秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

「doorちゃん、そっちに有名なお寺とかある?」
徹の話が飛ぶのはいつものことだ。いったい何のことだろう。
「私は国分寺だから武蔵国分寺があるよ」
「国分寺ってあれ?全国に造ったとかいうやつ?」
「うん、あれの武蔵の国に立てたやつ」
「念珠を頼みたくてさ。お寺で売ってるやつあるでしょぉ。ブレスレットタイプの木でできたやつ。500円くらいだから」
「えっ、武蔵国分寺にそんなヤツ売ってたかな?
 それとさ、どうせ送るんだったらそんな安いのじゃなくて、石でできたもうちょっといいヤツの方が…」
「お寺の安いみやげ物でも念を込めてあるからそれでいいんだよ
 普通に買って、お寺で念を込めてもらうと祈祷料を払わなくちゃなんねぇから」
「あ、そう。私そういうの分からなくて。国分寺に無かったらどこが近いかなぁ…高幡不動かなぁ」
「高幡不動?お不動さんか。よし、そりゃいい、そこにしよう」
「うん」


「新潟行ってから体調がきつくてぇ、やっぱ長距離走るのが無理になってきたのかなぁって。
何かね、運転する事が恐怖な時あるの。3.11の津波のトラウマなのか…
今回新潟から物凄いスピードで帰ってきたのもぉ、倒れる前に帰らないとって考えて飛ばせるだけ飛ばしたのがホントなんだ。
1人で運転してれば、自分のペースで走れるでしょぉ。だけど、仲の良い友達でも、話したり、いきなりトイレだのお腹すいただのぉ、ペースを乱されるでしょ。
俺の病気話してる連中なんだけど、いまいち通じてないかなぁって事を考えると、もし倒れたらどうしようって考えるようになりぃ、色々無意識で考え出す俺がいるんだよ、
それをパニック障害と言うらしいんだけどね」
お不動さんの念誦が欲しいのも、何か神頼みのところがあるのだろう。

「一昨日は物凄い恐怖が、伝わってきていたよ」
「簡単には治らないんだよね…申し訳ない事してごめんね…」
「申し訳ないことって?」
「無意識で恐怖を与えてたらぁ、謝るのは当然だから」

「これは徹ちゃんの感じてた恐怖だってわかってたから大丈夫」
「被災前はこんな事無かったんだけどね。海は見れるようになったけどぉ、海の音がいまだにきつくて。
海を嫌いになりたくないから、海が好きだから、なおさらそのトラウマが大きいのかも知れないし。
まさか車の運転にも支障が出ると思わなかった…」
「必ず乗り越えられるから」

「人には強がり言うけど、俺は小さい男なんだよ…自分でわかるから、それをまたカモフラージュして生きてるのかも知れないね…」
私に対して自分の小ささを認められるだけ徹は強いのだけれど。
「そこ、触れないでおくから、あははは」
「お願いします!!! 触れないで下さい」徹も笑った。
「いちおう男だから」
「いちおう言うなよっ」
「一般的に男は弱い、これはあくまでも一般論!
まぁ、吐き出すだけ吐き出しなさいって言っても難しいかもしれないけど、徹ちゃんは、男にしては強いから大丈夫。治るよ」

徹はパニック障害の診断を受けた後、その件では病院に通っていなかった。
「こういう病気って、ああいうところに通えば通うほど薬から逃れられなくなるって聞いて…
ガキの頃から身体弱かったからぁ、病院ばかり行ってて病院はそもそも嫌いだから。俺は自分で、海行ってリハビリみたいな事してるんだよ。そのほうが落ち着く気がする。
海が好きだから、船にも乗ってライセンスも取ったその矢先の被災でしょぉ」
「泳げないくせに」
「泳げなくても船長になれるの驚きでしょ。うふふん、doorちゃん、安心して俺の船に乗れないよね。
明日も海と向き合うよ。まだまだそばでは無理だから高台からだけどね。

…俺、震災以来涙もろくなっちゃって…うふふん、俺、ジジイになったんかなぁ。
前は、ほら話したろ、世話になった寺の住職が亡くなった時以外は、泣いたりしなかったんだよ。
あの時津波で壊れていく街とか、流されていく人とかも見ていて、何も出来なくて…どうしようもなくて。あの時の写真とかテレビとか全く見られない。不意に眼に入ったりすると涙が出てくる」
「…男の人でも泣いて良いんだよ。あれだけのことがあったんだから。
 ちっともおかしいことじゃないし、むしろあんな目にあってショックが残るのは当然だし」
「寝る前もね、今はこうして話して笑っていられるけど、いつもこれからどうしようって不安になって泣きながら寝る感じで、こんなんでやっていけるのかなぁって…」

彼に恋している一方で、彼の心の動きを冷静に分析している私が居た。女に向かってここまでの弱音を素直に表現できる男というのも稀だろう。もしかしたら「女」としてではなくカウンセラーとか「姉」と見られているのかもしれないし、余りの辛さに飾っている余裕がないのかもしれない。
パニック障害のことでは私にも助けられる手立てがあった。それはフラワーエッセンスで、そのことについて説明した。説明するとすぐにちゃちゃが入って、うっかりすると徹に話を持っていかれてしまう。それでも徹は飲んでくれることになった。

「変なこと言っていると思うかもしれないけど」
「変じゃねーよ」

「それともうひとつ、私そっちに行く用事ができたの。アパートの件で。徹ちゃんに合わせるから、都合つけてくれないかな。9月の上旬か月末前後。せっかくそっちまで行くんだもの。顔ぐらい見たいじゃん」


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