後腹は顔面神経。前腹は下顎神経(Ⅴ3)。支配神経が違うので本来は別個の筋。後腹は乳様突起の内側→前下方へ走る。前腹は下顎体の内面→後方へ走る。中間腱で結合し舌骨の外側面に付く。下顎が固定されると舌骨を引き上げ。舌骨が舌骨下筋により固定されると下顎を後方へ引く。前腹・後腹・下顎底→顎下三角(顎下腺がある。その深側に前腹の後部がある。上壁は顎舌骨筋)後腹の深側に内/外頸動脈、内頚静脈、迷走神経、副神経、舌下神経、交感神経上頚神経節がある。顎二腹筋・肩甲舌骨筋・胸鎖乳突筋→頸動脈三角(総頚動脈がここで2枝に分かれる)ii)茎状舌骨筋stylohyoid m茎状突起→舌骨体角に付く、顔面神経支配顎二腹筋の後腹の前に沿って走り、元は後腹から分かれた筋。舌骨を後上方へ引き上げiii)顎舌骨筋mylohyoid m下顎体の内面から広く起始→内方に向かって水平に走る板状の筋左右の筋は正中で合し、後部は舌骨に付く。下顎体の左右両側間に張って口腔底を支持する。V3下顎神経→顎舌骨筋神経舌骨を前上方に引く。舌骨が固定されてると下顎を後方に引く。摂食嚥下で重要筋、舌を口蓋に向かって圧し、食塊を後方へ送る。iv)オトガイ舌骨筋geniohyoid m顎舌骨筋の上にあり、正中線の両側を前後に走る。下顎体の内面の正中部(オトガイ部)、下顎棘→後方へ走り舌骨体に付く。舌下神経舌骨を前上方へ引く、舌骨が固定されると下顎を後方へ引く。過去ログよりコピペ口腔期舌尖が上顎切歯口蓋側の歯頸部に付いて/t/音を産生する位置(舌尖音)につくと嚥下の第1相がスタート。舌全体が挙上すると同時に下顎も挙上し両口唇を閉鎖し前方への漏れを防ぐ。舌背が硬口蓋から後方にかけてbolusを押し出し、傾斜し、凹状の形状をとる舌背上をbolusが送られ、舌根が下がり、以下、咽頭期。主としてⅤ三叉n運動枝が主(咀嚼筋群(側頭筋、咬筋、内側/外側翼突筋)(下顎の下制・挙上(←咀嚼筋群しか下顎骨を後上方へ挙げれないので、脳疾患では開口しがち、遺体や終末期は開口しがち)と、臼磨運動))。Ⅶ顔面n(頬筋、口輪筋)、舌下n(舌の固有筋の運動)。これらの神経障害で舌、軟口蓋の麻痺、協調運動障害でbolusが咽頭へうまく送りこめない。開口する神経も筋群も複数あるが、閉口するのは咀嚼筋群と三叉神経だけなので障害されやすい。開口する筋舌骨上筋群(顎二腹筋(前腹(三叉nⅤ3)、後腹(Ⅶ顔面n)茎突舌根筋(Ⅶ)、顎舌骨筋(Ⅴ3)、オトガイ舌筋(舌下n)舌骨下筋群(C1-3叢、舌下n)(嚥下終了後、舌骨が喉頭を引き下ろして気道を開放するのはC1,2支配の舌下筋群。)肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋(嚥下中に収縮、舌骨に甲状軟骨を近づけ、喉頭は舌骨よりも大きく挙上する)舌固有筋(内舌筋):上/下/横縦舌筋、垂直舌筋の4つ(舌の形状を変える)外舌筋:茎突舌筋、舌骨舌筋、オトガイ舌筋(舌の位置を変える)舌を突き出す体操。舌下神経は脳神経だから脳神経を刺激することにもなる。嚥下能強化にもなるまた、口腔期同様、嚥下咽頭期でもⅤ三叉n運動枝が主。舌骨を前上方へ上げる。迷走n運動枝(輪状咽頭筋)も軟口蓋挙上、咽頭蠕動運動する。咽頭蠕動運動は中枢が関与しない(粘膜内の咽頭神経叢が反射の中枢で反射の繰り返しが波打つ蠕動運動)説あり。消化管は自動性が高い。存在する神経の7-8割以上中枢神経とは無関係だし咽頭神経叢pharyngeal plexus、Ⅸglossopharyngeal n 舌咽n、Ⅹvagus n 迷走n、Accessory n 副n、hypoglossus n 舌下n、上頸交感神経叢C1-4 superior cervical sympathetic ganglion咽頭期咽頭期に口狭縮小と軟口蓋挙上による鼻咽腔閉鎖。耳管の開口(慢性中耳炎は耳管閉鎖不全or耳管開口不全。嘔吐や強く鼻かみは低音難聴になるリスク。慢性中耳炎は鼓膜穿孔が塞がらないまま社会人になる人もいる)耳管開口の筋は、口蓋帆張筋、口蓋帆挙筋、耳管咽頭筋。軟口蓋の運動筋は、口蓋舌筋、口蓋咽頭筋、口蓋帆張筋、口蓋帆挙筋、口蓋垂筋咽頭壁の内層筋(耳管咽頭筋、茎突咽頭筋、口蓋咽頭筋)は喉頭挙上咽頭壁外/内層筋の灌漑は(外頚a→)上行咽頭動脈、上行口蓋動脈咽頭壁知覚枝はⅤ三叉n、Ⅸ舌咽n、Ⅹ迷走n、運動枝はⅨ舌咽n、Ⅹ迷走n上咽頭epipharynxについて線毛上皮咽頭天蓋(咽頭扁桃)、外側に耳管咽頭口(耳管扁桃)の耳管隆起、耳管隆起の後ろの深い陥凹が咽頭陥凹(Rosenmueller窩)、耳管隆起から下方に向かって耳管咽頭襞、咽頭側索が伸びて中・下咽頭まで達する。中咽頭mesopharynxについて重層扁平上皮軟口蓋-舌骨の高さまで。口腔とは口狭で境界。側壁に前口蓋弓(口蓋舌弓)、後口蓋弓(口蓋咽頭弓)、その間に扁桃洞(口蓋扁桃)前壁(舌根、舌扁桃)下咽頭hypopharynxについて重層扁平上皮舌骨-食道入口部喉頭蓋と舌根の間に喉頭蓋谷前壁に喉頭蓋、その下に喉頭口喉頭の両側に梨状陥凹咽頭期開始の引き金口腔底の顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、顎二腹筋の同時収縮。茎突舌骨筋と舌骨舌筋により舌根部が軟口蓋と咽頭後壁へ押しつけられる。口蓋帆挙筋と口蓋帆張筋により軟口蓋挙上。咽頭後壁に接し鼻咽頭への逆流を防ぐ。中・下咽頭収縮筋により(下咽頭収縮)Passavant隆起から輪状咽頭筋にかけての咽頭後壁に蠕動運動。喉頭挙上筋群と口腔底筋群の収縮、舌骨の挙上により喉頭蓋が後下方へ傾く。上咽頭収縮筋が収縮し軟口蓋と接し、上・中咽頭を遮断する。この粘膜隆起がpassavant barパッサーバン隆起舌骨最大挙上、喉頭前方引き上げ←最大因子舌根部後下方、喉頭蓋下がり閉鎖、食道入口部開大。舌の局部で咽頭にきたbolusは下降していき喉頭蓋谷に達し、喉頭蓋谷の左右に分かれ、下方の梨状陥凹へ向かう。喉頭蓋谷で分かれた液状bolusは、披裂喉頭蓋襞の脇から梨状陥凹を通って喉頭の片側を通過したのち輪状軟骨の後ろで再合流、中咽頭の上部から下方へ蠕動様収縮運動。頭部伸展ストレッチ(舌骨上/下筋ストレッチ)は嚥下低下予防になる(でもゴルフ頸椎症etcがある人は抵抗がない範囲、痛くない範囲で。ゴルフスイングは肩と首がひねる動き)背臥位で寝ていて、頭だけ挙上(sternocleido mastoid m胸鎖乳突mとsuprahyoid m舌骨上筋群が収縮)舌骨上筋(前頸筋)の緊張がある、ので、薬や飲み物の嚥下によくない(薬や食事は起きて座位で安定してから)嚥下機能に影響する上位頸椎および下位頚椎の運動について日本理学療法学術大会Vol.2014(2015)http://www.japanpt.or.jp/conference/jpta50/abstracts/pdf/1125_P3-B-1125.pdf一般的に頚椎伸展位は嚥下障害に関与するとされているが上位および下位頚椎の機能分化については確認されていない一昨年ハローベスト装着下において上位頸椎過伸展位による下顎挙上位が嚥下障害に起因した症例について発表したその際に頸部前面の軟部組織に過剰緊張を認めたため頚椎伸展による頸部前面の組織過伸張が嚥下障害に関与するのではないかと考えた上位下位頚椎の屈曲位・伸展位を組み合わせて行い各姿勢における上位下位頚椎の可動割合と頸部前面の皮膚距離を比較して矢状面における頚椎運動と組織伸張が関連しているか確認したまた嚥下造影を行う事で姿勢と嚥下障害の関与についても確認したスポーツ頸椎症や変形性頸椎症やパーキンソンニズムや多発筋炎で起こる首下がり現象の生じる機序前頸筋の過剰緊張と後屈筋の筋力低下種々の疾患にともなう首下がり症候群の病態生理学的分析‐表面筋電図所見と理学療法の効果から‐Pathophysiological analysis of dropped head syndrome caused by various diagnoses‐Based on surface EMG findings and responses to physiotherapy‐臨床神経学53巻6号(2013:6)http://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/053060430.pdf前者が関与する疾患は多系統萎縮症,パーキンソン病、頸部伸筋の筋力低下は、多発筋炎、重症筋無力症,顔面肩甲肢帯型ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症など頸部筋緊張亢進(とくに,屈筋)と頸部伸筋の筋力低下頸椎症では頸部伸筋の障害は限局的であり、頸椎の圧迫により頸部伸展を司る後頸筋群とくに頭半棘筋,頸半棘筋が障害され筋力低下を生じ 頸椎中間位保持が困難になる座位・立位では屈筋の持続的活動亢進をみとめず,頭部がこれ以上前方へ倒れるのを防ぐかのように,伸筋が持続的に活動している目崎によると,ジストニアの表面筋電図の特徴は, ①共収縮,②陰性ジストニアであるわれわれの検討では,頸部の運動にともなう筋活動は相反性活動がみられジストニアで指摘される拮抗筋間の同時活動(共収縮)や陰性ジストニアはみられなかった.パーキンソン病の首下がりの病態機序としてジストニアが指摘されているわれわれの観察した姿勢変化に対応する筋電図活動,すなわち,安静立位での持続的伸筋活動と仰臥位での持続的屈筋活動はジストニアと主張する論文と類似していた。しかしジストニアをみとめない変形性頸椎症,原因の特定できない症例にも共通した所見であったことからこれらの筋電図活動は頭部の前方への傾きを代償する頸部伸筋活動と2次的に短縮した屈筋に現れた伸張反射と考えている。健常人の理想的な立位姿勢は矢状面で,重心線は乳様突起,肩関節の前面,股関節(やや後方)膝関節の中央やや前方,足関節のやや前方(足関節の前方5~6cm)の解剖学的指標を通る安定した立位姿勢では,頭部,頸部,胸部,腰部および骨盤はいずれもこの直線上で相互に関係し,どこか一ヶ所がずれても他の部位に影響をおよぼす健常者は,頸部,体幹,下肢筋活動を記録しても,静止立位時にはほとんど筋電図活動はみとめない重心のわずかな偏倚がおこると,これを打ち消すような筋活動が一過性に生ずるのみである。また,頸椎に対する頭部の支点は環椎後頭関節にあるが,頭部自体の重心はこの関節軸の前方に位置しており13)首下がり姿勢は,軽度であっても長時間におよぶ時重心の前方への傾きを助長し,姿勢を保つためには伸展筋のより一層の活動を必要とする。屈曲姿勢が一定の限界を超える,あるいは伸展筋の代償機能が限界に達すると,極端な首下がり姿勢に向けて悪循環を生ずる可能性がある.頭部の姿勢にかかわる抗重力筋には伸筋と屈筋があり前者は,後頭下筋(大後頭直筋,小後頭直筋,外側頭直筋,上頭斜筋,下頭斜筋)頸棘突間筋,頸横突間筋,多裂筋,頭半棘筋,頸半棘筋など後者は,頸長筋・頭長筋,舌骨上筋・下筋など頸部にあって頭部の姿勢に関与しない伸筋と屈筋があり前者には,頭最長筋,頸最長筋,板状筋があり後者は胸鎖乳突筋であるこれらは体の移動に関与し頸部の安定には働かない上記の固有背筋以外に,頭頸部の保持にかかわる筋としては大菱形筋,小菱形筋,肩甲挙筋,前鋸筋,僧帽筋,小胸筋など

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       2017年 初春明けましておめでとうございますIch wuensche Ihnen ein glueckliches neues Jahr☆ 

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