小説指原莉乃~ AKB愛詩 散り急ぐ桜の花びらたち

AKBを中心に小説、エッセイ、ポエムを書いてます。AKB9期推し 京都地元大好き 鴨川のせせらぎと清水寺の鐘の音は私のBGM いつかは金閣寺のように輝きたい 小説で食べて行けるようになるのが夢のまた夢


才能があるんか私にはわからへん そやからそんな煙みたいなもんは当てにせえへん 汗を人の何倍も流して認めてもらう 有無を言わせぬ努力の力   それを私は選ぶんや   ~リトルマナ

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「ねぇ由依ばあちゃん、AKB48って、ボーイフレンド作ったらダメだったんでしょ?」
「・・・」
「ねぇ、由依ばあちゃんってば」

初夏の心地好い日差しはあの日と何も変わらなかった。

梅雨の合間に訪れた目の覚めるような、空の蒼さもあの時と同じ

ただ違っているのは半世紀の時が流れたという事実だけ

 

AKB48、その名前を口にするのはいつ以来だろう
島崎遥香、その名前を耳にするのはいつ以来だろうか
けれど、忘れたことなどない。ぱるるという名前を、一日足りとも。
みんなが笑っていたあの日 さしこも、ゆきりんも、さや姉も。ステージではみんなの笑顔が弾けていた。

2016年6月18日、あの日確かにぱるるは笑っていた。
二人にとって決して笑える日じゃなかったはずなのに貴女は笑っていた。
そしてAKBではもう二度と見られないであろう、過ぎ逝く島崎遥香の笑顔を私達はその胸に刻んだ。
時の流れるに身を任せた数十年間、風の噂だけを便りに貴女のことをずっと想っていた。
― 嘘じゃないよ、ぱる。私の心のなかにはずっと貴女が居たんだ。

「ママ、由依ばあちゃん、起きないんだよ」
「ダメよ、ゆっくん。おばあちゃんお昼寝の時間なんだから」

 

「だって、AKBのお話の途中だったんだよ」
「へ~、ゆっくんAKB知ってんだ」

 

「うん、由依ばあちゃんが作ったんでしょ、AKB」
「う~ん、ちょっと違うかな」

 

今朝の思わぬ知らせが彼女に久々のAKBを語らせたのだろうか

大人同士なら話せなくてもこの子になら自分の今の気持ちを素直に吐露できたのかもしれない。
― こんな、ちっちゃな子に話してたのね、あの人の事を

「ねぇ、ママ、ぱるるって、どんな人?」
そう、今は島崎遥香の事を誰も知らない。
平成の世、ゆとり世代と呼ばれた時代の寵児を今は誰も知らなかった。

「そうね・・・綺麗でフランス人形のように可愛いい人よ。

それで強い心を持った人、ずっと強い心持ち続けた人

AKBでは一番にはなれなかったんだけどね」

「ふーん、でもそんなきれいで強いのに、なんで一番になれなかったの?」

 

「優しかったのよ、ぱるるさんは。お友達だけじゃなく、自分に対してもね。

チャンスが近づくと,フッと目をそらしちゃうの。

みんなと見ているものがいつも違ってたのよね、彼女は。

だから、由依ばぁちゃんはいつも言ってたらしいのよ、

なんであんたは前を見ないのって、上を見ないのって

でもぱるるさんは由依ばあちゃんの話を決して聞こうとはしなかったの・・

難しいかな、ゆっくんには、こんな話」

「ううん、ゆうの幼稚園にもいるよ、そんな子。優しくて強い子でしょ」

 

「そう 優しくて強い子。そして笑顔がとっても素敵だった人」

 

午後の縁側の陽だまりのなかで、お気に入りのロッキングチェアに揺られながら母は眠っていた。元AKB総監督、人にそのことを語る姿を私は見たことがない。

「夢は夢のままでおいておきたい」それが母の口癖だった。

彼女の蒼い時、それは母のなかでは思い出すのも口惜しほどに輝いていたものなのかもしれない。

 

― ぱるるさん、母は今でも怒ってますよ、島田が親友で、なんで私がそうじゃないんだって

 

縁側に見開きのままで置かれた、今朝の朝刊、そこに見逃されてもおかしくない、申し訳程度の大きさで、元AKB48島崎遥香さんの急逝が伝えられていた。

 

島崎遥香、AKB48アイドルグループ9期生、2010年代から中心メンバーとして総監督横山らと共に活躍、2020年カンヌ映画祭助演女優賞受賞、同年日本アカデミー賞主演女優受賞、2025年フランスの永住権取得 2030年ユニセフ親善大使に就任、2040年にはパリ観光親善大使に任命された。 晩年は作家としても活動 著書には、”ぱるるん健康法”、”元祖塩対応”、”ゆとりが私にくれたもの”、など多数。なかでも2050年に発表した”私のゆいはん”では

その年の本屋大賞を受賞した。

6月18日パリ郊外の自宅にて永眠 77歳。 尚、個人の生前の強い希望により葬儀は秋葉原ホール(元AKB劇場)で行われる。

 

 

「だから、やるんじゃない」

 

私の記憶の中の島崎遥香はレコード大賞受賞のセンターで歌う島崎遥香ではなく、

インタビューでベテラン記者を煙に巻くぱるるでもなく、総選挙で徳光さんを相手に泣き、笑う

彼女でもなかった。

何気ない会話のなかに、時折、心に忍び込むように響く彼女の言葉。

それが私のなかの島崎遥香だった。

 

「ひとつお願いがあるんだけど、言っていい、由依」

選抜総選挙を翌日に控えた新潟の夜に彼女はそう言った。

 

 

「笑わない?」

「笑わない」

 

「怒らない?」

「怒らない」

 

「ほんとに?」

「ほんとに」

 

「ほんとにホントに?」

「そやから・・言ってみやんとわからへんやろ、ぱる!」

「ほら、もう怒ってる」

 

つかず離れず、彼女に接する時は俯瞰でものを見るように付き合う。それが長年の彼女の観察から得た私の島崎遥香マニュアル。

ただ彼女は世間が言うような、いわゆる「塩」ではなかった。情に訴えれば情で返してくる、そんな面も少なからず彼女は持ち合わせていた。

 

「だったら、言うね。」

ぱるるのサプライズ、それは私とぱるるが神7に入ったら九期全員がその場に立ち上がって一斉に歌いはじめると言うもの。

「それでなくても今、選抜総選挙を疑問視する声が上がってる、そんな時に総監督の私がそんなことできるわけないやろ・・ぱる」

 

「だから、やるんじゃない、由依」
そう言ってぱるるは、ここ数ヶ月見せたことのないような、とびっきりの笑顔を私に投げかけた。 

―こんな時だからこそ、私たちは臆病になってはいけない、そうしなければ伝わるものもつたわんない。手足を思いっきり伸ばして歌えべばいい、思いっきり叫べばいいんだよ、由依―

ぱるるはそういった。

AKBの未来なんてこれっぽっちも考えていそうにもない、ぱるるからの発言に私は言葉を失った。「あんたもおんなじなんや」そう囁きかけた私に、ぱるるは何も言わず、新潟の夜空を見上げた。空には今まさに新月を迎えようとしている睦月の月が雲の間から顔を覗かせ始めていた。

私とは違うほうを向いていると思っていた島崎遥香はやっぱり私と同じ景色を見ようとしていたんだ。


結果、二人とも目標の順位には届かず、彼女の歌声も聞けず、私たちの声は新潟の夜空を揺らすことはなかった。それでもぱるるは泣いていた。泣いて笑っていた。これが選挙での最後の九期。ひとつになれた確かな実感が彼女にはあったのだろう。ぱるるが初めて私たちに見せたうれし泣き。 悲しい時には泣いても嬉しい時には決して泣くことのないぱるるだったのに。

 

だから、明日はぱるるをみんなで送る。あの時歌えなかった歌を九期のみんなで。

あの日ぱるるが歌いたかった歌はいまだにわからない。

とりあえず、それを、明日みんなに聞いてみることにする。島田ならわかるかもしれない。万里子はちょっとぼけたけど、ぱるるのことなら思い出すかもしれない。

まりやぎ、みなるん、鈴蘭、みゆ、分らなければ、みんなが好きな歌を唄っていけばいい。

きっと、どれかがぱるるの大好きな歌。そうに違いない。

時間はたっぷりある。私たちが唄い終えるまで、ぱるるは天国に行くことはない。

なぜかそんな気がする。

 

 

「ママ、由依ばあちゃん、寝てるのに笑ってるよ」

母の頬の上に微かに残った涙の跡をゆうに気づかれないように私はそっと吹いた。

「どんな、夢を見てるのかな、由依ばあちゃんは

2016年6月18日、あの日から、どんな夢物語が二人に続いたのか私には知る由もない。けれど彼女が話さないところを見ると、それはきっと私たちが想像もできないようなハッピーエンドだったに違いない。

そうだよね、由依ママ。

 

 

 

2016年6月、ゆいぱるの第二章、その夢の扉はまだまだ開かれてていないんだ、ぱるる。 

 

 

     ~ Fin ~

 

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