~食肉の生産から食卓までを繋ぐ~日本産肉研究会 第10回学術集会(京都大会)レポート | Direct Marketing Business Challenge~ ダイレクトマーケティングビジネスチャレンジ~

~食肉の生産から食卓までを繋ぐ~日本産肉研究会 第10回学術集会(京都大会)レポート

「食肉の生産から食卓までを繋ぐ」をコンセプトとした日本産肉研究会の学術集会が11月13・14日の二日間、キャンパスプラザ京都(京都市下京区)ほかで開催されました。シンポジウムや「きたやま南山」での牛肉試食と意見交換会、翌日は滋賀県の近江牛生産農家(木下牧場)を訪問見学する現地検討会など、牛肉にどっぷり浸かった二日間。


大会長は京都市左京区で焼肉店「きたやま南山」を経営されている楠本貞愛(ていあい)社長




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幹事長は九州大学農学部准教授、後藤貴文先生です。




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第10回を迎えた今年は、「牛肉の価値を再構築する」というテーマでシンポジウムがスタート。その一部をお伝えします。







赤身牛肉の優れた特性




新宿溝口クリニックのチーフ栄養カウンセラーの定(じょう)真理子先生は、アンチエイジングのための栄養「分子栄養学の観点からお肉を食べよう」というテーマで講演。




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先生のクリニックを訪れる患者さんはうつ・引きこもり・末期がんの方のほか、アンチエイジング対策を求める方も多く、また糖尿病の患者さんには薬ではなく食事で改善に向かうようサポート。栄養療法に基づいて行う食事指導では、たんぱく質をたくさんとる事を推進されていて、アンチエイジングの観点からも、70代80代でも若々しく元気な方の栄養状態をみるとたんぽく質を多く取っているそうです。人間の体の脳・血液・内臓・骨・筋肉、これらは全て脂質・糖質・たんぱく質などの材料でできています。この中で一番重要な材料はたんぱく質だそうです。




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特に脳内神経に関わるセロトニン(脳の調整役)の材料はトリプトファンというアミノ酸。これは動物性たんぱく質のこと。菜食主義やマクロビオティックではこのトリプトファンが入ってきません。血液中に存在するヘモグロビン=「ヘム(鉄)・グロビン(たんぱく質)」の、この両方が効率良く接種できる食べ物は、赤身の肉、牛肉だそうです。クリニックでも貧血を防ぐには断然、牛肉を勧めています。以前、オージービーフの団体からの依頼で、貧血についての記事を書く機会があり、研究の結果、赤身肉の優れた特性に着目しているそうです。




牛肉を食べても太らない?




誰しも年齢と共に基礎代謝が下がりますが、牛肉=たんぱく質を取ることで、これを消化・吸収するためにエネルギーが必要なため基礎代謝が上がってやせやすい体になるという嬉しい報告も。クリニックに訪れた肥満に悩む患者さんに、お肉をすすめて炭水化物を厳しく制限されたそうですが、二か月後内臓脂肪がとれて減量に見事成功。お肉で太るという間違った知識を持っている方も多いのではないでしょうか。




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中性脂肪の原因は脂肪ではなく、糖質。甘いもの、炭水化物をとると糖質はグリセリンと脂肪酸に分解され、中性脂肪になるそうです。ご飯・麺・パンなどの炭水化物を控え、肉や魚をたくさんとることが大事。つまり、高たんぱく低糖質が生活習慣病の予防、アンチエイジングにも効果的だそうです。


48歳、38歳の男性が一年間お肉しか食べないという実験をしたところ、元気に生活をし、体重も減少、お腹の調子もいいという結果が。


糖尿病や肥満の方は厳しい食事制限で大変だと聞いたことがありますが、炭水化物を制限するだけで、お肉がお腹いっぱい食べられ、食事制限のストレスからも解放されることにより気持ちも明るくなるのではないでしょうか。





霜降り肉への疑問




「牛肉の新しいブランド戦略」というテーマでお話をされたのは(株)サカエヤの新保(にいほ)吉伸社長




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滋賀県の南草津で近江牛の専門店を経営されています。毎年11月に全国で行われる牛の競り(セリ)では、どれだけ牛にサシ(霜降り)が入っているかで牛の価値が決定、格付け制度によってランク付されています。




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サシを入れ、高値で牛が売れることこそ生産者の喜び。しかし新保社長は自身が霜降り牛に疑問を持ち、それを消費者にすすめることへの抵抗を感じていたそうです。その後2001年にBSE騒動が発生し徐々に売り上げが減少。何年かかけて取引先は無くなり、お店にはお客さんが来ない状態が続きました。

日本中で牛肉離れが進んでいる中、新保社長はインターネットに賭け、美味しさより安全性を訴え続けたそうです。




木下牧場との出会い




そんな大変な状況の中、出会った近江牛生産の木下牧場(滋賀県近江八幡市)で、子牛が生まれて母牛の乳を飲み放牧されて育つ姿を見て社長は心から感動。通常子牛は購入して育てられ、牛舎で太らされ、中にはビタミン不足で立てなくなったり、目の見えなくなった牛がいたりと「※動物の福祉」など関係ない飼い方をされているケースもあるそうです。木下牧場では、牛に負担をかけずに「健全な牛肉」作りに力を入れています。九州大学ブランドビーフQBeefのコンセプトにも合致していてとても共感できました。




新保社長の基本姿勢は、見た目や味、格付けだけではなく、「どこで、どうやって飼育されたのか」・「何を食べて育ったのか」を重視し、それに共感してくれる方がお客さまだというスタンス。




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安さを求める人は離れていくがそれでいいと仰っていました。価格が高くても、付加価値をつけてブランド化し共感者が集まれば口コミで広がります。それは最高のマーケティングだと思います。




新保社長が取り組まれている安全で質の良い牛肉を作り、動物にも配慮した畜産。これはまさしくQBeefが目指すものであり、畜産業界に携わる方々が同じ方向を向いていることが実感でき、とても心強いものがありました。


また同時に、消費者側が食の安全を守る畜産を支えるという意識を持っていただけるような取組みをしていかなければいけないと感じました。




※ 動物の福祉

1960年代の英国で家畜の劣悪な飼育管理を改善させ、家畜の福祉を確保させるために、その基本として下記の「5つの自由」が制定。現在では、家畜のみならず、ペット動物・実験動物等あらゆる人間の飼育下にある動物の福祉の基本として世界中で認められ、EUではこれに基づいて指令が作成されています。

「飢えと渇きからの自由」「不快からの自由」「痛み・傷害・病気からの自由」「恐怖や抑圧からの自由」「正常な行動を表現する自由」 (公益社団法人 日本動物福祉協会HPより)





ビジネスチャレンジ編集長

㈱コーデ 代表取締役

占部恵子




日本産肉研究会

http://www.agri.tohoku.ac.jp/keitai/jsmp/




新宿溝口クリニック

http://www.shinjuku-clinic.jp/




㈱サカエヤ

http://www.omigyu.co.jp/