AKB小説~散り急ぐ桜の花びらたち

小説家を目指しています。AKB9期推し 京都地元大好き 鴨川のせせらぎと清水寺の鐘の音の聞こえるところに住んでいます。


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前回のあらすじ

AKB48卒業から10年、ネットに殺害予告が流れるなか、女優島崎遥香はAKB20周年の記念祭にその姿を久しぶりに現す。傍らには以前は仇敵とも思えた元AKSチーフマネージャーの菊地凛子姿が。なぜAKBを追われた彼女が今、島崎遥香に寄り添うのか。その記憶は6年前の東京オリンピックにまで遡る。
 http://ameblo.jp/doujouji1991/themeentrylist-10099485732.html

 

 

 

※※※
 
 
 
 

あの日、私は2020年、東京オリンピックオープニングセレモニー、JAPAN48のレジェンドセンターとして新国立競技場のメインステージに立っていた。
 
両サイドに前田敦子と大島優子、直後にたかみな、由依の新旧総監督が控える。
「結局美味しいところはやっぱりあんたが持って行くんや」
 
七色の紙吹雪が舞うなか、後ろから、そんな由依の声が弾む。
でもその時私にはなにも聴こえていなかった。
 
由依の声もみんなの笑い声も地響きのように唸りをあげて聞こえてくるはずの祝福の大歓声も。
私の頭のなかに繰り返し響いていたのは直前に再会したあの人の耳元での囁き。
 
「お腹に赤ちゃんいるよね、あなた」
 
今思い浮かべても周りのみんなの笑顔どころか、
あの日の空の色さえ私は覚えていない。

 

 


※※※
 

 

 

One!Two!One,two,three,four!
 


ヘビーローテーションがTOKYOオリンピアの開幕を高らかに告げた。真夏の東京の夜空に打ち上げ花火が描く五輪のマークが鮮やかに浮かび上がる

2020年、心躍る、世界が待ち望んだスポーツの祭典はJAPAN48が先陣を飾った。

10万人を越える声援に掻き消されそうになりながらAKB48のこの15年間のスタンダードナンバーが誇らしげに奏でられていく。


「最後はあんたやで、ぱる」

私の声に小さく頷く島崎遥香。久しぶりの興奮と緊張でずっと震えが止まらない。異常なほどの汗が頬から首筋へと流れ落ちる。

夏本番の東京の7月、午後8時を過ぎてもまだ気温は30度を越えたまま。
湿気をたっぷり含んだ生暖かい風が競技場のなかを舞う。一曲も踊れば体中に汗が染み出てくる。



「大丈夫ぱるる」

セカンドポジにつく大島優子が心配そうに肩越しから声をかける

「大丈夫です」

全然大丈夫じゃなかった。どう見ても何かがおかしい。腕が上がらない、目の焦点が定まらない。曲が終わる度に肩で息を繰り返す。研究生時代でもこれほどひどいぱるるを見たことはない。しきりにお腹を気にする仕草が無意識に私に何かを訴えてるようにも思えた。

選抜32人、その後ろにAKBグループ300人が控える前代未聞の圧巻の一大フォーメーション。始まってからのここまでの一糸乱れぬパフォーマンスは完璧。世界アイドル集団No.1の称号が伊達ではない事をみせつけていた。けれどもしここでそのピラミッドの頂きに何かあれば・・・



「ぱる・・」声をかけようとした時、

流れ出すハイテンション2020オリンピアバージョンのプロローグ。
競技場の10万人の視線が、全世界の46億の瞳が、このステージのぱるるが立つ0ポジションに注がれているこの瞬間。



ぱるる・・・やっぱりおかしい。背中が丸くなったまま身体が上がらない。両脇のレジェンド二人の顔が曇る。曲の始めの指を鳴らすポーズさえ取れない状態。

どうする、一瞬頭が真っ白になる。

スクランブル? センター咲良、美音、真子、様々な選択肢が頭をかすめる。決断はもう秒単位。ここでの失敗はこれまでAKBが積み上げて来たものを一瞬にして全てを台なしにする。

たかみなさんを見る
「あんたが決めろ 」
ゆっくり頷いたその目がそう語っていた。

朱里はもう後方で私の指示を待っている。おそらく振り返ったその目線だけで彼女は動き出すはず。そんなことは、この数ヶ月間、もう夢に出てくるほどリハーサルを繰り返してきた。

何かがあったときのスクランブルフォーメーション。それぞれの人生において一度でもあるかないか、そんな極度の緊張を伴うオリンピアの祭典は日頃のコンサートとは次元が違う。

「必ず何かが起こる、良いことも悪いことも。そう思って挑め」

秋元先生の言葉を借りるなら、今がその時。

「俺は決めない、現場の判断を優先する。肌で感じた決断こそ意味がある」


ならば・・
私は信じる。ここまで出てきたからにはどんな状態であろうとやり切るはず。それが今のぱるる。もうあの頃のぐずっていたぱるるじゃない

 

ぱるぅ~!ファイトォ~!
 

力の限り叫ぶ。
言葉が終わらないうちに朱里は大きく拳を突き挙げる。
私の決断をじっと待っていた次期総監督が周りを鼓舞する。

「ぱる~ファイト~!!」

あっという間にメンバー達の言葉の波がぱるるを飲み込む。

ぱる~ファイト!ぱる~ファイト!ぱる~ファイト!

何かがぱるるの身体のなかで起こっている、それはもう間違いなかった。それでも私は彼女に賭けた。
もうぱるるのなかに宿る魂はそんなに柔じゃない
こんなところで朽ちてしまう島崎遥香じゃない

遠退く意識のなか、ぱるるは徐々にみんなの想いを受け入れていく。
大きく大きくゆっくりと肩を小刻みに奮わせながら深呼吸を繰り返す。 閉じられていた瞳に光が戻る。闇に浮かび上がるような真っ白な肌に生気が戻っていく。あの日以来、みんなの涙と笑顔で封印されたぱるるのハイテンション。志半ばで散ったぱると私の夢。

その時傍らの前田敦子は確かに聞いた、搾り出すようなぱるるの声を。

「ファイト・・私のベイビー・・・」

ゆっくり挙がるぱるるの右手。その先から滴る大粒の汗がまるでスローモーションの映像を見るようにこぼれ落ちていく。夜空を仰いだその表情はもう微笑みを浮かべているようにさえ見えた。
ぱるるの背中だけを見つめていた、331人が一斉に動き出す。真子が奈々が美音が、汗か涙か訳の分からない光の粒をまき散らしながらエイトビートのステップを刻んでいく。

「横山さん、ぱるさん、私はこの景色、一生忘れないから」
10万人のぱるるコール、332人が生んだ奇跡。高橋朱里の眼にした光景はメンバー全員の胸に刻まれやがて伝説となる。
 



そして競技場は深い闇に包まれオープニングセレモニーのエンディングを迎える。

たかみなさんと二人でぱるるの両肩を抱える。その信じられないほどの汗の量と吐息の深さに胸が熱くなる。待ち受けるスタッフにその身体を委ねるまで「ごめんね、由依」とぱるるは何度となく喉の奥の方で消え入るような声を鳴らす。

「ばかぱる・・・」

私の声に応えるように、運ばれていく担架の上に小さなVサインがゆらゆらと揺れた。

その一部始終を捉えていたVRカメラが競技場の中央にバーチャルリアル映像を映し出していく。割れんばかりの喚声と拍手が辺りを包み込む。
 
[何かが起こる良いことも悪いことも]
秋元先生にとってこれも想定内なのだろうか。

「ぜーんぶ秋元先生のドッキリだったらどうする、由依?」

「グーで殴るに決まってる.。。」

「ふふふ」

エンディングはもう朱里に任そう、たかみなさんの弾んだ声が耳に心地よく響く。

「真子ぉ!センターについて!こみとゆいりぃ!、アンダーお願い!」
 

次期総監督のひときわ高いメゾソプラノの声が誇らしくて眩しくて、そして少し寂しくて・・

 

「もういいよな、これで由依も」

 

そんなたかみなさんの声に私はなぜか首を縦には振らない。

ぱるるの顔が浮かぶ

 

「いつまでやってんの、AKB?」

 

答えはぱるるに聞いてみる。私たちの夢はもう叶ったのか、願いは届いたのか。

それから決めても遅くはないんだよ、たかみなさん。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

~菊地凛子
 
 
凛子さん!?

ステージが終わって駆けつけた時、微かな寝息を立てながらぐったりとして寝入るぱるるの傍らに菊地凛子はいた。濃紺のパンタロンスーツ、首にはあのおもてなしで有名になったスカイブルーの公式スカーフ。驚いたことに胸にぶら下がっていたIDカードはIOC公式スタッフのもの。

待っててすぐ戻るから、そう言って三年前に私たちの前から姿を消した、菊地凛子。

指原莉乃の讒言で追われたはずの日本のエンターテイメントの世界、彼女のキャリアはこの日本では跡形もなく消えたはずだった。

なんで、あなたがここにいるの、そんな言葉を私は胸の中に飲み込んだ。


「なんで、わたしが?そう思ってる?」


「・・・」


「言いたいことはちゃんと言いなさいよ、総監督」

「・・・」

「変わってないよね、あなた、それでよくまとめられてるよね、あれだけのメンバーを」

変わっていなかったこの人も。上海SNH48の奥深くに潜んでいたらしいけど、いつのまにこんな表舞台に出て来れるようになったのか。

「あんた知ってんの?」

「何をですか?」

「島崎のこと」

「・・・」

「やっぱり・・・

こんな時期にあんなことさせて、なに考えてんの、あんたたち
なんで気づいてあげないのよ
出していたはずだよ、いろんなサインを。」
 
言い返せなかった。以前の様に言葉がささくれだって聞こえてこない。
投げ返してくるボールがちゃんと胸のあたりに返ってくる、そんな感じがした。
 
 
「じゃあね、もう行かないと。あんたたちみたいに大手を振って歩ける人間じゃないんだから私は。」

「凛子さん」

「なに?」

「メディアに売るような事だけは・・・」

「殴るよ、ほんとに。それ以上言ったら。
私だってまだちっぽけなAKB愛ぐらい、残ってるんだから・・・」

「凛子さん・・・」

遠ざかっていく彼女の背中が小さく見えたのは気のせいだろうか。
今彼女が私たちの前に現れる意味を考えた。ここにいることの必然性を思った。
こんなところにのこのこ出て来れる、そんな人じゃないはずなのに・・・


 


「ぱる・・」
 
起きているのは分かっていた。彼女が寝息を立てて寝る姿なんてみた記憶はない。だからそれは嘘寝の類(たぐい)。自分の都合の悪い時は寝てやり過ごす。
ぱるるの処世術は嵐には立ち向かわないこと、よっぽどのことがないかぎりは。
 
「なんで黙ってたんや」
 
「いけると思ったのよ、これぐらい」
 
「・・・」
 
「ただ・・」

「ただ・・なんや」

「無理しすぎた」

「ぱる・・・」



「仕方がなかったんだよ
もう一年も前に決まってた事だし
一生に一度のオリンピックでもあることだし
いくら私でも・・・

言ってくれたんだよ
出る前に。踊っちゃあだめだって。

何もかもお見通しだったみたい
三ヶ月ということまで知ってた。


早く秋元先生になんで言わないのって。
ダメだよ、こんなことしちゃあって、怒られた。

それでなくても大事な時期なのに
お腹を締め上げるなんて・・」


「あの人が・・そんなことを・・・」


「別人みたい。こっちが何を言っても目がずっと微笑んでて。
なんか肩の力が抜けちゃって

泣いちゃったんだ、あの人の胸のなかで・・・」


「ぱる・・」


何かを企んでいたのか、
それは今でも分からない
 
ただ、したたかなだけなのか
それとも人は地獄を見ると変われるということなのか

けれどその半年後
ぱるるのマネージャーとして菊地凛子は日本のエンターテイメントの世界に復帰する。
翌年の春にぱるるは元気な女の子を出産。

名前はParu.。えくぼの位置がママとそっくり。泣いても笑っても天使の笑顔。 

 

そして2026年、その子は菊地凛子の養女として5歳の春を迎える。

それがParustoryの始まり。

 

~to be continued

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