秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

今日の徹は本当に不安定だった。話題は脈絡なく飛び、こっちで地震、向こうで地震。いい加減嫌気がさしているのだろう。もしかしたら向こうで何かあったのかもしれない。
「さよならなんて書かれたら悲しい、だけど早く寝れ」
「H無しで眠れとな…これでさよならか…上からもの言われるのが嫌いでね!」
「なに怒ってるの?何か気に触るようなことでも?」
突然部屋中にスカイプの着信音が響いた。ヘッドセットをしていなかったので慌てて通話拒否をした。
「ちょっとまって、今イヤホン持ってくるから」
「もう良いよ…」
こちらから徹にかけなおすと応答しない。仕方なくチャットウインドウに打った。
「眠れないの?」
「さよならかな…なんかそんな感じ…」
「私が嫌いになった?上から目線で、語ったつもりはないけど、元々が生意気な女だから嫌われても仕方がない」
「俺がわがままだからだよ」
「 わがままというより、俺様だな」
「考え方が子供のまんまだしね」
思わず吹き出した。わかっているじゃん。と書いたらまた気分を悪くされるのだろう。
「そんなことないと思うけど、言うことも分かるけど、そこが可愛いの」
なんだか文章が苦しすぎる。


「 この震災で、俺は、笑って楽しく余生を過ごせればそれで良いと思ってた。その余生が今なんだよね。  震災前に自由に生きれなかった分、余生は自由に生きようかと」
「うん、やりたいことやれば良いとおもうよ」
「doorちゃんに支援して頂き本当に感謝の言葉しか無い」
「 私はしたいからしているだけで、私の自己満足」
「 そして情けない俺がいる、何の恩返しも出来ない…」
「情けなくなんかないよ、尊敬してる」
「無力って悲しいんだよ。辛いし」
「それは徹ちゃんのせいじゃない。私達東京で、のうのうと暮らしている」
「自由に生きるのにも先立つ金が無いから何の自由も無いよ」
「私たち、自分たちで使っている電気のせいで結果的に福島を犠牲にした。そのことは厳然とした事実だ」
「俺はdoorちゃんに何て御礼を言えば良いのか、また、この先、中期的な支援のお願い頼めるのか、日夜悩むよ…」
「お礼はいらない、生きていてくれれば」
「うちは、親戚がいないから支援頼めるとこが無い…
 こんな事を連日、考えるから、眠れない日が続くのかもね。
 友達も皆、被災民になって、離れ離れになったし、なんか辛いね。友達も生きるのが精一杯で、お互い助け合いも出来ない」
「それはある程度仕方がない」
「俺はまだ、傷んだ家に住めてるだけましなんだ。仲間は全壊の奴多いから、メールでのやり取りが精一杯」
話は全くかみ合わなくてどこから手をつけていいのか分からなかった。


「もうビデオで話せるけど、いま、繋いでいい?」
「犯すぞ~」
「いいよパジャマで待ってる」
「裸できやがれ。
 やっぱり寝よう。子供に朝ご飯作らないと駄目じゃん」
「眠れそうもないときは抜くのが一番だと思うけど」
「ママが寝不足は駄目だよ」
「大丈夫。このまま徹ちゃんの心配しながらは、どうせ眠れない。ちょっとトイレ行って来る」

もしかしたら徹の大切にしていた繋がりが、どこか何か綻び始めたのかも知れなかった。たかしもそうだけど、物理的な距離があると相手に何が起こっているか、知らされなければこちらはわからない。そのもどかしさがある。
戻ってくると徹は一人ごちていた。


「何故に俺?遊び人の徹の俺なのか…金も身体もかかるやっかい者だぞ」
多分…私が愛しているのは徹その人ではなく、日本から失われた男気とか、筋論とか、ハチャメチャな遊び心とか、徹の持っている性質のようなものなんだろうと思う。

「私に愛された男は幸せなんだよ、宝くじみたいなもんだよ」

「そうかもな!全力で助けてくれるからな…感謝する」
「色男、金と力はなかりけりだね!」
こういうことを自分で書くかなぁ。どれだけ色男のつもりなんだか…聞こえないのを良いことに私は大笑いしてしまった。


灯りをつけて、バスタオルを敷いてビデオ通話を始める。
徹はオイルを塗りたくったテカテカな身体を見るのが好きだった。マッサージオイルを瓶から直接身体に垂らすのを見たがった。私は彼専属のストリッパーで、出来ることはそれぐらいしかない。徹がどんなに不安でも何も助けてあげられない。きっと消耗しているのだろう。せめてぐっすりと眠って…。

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