秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして


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「それに、さっき恋愛感情は持っていないって言ったけれど、好きになりそうで怖いっていったいどっちよ、それって期待しても良いって事だよね」
佐々木は私の目を真っ直ぐに見つめて言った。
私は答えられなかった。
「別にすぐって訳じゃなくても良いんだ、だけど君がもし彼との将来で迷っていることがなにかあるんだったら、その時にちょっと僕のことを思い出してもらえれば」
「佐々木さん、私は天秤に掛けるようなことはしたくないの。佐々木さんは佐々木さんで彼女と結婚すればいいじゃない。私と彼との間に入って来られないと思う」
少し感情的になってしまった。恋人への愛情を疑われたような気がしたからだ。
「そんなにムキになるようなことじゃないじゃないか、別に僕のことを好きになってくれって言っているわけじゃないんだし」
その後どういう会話をしたのか実は余りよく憶えていない。もう、何を食べたのかも憶えていない。何だか頭に血が上ってしまったのだと思う。いつの間にか食事が終わってコーヒーも飲んだはずなのに何を話したかの記憶がふっつりと途切れている。

冷たい風の吹く中駅まで送ってもらう途中
「ま、僕もこれから年末に向けて忙しくなってくるからもうそんなに連絡は出来ないと思うけど」
と言われて私は少しホッとした。
山手線に乗り込みながら何でこんな事で動揺しているのか自分で自分が変だと思った。佐々木とのやり取りは確かに楽しかったけれど私は何より恋人を大切に思っていた。こんな風な面倒ごとを抱え込みたくなかった。それよりも恋人とのトラブルをどうにかしなくては。彼とのことを迷っているから付け込まれるのだ。
 しばらく佐々木のブログは2.3日置きに更新されていた。やっぱり彼の映画評は面白かったから、更新されるとつい見に行ってしまう。私は昼間彼の所にコメントを残すことはあってももうチャットのようなやり取りはなかった。電話もかかってこなかった。そのうちにブログの更新もなくなって、いつの間にかブログもなくなってしまった。

 もう諦めて止めたものと思い、私はオーバーラップの連載を「いわゆる認識の相対性」に書き始めた。もちろん彼の本名は佐々木ではないし、彼の人物と事実をそのまま書いているわけでもない。フィクションもかなり入っている。その頃「いわゆる認識の相対性」は本書評ジャンルにあったのだ。しかし年が明けて1月12日の「オーバーラップ6」を境に書けなくなってしまった。

なぜか。
それは「秘密の扉第3章」の部分に相当するからなのですが、第3章を書くかどうかは未定です。 
              「秘密の扉第2章 オーバーラップ」完

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 テーブルの上に置かれた牡蠣は彩りよく飾られてそれは美味しそうだった。私は佐々木の言葉を無視して早速手をつける。口の中で、ニンニクの利いた牡蠣がじんわりと溶けるようだ。
「佐々木さん、これとっても美味しいわ」
「あ、そう?どれどれ」
「あのね、佐々木さん、私佐々木さんとも確かにそれなりに楽しいの」
佐々木は口を動かしていて眼で応えた。
「だけど、多分恋愛感情は持っていないと思うわ」
佐々木は表情一つ変えなかった。ごくりと牡蠣を飲み込むと
「そんなのこれからじゃないか、キスしたのだって、なんかの間違いなんだから」と、何か面白いものでも見るような顔をして図々しく言ってのけた。どうして彼はこんな表情で私のことを見るのだろうか。何だか全てを見透かされているような、私を測っているような。
「何だか二股かけるみたいなのは嫌なの」
こういうときはキッパリと言わないとダメだ。けれどどういう訳か私は佐々木の顔がまともに見られない。それにどうしたわけだろう、胸がちくっと痛んでいるのは。
「僕は気にしないよ、別に。最初っから分かっていることだもの」
「佐々木さんは良いかもしれないけれど、私は嫌だし、彼が知ったら凄く嫌な思いをするに違いないわ」

hikari


「あのさぁ、ちょっと矛盾していない?」
「なにが?」
「君は所有されたくないって言っておいて、結局自分で縛っているんだよ」
「それとこれとは話が違うんじゃない?」
「そうかなぁ、別に結婚しているわけじゃなし、自分が楽しめる人と一緒にすごすことが悪いことだとは思わないけど。それは彼のモノってこととどう違うの?」
「それはそうよ、だから今日こうしてわざわざ来ているんじゃないの」
「じゃぁ全然問題ないじゃない。何もこれから僕のうちに引きずり込んでどうこうしようって言う訳じゃない。時々逢って、楽しく話そうってだけの話でさ。そんなこともイケナイだなんて思わないだろ」
確かに佐々木の言うとおりだ。しかしそんなことが問題なのではない。
「佐々木さん、この際正直に言うけれど、私佐々木さんのことが好きになりそうで怖いの。だからなるべくお会いしない方が良いと思う」
佐々木は聞いている途中で「ほおっ」と顎をしゃくり上げた。
「なんで怖いの」
「だからそれは、彼がいるから」
「僕は後藤さんのことが好きだよ、今一番気になっている」
さすがに照れたように下を向いてフォークで皿の上のエディブルフラワーをつつきながらいった。

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「私ってどうもやり過ぎちゃうみたい。好きだといろいろしてあげたくなっちゃう。でもそれはお互いのために良くないのかなって」
佐々木は怪訝な顔をした。
「上手く言えないんだけど、毎日を一緒に過ごしているととっても楽しいんだけど、段々当たり前になって来ちゃって相手への感謝の気持ちとか、思いやりみたいなものが薄れて来ちゃうような気がするのよ。お互いに甘え過ぎるって言うのかな…」
「それは何となく分るかな」
前菜が運ばれて来た。微妙な話題だけにウエイターの前で何となく口籠ってしまう。
「わがままもどんどん出て来るし空気みたいな存在になって、いつの間にか相手を所有するような感じになっていってしまって」
「でもそれはある意味当たり前なんじゃないの?」
「そうかも知れないけれど、私は自分の予定を勝手に決められたりしたくないのよ」
「うん」
「自分が行くんだから当然行くでしょうみたいな決め付けされちゃうと。しかも日程の相談もなかったし」
佐々木は面白そうに笑った。
「やっぱり旅行の件でシコっているんだ」
「別に…旅行以外でもそうなのよ。結婚するともっともっとそういう面が出て来るでしょう。」
「でも子供は欲しいと」
私はそれに答えずに前菜を急いで平らげた。佐々木の顔を見ると私の顔を面白そうにずっと観ている。
「自分でも矛盾しているのは分かっているの。ずっと一緒にいたいけれどなれ合いは嫌。結婚したくないけど子供は欲しい。むちゃくちゃだわ。でもそう思ってしまうのよ。どこかで折り合いを付けないといけないんだけれど」
佐々木は相変わらず黙って私の顔を見ている。
「佐々木さんはどうなの?なんで結婚しないの?」
「なんでだろう。まだふらふらしていたいのかな。ホントに彼女で良いのか考えているんだ」
「どれくらい付き合っているの」
「4年かな」
「ちょっとそれ彼女に酷じゃない?」
「あーそうかなやっぱり。こないだ親に挨拶に来てとか言われてまずいな-って。僕プロポーズなんてしていないんだぜ」
「その年で、そんなに付き合っているってこと自体がもう同じことだと思うよ」
「趣味もそんなにあわないし、君との方が、よっぽど話があうよ」
ドキッとした。店に入ったとたんそんな予感がしていたけれど、言葉に出されるとやはり来たかと思ってしまう。
「でも、私もうそんなに映画は見ないし、ブログのやり取りも面白いと思うけれど…」
「映画以外の話だってしているじゃない」
「そうだけど」
「きみはどうなの?彼氏とどんな話をしているの?」
「確かに話題はすれ違うこともあるけれど、でもそれなりに楽しいわよ」
「でもそれなりなんだろ」
答えられないでいるうちに次の皿が運ばれて来た。


オーバーラップ 20へ
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本郷通りを一本左に入って着いた先はイタリアンのお店だった。落ち着いた店内は、先に4組ほどの客が居て静かに会話していた。インテリアに重厚感がある。オーダーは佐々木に任せて化粧室に入る。輸入物らしい洗面台で手を洗って落ちかけたアイラインを引き直し、ずいぶんしゃれた店に連れてこられたものだと思った。
「お待たせ。で、なにがあったの?」
「んー、それはおいおい」
「なによ、もったいぶっちゃって」
「そっちはどうよ、彼氏と上手くいっているの?」
「それがさぁ、相手が若いのよ。ダイビングが趣味で仲間とバリに行くんだけど、一緒に行こうってしつこくて、行かないって言っているのに」
「なんで行かないの」
「だって、彼の仲間の彼女なんて、私より15も下よ。そんなピチピチと水着で並べないわよ」
「ははは…微妙な女心ってやつだな。…相手いくつ?」
「31」
「そりゃ若いな。ちなみに僕、後藤さんの年を知らないんだけど」
私は天井を仰いで誤魔化した。 「
まぁ、だいたい僕と同じくらいかな。話していりゃわかるよね、はははは…」
「余計なお世話よ」
「うん、でも分からないこともないな」
佐々木は皮の椅子の背にもたれかかった。
「佐々木さんの彼女はいくつ?」
「34」
「結婚したがらないの?」
「したがってる」
「なんでしないの?子供とか早く作らないとリーチかかっているわよ」
「んー」
「んーってなによ」
佐々木は胸の前で組んだ自分の手を見つめた。
「後藤さんはどうするの」
「私?」
「彼氏と結婚するの?」
「それなんだよね」
「なに?」
「私前に一度結婚しているからもう良いやって」
「そうなんだ」
「でも、私もリーチもリーチかかっているから子供は欲しいんだよね」
「ふーん」
「それこそ女心って奴」
「やっぱりそういうもん?」
「んーなんかねー」
「相手が若いから不安?」
「まぁ、子供が出来たら出来ちゃった婚でも良いと思っているんだけど」
「じゃぁ始めっから結婚すればいいのに」
「出来ればしたくないんだ」
「なんで?」


オーバーラップ 19へ
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 翌日も同じように楽しみ私はいよいよ深みにはまっていくようだった。翌土日は更新が無く、月曜日も火曜日もなぜか更新はなかった。彼に何かあったのだろうか。一本電話をかければ済む話だったがそんなに楽しみにしていると思われるのもしゃくな感じがしていたし、佐々木が飽きて止めるのならそれで良いとも考えた。だって私には恋人がいるんだもの。彼を愛しているんだもの。
 けれど冷静になろうとしても、佐々木が更新する時間になるとそわそわとしてしまう自分がいた。いったい彼はどうしたのだろう。コメント欄の最後に書き込む。

■お風邪ですか?
お大事になさって下さいね。
G(2004-11-23 22:29:54)

 水曜の昼過ぎに佐々木から電話があった。
「後藤さん?佐々木です」
「あぁ、佐々木さん、こんにちは、更新がないので、風邪かと思って心配していたんです」
「んー、ちょっといろいろあってさ」
「どうしたんですか」
「うん、電話じゃ話難いな、夕方ちょっと出てこない?」
「それは構いませんけれど」
「ホントは僕がそっちの方にいければ良いんだけど、会社を出るのが7時くらいになっちゃうと思うんだ」
「それ、もう夕方じゃないですよね」
「あはは、そうだね、場所はうーん…」
会社の近くでは都合が悪いのかもしれないと私は思った。
「じゃ、佐々木さんのうちの方まで行きますよ、うちからだと、神田も駒込も変わりませんから」
「じゃぁ悪いけれど駒込駅の上の口、六義園の方の改札口で待ち合わせは?時間は…7時40分くらいかな」
「分かりました、六義園の方の出口ですね」
「悪いね、わざわざ」
「いえ、このところずっと出かけていなかったし」
「それじゃ」
電話を切った後、電話では話せないいろいろあったことってなんだろうと想像した。けれど心当たりは何もなかったし、私は買ったばかりのコートに合わせる服を考え始めた。
 
 さすがに11月も下旬になると風は冷たかった。大きな通りに面した駒込駅で佐々木を待ちながら道行く人を眺める。襟を立てて足早に通り過ぎる人。塾帰りらしい小学生。大きな荷物を抱えた学生。それぞれの人たちの生活がその足取りに伺える。
「よう、悪いね、こんな所まで来て貰って」
「いえ、お元気そうで良かったです」
「んじゃ、飯でも喰いに行きましょう」
佐々木は先に立って歩き始めた。半歩遅れて私も続く。佐々木の家の方の出口とは違ったので方向感覚がつかめなかった。駅の表示板によるとの六義園方向に向かっているようだ。
「ブログっていうのも結構楽しいね」
「佐々木さん、もっと他の人の所へ行って、交流すればもっともっと楽しいですよ」
実際、更新のない間に検索から来たらしいトラックバックが2個ほど付いていた。
「うん、もうちょっと記事が増えたらね」
「トラックバックが2個付いていましたよ。コメント欄にはさすがに書きこめなかったみたい」
コメント欄はGとSが交互に大量に書き込んでいるのだ。誰だって、躊躇するだろう。

オーバーラップ 18へ
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 私は恋人のことをとても愛してると思う。ちょっとした喧嘩なんていくらでもあることだ。恋人に対する気持ちが冷めたとかそういうこととは全く関係なく、佐々木は独立して私の中で光を放ち始めていた。なんと表現したらよいのか、特別な友人。それは恋心とは違うはずだった。だから恋人に私をしっかり捕まえていて欲しかった。佐々木とのやりとりの楽しさに気持ちが乱される。違う、違う、これは恋ではない。恋ではないはずだ。恋人との仲が微妙になってきているときに佐々木が現れたというだけのことだ。けれど、私の心の中に赤いランプが灯っていた。これ以上は危険だ。これ以上関わりにならない方が良い。
特別な男の友人に対する気持ちと恋心がどう違うのか自分でもよく分からなくなってきた。

 翌日は記事がアップされても無視した。その次の日は更新がなかった。けれど木曜日の更新で私は我慢が出来なくてまたコメントをしてしまう。

■ジェームス・ボンド役
長い間ショーン・コネリーが一番って思っていたけど、ピアース・ブロスナンも良い。ホントいい!
G(2004-11-18 20:30:48)

■どっちが好み?
僕は初めから似合うって思ってた。でも、ブロスナンこれでボンド止めちゃうんだよね。
S(2004-11-18 20:41:36)

■ブロスナン惜しいよ~!

でもショーン・コネリーがやっぱりセクシーさでナンバーワンかなw
あと、話変わるけどテイラー・オブ・パナマ、私途中までてっきり007だと思い込んでいたよ~wいったい今回のジェームス・ボンドどうしちゃったんだろうってw あの映画のオープニングは痺れる。プロの手つきって感じでw
G(2004-11-18 20:46:41)

■わかるわかる
アレは凄いよ、手の動きに全く迷いがない。ジェフリー・ラッシュの役者根性を感じる。
あとハリポタのダニエル・ラドクリフが出てたろ。

映画館の看板に007って書いてなかったとおもうけど(笑
S(2004-11-18 20:49:12)
■え、そうだった?

ごめん、子役まで覚えていないw 私はジェイミー・リー・カーチスも好きだから、目がいかなかったのかな?
彼女が着ていたスーツが、いかにも仕立屋の女房のスーツって感じのカッチリとした仕立てで、かっこよかったわー

テイラー・オブ・パナマはビデオで見たのよ
G(2004-11-18 20:53:03)

■え、そうだった?2
ごめん、スーツまで見ていないwそういう見方もあるのか面白いな。
一応言っておくと今日はダイ・アナザー・デイの記事を書いたつもりなんだけど。
S(2004-11-18 20:55:44)

もう一つ「アイ,ロボット」の記事のコメント欄では好きなSF作家は誰かという話になって、モニターの上でひたすら盛り上がりながら佐々木とはこれ以上気持ちが大きくなる前にやめなくてはと理性が働く。だけど、何で?
結婚しているわけじゃなし、仮に彼と付き合うとしたって、恋人との関係のように私は引け目を感じなくて済むし、通じない話にイライラさせられることもない。何で彼ではいけないの?恋人に対する燃えるような想いは無くても、充分楽しい。恋人とはずっと一緒にいたいのに、最近はここへ来ても疲れ切っている彼を見守ることしかできない。
 気が付くと、恋人と佐々木を両天秤に掛けていた。果たしてどちらを選んだらいいのか。私はそれに気が付いて自己嫌悪の泥沼に身を沈めた。自分はひたすら醜かった。


オーバーラップ 17へ
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 その日は恋人がいたので適当なところで切り上げ、翌月曜日にチャット風のコメントのやりとりは再開された。その場に書いてあった記事に次々にコメントを入れていきお互いの感想や突っ込みをどんどん入れていく。4つの記事に次から次へとコメントをしあった。 コメントの量はそれぞれ10以上になり内容はその映画のことを離れて雑談風になっていった。それは私にとってとても楽しかった。そうしながら私は彼のお気に入りブログにはなんのブログもないことが気になり始めた。

■Sさん他のブログは廻らないの?
映画のブログもたくさんあると思うよ
きっと色々交流したら楽しいよ
G (2004-11-15 20:51:27)

■知っている
でも僕は他のブログには興味がないんだ
君は恋愛映画はどんなの観た?
S(2004-11-15 20:53:57)

佐々木は私に恋人がいることを知っている。佐々木にも、恋人がいることを私は知っている。けれど、佐々木にもとても惹かれるものを感じてきていた。この感情を自分の中でどのように処理したらいいか次第に分からなくなってきた。これは恋心?いったい私、どうしちゃったんだろう。

■恋愛映画は
興味がないのよ。どんな映画にも必ず要素として入ってくるし。
Sさん私あなたのことを良いお友達だと思っているんだけれど。
G(2004-11-15 21:02:16)

■Gさん
僕、君ともっと話したいんだ。Gさんも僕に興味を持っていると思っているんだけどね。違う?
S(2004-11-15 21:07:48)

佐々木の言うとおりだった。

■Sさん
とにかく今日はこれで
G(2004-11-15 21:12:27)

 チャット状態でいるとき、私は佐々木の息使いを聞いたような気がした。モニターの向こうに佐々木の存在を実感していた。私と同じように、おそらくゾクゾクしながらキーを叩いているに違いない。1箇所にコメントをして、次にどこに佐々木がコメントをしているか各記事のコメント欄の数字を見る。そこへ行って佐々木のコメントに答える。
 いくつもの話題を二人で自在に操りながらお互いのコメントに込められたウイットに感心し切り返す。話題は多方面に及び、コメントに現れた相手の考え方に共鳴し、お互いのセンスに痺れた。それはちょうどジャズのセッションのようだった。相手の作り出したフレーズに反応し、それに対するハーモニーとともに新たな提案を込め送り出す。相手はそれに応えてまたこちらに戻してくる。まるで脳の中が痺れるようだった。私は佐々木とのやりとりにすっかり魅了されていた。


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 トラックバックが付くと私は必ず確認しに行く。新しくできた映画評のブログで私の記事には関係がなかったが佐々木だとピンと来た。一番上の記事にコメントを入れる。
■ 初めまして
もしかして私の知っているSさん?
G (2004-11-12 12:47:57)

夜になって確認するとコメントレスが付いていた。

■>Gさん
もしかして僕の知っているGさん?
はは、作っちゃったよ-
コメント入れるなっていうからトラックバックにしたんだ。
どう、面白いでしょう。読者になってよ(笑
S (2004-11-12 21:12:24)

 早速読者登録をした。読者登録をしながら佐々木の真意を考えていた。いったいこの人はどういうつもりなんだろう。ここまでやるのは単なる友人を越えた好意ではないだろうか。
 恋人は私のブログに無関心だった。彼にとってみればブログは自分から私との時間を奪う存在だったのだ。もちろん、秘密の扉を彼に黙って書いていたという経緯もある。だから私の方にも彼に対してある種の引け目があった。しかし今度のブログには彼のことは書いていなかった。ブログの中には私の友人達がたくさん存在した。そして佐々木は私の世界とも言えるその中に飛び込んで来た。そんな佐々木をなんだかいじらしく感じたのだ。
 佐々木の記事は以前話題に出た映画について評論していた。私はコメントをした。そして、コメントレスもついていつの間にかチャットのようになった。


■ タランティーノは好きだけれど、
あの血がドバって出てくるのが正直しんどい。
マンガチックで楽しいし、たくさんの映画の引用がたまらないです。
私でさえ、あれはあの映画だっておもうんだからSさんはもっと楽しめるでしょう。
私が好きなのはジャッキー・ブラウン
タランティーノの中では流血少ないしw
だからキル・ビルは大爆笑だったけれどそれだけ
すっごく面白いとは思うんだけれど
なんというかパロディっぽさが…しつこいかな
うーん何度もみたいとはあんまり思わないな
G (2004-11-12 22:17:37)

■なんでー
あのしつこいパロディが良いんじゃないか
なんども見るといろんな引用にもっともっと気がつくよ
あーもどかしい、君の隣で解説しながら観たいなー
量があり過ぎてブログの記事じゃ書き切れないよー
S (2004-11-13 20:41:07)


■たしかにw
あの量は書き切れないwそれと突っ込みどころ満載<
あの映画はビデオで何人かで
突っ込みながら見たい映画だよね。
G (2004-11-13 21:02:48)

■だろ
僕は電気を消して青いバックからの透過ライトになったときにとにかく痺れちゃったよ(笑
そうだ、フォー・ルームスは見た?
S (2004-11-13 21:10:25)

■観た観た!
とにかくティム・ロスが最高!あと、ロバート・ロドリゲス&アントニオ・バンデラスコンビが大好きなのよ私は。デスぺラードとか。なんだっけ、レジェンド・オブ・メキシコとか。ジョニー・デップと目移りしちゃうわね。
G (2004-11-13 21:15:22)

■じゃー
スパイキッズもみた?僕あれも結構好きなんだよ
S (2004-11-13 21:17:45)

■いや
バンデラスファンだけどスパイキッズまでは観てないよ~
G (2004-11-13 21:20:36)

■じゃあさ
明日はレジェンド・オブ・メキシコ書くよ
楽しみにしててね。
バンデラスファン?濃い人が好きなの?
S (2004-11-13 21:24:16)


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「さ、咲子ちゃん。名字なんて言ったかなぁ、咲ちゃんて呼んでいたんだよね」
「ふうん」

 佐々木からの電話は翌週も二度あった。昼休みにかけてくるようだった。映画を観るのを断ると勝手に次はこのビデオを見なさいと指定して、感想を求めてくるのだ。とにかく彼との会話は刺激的で楽しかった。同じ時代を過ごしてきた者同士の共感。懐かしいサブカルチャーの話題。女友達との間にはない話題の守備範囲の広さ。
 ただ私は戸惑っていた。佐々木の気持ちは、純粋な友情というのとは少し違うような気がしていたからだ。それはキスの件もあったけれど、彼は付き合っている女の子がいるのに友人の範囲を超えそうな頻度で連絡してくる。いったいどういうつもりなのだろう。自分の佐々木に対する気持ちもよく分からなかった。そしてこのままでは私自身恋人への気持ちが揺らぎそうな予感がしてきたのだ。ハッキリ断らないとどうなってしまうか分からない。
「佐々木さん、私映画も好きだけど、今ブログをやっていてそっちの方が楽しいし、結構時間もとられちゃうのよ。仕事だってあるし、だからそんなにビデオを見る時間もないの」
「ブログ?あぁ最近流行っているらしいね。君そんなのやっていたの?読みたいな」
「いや、恥ずかしいから勘弁して下さい」
「なんで、いいじゃない。面白そうだなって思っていたんだ。色々教えてよ、僕も昔映画のHP持っていたんだよね。掲示板荒らされちゃって、イヤになっちゃってやめたんだけど」
「あぁ、分かる、佐々木さんならそういうのやっていそう」
「きっと僕の悪口が書いてあるんでしょう」
「そんなの書いていないです。詩とか、書評とかそういうのだから恥ずかしくて」
「えっ、君が書く詩ってどんなのかな、読んでみたいな。隠すところを見るときっとエッチなやつだ」
「ねぇ、本当に怒りますよ」
「君が隠すからだよ、世の中の人が読んでいるのに僕が読んでなぜ悪いの」
答えられなかった。
「じゃ、教えますけど、恥ずかしいからコメントとか入れないで下さいね」
「了解、了解。コメントってよく分からないけど」
「絶対ですよ。検索エンジンで、『いわゆる認識の相対性』で検索をかけるとヒットするから」
「えっ、なに?いわゆる…からがタイトルなの?」
「そう。『いわゆる認識の相対性』」
「ちょっとー、そのタイトルかっこよすぎだな」
「ふふん、センスいいでしょう」
「じゃ、読んだらまた電話するから」
 電話が切れた後でしまったと思った。そう、彼にはいつもこんな風に乗せられてしまう。断るつもりの話をしていたはずなのに気が付くと、私のプライベートにさらに踏み入っていた。
 始めたばかりの『いわゆる認識の相対性』には、未だ大した記事はなかった。私がdoorであることも明記していなかった。あの程度なら大丈夫。

 翌週佐々木からは電話は来なかった。そして、一週間後1件のトラックバックが付いた。
(この件に関して『いわゆる認識の相対性』を捜しても、痕跡はありませんのでご了承下さい)


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 家に戻って来てゆっくりとコーヒーを飲みながらいつの間にか佐々木との会話を思い出していた。自分でそれに気がついて少しびっくりする。以前であれば、こんな時は恋人の事をぼんやりと考えていた。いや、さっき会った人の事を考えるのは当然のことだ。けれど、恋人との予定をキャンセルしたのに佐々木と一緒に過ごしたというのはどういうわけだろう。それは…聞かなければならないことがあったから。どうも本格的にキスもしたらしい。自分の記憶の無いことは確かめようもないが話に不自然なこともなかった。
 このところ恋人とすれ違うことが多くて少し距離を取るようになっていた。彼の仕事も忙しかったから寂しさも感じていた。そんな時に彼とであったのだ。佐々木との会話は疲れなかったし、それでいて刺激的だった。髪が乱れたのを「花形満みたい」と冷やかして、「誰それ」と聞き返されることもなかった。学生時代の友人と同じように恋愛感情抜きで自然に話せる気楽な関係だ。あるいは元の夫との関係に似ているかも知れない。何年もずっと一緒にいるような懐かしさと気安さ。そう言えば、体型も夫に似ているかも知れない。がっしりしていて手足の短いキユーピー人形のようだと言って笑った、ぬいぐるみの熊のような雰囲気。もう忘れたと思っていたのに、やはりまだこだわっているのだろうか。佐々木に対して恋愛感情は抜きなんだろうか…

2、3日してまた佐々木から電話が来た。
「もし良かったら来週の平日でもまた観に行きませんか」
「来週はちょっと…」
「そうか残念だな」
「佐々木さんの彼女と観にいらっしゃればいいのに」
「ん…まーそうなんだけど、じゃ一人で行くよ。ところでこの間の話なんだけど…」 
佐々木は電話で次に私がビデオで見るべき映画について延々と話し始めた。また面白い話なのでなんだか電話を切れなくなってしまう。
呼び鈴がなって恋人が家に来た。
「電話中?」とでも聞くように両まゆげを上げて目顔で私にあいさつする。
佐々木の話はまだ終わりそうにない。
手で合図して食事が済んだかどうか聞くとどうやら食べて来た様子なのでお湯を湧かし、お茶を入れる。その間ずっと佐々木は喋っていた。ようやく話の切れ目を見つけて
「あの、私食事したいのでそろそろ…」
「あーまだだったの?じゃあ来週あたりまた電話するから」
いえ、もうと言いかけて恋人の前であることを思い出して言葉を飲み込む。
「ええ、また」
通話機の「切る」ボタンを押すと恋人が話し掛けて来た。
「ずいぶん長い電話だったねー」
「うん友達」
「何の話?」
「この間試写会で久しぶりにあったコ」
「なんて名前?」
とっさのことで名前が出てこない。気持ちが焦ってしまう。
「由佳里どうしたの」


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