伝世舎のブログ

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 接着剤は、接着力が強くて剥がれない方が良いというイメージはありませんか? ところが修復に使う接着剤は、剥がせることが重要なんです。
 修復をする作品は、長い年月を経てたり、損傷があったりと脆弱化している状態です。強力な接着剤で貼った紙を剥がそうとすると、作品が剥がす力に耐えられなくて、もっとボロボロになる危険性があります。
 将来の修復や、作品に損傷が生じた場合に、作品に負担が掛からないように接着剤が除去できることが大切です。
 そのためには、どのような接着剤を使うのか?
 日本画や書の表装や修復に使う接着剤は、昔から「生麩糊(正麩糊)しょうふのり」です。
 日本画や書の補強や、掛け軸や額などの表装を仕立てるために、裏面に紙を貼ります。そのことを「裏打ち」といいます。その裏打ちに使う接着剤が生麩糊です。
 原料は小麦粉澱粉です。使う度に小麦粉澱粉を煮て、生麩糊を作ります。
 裏打ちは、表装の形や素材、工程によって、紙の種類や厚さ、接着剤の濃さなどを変えて行います。

1 生麩糊はその都度煮て作ります。

2 糊漉で漉してから使います。

3
 糊盆で使う濃さに調整します。目的によって糊の濃さはマチマチです。

4
 裏打ち紙に生麩糊を塗ります。

5 糊を塗った紙を貼り込みます。これは増裏打ちの様子です。

 以前のブログで紹介した古糊は、生麩糊を数年間寝かせた糊で、接着力がとても弱いものです。

「寒糊を煮ました。」
http://ameblo.jp/denseisya/entry-12144731761.html


 でも、柔らかくしなやかな感じになるので、掛け軸や巻物の仕立てには必須です。広げたり巻いたりする掛け軸や巻物は硬いと、歪みや横折れなどの損傷の原因となります。柔軟性のある仕上がりにするために、手間と年月を掛けた古糊を使います。
 ただし、古糊を塗って紙を貼っただけだと、剥がれやすいので、紙同士の接着が増すように、打ち刷毛を使います。打ち刷毛は、シュロとツグのヤシ科の植物でできている分厚い刷毛です。ほうきやタワシに使われている植物といった方が、馴染みがあるかもしれません。
 紙を貼った後に、打って紙同士の繊維を絡ませ圧着させます。打つことによっても柔軟性をより増していきます。

6
 中裏打ち(増裏打ち)後に打ち刷毛で打っていきます。

 この打ち刷毛と古糊はセットで、昔から行われていて伝統的なやり方です。
実は、煮た生麩糊、古糊、打ち刷毛を使っている工房は今では少なくなっています。
 今は、表装には工業製品の接着剤を使うのが一般的です。原料も何種類か混ざっていて、防腐剤などの添加物が入っているため、ずーっと置いていてもカビません。
 工業製品の糊を使っている工房では、すでに古糊や打ち刷毛は使われていません。

 近年、工業製品の接着剤で表装された作品が修復の時期に入ってきています。固着して剥がすことが難しいことがあります。
 昔から使われている伝統的な生麩糊は、修復や表装が繰り返し行われきたので安心できます。
 伝世舎では、作品の修復や表装には工房で煮た生麩糊を使っています。

 ところで最近、打ち刷毛をもう一つ購入しました。サブ用に使うので、本来の打ち刷毛よりもお手頃です。これは馬の毛でできています。
 小林刷毛製造所さんで作って頂きました。
 https://www.facebook.com/kobayashihake/?fref=ts
 
7
 本来の打ち刷毛(右)、馬毛の打ち刷毛(左)。

保存・修復に関するご相談・お問い合わせは伝世舎まで
http://www.denseisya.com/contact/
TEL./FAX. 03-6666-4200

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