奈良妊婦”たらい回し”で胎児死亡の件の続きです。


ニュースでは

「妊婦が救急車を依頼したけれど、”たらい回し”になっている間に胎児は死亡した。

”たらい回し”にした医者、病院は許せない」

という論調から始まりました。


それに呼応する形でテレビでも新聞の論説でも

「もっと早くに搬送できていれば、胎児は助かったハズだ。」

「”たらい回し”にするとは、医者は義務を忘れてしまった。」

「去年”たらい回し”で亡くなった妊婦の事件の教訓が生かされていない。彼女の死は何だったのか?」

と、医者、病院バッシングへ発展してゆきました。


しかし、”たらい回し”をしたとされる奈良県立医大の産婦人科当直記録などが明らかにされるにつれ、


「搬送システムに問題があった。」


という方向へさりげなく転換。(病院、医師への誹謗中傷への謝罪、名誉回復は一切無し。)



結果としては、広域地区の連携を深める、周産期医療センターの整備を急ぐといった、

行政の問題点へ収束していった訳です。


・・・さて、私はこの件で最初にひっかかったところがあり、


前々回取り上げました記事

毎日新聞でまた、奈良で「たらい回し」との報道。~「飛び込み出産」とは?~

で、書いています。



それは、

>電話の時点で既に胎児死亡していたと言うことは考えられませんかね?


この疑問に対する見解が、いつも参考に頂いている天漢日乗さんのブログで記事にされています。

以下参照。

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「マスコミたらい回し」とは?(その109)奈良高槻妊婦搬送問題 救急搬送する以前に胎児は胎内で死亡 病理医学の立場から→マスコミは搬送当日(8/29)の警察発表でその事実を知っていたにもかかわらず、歪曲した報道を続ける



(中略)

初めてコメントいたします。
当方,病理医ですが

>赤ちゃんは救急搬送を受ける以前に胎内で亡くなっていたのではないか、と思われるのだが。


のご指摘通りと考えます。


根拠は「子宮内胎児死亡」の診断の警察発表が,第一報の翌日(8月30日)には既に報道されていたことからも伺えます。これは,肉眼観察レベルで明らかに「子宮内で胎児が死んでいた」・・・つまり表皮の剥離や組織の融解などがあり(=浸軟児の状態)「死んで暫く経っている」と判別可能であったことを意味します


浸軟が進むと,死因の詳細な検索は不可能になります。羊膜索症候群,外表奇形,重篤な胎児水腫などといった肉眼的に明らかな異常がない限り,「死因は不詳」とせざるを得ません。


一方で。

搬送中ないし直前にこの児が亡くなったのであれば,新鮮な死体である筈ですね。この場合,死因を調べるためには,病理組織学的な検索を行う必要が生じ,診断確定までには少なくとも1週間程度を要します。


また胎児の死因として「分娩時の低酸素」などといった死亡時の状況が記載される筈であり,「死因は不詳」とはならない


しかしこの件では【子宮内胎児死亡】【死因は不詳】の【確定診断】が【翌日発表】された。すなわち肉眼診断レベルで【なぜかはわからないが,一目瞭然,死んでいる】との判断がなされた状況からは,胎児の死亡は搬送直前の出来事ではなく,もっと前におこっていたと推察される。

というわけなのです。

<参照終わり>
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要するに、


事件発覚直後から「胎児死亡、死因は不詳」と報道されていることから、

病理診断を待たずして確定されているという事であり、

搬送以前から胎内死亡していたと考えるのが妥当


という病理専門家の結論です。





さてさて結論として、

救急車を呼んだ時点で胎児の生存が確認されていない以上、

「早く搬送されていれば、胎児は助かったハズだ。」

という論調は全くの誤解なわけです。


そして、この不運な胎児の命を救う為に必要だった事は、

妊娠の可能性のある女性は、きちんと検診を受けて胎児の発育を確認する事に他ならないので、

記事の内容もタイトルも論点もこういった

「飛び込み出産をする妊婦」問題へ焦点をあてたものであったハズです。




それが解ってきたのか、日本各地での「飛び込み出産」をする妊婦”たらい回し”の事実が

明るみに出てきています。

妊婦受け入れ拒否:千葉でも5月に 23医療機関で42回



妊婦の搬送 札幌でも受け入れ拒否 昨年5件、最多で11回

ちょっと調べただけで、この有様です。




こんな事は全国で無数に、以前から起っていた事ですが、

何故まず最初に奈良の地で殊更に取り上げられ、

大淀病院の事件と関連付けられ、


奈良県立医大が槍玉に挙げられているのかは、

マスコミが知っている事で、我々は推して図るべき事なんでしょうね。



・・・どのあたりを“推す”のかは、天漢日乗さんのブログでどうぞ。




ちなみに、この「飛び込み出産」をする妊婦を

ネットの一部では「強産婦」や「野良妊婦」と呼び出しているとの事です。


不謹慎にも聞こえますが、

検診も受けずに急に病院に押しかけて、出産費用を踏み倒す様が強盗に例えられたり、

妊娠にも気づかず、赤ちゃんを産み捨てたりする様を野良猫(犬)に例えられたりしているようです。


強産婦はまだ人間に例えられいて、マシかもしれません。

出産費用を踏み倒すのは、食い逃げと同じで窃盗罪か詐欺罪に相当するでしょうから、

犯罪者と同じなので文句はありませんよね。


しかし、野良猫でも子猫の面倒を見るでしょうから、

野良妊婦は猫に失礼な例えかもしれませんね。



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