再びジャズライブの現場のPAについて考える。または学生ビッグバンドへの提言。 | music-geek

再びジャズライブの現場のPAについて考える。または学生ビッグバンドへの提言。

久しぶりにたまのビッグバンドジャズコンテストを見てきました。2日目の後半最後の数校から順位発表までいました。学生バンドの出来についていえば、シードの20校にテープ審査で本戦に上がった15校、っていうことで、レベルが平準化しているので、クジ運的優劣みたいなのの格差が明らかに減ってる。昔は入賞常連校の前後とかで印象が...みたいなのがもっと強かった気がしますね。

それはそれとして。

今回のコンテストに際して、PAのことについて色々と議論が起きていたようです。どちらかというとPA屋さんに対するネガティブな意見でしたが。でも私は現場を見てそうは考えませんでした。
正直言ってしまえば、ソニックシティの大ホールでもソロマイク一本くらいでNo PAでも行けるとは思うんですよ。ビッグバンドと、例えばギャルドやイーストマンのウィンドアンサンブルみたいなバンドの違いってパーカッションパートの替わりにドラムセットがあるのと、ベースやギターがアンプ使うくらいの違いであって、フルバンだけあんなにマイクを建てる必要ってのは本当はないと思います。そして会場のPA屋さんもPAはバランサーだと考えてやっていると思います。このコンテストでPAを担当してくれてる方は、少なくとも私が学生の頃から担当されていて、そこから数えてもこのコンクールの歴史的には半分以上担当されてる経験の豊富な人です。この現場には習熟しているはずです。私はこの会社の社長さんとも親しくさせて頂いていますが、楽器の特性とイコライズのこととか、学ぶ事がとても多いのです。

で、PAの方はバランサーだと考えていると思うのですが、学生さんは「音を拾って持ち上げてくれるもの」と考えているフシがあり、更に言うと学生さんの生の音量っていうのがもの凄く大きいんです。全てそうとは言いませんが、今回入賞した学校でも最低の音量がmfくらいで、息の入れ過ぎでサックスの音程が歪むくらいの音量で演奏してたバンドもありました。学生さんの水準だから、小さな音だとしょぼくなっちゃうことがままあるし、ラウドで元気な方が勢いがあって良く聴こえる、みたいな部分もあると思うんですよね。で、この現場でサウンドチェックも出来ない状況で20分刻みくらいで闘牛みたいに次から次へと出てきて演奏する現場では仕方ない部分もあるのかな、と感じてたんです。

でも、招待バンドの老舗ビッグバンドのブルーコーツではそういう問題が一切無かった。彼らも百戦錬磨とはいえサウンドチェックなんかしてませんよ。多分この違いの中に今回上がったPAの問題の答があると思います。学生さんだと問題が起きて、プロであり楽器をしっかり鳴らせている人達には問題にならない、この違いは何なんでしょう。私は学生バンドのダイナミクスのコントロールが利いてない、もしくはデフォルト的に音量が大きすぎるのだと考えます。PAに文句を言う前にジャズオーケストラを演奏するにあたっての音量のコントロールっていうのはどうあるべきなのか、っていうことをもう少しみんなで考える必要があります。今日のブルーコーツのドラムの阿野さんを生で見た人はよーく思い出して考えてみて欲しいです。必要最小限のプレイでサウンドのダイナミクスを完全にコントロールしてて素晴らしかったです。

ただ吹いたり叩いたりするのではなくて「音量の大小に関係なくきちんと鳴らすこと」が大前提です。その上で会場のサイズに応じた「バランサー」としてのPAがあるのです。

ここをはき違えた論争にはなって欲しくないなぁ、と思います。