久々に真面目な仕事の話を。でも、いつも話が脱線したり、途中で力尽きて書くのをやめてしまったりするので、オチまできちんと着陸させることができるか、書き出す前から不安を抱えつつ・・・


県教委では今年度「いきいき食育推進事業」というのを立ち上げ、事業の取り掛かりとして県内の栄養教諭を中心に朝食の指導について研究を進めています。朝食欠食は現在、食の問題の中でも特に大きな課題。食育基本推進計画では、平成22年までに朝食欠食率を4%(当県は3%)から0%にするという目標を出しており、県の食育推進計画もそれに従っています。


ところが、朝食をはじめとして学校での食育はそこに勤める者なら誰もが認識しているはずなのに、昨年度の県内調査によると「指導計画に基づいて食に関する指導を行っている」という学校は小中学校とも30%未満でした。もちろん、指導計画がなくても必要に応じて食に関する指導は行われているはずなので、全く指導がされていないわけではありません。ですが、指導計画のないところでは文字通り計画に基づいて指導されていないので、児童生徒の発達段階や既習内容を無視したものになる可能性は大いにあります。分かりやすく言うと、例えば3年生で朝食の中身(三色分け)をして学習したのに、5年生でも全く同じ内容を学習するとか、朝食の大切さを低学年で抑えることができないままで、高学年で朝食作りを、それこそ理屈だけで行ってしまうとか。算数なら足し算を勉強しないでいきなりかけ算をするのは無理だと誰でも分かるはずなのに、食育ではそれに近いことが実際行われている気がします。


それにしても、30%未満ってあまりに低すぎやしないか?って感じました。ひょっとして、その割合は栄養教諭や学校栄養職員の配置と、比例しているのではないかな?と思いましたがどうでしょう。今どき、食育の指導計画がない学校なんて・・・!とはじめは思いましたが、近隣の学校栄養士不在校を思うとさもありなん。現に、私が今年度中に今勤務している市に置き土産(3月で移動する気でいるから!?)として取り組んでいるのは、全ての学校に食育の年間指導計画を立案すること。様々な仕事と平行しながら、文科省や県の手引きとにらめっこの日々です。学校栄養士のいない学校でも、できるだけ無理のない形で取り組みやすく、計画だけの指導計画にならないようになると良いなと思います。ま、出来上がった後はその学校のやり方次第ですが・・・。


県の「いきいき食育推進事業」も、今年度はとりあえず朝食に関してだけですが、県内全ての学校、先生方に実施してもらえることを意識して作っています。年度末には小1から中3まで、全学年における系統的な指導プログラムを作成して、普及の予定です。県内の教職員に対して知らせるほか、ホームページ上でも掲載するそうなので、出来上がったらまたお知らせしたいと思います。


連絡協議会のメンバーは県内の小中学校に勤務する栄養教諭(10名)と地元短大の教授、県教委の指導主事2名(栄養教諭と家庭科の先生)です。5月から始まったこの協議会、アンケートにより実態把握や学年ごとの指導内容の絞込み、教科との関連等、順調に進んできましたが、今難航しているのが指導案作成の現段階で、若干足踏み状態にあります。


前回の協議会で、各人が担当学年の指導案を、それぞれの学校や教育事務所の形式、あるいは全国学校栄養士協議会の書式に習って持ち寄ったのですが、これを統一するために、指導主事の先生が書き方をとても丁寧に指導してくださいました。家庭科の指導主事であり、県の教育センターで指導案の書き方をみっちり指導されてきた先生とあって、分かりやすい。今まで、先生達の書式を真似するだけで『指導案もどきのようなもの』を作っていましたが、なるほど、そういうことだったのか・・・!と思うことがたくさん。


栄養教諭になって、仕事はどこからともなくやってきてやたら忙しくなるし、外部の仕事が多すぎて自分の足元がおろそかになりそうで辛いし、こんなことを言っちゃいけないけれど、給料だって残業代がなくなった分実収入はへっちゃったし・・・(教諭の場合は、もともと4%=1万ちょっとが特別手当としてついているので、どれだけ残業しても追加はないのです)と、明らかにデメリットのほうが多いような気がしているこの2年。


でも、自分みたいないい加減な人間にいろいろ仕事を任せてもらえるのは、よくも悪くも栄養教諭という肩書きがあってのことですし、今回の協議会もそう。そして何より贅沢だなぁ、と感じるのは、今回の指導案の書き方のように、普段の仕事ではなかなか学べない事柄に接する機会が増えたことです。


栄養教諭になってよかった、指導案の書き方もよく分かったぞ・・・と実感して指導案を直し、再び先日の協議会。事前にデータを送ってあったので、改めて指導主事の先生から赤ペンの入った指導案を戻していただきました。やはり、1度聞いたくらいでは完璧な指導案にはなっていなくて、チョコチョコと訂正が入っていたり・・・。


全体会で再び指導案の書式について指導があった後、小学校・中学校に分かれて分科会。指導案の書式と、内容検討を行いました。私は小1の担当だったので、例の赤ペンの内容を確認しながら次回までの改善点を話し合い、そして2年生・・・。


そこから先、会議の予定時間を大幅に延長して検討会は続きました。充実して話し合いも白熱したから・・・?いや、そうではなく赤ペンの箇所が多すぎて、内容も検討することが多すぎて、『ちょっと訂正』どころではすまなかったのです。


“え!?前回あんな丁寧に説明してもらって、その後話し合いもしたのに。何聞いてたんだ、みんな・・・”もちろん、口には出さなかったけれど、ちょっとイラッときていた私。まぁ、本当のところの理由は、延長しすぎたせいでアパートに戻るのがものすごく遅くなり、絶対に行ける思っていた大好きなインストラクターのレッスンに出れなかった・・・という、実に個人的でどうでもいいことが原因なんだけど。


挙句の果てに、ある先輩の栄養教諭の先生がおっしゃった。


「doonidooniさん達はいいわねぇ。先に栄養教諭になって勉強もできるし、10年研でも指導してもらえたのでしょう。私達なんて、指導案なんてじっくりと書き方習う機会もなかったから・・・」


昨年あった10年研でも、先に栄養教諭になったといっても、指導案の書き方なんて、全く習いませんでしたけど。強いて言えば、前回の指導主事の先生の話で、内容がある程度理解できていたことと、それを理解できるまでの土台が自分の中にあったこと。その土台というのは、普段の校内研究会や指導主事訪問の時に、自分の時間を削ってでも参加して、全く意味が分からないながらもそれなりに理解しようとして得たものだと思います。


それは栄養教諭になった2年前からではなく、思い起こせば初任の頃からずっとでした。時には他の学校栄養士から“そんな会までいちいち出ていたら、普段の仕事ができないでしょう・・・”と言われたり、養護教諭の先生から“今日は国語の研究会だし、私達は出ても意味ないよ~”と『養護教諭の私が出てないのに貴方が出席するの・・・?』的なけん制もありましたが、校内ではそこしか授業について勉強できる機会はないと、自分で感じていたからです。


初任の頃って、その手の会に出るか出ないか判断はしづらいですし、管理職の考えもあります。何より、本人が必要と思うか思わないかの違いは大きいです。初任の学校が単独方式でアットホームだったのと、当時の管理職も『貴方は教員ではないのだから、出なくていいよ』なんて無粋なことをおっしゃらなかったのが、今となっては良かったな~と思います。 要は、自分の時間やお金を使ってでも勉強したいと思う人はするだろうし、そうでない人はしないだろうし、それで差がついてしまうのは当然のことで。偉そうにいう自分だって、衛生面に関しては自分も嫌いなのと苦手意識があってなかなか定着できません、この分野では小さく小さくなるばかり。でもそれに対して、『あの人は○○だから・・・』とあ~だこ~だと理由をつけて、できない自分を正当化するのはどうか・・・と思うのです。


9月に参加した自主研で、新採の子二人と一緒でした。そのうちの1人は、新採とはいっても20代後半、長く病院経験のある子です。様々な演習の中で、食物アレルギーについての実践報告がありました。その中で提案者の栄養教諭が、明らかにどう考えてもおかしいだろうという保護者の申し出に対して、それに従って除去食を行っているという報告をされました。そしてそれが、栄養士にとっても調理員にとってもまた、経済面からもかなり負担になっていると。


「全くナンセンスな問題です。」と指導者の先生にはあっさり言われ、参加者も失笑気味だったのですが、それ以上にその新採さんの反応が厳しくて、私はちょっとひいてしまいました。


「先生(私のこと)。あんな人が栄養教諭になって、その肩書きでもって仕事しているなんて、私、ガッカリしました。自分達は学生時代はもちろん、認定講習も終わっていて栄養教諭の免許は取れないので高いお金払って必死で勉強してるのに、あんな人が栄養教諭なんて・・・」


「県によっては、採用試験は形だけでほぼ全員が栄養教諭になっているところもあるしね。栄養教諭が“選ばれし者”的な考えを持つのは間違いだよ。だからと言って、何も知らなくて良い訳ではないけど。いずれにしろ、名前だけ変わっても中身が伴わないとダメだよね。自分自身も勉強不足・・・。反省しますわ・・・。」


なんて情けなく取り繕ったけれど、指導案について先輩の方から言われたときに感じたこと、それと同じ事を、実はその新採さんに抱いていなかったか???


「あの人は若いけど、病院経験もあるし、だから食物アレルギーの事だって分かっているのよ。私は病院経験も無いからさぁ~」なんて・・・?


どんな背景を持って、どんな特技があって、どんな勉強をしていて・・・いろんな人が同じ肩書きで仕事をしている(学校栄養士は最近二つに分かれて複雑さを呈しているけど)。もちろん、好き嫌いも得手不得手もあるけれど、そんなことは全く言い訳にならなくて、特に他の職種の人から見れば、同じ肩書きの人には同じ事を求めるもの。一人職種の学校栄養士なんか、特にそうだ。


ちょっと中堅に差し掛かって、一通りのことができるような気がしているけれど、まだまだ、貪欲に頑張らなくちゃ、いけないんだな・・・と感じました。